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【徹底解説】ミトコンドリア病とは?原因・症状から最新治療薬「MA-5」まで分かりやすく紹介

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【徹底解説】ミトコンドリア病とは?原因・症状から最新治療薬「MA-5」まで分かりやすく紹介

「ミトコンドリア病」の概要

「ミトコンドリア病」とは、私たちの体の細胞ひとつひとつの中に存在する「ミトコンドリア」の働きが低下することで、生きるために必要なエネルギーが十分に作れなくなる病気の総称です。ミトコンドリアは、いわば体内の「発電所」のような役割を担っています。この発電所が故障すると、エネルギーを大量に必要とする脳、筋肉、心臓などの臓器を中心に、全身にさまざまな不調が現れます。

日本では国の指定難病(指定難病21)に認定されており、赤ちゃんから大人まで、幅広い年齢層で発症する可能性があります。かつては治療法が限られていましたが、近年では日本発の画期的な新薬開発が進むなど、新たな光も見え始めています。

「ミトコンドリア病」の詳細

ミトコンドリアの役割と病気の仕組み

私たちの体は約37兆個の細胞でできていますが、そのほぼすべての細胞内にミトコンドリアは存在します。ミトコンドリアは、食事から得た栄養と呼吸から得た酸素を使って、生命活動のエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」を作り出しています。

ミトコンドリア病では、遺伝子の変異などが原因でこのATPがうまく作れなくなります。その結果、エネルギー不足になった細胞が機能不全に陥り、臓器の働きが悪くなってしまうのです。

主な症状:全身に現れる多様なサイン

ミトコンドリア病の症状は「人によって全く違う」と言われるほど多様ですが、特にエネルギーを多く使う臓器に症状が出やすいのが特徴です。

  • 脳・神経系:けいれん、発達の遅れ、知能低下、片頭痛、脳卒中のような発作(脳卒中様発作)。
  • 筋肉:疲れやすい、筋力が弱い、まぶたが下がる(眼瞼下垂)、目の動きが悪くなる。
  • 心臓:心不全、不整脈、心筋症。
  • その他:難聴(聞こえにくい)、糖尿病、低身長、腎臓の機能低下など。

これらの症状が単独で出ることもあれば、いくつも重なって現れることもあります。代表的な病型として、脳卒中様発作を伴う「MELAS(メラス)」、筋力低下やてんかんを伴う「MERRF(マ-フ)」、乳幼児期に発症し重篤になりやすい「リー症候群」などが知られています。

原因と遺伝について

ミトコンドリア病の原因は、細胞の核にある「核DNA」の変異か、ミトコンドリア独自が持つ「ミトコンドリアDNA(mtDNA)」の変異のいずれかです。

よく「母親から遺伝する(母系遺伝)」と言われますが、これはミトコンドリアDNAに変異がある場合の話です。受精の際、父親のミトコンドリアは子に受け継がれないため、母親由来のミトコンドリアDNAが影響します。しかし、核DNAの変異が原因の場合は両親から遺伝することもあれば、突然変異で誰にでも起こる可能性もあります。「遺伝する病気」と一括りにせず、専門医による遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

診断と現在の治療法

診断には、血液検査(乳酸・ピルビン酸値の測定)、MRI検査、そして確定診断のための遺伝子検査や、筋肉の一部を採取して調べる「筋生検」などが行われます。

現時点では、ミトコンドリアの機能を完全に回復させる根治療法は確立されていません。そのため、不足している栄養素を補う「ミトコンドリア・カクテル(ビタミンB1、コエンザイムQ10、L-カルニチンなど)」の投与や、てんかん発作を抑える薬を使うといった「対症療法」が中心となります。ミトコンドリアに負担をかけないよう、感染症予防や過労を避ける生活管理も重要です。

最新の研究:日本発の治療薬「MA-5」への期待

現在、世界中で治療法の研究が進んでいます。中でも注目されているのが、東北大学などの研究グループが開発した新薬「MA-5(ミトコニック アシッド-5)」です。この薬は、ミトコンドリアのエネルギー産生を助け、細胞死を防ぐ効果が期待されています。

2025年後半からは、難聴を伴う患者を対象とした医師主導の第Ⅱ相臨床試験(治験)が開始されるなど、実用化に向けた大きな一歩が踏み出されています。また、大阪大学では健康なミトコンドリアを移植する「ミトコンドリア移植」の研究も進められており、難病克服への期待が高まっています。

「ミトコンドリア病」の参考動画

まとめ

ミトコンドリア病は、全身のエネルギー工場がうまく働かなくなる複雑な病気であり、患者さんやご家族にとっては、多様な症状や将来への不安と向き合う日々が続くこともあります。しかし、指定難病として医療費助成の対象となっており、社会的なサポート体制は整いつつあります。

何より、長年「治療法がない」と言われてきたこの病気に対して、日本発の「MA-5」をはじめとする画期的な新薬開発が最終段階に入ってきていることは、非常に大きな希望です。もし、「疲れやすさが異常である」「発達が気になる」などの症状があれば、神経内科や小児科などの専門医に相談し、早期発見につなげることが大切です。

関連トピック

指定難病

難病法に基づいて指定され、公費助成の対象となる疾患。

ATP(アデノシン三リン酸)

すべての生物が生きるために利用するエネルギーの通貨。

遺伝子治療

遺伝子を細胞に導入して病気を治療する先端医療。

代謝異常

体内の化学反応が正常に行われない状態のこと。

関連資料

『ミトコンドリア病ハンドブック』

『マンガでわかるミトコンドリア』

ミトコンドリア病患者・家族の会(MCMの会)会報

ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

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