【2025年最新】CO2は「捨てる」から「使う」へ!CCUS技術の最前線と未来の生活を変える「炭素循環」とは?
CO2回収・活用(CCUS)の概要とパラダイムシフト
かつて二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の元凶として「減らす」か「埋める」しか選択肢がない厄介者でした。
しかし、2025年の現在、その常識は劇的に覆されようとしています。
CO2を大気や排ガスから回収し、燃料や化学製品、コンクリートなどの原料として再利用する「CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)」技術が、実用化のフェーズに入ったからです。
「ゴミ」だと思われていたCO2が、実は石油に代わる「新たな資源(炭素資源)」になる――。
本記事では、日本が世界をリードする最新のカーボンリサイクル技術の現場、夢の技術と言われるDAC(直接空気回収)、そしてこれらが私たちの暮らしや経済にどのような革命をもたらすのか、その最前線を徹底解説します。
CCUS技術の詳細:実用化が進む3つの分野
CCUSとは何か?CCSとの違い
まず基本となるのが、言葉の定義です。
これまで主流だったのは「CCS(Carbon Capture and Storage)」、つまりCO2を回収して地中深くなどに「封じ込める」技術でした。これは確実に隔離できますが、コストがかかるだけで利益を生み出しにくいという課題がありました。
そこで現在注目されているのが「CCUS」です。
最後の「U」は「Utilization(利用)」を意味します。
回収したCO2を、化学反応を使ってプラスチックに変えたり、燃料(e-fuel)にしたり、コンクリートに混ぜ込んで固定化したりして「使い回す」のです。
これにより、環境を守りながら経済的な価値も生み出す「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」が実現します。
日本の切り札「メタネーション」
日本政府やガス会社が今、最も力を入れているのが「メタネーション」です。
これは、工場などから回収したCO2と、水素を反応させて「合成メタン(e-methane)」を作り出す技術です。
合成メタンは、現在私たちが家庭で使っている「都市ガス」とほぼ同じ成分です。
つまり、ガス管やガスコンロ、給湯器といった既存のインフラを一切買い換えることなく、中身のガスだけを「CO2フリー」に置き換えることができるのです。
2025年現在、大阪ガスや東京ガスなどが大規模な実証実験を行っており、2030年の本格導入(ガス管への注入開始)に向けた最終調整が進んでいます。
「ガスを使うとCO2が出る」のではなく、「CO2から作ったガスを使う」時代の到来です。
建設業界の革命「CO2吸収コンクリート」
建設業界でもイノベーションが起きています。
通常、セメントを作る過程では大量のCO2が排出されますが、逆に「製造過程でCO2を吸わせる」技術が実用化されています。
鹿島建設などが開発した「CO2-SUICOM(スイコム)」などのカーボンネガティブコンクリートは、コンクリートが固まる際に大量のCO2を吸収・固定します。
これにより、ビルや道路を作れば作るほど、街の中にCO2を閉じ込めることができるようになります。
2025年の現在、公共工事や環境配慮型オフィスビルの建設現場で、実際にこの技術が採用され始めています。
夢の技術「DAC(Direct Air Capture)」の現在地
「排ガスから回収するなんて生ぬるい、空気中から直接吸い取ってしまえ」という発想で開発が進むのが、DAC(直接空気回収)技術です。
巨大な扇風機のような装置で大気を取り込み、フィルターでCO2だけを吸着させます。
欧米が先行していましたが、日本でもIHIなどのエンジニアリング企業が装置の小型化・高効率化に成功しています。
まだコストは高いものの、この技術が確立されれば、過去に排出してしまったCO2すら回収できるため、「ネガティブエミッション(排出量マイナス)」の切り札として期待されています。
課題は、回収に使うエネルギー自体をどう確保するかですが、地熱などの再生可能エネルギーと組み合わせるプラント設計が進んでいます。
次世代航空燃料「SAF」とCO2
飛行機は電気で飛ぶのが難しいため、脱炭素化が最も困難な分野と言われてきました。
ここで活躍するのが、CO2と水素から作る合成燃料を含む「SAF(持続可能な航空燃料)」です。
「CO2から作った灯油」で飛行機が飛ぶことは、もはや夢物語ではありません。
国産SAFの量産化に向けたプラント建設が各地で進んでおり、海外旅行に行っても「私の乗った飛行機はCO2を増やしていない」と胸を張れる日が近づいています。
参考動画:カーボンリサイクルの仕組み

まとめ:CO2は「ゴミ」から「資源」へ
CO2の回収と活用(CCUS)は、もはや実験室の中の話ではなく、巨大なビジネスマーケットへと変貌を遂げています。
日本は資源(石油やガス)を持たない国ですが、もしCO2を資源として活用できれば、国内でエネルギーや素材を自給自足する未来すら描けます。
もちろん、コストの低減や、反応に必要な水素の確保など課題は山積みです。
しかし、「CO2=悪」という単純な図式から脱却し、それを賢く使いこなす技術革新こそが、2050年のカーボンニュートラルを実現する唯一の道です。
私たちの生活の中で、「この商品のプラスチックは、空中のCO2から作られました」という表示を見かける日は、すぐそこまで来ています。
関連トピック
GXリーグ (Green Transformation League)
2022年に日本で発足した、脱炭素に挑戦する企業群が連携する枠組み。排出量取引の試行など、経済と環境の両立を目指すリーダーたちの集まりです。
ブルーカーボン (Blue Carbon)
森林(グリーンカーボン)だけでなく、海藻や海草など「海」の生態系が吸収・固定するCO2のこと。四方を海に囲まれた日本にとって重要な吸収源です。
水素社会 (Hydrogen Society)
CCUSを実現するには、CO2と反応させるための大量かつ安価な「水素」が不可欠です。水素インフラの整備は、CO2活用の大前提となります。
関連資料
書籍『カーボンリサイクルの現状と将来展望』 (シーエムシー出版)
専門的な技術解説から市場予測まで、最新のデータに基づきCCUSの全貌を網羅した、業界関係者必読の専門書です。
書籍『脱炭素ビジネスの最前線』 (日経BP)
技術面だけでなく、世界各国の政策や企業の投資動向など、ビジネス視点から脱炭素トレンドを読み解くための一冊です。
WEBサイト『資源エネルギー庁 カーボンリサイクルについて』
経済産業省が公開している公式情報。技術ロードマップや最新の政策支援状況が分かりやすくまとめられています。

