身体障害者手帳とは? 等級、申請方法から受けられるメリットまで徹底解説
身体障害者手帳の概要
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体に一定の障害がある方に対して交付される証明書です。
この手帳は、障害のある方が様々な福祉サービスや支援を受ける際に必要となり、自立と社会参加を促進することを目的としています。
障害者手帳には、この「身体障害者手帳」のほか、「精神障害者保健福祉手帳」と「療育手帳」があり、対象となる障害の種類によって分かれています。
手帳を取得することで、税金の控除や減免、公共交通機関の割引、各種福祉サービスの利用など、生活の様々な場面で支援を受けられるようになります。
身体障害者手帳の詳細:対象・等級・申請方法
身体障害者手帳制度について、その詳細を見ていきましょう。
対象となる障害
身体障害者手帳の交付対象となるのは、身体障害者福祉法で定められた障害に該当し、その障害が永続すると認められる場合です。
対象となる障害には、主に以下のような種類があります。
- 視覚障害
- 聴覚または平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
- 肢体不自由(上肢、下肢、体幹など)
- 内部障害(心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、肝臓、免疫機能の障害など)
障害の等級
身体障害者手帳には、障害の程度に応じて1級から6級までの等級が定められています。
数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。
等級は、障害の種類ごとに定められた基準に基づいて判定されます。
なお、7級という区分も存在しますが、7級の障害単独では手帳の交付対象とはならず、7級の障害が2つ以上重複する場合などに6級として認定されることがあります。
どの等級に該当するかによって、受けられるサービスの内容や割引率が異なる場合があります。
申請方法と流れ
身体障害者手帳を取得するための一般的な申請手続きは、以下の流れで進みます。
まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(福祉課など)に相談し、申請に必要な書類(身体障害者手帳交付申請書、診断書・意見書の用紙など)を受け取ります。
次に、身体障害者福祉法第15条の規定に基づき都道府県知事等が指定した医師(「指定医」と呼ばれます)がいる医療機関を受診し、診断書・意見書を作成してもらいます。
どの医師が指定医にあたるか不明な場合は、窓口で確認することができます。
申請書、指定医による診断書・意見書、本人の顔写真(縦4cm×横3cmが一般的)、マイナンバー(個人番号)が確認できる書類など、必要な書類を揃えて市区町村の窓口に提出します。
提出された書類は、市区町村を経由して都道府県や指定都市、中核市などで審査・判定が行われます。
審査の結果、交付が決定されると、市区町村の窓口を通じて手帳が交付されます。
申請から手帳の交付までには、一般的に1ヶ月から2ヶ月程度の期間がかかることが多いです。
手帳を持つメリット(受けられる支援)
身体障害者手帳を取得すると、障害の等級やお住まいの自治体、事業者の判断に応じて、様々な支援やサービスを利用できる可能性があります。
主なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 税制上の優遇: 所得税や住民税の障害者控除、相続税の障害者控除、自動車税環境性能割・自動車税種別割の減免(条件あり)などが受けられます。
- 公共料金の割引: NHK放送受信料の減免、携帯電話料金の割引プランの適用、水道料金や下水道料金の割引(自治体による)などがあります。
- 交通機関の運賃割引: JRや私鉄、バス、タクシーなどの運賃割引、高速道路の通行料金の割引(事前登録が必要)などが利用できる場合があります。
- 公共施設等の入場料割引: 美術館、博物館、動物園、映画館などの公共施設や一部のレジャー施設の入場料が割引または免除されることがあります。
- 障害福祉サービス: 補装具(義足、車椅子、補聴器など)の購入・修理費用の助成、日常生活用具の給付、ホームヘルプサービス(居宅介護)やショートステイ(短期入所)などの障害福祉サービスの利用申請が可能になります。
- 医療費の助成: 自治体によっては、障害者医療費助成制度(「マル障」などと呼ばれる)により、医療機関での窓口負担が軽減される場合があります。
- 就労支援: 障害者雇用枠での就職活動が可能になり、ハローワークの専門窓口や就労移行支援事業所などで支援を受けることができます。
これらのサービスは、手帳を持っているだけで自動的に適用されるものは少なく、多くの場合、別途申請や手帳の提示が必要となります。
参考動画:身体障害者手帳の解説
まとめ:手帳制度の活用と相談の重要性
身体障害者手帳は、身体に障害のある方が社会生活を送る上での様々な負担や障壁を軽減し、その人らしい生活を送るための重要な支援制度です。
手帳の取得は任意であり、申請することにためらいを感じる方もいるかもしれません。
しかし、手帳を持つことで利用できるサービスや支援は多岐にわたり、それらを活用することで生活の質(QOL)の維持・向上につながる可能性があります。
どのようなサービスが利用できるかは、障害の等級やお住まいの自治体によっても異なります。
ご自身やご家族が対象になるかもしれないと思われる場合は、まずはかかりつけの医師や、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、医療機関のソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。
制度を正しく理解し、活用することが、より安心した生活への第一歩となります。
身体障害者手帳の関連トピック
精神障害者保健福祉手帳: 統合失調症、うつ病、てんかんなどの精神疾患により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方を対象とした手帳です。
療育手帳: 知的障害があると判定された方を対象とした手帳です。
自治体によって「愛の手帳」(東京都)、「みどりの手帳」(埼玉県)など名称が異なる場合があります。
障害年金: 病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金制度です。
身体障害者手帳の等級とは異なる基準で審査されますが、関連する制度の一つです。
障害者総合支援法: 障害のある方が地域社会で自立した生活を送れるよう、必要な障害福祉サービスや支援について定めた法律です。
指定医(身体障害者福祉法第15条指定医): 身体障害者手帳の申請に必要な診断書・意見書を作成することができる、専門的な知識や技術を持つとして都道府県知事などから指定を受けた医師のことです。
関連資料・情報源
お住まいの市区町村のウェブサイトや「障害福祉のしおり」: 各自治体が発行しているガイドブックやウェブページで、その地域で具体的に受けられるサービスや手続きの方法がまとめられています。
厚生労働省のウェブサイト: 身体障害者手帳制度に関する国の公式な情報や、関連する法律(身体障害者福祉法)について確認できます。
『障害者手帳活用ガイド』などの書籍: 手帳で受けられる割引やサービスを網羅的に解説した市販の書籍も、情報収集に役立ちます。
ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

