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欧州原子核研究機構(CERN)とは?ヒッグス粒子発見からWWW発祥の地まで、その全貌を徹底解説!

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欧州原子核研究機構(CERN)とは?ヒッグス粒子発見からWWW発祥の地まで、その全貌を徹底解説!

「欧州原子核研究機構(CERN)」の概要

欧州原子核研究機構(CERN、セルン)は、スイスのジュネーブ郊外とフランスの国境にまたがって位置する、世界最大規模の素粒子物理学の研究所です。

その正式名称は「European Organization for Nuclear Research」であり、1954年に設立されました。

CERNの主な目的は、宇宙が何でできているのか、物質の最小単位である「素粒子」は何か、それらはどのように相互作用しているのか、といった人類の最も根源的な問いに答えることです。

世界中から集まった数千人の科学者や技術者が、国籍や文化を超えて協力し、宇宙の謎を解き明かすための基礎研究を行っています。

2012年の「ヒッグス粒子」の発見という歴史的な功績で世界的に知られていますが、実は私たちが日常的に利用する「World Wide Web(WWW)」が誕生した場所でもあります。

「欧州原子核研究機構(CERN)」の詳細

CERNの目的と主要な研究

CERNの最大のミッションは、物質の究極の構成要素と、それらの間に働く基本的な力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)を解明することです。

このため、CERNは「加速器」と呼ばれる巨大な装置を用いて、素粒子物理学の研究を行っています。

陽子やイオンなどの粒子を光速近くまで加速させ、それらを正面衝突させることで、宇宙の始まりである「ビッグバン」直後に似た高エネルギー状態を人工的に作り出します。

この衝突によって生成される様々な粒子を観測・分析することで、物質の基本的な法則を探求しています。

中核施設:大型ハドロン衝突型加速器(LHC)

CERNの現在の主力施設は、「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」です。

LHCは、スイスとフランスの国境をまたぐ地下約100メートルに建設された、全周が約27キロメートルにも及ぶ巨大な円形のトンネルです。

このリング内で、2つの陽子ビームが互いに反対方向に、光速の99.9999991%という驚異的な速度まで加速されます。

そして、リング内に設置された4つの巨大な検出器(ATLAS、CMS、ALICE、LHCb)の内部で、これらのビームを正面衝突させます。

この衝突エネルギーは莫大で、アインシュタインの有名な公式 $E=mc^2$ に従って、エネルギーが質量(新しい粒子)に変換されます。

史上最大の成果:ヒッグス粒子の発見

CERNの最も輝かしい業績は、2012年7月4日にLHCでの実験(ATLAS実験とCMS実験)によって「ヒッグス粒子」を発見したことです。

ヒッグス粒子は、素粒子物理学の「標準理論」において、なぜ他の素粒子が「質量(重さ)」を持つのかを説明するために不可欠な、最後まで未発見だった粒子でした。

宇宙は「ヒッグス場」で満たされており、粒子がこの場と相互作用(抵抗を受けるようなイメージ)することによって質量が生まれると考えられています。

ヒッグス粒子は、このヒッグス場が存在することの証拠となる粒子です。

この発見は標準理論の正しさを証明する金字塔となり、ヒッグス機構を提唱したピーター・ヒッグス氏とフランソワ・アングレール氏に2013年のノーベル物理学賞がもたらされました。

もう一つの偉大な発明:World Wide Web(WWW)

CERNは、素粒子物理学だけでなく、現代の情報社会にも計り知れない貢献をしています。

1989年、当時CERNに在籍していたイギリスの科学者ティム・バーナーズ=リー卿は、世界中に分散している研究者たちが情報を簡単に共有・閲覧できるようにするためのシステムを考案しました。

これが「World Wide Web(WWW)」です。

彼は世界初のウェブサーバーとウェブブラウザ(その名も「WorldWideWeb」)を開発し、1990年にCERNの内部で公開しました。

当初は研究者間の情報交換を目的としていましたが、この技術は瞬く間に世界中に広がり、今日のインターネット社会の基盤となりました。

CERNの現在と未来

ヒッグス粒子の発見後も、CERNの探求は続いています。

宇宙の約85%を占めるとされる謎の物質「暗黒物質(ダークマター)」の正体や、宇宙の膨張を加速させている「暗黒エネルギー」の謎、そしてビッグバン直後には同量存在したはずの「物質」と「反物質」の非対称性の起源など、標準理論では説明できない宇宙の大きな謎の解明を目指しています。

LHCは現在もアップグレードが続けられており、将来の「高ルミノシティLHC(HL-LHC)」計画などにより、さらに高エネルギー・高頻度の衝突実験が行われる予定です。

「欧州原子核研究機構(CERN)」の参考動画

「欧州原子核研究機構(CERN)」のまとめ

欧州原子核研究機構(CERN)は、単なる物理学の研究所ではなく、人類の知的好奇心の最前線であり、国境を超えた国際協力の象徴です。

「私たちはどこから来たのか、私たちは何でできているのか」という哲学的な問いに対し、素粒子物理学という手段で答えを探し続けています。

ヒッグス粒子の発見という偉業は、その探求の大きな一歩に過ぎません。

そして、その研究の過程で生まれたWWWのように、CERNの基礎研究は予期せぬ形で私たちの社会全体に多大な恩恵をもたらす可能性を秘めています。

暗黒物質の正体など、残された宇宙の謎にCERNがどのように迫っていくのか、その挑戦から今後も目が離せません。

関連トピック

大型ハドロン衝突型加速器 (LHC): CERNが運用する世界最大の粒子加速器。地下27kmのリングで陽子を衝突させ、ヒッグス粒子を発見しました。

素粒子物理学: 物質を構成する最小の単位である「素粒子」と、それらの間に働く力を研究する物理学の分野です。

ヒッグス粒子: 素粒子に「質量」を与える起源とされる粒子。2012年にCERNで発見され、標準理論を完成させました。

World Wide Web (WWW): 1989年にCERNのティム・バーナーズ=リー卿によって発明された、インターネット上で情報を共有するためのシステム。

暗黒物質(ダークマター): 宇宙の質量の大部分を占めるとされながら、光学的に観測できず、その正体が未だ謎に包まれている物質。LHCでの探索が進められています。

関連資料

『宇宙は何でできているのか』 (村山 斉 著): 東京大学カブリIPMU(現 Kavli IPMU)の村山氏による、素粒子物理学と宇宙の謎について非常に分かりやすく解説したベストセラー入門書。CERNやLHCの役割についても触れられています。

『素粒子物理学』 (朝倉書店): より専門的に素粒子物理学の基礎を学びたい人向けの教科書。標準理論や実験について体系的にまとめられています。

CERN公式ウェブサイト (home.cern): CERNの活動、最新の研究成果、LHCの運用状況などに関する公式情報が(主に英語で)発信されています。

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