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PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは?続く「ふわふわ感」の正体と最新治療法を徹底解説

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PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは?続く「ふわふわ感」の正体と最新治療法を徹底解説

「PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)」の概要

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは、特定のきっかけの後に発症する、持続的な「ふわふわ」とした浮動感や不安定感を主な症状とする、慢性のめまい疾患です。

「持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness)」の略称で、近年新しく定義された疾患概念です。

以前は「慢性主観的めまい」や「心因性めまい」の一部として扱われることもありましたが、2017年に国際的な診断基準が確立されました。

特徴的なのは、ぐるぐる回る回転性のめまいではなく、浮遊感や足元がおぼつかない感覚が3ヶ月以上にわたってほぼ毎日続くことです。

さらに、その症状が特定の状況、例えば「立っている時」「歩いている時」、または「複雑な視覚刺激(人混み、スーパーの陳列棚、スマートフォンのスクロール画面など)を見た時」に悪化しやすいとされています。

検査をしても明らかな異常が見つからないことが多く、患者さん自身が「気のせいではないか」「怠けている」と誤解され、悩んでいるケースも少なくありません。

「PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)」の詳細

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)を深く理解するために、その診断基準、原因、そして治療法について詳しく解説します。

PPPDの診断基準

PPPDの診断は、国際的な平衡障害学会であるバラニー学会(Bárány Society)が定めた診断基準に基づいて行われます。

以下の5つの基準(A~E)をすべて満たす必要があります。

A. 浮動感、不安定感、非回転性めまい(ぐるぐるしないめまい)のうち一つ以上が、3ヶ月以上にわたってほとんど毎日存在する。

B. 症状は、立位姿勢(立っていること)、能動的または受動的な動き(歩行や車に乗るなど)、動くものや複雑な視覚パターン(視覚刺激)によって増悪する。

C. この疾患は、めまいや平衡障害を引き起こす別の疾患(前庭神経炎、メニエール病、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、パニック発作など)が先行して発症することが多い。

D. 症状が、日常生活に重大な苦痛や機能障害を引き起こしている。

E. 症状が、他のどの疾患や障害よりもよく説明できる。

重要なのは、これらの症状が3ヶ月以上続いていること、そして特定の誘発因子によって悪化するという点です。

耳鼻咽喉科や神経内科の専門医による問診が診断において非常に重要となります。

PPPDの原因とメカニズム

PPPDは、何らかの「きっかけ」となる出来事の後に発症します。

きっかけとしては、BPPVや前庭神経炎といった前庭疾患(内耳のバランス機能の障害)が最も多いですが、その他にもパニック障害、不安障害、頭部外傷、むち打ちなどが報告されています。

本来、これらのきっかけとなった疾患が治癒すれば、めまいの感覚も治まるはずです。

しかし、PPPDの患者さんでは、きっかけとなった出来事の後、脳がバランスを取るための情報を過剰に警戒し、処理する方法が変化してしまうと考えられています。

例えば、以前は無意識に処理していた体の傾きや視覚情報を、「危ない」「また倒れるかもしれない」と脳が過敏に察知し続ける状態です。

その結果、本来なら問題ないはずの日常的な動作(立つ、歩く)や視覚刺激に対しても、脳が「不安定だ」と誤って認識し、めまい感が持続してしまうのです。

これは、耳や脳の器質的な(目に見える)損傷ではなく、機能的な(働き方の)問題であるとされています。

特に、不安を感じやすい気質や、めまいに対する過度な恐怖心が、症状の維持に関与している可能性も指摘されています。

PPPDの治療法

PPPDの治療は、単一の方法ではなく、いくつかの治療法を組み合わせて行われるのが一般的です。

主な治療の柱は、「前庭リハビリテーション」「薬物療法」「認知行動療法」の3つです。

1. 前庭リハビリテーション

これは、PPPDの治療において中心的な役割を果たします。

目的は、めまいを引き起こす刺激に「慣れる」ことです。

脳が過敏になっているバランス感覚や視覚情報をあえて経験させ、それが危険ではないことを脳に再学習させます。

具体的な方法としては、首や目を動かす訓練、立ったり座ったりする動作の繰り返し、様々な平面での歩行訓練などがあります。

また、PPPDの増悪因子である視覚刺激(動く映像や複雑な模様など)をあえて見るような訓練も行われます。

重要なのは、恐怖心から避けていた動作を、安全な環境で少しずつ再開していくことです。

ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動も、全身の血流改善や平衡機能の向上に役立つと推奨されています。

