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【脱・中国依存】日本のレアアース調達の未来図ーオーストラリアの安定供給とトルコ巨大鉱床の衝撃

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【脱・中国依存】日本のレアアース調達の未来図ーオーストラリアの安定供給とトルコ巨大鉱床の衝撃

「日本のレアアース調達」の概要

電気自動車(EV)のモーターや風力発電、スマートフォン、そしてミサイルなどの防衛装備品に至るまで、現代のハイテク産業に欠かせない「産業のビタミン」、それがレアアース(希土類)です。

これまで日本は、その供給の大部分を中国に依存してきましたが、地政学的なリスクの高まりを受け、サプライチェーンの劇的な転換を迫られています。

本記事では、日本のレアアース調達の「生命線」となりつつあるオーストラリアとの連携強化と、近年「世界第2位の埋蔵量」として突如浮上したトルコの巨大鉱床がもたらす可能性について、最新の情勢を交えて解説します。

詳細:オーストラリアとトルコ、二つの希望

なぜ今、調達先の「分散」が急務なのか

レアアース、特に強力な磁石を作るために必要な「ネオジム」や、耐熱性を高める「ジスプロシウム」などの重要鉱物は、採掘から分離・精製(精錬)の工程において、中国が世界シェアの圧倒的多数(約70〜90%)を握っています。

過去(2010年)に尖閣諸島問題で中国がレアアースの対日輸出を実質停止した「レアアース・ショック」の教訓や、近年の米中対立の激化を踏まえ、日本政府は「特定重要物資」としてレアアースを指定し、国を挙げて調達ルートの多様化(脱中国依存)を進めています。

オーストラリア:信頼できる「供給の要」

現在、中国以外の供給源として最も確実かつ重要なパートナーがオーストラリアです。

ライナス社との強力なタッグ

オーストラリアの鉱山会社「ライナス・レアアース(Lynas Rare Earths)」は、中国以外でレアアースを大規模に採掘・精錬できる世界でも数少ない企業です。日本のJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)や総合商社(双日など)は、早くから同社に出資や融資を行い、関係を深めてきました。

「重レアアース」の確保へ

特に注目すべきは、これまで中国南部の鉱床にほぼ100%依存していた「重レアアース(ジスプロシウム、テルビウム)」の生産が、オーストラリアのマウント・ウェルド鉱山などで本格化しようとしている点です。

2025年以降、ここからの供給が安定すれば、日本のEV産業にとって致命的なリスクとなっていた「中国による供給遮断」の脅威を大幅に減らすことができます。

トルコ:世界を揺るがす「ゲームチェンジャー」となるか

2022年、資源業界に衝撃的なニュースが飛び込みました。トルコ西部のエスキシェヒル県ベイリコバ地区で、世界第2位の規模(推定埋蔵量約6億9400万トン)とされるレアアース鉱床が発見されたのです。

埋蔵量は中国・バイユンオボ鉱山に次ぐ規模

トルコ政府の発表によれば、この鉱床だけで世界の需要を数百年以上満たせる可能性があるとされています。これが事実であれば、世界のレアアース地図を塗り替えるポテンシャルを秘めています。

実用化への課題と日本の関わり

ただし、楽観はできません。鉱石からレアアースを取り出すための技術的難易度や、コスト競争力、環境対策など、解決すべき課題は山積しています。

「埋まっていること」と「使える状態で掘り出せること」は別問題です。

ここで期待されるのが日本の技術力です。日本は精錬技術や資金提供を通じてトルコ側と協力関係を築こうとしており、もしこの巨大鉱床からのルートが確立されれば、オーストラリアに次ぐ、あるいはそれ以上の供給拠点となる可能性があります。

その他の調達ルートと未来

日本は豪・トルコ以外にも、ベトナム、カザフスタン、アフリカ(ナミビア等)との連携を模索しています。また、都市鉱山(リサイクル)や、将来的には南鳥島沖の「レアアース泥」の活用など、全方位的な戦略で資源安全保障を確立しようとしています。

参考動画

まとめ

日本のレアアース調達は、「中国一辺倒」から「オーストラリアという確実な柱 + トルコという巨大な可能性」へとシフトしつつあります。

オーストラリアからの供給はすでに現実のものとして日本の産業を支え始めていますが、トルコに関しては、その莫大な埋蔵量を実際に商業ベースに乗せられるかどうかが、2020年代後半の大きな焦点となるでしょう。

私たちの生活を支えるハイテク製品が今後も安定して作れるかどうかは、これら資源外交の成否にかかっています。

関連トピック

経済安全保障 – 戦略物資の供給網確保や技術流出防止を通じて、国の平和と安全を守る概念。

JOGMEC (エネルギー・金属鉱物資源機構) – 日本の資源エネルギーの安定供給を確保するために活動する独立行政法人。

重レアアース – ネオジム磁石の耐熱性を高めるために不可欠な希少金属。中国への依存度が特に高い。

都市鉱山 – 使用済みの家電やスマホに含まれる有用な金属資源をリサイクルして再利用する考え方。

永久磁石 (ネオジム磁石) – 最強の磁力を持つ磁石。EVの駆動モーターに必須であり、レアアース需要の核心。

関連資料

『レアメタル・レアアース危機』 – 資源を巡る世界的な争奪戦の歴史と現状を解説した書籍。

『世界資源エネルギー入門』 – 現代社会を動かす資源の基礎知識と地政学リスクが学べる一冊。

『元素戦略』 – 希少な元素を使わずに同等の性能を出す代替材料開発(元素戦略)に関する技術書。

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