私たちの日常は、広告の数字や世間の通説であふれています。
しかし、統計的な視点を持つことで、「なぜそう感じるのか?」「その数字の本当の意味は?」という裏側が見えてきます。
今回は、買い物や健康管理ですぐに役立つ、新しい3つの事例を紹介します。
1. なぜ「Lサイズ」がお得に見えるのか?(おとり効果)
映画館やカフェで、つい一番高いサイズを注文してしまうことには、統計的な心理トリックが関係しています。
事例:ポップコーンの価格設定
ある映画館で、ポップコーンを売っています。
- Sサイズ: 300円
- Lサイズ: 700円
これだと、「700円は高いな」と感じて、多くの人がSサイズを選びます。
しかし、店側が「Mサイズ:650円」を追加すると、急にLサイズが売れ始めます。なぜでしょうか?
解説:比較対象の罠
Mサイズ(650円)の登場により、脳内の比較基準が変わります。
- 「SとLの比較」ではなく、「MとLの比較」に焦点が移ります。
- 「たった50円足すだけでLになるなら、Lの方が圧倒的にお得だ!」と錯覚します。
このMサイズは、売るためではなく「Lを選ばせるための引き立て役(おとり)」として配置されているのです。
松竹梅の「竹」や、微妙な価格の中間商品を見たときは、「これは高い方を選ばせるための罠ではないか?」と疑い、「自分に必要な量はどれか?」という原点に戻りましょう。
2. 「民間療法で風邪が治った」の正体(平均への回帰)
「風邪を引いた時に〇〇を食べたら治った!これは効く!」という体験談はよくありますが、統計学的には別の説明がつきます。
事例:謎の健康ドリンク
あなたはひどい風邪を引いて、体調が最悪(ピーク)です。
そこで、友人に勧められた「特製オニオンドリンク」を飲みました。
翌日、体調が劇的に良くなりました。「あのドリンクのおかげだ!」と信じ込みます。
解説:自然な波を「効果」と勘違い
病気の症状や運の良し悪しには「波」があります。
統計学には「平均への回帰」という法則があり、「極端に悪い状態の次は、自然と普通の状態に戻っていく」傾向があります。
つまり、「体調が最悪(底)」の時に何をしようが、翌日は自然治癒力で「マシになる(平均に戻る)」確率が高いのです。
ドリンクを飲まなくても、おそらく治っていました。
「最悪の時に試したもの」の効果は過大評価されがちです。本当に効果があるかを知るには、「何もしなかった場合(対照群)」との比較データが必要です。
3. 「事故の8割は自宅付近で起きる」は嘘?(ベースレートの無視)
交通安全の標語などでよく聞くこの数字。これを聞いて「家の近くは危険だ」と思うのは早計です。
事例:事故発生マップ
「自動車事故の80%は、自宅から半径5km以内で起きている」というデータがあります。
これを見て、「遠出をするより、近所への買い物が一番危険なんだ」と結論づけました。
解説:そこにいる時間が長いだけ
これは場所の危険度が高いわけではありません。
単に、人生の運転時間の90%以上を「自宅から半径5km以内」で過ごしているから、事故もそこで起きる回数が多いだけです。
もし「1km走ったあたりの事故率」で計算し直せば、見知らぬ土地や高速道路の方が危険な可能性が高いでしょう。
「発生件数が多い」=「危険」とは限りません。「そこにいた時間(分母)」を考慮しないと、本当のリスクは見えてきません。
まとめ:数字の「背景」を想像しよう
今回の3つの事例は、いずれも「提示された数字」をそのまま受け取ると判断を誤るケースです。
- おとり効果:選択肢が増えたら「誘導」を疑う。
- 平均への回帰:「どん底」の次は自然に良くなる。
- ベースレート:「件数」ではなく「割合・頻度」で考える。
これらを意識して、賢い選択ができるようになりましょう。

