【初心者向け】なぜ「国の基金」は批判される?20兆円に膨張した仕組みと「無駄遣い」のカラクリをわかりやすく解説
「国の基金」の仕組みと現状
「国の基金(ききん)」という言葉をニュースでよく耳にするようになりました。「残高が20兆円を超えた」「無駄遣いの温床だ」と批判されていますが、そもそも基金とは一体どのような仕組みなのでしょうか?
実は、基金そのものが悪いわけではありません。本来は、数年にわたる大きなプロジェクトをスムーズに進めるための「便利な財布」のはずでした。
しかし、その便利さが仇となり、現在は「一度予算が入るとチェックが甘くなるブラックボックス」と化してしまっているのです。
本記事では、国の財政の基本ルールである「単年度主義」との関係から、なぜ基金だと無駄遣いが起きやすいのか、その構造的な欠陥と問題点を図解レベルでわかりやすく解説します。
詳細:なぜ税金が「塩漬け」にされるのか?
1. そもそも「国の基金」とは?仕組みを解説
国の予算には、大原則として「単年度主義(たんねんどしゅぎ)」というルールがあります。
これは、「4月1日から翌年3月31日までの1年間で、入ってきた税金を使い切りなさい」という決まりです。余ったからといって勝手に翌年に繰り越すことは、原則できません。
しかし、このルールには弱点があります。
- 「研究開発に5年かかる」
- 「災害復興で数年は支援が必要」
といった長期プロジェクトの場合、毎年予算を申請し直すのは非効率で、途中で予算が切れるリスクもあります。
そこで作られた例外が「基金」です。
国が独立行政法人や公益法人にお金をポンと渡し、「この財布(基金)に入れておくから、数年かけて自由に使っていいよ」とする仕組みです。これにより、年度をまたいで柔軟にお金を使えるようになります。
2. なぜ「無駄遣いの温床」になるのか?3つの構造的欠陥
「柔軟に使える」ということは、裏を返せば「監視が緩い」ということです。ここには3つの大きな落とし穴があります。
- ① 国会のチェックが届かない(ブラックボックス化): 通常の予算は、毎年国会で「何にいくら使うか」厳しい審議を受けます。しかし、基金は「お金を入れる時」だけ審議されれば、あとは基金を管理する法人の裁量で使えてしまいます。一度財布に入ってしまえば、国会議員の目も届きにくくなるのです。
- ② 「管理費」という固定費の垂れ流し: 基金を管理するために、事務局が置かれ、ビルの一室を借り、スタッフを雇います。たとえ事業の実績がゼロでも、この「事務所代」や「人件費」は毎年発生します。今回、会計検査院が指摘したのもこの点です。「何もしていないのに、管理費だけで数億円の税金が消えている」という事態が起きます。
- ③ 余っても返さない「塩漬け」: 通常の予算なら、使い残しは国庫(国の金庫)に返さなければなりません。しかし、基金は「来年使うかもしれないから」という理由で、プールし続けることができます。結果として、需要がなくなったのに10年も放置されている「死に金(塩漬け資金)」が大量発生します。
3. なぜ20兆円にまで膨らんだのか?
最大の要因は、コロナ禍や物価高対策での「補正予算(ほせいよさん)」です。
「緊急対策として◯兆円必要だ!」と巨額の予算が組まれましたが、使い道が細かく決まっていないため、「とりあえず基金に入れておこう」という処理が乱発されました。
官僚側にとっても、一度基金に入れてしまえば自分たちの権限で長く使えるため、予算獲得の手段として基金が好まれる事情があります。
結論:仕組みの「リセット」が必要
基金は、長期的な課題解決には必要なツールですが、現在の「作りすぎ・積みすぎ・チェックしなさすぎ」の状態は異常です。
「使わないなら返す」「期限を決めて解散する」という当たり前のルールを徹底し、ブラックボックス化した財布の中身を一度すべてテーブルの上に広げて点検する必要があります。
解説ニュースの参考動画
まとめ
「国の基金」とは、本来は行政をスムーズにするための「知恵」でした。しかし、監視の目が緩んだ結果、巨額の税金が滞留する「澱(よど)み」となってしまっています。
20兆円という金額は、消費税収の約1年分にも匹敵する規模です。増税の議論をする前に、まずはこの「見えない財布」にあるお金をきれいに掃除し、国民のために有効活用、あるいは返還することが求められています。
関連トピック
単年度主義の例外
基金のほかに「繰越明許費(くりこしめいきょひ)」など、翌年度に予算を回す仕組みはあるが、基金ほど長期間・自由には使えない。
公益法人・独立行政法人
基金の受け皿となる組織。官僚の天下り先となっているケースも多く、基金の存続が組織の存続(=天下りポストの維持)とリンクしているという「利権構造」の指摘もある。
事業仕分け
かつての民主党政権などで行われた、無駄な事業や基金を公開の場で議論し、廃止・縮小を判定する取り組み。現在の基金乱立を受け、再びこうした強力な見直し機能を求める声が上がっている。
関連資料
会計検査院レポート
各基金の収支状況や、不適切な管理事例が具体的に記された報告書。
行政改革推進会議議事録
有識者や大臣が、基金の見直しについてどのような議論をしているかを確認できる資料。

