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【社会問題】労働力不足は解消、でも死後は?移民政策の影で深刻化する「土葬問題」と多文化共生の壁

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【社会問題】労働力不足は解消、でも死後は?移民政策の影で深刻化する「土葬問題」と多文化共生の壁

移民政策と土葬問題の概要

日本政府は少子高齢化による深刻な人手不足を補うため、「特定技能」制度の拡大など、事実上の移民政策へと舵を切っています。

しかし、外国人労働者の受け入れ議論において、「働き方」や「住まい」の話は出ても、「死後の扱い」についての議論が置き去りにされているのが現状です。

特に、火葬を禁忌とするイスラム教徒(ムスリム)の増加に伴い、国内での「土葬墓地不足」が限界に達しつつあります。

本記事では、移民政策と密接に関わる「土葬問題」の構造、地域住民との摩擦、そして日本社会が直面している多文化共生の真の課題について徹底解説します。

移民政策と土葬問題の詳細

事実上の「移民政策」と外国人定住者の増加

日本政府は「移民」という言葉の使用を慎重に避けつつも、2019年に新設された在留資格「特定技能」や、永住への道を開く制度改正により、外国人労働者の受け入れを大幅に拡大しています。

かつての「出稼ぎ(短期間で帰国する)」スタイルから、家族を帯同して日本に定住するスタイルへと変化しており、当然ながら日本国内で「死」を迎える外国人も増えています。ここで大きな壁となるのが、宗教による葬送儀礼の違いです。

なぜ「土葬」がこれほど問題になるのか

世界の宗教人口の約4分の1を占めるイスラム教では、「死後の復活」を信じる教義上、遺体を焼く火葬は「地獄の責め苦」と同義とされ、厳格に禁じられています。彼らにとって土葬は絶対的な宗教的義務です。

一方、日本は世界一の「火葬大国」であり、衛生面や土地不足の観点から火葬率が99.9%を超えています。法律(墓埋法)で土葬は禁止されていませんが、多くの自治体が条例や指導で火葬を事実上義務付けており、土葬可能な墓地は全国に数えるほどしかありません。

「墓難民」の発生と地域住民の反発

これまでは、遺体を母国へ空輸して埋葬するケースも多くありましたが、輸送費が高額(100万円以上)であることや、日本で生まれ育った2世・3世が増えたことで、「日本で土に還りたい」というニーズが急増しています。しかし、新たな土葬墓地を作ろうとすると、地域住民との激しい摩擦が生じます。

代表的な例が大分県日出(ひじ)町のケースです。別府ムスリム教会が土葬墓地の建設を計画しましたが、地元住民から「水源が汚染される」「農産物に風評被害が出る」といった懸念から猛烈な反対運動が起きました。

科学的な水質調査で「問題なし」とされても、日本人の感覚に根付いた「土葬=不衛生、怖い」という心理的な拒否感は拭い難く、解決まで数年を要する泥沼の対立となりました。

国の指針なき「丸投げ」が生む混乱

この問題の最大要因は、国が外国人受け入れ(入口)には熱心である一方、彼らが日本社会で生涯を終えるためのインフラ整備(出口)を自治体や民間任せにしている点にあります。

厚労省は「土葬を禁止する法律はない」というスタンスですが、ガイドラインが存在しないため、自治体は住民感情を優先して許可を出さない傾向にあります。

移民先進国の欧州では、公営墓地の一角に「ムスリム区画」を設けるなどの対応が進んでいますが、日本では議論すら始まっていないのが実情です。

参考動画

まとめ

「労働力としては歓迎するが、隣に墓ができるのは困る」。

この土葬問題は、日本社会の多文化共生に対する本気度を問うリトマス試験紙と言えます。便利に働いてもらうだけではなく、彼らの信教の自由や尊厳ある死をどう保障するか。

これまでは「郷に入っては郷に従え(火葬しろ)」という論理が強かった日本ですが、永住外国人が増えるこれからの時代、互いの譲れない一線を理解し合い、国レベルでのルール作りと妥協点を見つけることが不可欠です。

関連トピック

特定技能制度: 人手不足の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格。事実上の移民解禁策とされる。

多文化共生: 国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとすること。

イスラム教の葬儀: 遺体を清め、白布で包み、メッカの方角に向けて土葬する。火葬は遺体の尊厳を損なう行為として厳禁。

NIMBY(ニンビー)問題: 「Not In My Back Yard(我が家の裏にはお断り)」の略。必要性は理解するが、自分の居住地域に施設が来ることに反対する住民心理。

関連資料

『移民の国・日本での「死」』: 増加する在日外国人の葬送問題に焦点を当てたドキュメンタリー書籍。

『隣人がイスラム教徒になったら』: 異文化理解の入門書として、生活習慣や宗教観の違いを解説した本。

『墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)』: 昭和23年に制定された法律。土葬自体は禁止していないが、運用実態との乖離が議論されている。

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