2. 薬物療法

PPPDの背景には、脳内の神経伝達物質(特にセロトニン)のバランスが関与していると考えられています。

そのため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)といった、いわゆる抗うつ薬や抗不安薬が有効な場合があります。

これらの薬は、不安感を軽減させるだけでなく、脳がめまいに対して過敏になっている状態を調整する効果が期待されます。

漢方薬(例:抑肝散加陳皮半夏など)が処方されることもあります。

3. 認知行動療法 (CBT)

認知行動療法は、めまいに対する考え方(認知)や行動のパターンを変えていく心理療法です。

PPPDの患者さんは、「また、めまいが起きたらどうしよう」という強い予期不安を抱えていることが多く、それが症状をさらに悪化させる悪循環につながっています。

CBTでは、まず「めまい日誌」などをつけて自分の症状を客観的に把握(認知)します。

そして、めまいを過度に恐れる考え方のクセを修正し、「めまいがしても大丈夫」「この動作は怖くない」という前向きな行動(リハビリなど)を取れるようにサポートします。

これらの治療は、専門医の指導のもと、焦らず根気よく続けることが改善への鍵となります。

「PPPD」の参考動画

「PPPD」のまとめ

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、単なる「気のせい」や「ストレス」という言葉で片付けられるべきではない、明確な診断基準を持つ疾患です。

検査で異常が見つからないために、多くの患者さんが診断に至らず、日常生活や社会生活に深刻な支障をきたしている現実があります。

特に就労期の人々にも多く発症し、通勤やデスクワーク(特にPC画面)が困難になり、休職や退職を余儀なくされるケースも少なくありません。

しかし、近年この疾患概念が広まり、適切な診断と治療法が確立されつつあります。

重要なのは、PPPDが脳の機能的な問題であり、前庭リハビリテーションや適切な治療によって改善が期待できるということです。

もし「3ヶ月以上続く、ふわふわするめまい」があり、「立つ・歩く・視覚刺激」で悪化する傾向がある場合は、決してあきらめず、めまいに詳しい耳鼻咽喉科や神経内科の専門医に相談してください。

あなたを悩ませるその症状の正体が分かり、適切な対処法が見つかるかもしれません。

関連トピック

機能性身体症候群: 検査では明らかな器質的異常が見つからないにもかかわらず、身体的な症状が持続する状態の総称です。

PPPDもこの一つと考えられています。

過敏性腸症候群(IBS)なども含まれます。

不安障害・うつ病: PPPDは、不安障害やうつ病を併発していることが多いと報告されています。

めまいが不安を引き起こすのか、不安がめまいを悪化させるのか、両者が密接に関連していると考えられています。

前庭リハビリテーション: めまいやふらつきを改善するための運動療法です。

PPPDにおいては、めまいへの「慣れ」を促し、脳の機能的なバランスを再調整するために不可欠な治療法とされています。

関連資料

『めまいふらつきみるみるよくなる! 名医陣が教える最新1分体操大全』 (新井基洋 著): めまい治療の専門家による、自宅でできるリハビリ体操などが紹介されている一般向け書籍です。

『ふわふわめまいを自分で治す本』 (小塚高文 著): PPPDのような浮動感(ふわふわめまい)に焦点を当て、自律神経を整えるセルフケアを紹介している書籍です。

『DVDでいちばんわかる! めまい・ふらつきは目・首・足の運動で治す』 (新井基洋 著): 前庭リハビリテーションの具体的な方法を映像で確認できるDVD付きの書籍で、運動療法を始める際に参考になります。

『原因不明のめまいはもうこわくない』 (北原糺 著): PPPDを含む、原因が分かりにくいめまいについて、専門医が解説している一般向けの書籍です。

ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。


PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)の診断と特徴 この動画は、PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)の診断方法や特徴について解説しており、トピックの理解を深めるのに役立ちます。

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