【大人の教養】数字に騙されないための「生活統計学」3選
ニュースや広告で見る「数字」を、そのまま信じていませんか?
統計学は、複雑な数式を解くためだけの学問ではありません。あふれる情報の中から「嘘」を見抜き、損をしない選択をするための「現代の護身術」です。
今回は、高校数学レベルの知識があれば十分に理解できる、しかし大人の生活にこそ役立つ「統計的思考」を3つの事例で解説します。明日からの判断を変える、統計リテラシーを身につけましょう。
1. 「平均貯蓄額」に焦る必要はない
ニュースで「世帯の平均貯蓄額は1,800万円」といった数字を見て、「うちは全然足りない!」と焦ったことはありませんか?
実は、この「平均」という言葉には大きな罠があります。
事例:極端な大富豪の影響
ある5人のグループの貯金額が以下のようだったとします。
- Aさん:0円
- Bさん:10万円
- Cさん:50万円
- Dさん:100万円
- Eさん:10億円
この5人の「平均貯蓄額」を計算すると、約2億円になります。
しかし、A〜Dさんの4人は「自分たちの平均が2億」と言われても納得できませんよね。
学び:「中央値」を見るクセをつける
格差があるデータ(貯蓄、年収、不動産価格など)では、ごく一部の巨大な数字が平均値を釣り上げてしまいます。
生活実感に近い数字を知りたいときは、データを順に並べたときに真ん中に来る「中央値(ちゅうおうち)」を見るのが正解です。
上記のニュースの場合も、中央値を見れば「約400万円」など、より現実的な数字であることが多いのです。
「平均」は必ずしも「普通」ではない、と覚えておきましょう。
2. 健康情報の「リスク2倍」に踊らされない
「ある食品を食べると、ガンのリスクが2倍になる!」
こんな見出しを見たら、その食品を食べるのをやめますか? ここで冷静になるために必要なのが、「相対リスク」と「絶対リスク」の違いです。
事例:0.01%が0.02%になることの意味
「リスクが2倍(相対リスク)」という表現はインパクトがありますが、元の確率(絶対リスク)がどれくらいかによって意味が全く異なります。
- ケースA: 元の確率が30%で、それが2倍(60%)になる。
→ これは非常に危険です。絶対に避けるべきです。 - ケースB: 元の確率が0.001%で、それが2倍(0.002%)になる。
→ 確かに「2倍」ですが、実生活での影響は誤差の範囲かもしれません。
学び:「元の確率は何%?」と問いかける
不安を煽るニュースの多くは、「何倍になったか(相対変化)」ばかりを強調し、「実際に何%の人がなるのか(絶対確率)」を隠す傾向があります。
「2倍」という言葉を見たら、「で、元の確率は何%なの?」とツッコミを入れる視点を持ちましょう。
3. 「成功者の法則」が役に立たない理由
書店には「私はこれで成功した」という本が並び、SNSではインフルエンサーが「この方法で稼げた」と発信しています。
しかし、その真似をしても同じように成功する確率は、あなたが思うよりずっと低いです。これを「生存者バイアス」と呼びます。
事例:沈んだ船は語らない
昔、ある軍隊が「戦闘から帰還した飛行機」を調査し、弾痕(銃弾の跡)が多い部分を補強しようとしました。
しかし、統計学者は逆を提案しました。「弾痕がない部分を補強すべきだ」と。
なぜなら、「帰還できた飛行機」の弾痕は、そこを撃たれても墜落しなかった証拠だからです。本当に致命的な場所に被弾した飛行機は、帰還できずに墜落してしまった(データとして残っていない)のです。
学び:「見えていない敗者」を想像する
ビジネスや投資の成功談も同じです。
「この方法で成功した人」は本を書きますが、「同じ方法を試して失敗した数千人」は本を書きません。私たちの目には「成功事例(生存者)」しか入ってこないのです。
成功談を参考にするときは、「同じことをやって失敗した人は、墓場にどれくらいいるだろう?」と想像力を働かせることで、過度な期待や無謀なリスクを避けることができます。
まとめ
- お金の話は「平均」ではなく「中央値」で見る。
- 健康のリスクは「倍率」だけでなく「元の確率」を確認する。
- 成功法則は「見えていない失敗者(生存者バイアス)」を考慮する。
この3つの視点は、高校数学レベルの知識で十分に使いこなせます。
統計学は、あなたを守る盾です。数字のトリックを見破り、より賢い選択を積み重ねていきましょう。

