指定難病とは? 医療費助成制度の仕組み、申請方法、対象疾患一覧を徹底解説
指定難病の概要
指定難病(していなんびょう)とは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(通称:難病法)に基づき、国(厚生労働大臣)が指定した特定の疾患群のことです。
この法律は、かつての「特定疾患」制度を基礎としながら、2015年(平成27年)により公平かつ安定的な支援を提供するために施行されました。
指定難病に認定されると、治療にかかる医療費の負担を軽減する「特定医療費(指定難病)助成制度」などの支援を受けることができます。
この記事では、指定難病の定義、具体的な医療費助成の内容、申請方法、そしてどのような支援があるのかについて、分かりやすく解説します。
指定難病の詳細
指定難病の定義と要件
「難病」とは、発病の機構(原因)が明らかでなく、治療方法が確立しておらず、希少な疾病であり、長期の療養を必要とするものを指します。
その中でも、以下の要件をすべて満たすものが「指定難病」として国の指定を受け、医療費助成の対象となります。
- 患者数が一定の人数に達しないこと(希少性。おおむね人口の0.1%程度以下)
- 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立していること
この指定は、医学の進歩に応じて定期的に見直されており、対象となる疾患は年々追加されています。
2024年(令和6年)4月1日時点で、341の疾患が指定難病とされています。
医療費助成制度の仕組み
指定難病の患者に対する最も大きな支援が、医療費の助成制度(特定医療費)です。
1. 助成の対象となる人
指定難病と診断された方全員が自動的に対象となるわけではなく、以下のいずれかの基準を満たす必要があります。
- 重症度基準: 各疾患ごとに定められた「重症度分類」に照らして、一定以上の症状であると判断された場合。
- 軽症高額該当: 重症度基準は満たさない(軽症である)ものの、指定難病の治療にかかる月ごとの医療費総額(10割負担額)が33,330円を超える月が、申請月を含む過去12ヶ月以内に3回以上ある場合。
2. 助成の内容
助成が認定されると、以下の2つの負担軽減が適用されます。
- 自己負担割合の軽減: 通常、医療保険(健康保険など)では自己負担が3割(または1割・2割)ですが、指定難病の治療にかかる医療費(診察・薬剤・訪問看護など)の自己負担割合が2割に軽減されます。
- 自己負担上限額の設定: 世帯の所得(市町村民税の課税状況)に応じて、月額の「自己負担上限額」が設定されます。複数の医療機関(病院、診療所、薬局など)を受診した場合でも、その月の窓口での支払い総額がこの上限額を超えることはありません。(例:一般所得Ⅰの区分では月額1万円)
3. 助成開始時期
2023年(令和5年)10月の制度改正により、助成の開始時期が「申請日」から「指定医が診断した日」まで遡ることが可能になりました。
これにより、診断から申請までの間に生じた医療費も、申請日から一定期間内(原則1ヶ月、やむを得ない理由がある場合は最長3ヶ月)であれば遡って助成の対象となります。
申請の手続き
医療費助成を受けるためには、患者さんご自身(またはご家族)による申請が必要です。
1. 必要な書類
主な必要書類は以下の通りです。(自治体によって異なる場合があるため、必ず確認してください)
- 特定医療費(指定難病)支給認定申請書
- 臨床調査個人票(診断書): 指定難病の診断と重症度の判定が記載された書類です。これは、都道府県から指定を受けた「難病指定医」のみが作成できます。
- 世帯全員の住民票
- 所得を確認する書類(市町村民税の課税証明書など)
- 健康保険証のコピー
2. 申請窓口
お住まいの地域を管轄する都道府県や指定都市の窓口(多くの場合は保健所や市区町村の障害福祉担当課)に書類を提出します。
3. 認定と受給者証の交付
申請後、都道府県などでの審査が行われ、認定されると「特定医療費(指定難病)受給者証」が交付されます。
医療機関の窓口でこの受給者証を提示することで、助成が適用されます。
難病指定医と指定医療機関
この制度を利用する上で、重要な2つの指定があります。
- 難病指定医: 申請に必要な「臨床調査個人票」を作成できる医師です。
- 指定医療機関: 医療費助成の対象となる医療(自己負担2割や上限額管理)を受けられる医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションなど)です。
受診する医療機関が「指定医療機関」であるか、診断書を依頼する医師が「難病指定医」であるかを事前に確認しておくことが重要です。
医療費助成以外の支援
指定難病患者の方は、医療費助成以外にも様々な支援を利用できる可能性があります。
- 障害福祉サービス: 身体障害者手帳などを持っていなくても、指定難病が原因で日常生活に支障がある場合、ホームヘルプや就労移行支援などの障害福祉サービスを利用できる場合があります。(難病患者等対象のサービス)
- 就労支援: ハローワーク(公共職業安定所)には、「難病患者就職サポーター」が配置されている場合があり、専門的な就職相談や支援を受けられます。
- 障害年金: 疾患や症状の程度によっては、障害年金の支給対象となる場合があります。
- その他: 自治体独自の支援(見舞金など)や、障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳など)の取得につながる場合もあります。
参考動画(指定難病の医療費助成制度)
まとめ:制度の理解と早期相談の重要性
指定難病制度は、原因が不明で治療が困難な病気と向き合う患者さんとそのご家族にとって、経済的・社会的な負担を軽減するための重要なセーフティネットです。
2015年の難病法施行以降、対象疾患は拡大し続けており、より多くの患者さんが支援を受けられるようになっています。
制度の申請には専門的な書類(臨床調査個人票)が必要であり、手続きが複雑に感じられるかもしれません。
指定難病の診断を受けた、またはその可能性がある場合は、まずは主治医や病院の医療ソーシャルワーカー、お住まいの地域の保健所や難病相談支援センターに相談し、ご自身が利用できる制度について正確な情報を得ることが大切です。
関連トピック
難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律): 指定難病の制度を定めている法律そのものです。
小児慢性特定疾病医療費助成制度: 18歳未満(継続の場合は20歳未満)の児童を対象とした、指定難病とは別の医療費助成制度です。
臨床調査個人票: 指定難病の申請に必須となる、難病指定医が作成する詳細な診断書のことです。
難病指定医・指定医療機関: 制度を利用するために、それぞれ指定を受けた医師や医療機関のことで、都道府県のウェブサイトなどで確認できます。
難病情報センター: 厚生労働省の事業として運営されており、各指定難病の詳しい解説や、制度の概要を検索できる公式ポータルサイトです。
関連資料・情報源
難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/
厚生労働省(難病対策): 国の制度に関する公式情報や、指定難病の一覧が掲載されています。
お住まいの都道府県・指定都市のウェブサイト: 「(都道府県名) 指定難病」などで検索すると、具体的な申請窓口や手続きの方法、指定医療機関の一覧などが確認できます。
ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
【指定難病】指定難病の医療費助成制度&要件見直しについて解説 – YouTube

