日常の判断を少し賢くする「統計学」の世界へようこそ。
皆さんの中には、「数学なんて社会で立つの?」と思っている人もいるかもしれません。しかし、統計学だけは別格です。
統計学は、あふれる情報に騙されず、損をしないための「最強の武器」になります。今回は、身近な3つの事例を使って、明日から使える統計的思考を紹介します。
1. 「平均点」の罠と「偏差値」の正体
テストが返ってきたとき、多くの人が気にするのが「平均点」です。「平均点より上だったから安心」「下だったからダメだ」と思っていませんか?実は、平均だけ見ていると真実を見誤ります。
事例:平均点が同じ「2つのクラス」
数学のテストで、A組もB組も平均点が50点でした。しかし、中身はこうです。
- A組: 全員が45点〜55点の間を取っている。
- B組: 0点の人もいれば、100点の人もたくさんいる。
あなたが「60点」を取った場合、どちらのクラスの方が「すごい」でしょうか?
答えは、A組で60点を取る方が「すごい(レアである)」と言えます。みんなが団子状態の中で頭一つ抜けているからです。一方、B組での60点は、もっと高い点数の人がたくさんいるため、そこまで目立ちません。
学び:標準偏差(データのばらつき)を知る
この「データの散らばり具合」を数字にしたのが標準偏差であり、それをさらに分かりやすく自分の位置(ランキング)として表したのが偏差値です。
- 平均値:みんなの真ん中。
- 標準偏差:みんなが平均からどれくらい離れているか。
「平均年収」などのニュースを見るときも注意が必要です。「一部の大金持ち」が平均を釣り上げているだけで、普通の人の感覚とは違う数字になっていることがよくあります。「平均=普通」とは限らないことを覚えておきましょう。
2. ガチャの「出現率1%」は「100回引けば当たる」ではない
スマホゲームのガチャで「SSR出現率1%」と書いてあるとします。「じゃあ100回引けば、確率的に1回は必ず当たるよね?」と思った人。それは統計学的な錯覚です。
事例:100回引いても当たる確率は約63%
「1%で当たる」ということは、「99%(0.99)でハズレる」ということです。
100回連続でハズレる確率は、以下のように計算します。
0.99 × 0.99 × … (100回掛ける) ≒ 0.366
つまり、100回引いても約37%の人は一回も当たりません。
逆に言うと、100回引いて少なくとも1回当たる確率は、
100% - 37% = 63%
学び:直感と数学はズレる
「100回引けば絶対当たる」と信じてお小遣いを突っ込むと、痛い目を見ます。
「確率は試行回数を増やせば収束する」というのは、「何万回、何億回と試せば1%に近づく」という意味であって、あなたの100回を保証するものではありません。この感覚を持っておくと、ギャンブルや無謀な賭けを避けることができます。
3. 「アイスが売れると水難事故が増える」の謎
データを見ると、「アイスクリームの売上」と「水難事故の件数」には強い相関関係(片方が増えると、もう片方も増える関係)があります。
では、水難事故を防ぐために「国はアイスの販売を禁止すべき」でしょうか?
事例:相関関係と因果関係の違い
もちろん、アイス禁止令なんて馬鹿げていますよね。なぜなら、アイスを食べたから溺れたわけではないからです。
ここには隠れた「第3の要因」があります。それは「気温(夏)」です。
- 気温が上がる(夏になる)。
- 暑いからアイスが売れる。
- 暑いから海や川に人が増え、事故も増える。
これらは、たまたま同時に起こっているだけ(相関関係)であり、原因と結果(因果関係)ではありません。
学び:隠れた犯人(交絡因子)を探せ
ニュースやSNSでは、この間違いがよく起こります。
- 「朝ごはんを食べる生徒は成績が良い」
(朝ごはんの効果かもしれないが、「家庭の生活リズムが整っていること」が本当の原因かもしれない) - 「ゲームを長時間する子は視力が悪い」
(ゲームが原因かもしれないが、「外遊びをしないこと」や「遺伝」が関係しているかもしれない)
「AだからBになった」という話を聞いたら、「本当にそうかな? 別の要因Cがあるんじゃない?」と疑うクセをつけましょう。
まとめ:統計学は「世界を正しく見るメガネ」
- 平均だけでなく「ばらつき」を見る(自分は集団のどの位置にいる?)。
- 確率は直感を裏切る(100回引いても3割以上は外れる)。
- 相関と因果を混同しない(それは原因?ただの偶然?)。
この3つを意識するだけで、ニュースの見え方や、お金の使い方、進路の選び方が少し変わるはずです。数字は嘘をつきませんが、数字の見せ方で人は嘘をつきます。
統計学という「メガネ」を磨いて、賢い選択ができるようになりましょう!

