アメリカ政府機関閉鎖はなぜ繰り返される？その仕組みと世界・日本への影響を徹底解説

アメリカ政府機関閉鎖の概要

「アメリカ政府機関の閉鎖（ガバメント・シャットダウン）」とは、連邦議会で予算が期限内に成立しなかった場合に、政府機関の運営に必要な資金が枯渇し、一部の業務が停止する事態を指します。

日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカでは政治的な対立によって度々発生しており、国立公園の閉鎖や職員の給与未払いなど、市民生活や経済に大きな混乱をもたらします。

これはアメリカ特有の厳格な予算制度と、議会の政治的駆け引きが複雑に絡み合って起こる現象です。

アメリカの憲法では「議会の承認（歳出法案の可決）なしに、国庫からお金を支出してはならない」と定められています。

さらに「不足金請求禁止法」という法律により、予算の裏付けがない状態で政府職員を働かせたり、契約を結んだりすることが禁じられています。

そのため、会計年度が変わる10月1日までに予算が成立しない、あるいは「つなぎ予算」の期限が切れると、法的にお金を使えなくなり、物理的に役所を閉めざるを得なくなるのです。

日本でも予算が年度内に決まらないことはありますが、その場合は「暫定予算」を組んで行政が止まらないようにする仕組みが整っています。

一方、アメリカには自動的に前年度の予算を継続するようなセーフティネットが存在しません。

そのため、議会（上院・下院）と大統領の間で対立が起き、期限ギリギリまでチキンレース（度胸試し）のような交渉が続くと、合意に至らず「閉鎖」という事態に陥りやすいのです。

政府閉鎖といっても、すべての機能が停止するわけではありません。

「国民の生命や財産保護に不可欠な業務」は例外として継続されます。

継続される業務: 軍隊、警察、航空管制、郵便、国境警備など（ただし、職員への給与支払いは遅れることが一般的です）。

停止・閉鎖される業務: 国立公園や博物館の運営、パスポートの発行手続き（一部）、各種許認可の審査、統計データの発表など。

特に観光客にとっては、自由の女神やイエローストーン国立公園などの観光地に入れなくなる影響が出ることがあります。

近年、政府閉鎖が増えている背景には、アメリカ政治の「分極化」があります。

予算案の中に、相手の政党が反対する政策（例：国境の壁建設費用、ウクライナ支援、医療保険制度など）を盛り込み、それを認めなければ予算を通さないという「人質」にする戦術が常態化しています。

特に、大統領の所属政党と議会の多数派が異なる「ねじれ議会」の状態では、この対立が激化しやすくなります。

アメリカの政府機関閉鎖は、単なる事務的な手続きの遅れではなく、政党間の激しいパワーゲームの結果として発生します。

この事態は、政府職員の生活を脅かすだけでなく、経済成長率の低下や、世界的な金融市場の不安定化を招くリスクも孕んでいます。

日本に住む私たちにとっても、円相場や株価への影響、あるいはアメリカ旅行の計画に支障が出る可能性があるため、ニュースで「つなぎ予算」や「デッドライン」という言葉が出た際は注視しておく必要があります。