生成AI「Grok」で拡散する性的ディープフェイクの衝撃。なぜGrokだけ?ChatGPTや他ツールの安全性とリスクを徹底比較
「Grokの性的ディープフェイク」の概要
「あの有名人のありえない画像」が、X(旧Twitter)で拡散されているのを見たことはありませんか?
イーロン・マスク氏が設立したxAI社の生成AI「Grok(グロック)」の新機能が、今、世界中で波紋を広げています。
これまで、多くの画像生成AIは厳格な「ガードレール(安全対策)」を設け、性的、暴力的、または実在の人物の偽画像生成をブロックしてきました。
しかし、Grokはこの制限が極めて緩く、著名人のディープフェイク画像が大量に生成・投稿される事態を招いています。
本記事では、Grokで何が起きているのかという現状、OpenAIやGoogleなど他社AIとの決定的な違い、そしてこれからの時代に私たちが知っておくべき「AIを利用する側の責任とリスク」について徹底解説します。
「Grokの性的ディープフェイク」の詳細
1. 「Grok」で何が起きているのか?
2024年8月、xAI社は画像生成機能を搭載した「Grok-2」をリリースしました。このAIは、Black Forest Labsが開発した高性能モデル「FLUX.1」を採用しており、極めてリアルな写真のような画像を生成できるのが特徴です。
しかし、リリース直後から問題となったのは、その「規制の緩さ」です。
生成された衝撃的な画像たち
ドナルド・トランプ氏やカマラ・ハリス氏などの政治家が不適切な行為をしている画像や、テイラー・スウィフト氏などの著名人が過激な衣装を着ている画像など、他のAIでは即座にブロックされるようなプロンプト(指示)が、Grokでは通ってしまうケースが多発しました。
イーロン・マスク氏は「表現の自由」を重んじる姿勢を示していますが、これが結果として、悪意あるディープフェイクやフェイクニュースの温床となっているという批判が殺到しています。
2. 他の生成AI(ChatGPTなど)では「問題ない」のか?
結論から言えば、「大手企業のクラウド型サービスはかなり安全だが、抜け道がないわけではない」というのが現状です。各社の対応を比較してみましょう。
① ChatGPT (DALL-E 3) / OpenAI
最もガードが堅いAIの一つです。
- 実在の人物: プロンプトに有名人の名前を入れると「拒否」されます。
- 性的・暴力的コンテンツ: 厳格なフィルターがあり、生成を拒絶します。
- 著作権: 特定のアーティストの画風を模倣する指示も拒否される傾向にあります。
② Midjourney(ミッドジャーニー)
高画質で人気ですが、コミュニティガイドラインが厳格です。
- NGワード: 性的・暴力的な単語が含まれると生成されません。
- 監視体制: 生成された画像は公開ギャラリーに並ぶため、相互監視が機能しており、違反者はアカウント停止(BAN)などの厳しい処分を受けます。
③ Adobe Firefly
クリエイター向けのツールであり、「権利クリアランス」を最優先しています。
- 学習データ: 著作権的にクリーンな画像のみで学習されており、公序良俗に反する画像が出力されにくい設計です。企業が最も安心して使えるAIと言えます。
④ Stable Diffusion(ローカル環境)
ここが一番の「落とし穴」です。
Stable Diffusionなどのオープンソースモデルを、自分のPC(ローカル環境)で動作させる場合、規制は「ユーザー次第」となります。
フィルターを解除したり、成人向けに調整された追加学習モデルを使用したりすれば、どのような画像でも生成できてしまいます。
現在、ネットに出回る悪質なディープフェイクの多くは、Grokか、このローカル環境で作られたものと推測されます。
3. 法的リスクと「見る側」の責任
Grokのようにツール側が緩いからといって、「ユーザーが何を作っても許される」わけではありません。
名誉毀損と肖像権侵害
実在の人物のわいせつな画像や、評判を落とすような画像を生成・公開することは、名誉毀損罪や侮辱罪、肖像権侵害に問われる可能性があります。日本でも、アイドルのディープフェイク動画を作成した人物が逮捕される事例が出ています。
フェイクニュースの拡散
「政治家が逮捕された」などの偽画像を拡散することは、社会を混乱させる行為として、プラットフォーム側からアカウント凍結されるだけでなく、偽計業務妨害などで法的責任を問われるリスクがあります。
4. 今後の世界はどうなる?
Grokの問題を受け、欧州(EU)やアメリカではAI規制法の適用や強化が議論されています。
「表現の自由」と「個人の尊厳・社会の安全」のバランスをどう取るか。
技術の進化に対し、法整備とモラルが追いついていないのが現状です。
将来的には、AIで生成された画像には目に見えない「透かし(ウォーターマーク)」の埋め込みが義務化されるなど、技術的な対策が進むと考えられます。
「Grokの性的ディープフェイク」の参考動画
「Grokの性的ディープフェイク」のまとめ
Grokによるディープフェイク問題は、AI技術の「暗部」を浮き彫りにしました。
他のAIツールは厳格な制限を設けていますが、技術がある以上、「作ろうと思えば作れてしまう」環境は完全には消えません。
重要なのは、ツールが何ができるかではなく、「私たちが何をしないか」という倫理観です。
面白半分で生成した画像が、誰かの人生を壊し、あなた自身の人生も法的に追い詰める可能性があることを、決して忘れてはいけません。
AIは創造性を広げる魔法の杖ですが、その使い道を誤れば凶器にもなり得るのです。
関連トピック
リベンジポルノ防止法: ディープフェイクも対象となり得る法律の解説と現状。
AI透かし技術(C2PA): 生成AI画像であると証明するための技術的標準規格について。
ディープフェイク検知ツール: 画像がAIで作られたものかを見抜くための最新ソフトやサイト紹介。
FLUX.1モデル: Grokに採用された画像生成AIモデルの性能と特徴。
関連資料
『ディープフェイクの衝撃 ―真実が揺らぐ時代のサバイバル』: AIによる偽情報社会をどう生き抜くかを説いた解説書。
『AI倫理』: 人工知能学会編集。AI開発者と利用者が守るべきモラルについての専門書。
セキュリティソフト: 最新のフィッシング詐欺や偽サイトから身を守るためのPC/スマホ対策。

