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【2024年11月1日施行】フリーランス保護法とは? 60日ルール、取引条件明示、罰則まで徹底解説

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【2024年11月1日施行】フリーランス保護法とは? 60日ルール、取引条件明示、罰則まで徹底解説

「フリーランス保護法」の概要

フリーランス保護法とは、2024年11月1日(※本日現在、2025年11月7日時点では既に施行されています)に施行された、フリーランスとして働く人々を守るための新しい法律です。

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)と言います。

この法律は、フリーランスが発注事業者(クライアント)との間で不利な取引を強いられることを防ぐ目的があります。

これまでフリーランスは労働基準法の保護対象外であり、報酬の未払いや一方的な契約解除といったトラブルに弱い立場にありました。

この新法により、発注事業者には「取引条件の明示」や「60日以内の報酬支払い」などが義務化され、フリーランスがより安心して働ける環境整備が進められています。

「フリーランス保護法」の詳細

なぜフリーランス保護法が必要だったのか?

フリーランス(個人事業主や一人社長)は、会社員とは異なり、労働基準法や労働組合法といった「労働者」を守る法律の適用を原則として受けられません。

そのため、発注者側との力関係に差が生じやすく、「報酬が期日までに支払われない」「契約内容にない作業を無償で追加させられた」「一方的に契約を打ち切られた」といったトラブルが後を絶ちませんでした。

このようなフリーランスの弱い立場を保護し、公正な取引環境を実現するために、フリーランス保護法が制定されました。

フリーランス保護法の主なポイント(発注者の義務)

この法律により、フリーランスに業務を委託する「発注事業者」(クライアント)には、主に以下の義務が課されます。

1. 取引条件の明示義務【最重要】

発注事業者は、フリーランスに業務を委託する際、以下の内容を「書面」または「メール、チャットツールなどの電磁的方法」で直ちに明示しなければなりません。

口頭での発注(口約束)は、この義務違反となります。

  • 業務委託をした日
  • 発注者とフリーランスの名称・氏名
  • 業務(給付)の内容
  • 報酬の額
  • 報酬の支払期日
  • 成果物の納期や場所 など

2. 報酬の支払期日(60日ルール)

発注事業者は、フリーランスから成果物を受け取った日(またはサービスの提供を受けた日)から起算して60日以内のできるだけ早い期日までに、報酬を支払わなければなりません。

例えば「月末締め・翌々月末払い」といった従来の商習慣では、60日を超える可能性があり、違法となるケースが出てきます。

3. 禁止される行為

発注事業者が、その優越的な地位を利用してフリーランスに不利益を与える、以下の行為が禁止されます。

  • 受領拒否: フリーランスに責任がないのに、成果物の受領を拒否すること。
  • 報酬の減額: フリーランスに責任がないのに、報酬を一方的に減額すること。
  • 返品: 不良品でもないのに、返品すること。
  • 買い叩き: 相場と比べて著しく低い報酬を不当に定めること。
  • 不当なやり直し: フリーランスに責任がないのに、無償でやり直しをさせること。

4. ハラスメント対策の体制整備

発注事業者は、フリーランスに対するパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどを防止するため、相談窓口を設置したり、研修を行うなど、必要な体制を整備することが義務付けられます。

5. 募集広告の適正化

フリーランスの募集広告(求人)において、虚偽の表示や誤解を招くような表現を使ってはいけません。

法律の対象となる人

  • フリーランス側(特定受託事業者):
    • 従業員を雇用していない個人事業主
    • 代表者1名のみの法人(いわゆる「一人社長」)
  • 発注者側(業務委託事業者):
    • 上記のフリーランスに業務を委託する「すべての」事業者(法人・個人事業主)が対象です。
    • フリーランスからフリーランスへの「再委託」の場合も、発注側は義務を負います。

違反した場合の罰則

発注事業者が上記の義務や禁止行為に違反した場合、国(公正取引委員会、厚生労働省など)から助言、指導、勧告、そして「命令」が出されます。

この命令に違反した場合、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、勧告や命令を受けた事業者は、その事実が公表される可能性もあり、企業の信用失墜につながります。

「フリーランス保護法」の参考動画

「フリーランス保護法」のまとめ

2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法は、フリーランスとして働く人々にとって、自らの権利を守るための強力な法的根拠となります。

特に「取引条件の明示」と「60日以内の報酬支払い」は、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。

フリーランス自身もこの法律の内容を正しく理解し、もし不当な扱いを受けたと感じた場合は、契約書や明示された条件を確認し、毅然と対応することが求められます。

一方、発注事業者側は、フリーランスとの取引がすべてこの法律の対象となることを認識し、契約書の整備や支払いサイクルの見直し、ハラスメント対策など、社内体制の早急な点検と整備が不可欠です。

この法律は、フリーランスと企業が対等なパートナーとして、公正な取引関係を築くための新しいルールです。

関連トピック

下請法(下請代金支払遅延等防止法): フリーランス保護法と似ていますが、下請法は発注者と受注者の「資本金」によって適用対象が限定されます。フリーランス保護法は資本金に関係なく、すべての発注者に適用される点が大きな違いです。

インボイス制度: フリーランスの報酬(売上)と税金(消費税)に直結する制度であり、フリーランス保護法と共にフリーランスの取引環境に大きな影響を与えています。

労働基準法: 会社員(労働者)を守る法律です。フリーランスは原則として対象外ですが、働き方の実態によっては「労働者性」が認められるケースもあり、その境界線を理解することが重要です。

特定受託事業者: この法律におけるフリーランス(従業員を雇わない個人・一人社長)の法的な呼び名です。

フリーランス・トラブル110番: 日本弁護士連合会が運営する、フリーランスの取引上のトラブルに関する無料相談窓口です。

関連資料

厚生労働省・公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」: この法律の具体的な内容やQ&Aがまとめられた公式のガイドラインです。

契約書のひな形集: フリーランス保護法の明示義務に対応した業務委託契約書のテンプレート集。経済産業省や各種支援団体が公開している場合があります。

フリーランス・トラブル110番(日弁連): 法律に関する具体的なトラブルを弁護士に無料で相談できる窓口の情報です。

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