要約:本レポートでは、2026年に急浮上した内閣官房における会議体乱立問題(いわゆる「88の会議」)の実態と、それに対する政府の刷新策を詳細に分析します。特に、保守層から期待される「高市政権」的な行政改革のアプローチが、どのように「ポーズだけの政治」を打破し、実効性のある統治機構(サンセット条項の導入など)へとつながるのかを考察します。
1. 序論:2026年、「増殖する会議」への審判
1.1 問題の所在:88の会議体が意味するもの
2026年1月、日本政府、具体的には内閣官房および内閣府において、長らく放置されてきた行政課題に対する抜本的な「外科手術」が開始されたとの報道がなされました。その核心は、政府内に乱立する有識者会議や懇談会の整理・統合であり、具体的には休眠状態にある会議体の洗い出しと、一定期間開催実績のない組織を自動的に廃止する規定(サンセット条項)の導入検討です。
報道によれば、内閣官房・内閣府が所管する会議体の数は、2015年時点の「39」から、2026年初頭には「88」へと倍増しています。この「88」という数字は単なる統計上の増加ではなく、過去10年以上にわたる日本政治の統治構造の変容、すなわち「官邸主導(Kantei-led)」政治の副作用が限界点に達したことを示唆するクリティカル・マスであると考えられます。
1.2 世論の批判構造:「ポーズ」としての行政
本報告書が扱う中心的な問いは、国民の間で根強く囁かれる「作っただけでやる気のない無駄」「歴代政権のやってるポーズ」という痛烈な批判の妥当性です。この批判は、行政学における「象徴的政策(Symbolic Policy)」の概念と共鳴します。すなわち、困難な政治課題(少子化、地方創生、経済安全保障など)に直面した政権が、実効性のある解決策を即座に提示できない場合、「会議を設置する」という行為そのものを「対策」として提示し、有権者に対して「政府は動いている」というシグナルを送る手法です。
批判にある通り、会議の設置が目的化し、報告書が出された瞬間に政治的熱量が失われ、後は野ざらしとなる「休眠会議(Zombie Committees)」の累積は、行政リソースを不当に占有し続けています。
1.3 調査の目的と構成
本報告書では、2026年1月の報道背景にある事実関係を詳細に分析するとともに、以下の観点から深層的な考察を行います。
- 歴史的・定量的分析:なぜ会議は倍増したのか。その政治的力学。
- 「高市政権」への期待の正体:高市早苗氏の政策的立場や過去の発言を踏まえ、保守派層が抱く「行政改革」と「強力な国家機能」の同居への期待を分析する。
- サンセット条項の制度設計:過去の失敗事例との比較を通じた実効性の検証。
- 官僚機構の疲弊と再生:会議乱立がもたらす職員の負担と、そこからの脱却が意味する統治機能の回復。
2. 会議体増殖のメカニズムと「ポーズ」の政治学
2.1 「官邸主導」の功罪と会議インフレーション
2015年の「39」から2026年の「88」への急増は、第2次安倍政権以降の統治スタイルの変遷と完全にリンクしています。伝統的な「各省縦割り」の弊害を打破するために強化された内閣官房は、重要政策の調整ハブとしての機能を肥大化させました。「一億総活躍」「人生100年時代」「デジタル田園都市」「新しい資本主義」――歴代政権が掲げたスローガンの数だけ、内閣官房には「本部」や「実現会議」が設置されました。
| 年代 | 政治的背景 | 会議体の性質 | 増加の要因 |
|---|---|---|---|
| 2015年頃 | 第2次~第3次安倍政権 | 経済再生、安保法制 | 官邸主導の確立期。重要課題に絞ったトップダウン型会議が中心。 |
| 2020年頃 | 菅・岸田政権期 | デジタル、グリーン、分配 | 「聞く力」や各省横断課題の微細化。テーマが拡散し、小規模な懇談会が乱立。 |
| 2025-26年 | ポスト岸田・連立再編期 | 経済安保、AI、少子化 | 過去の遺産(レガシー)会議が残存したまま、新規課題(AI・安保)の会議が上乗せされる「地層化」現象。 |
このプロセスにおいて、会議設置は「ポーズ」としての機能を色濃く帯びるようになります。例えば、ある社会問題がメディアで話題になると、即座に担当大臣が「有識者会議を立ち上げ、早急に検討する」と発表する。この時点で政治的な「ガス抜き」は完了し、会議の実質的なアウトプット(政策効果)への関心は二の次となる傾向が強まりました。
2.2 「休眠会議」の発生メカニズム
なぜ不要になった会議は廃止されないのでしょうか。ここには官僚制特有の「無謬性」と「既得権益化」の論理が働きます。一度設置された会議を廃止することは、「その政策課題が解決した(解決していない場合は、その政策が失敗だった)」と認めることに等しいと受け取られるリスクがあります。また、関連省庁にとっては、内閣官房に自省に関連する会議が存在することは、予算獲得や権限維持のための「足場(Bridgehead)」となるため、省益の観点から廃止に抵抗する力学が働きます。
結果として、年に一度も開かれない、あるいは持ち回り決裁(メール等での承認)のみで生存し続ける「植物状態の会議」が累積し、職員は名簿の管理や予算要求の事務作業だけに追われることになります。
3. 「高市政権」への期待と行政改革のイデオロギー
3.1 「無駄の削減」と「積極財政」の矛盾と統合
読者の意見に含まれる「改善・推進、高市政権への期待」というフレーズは、2020年代中盤における日本の保守層の政治的願望を象徴しています。ここで言う「高市政権」的アプローチとは、単なる「小さな政府」論ではありません。高市早苗氏の過去の主張や総裁選での政策を分析すると、以下の二つのベクトルが共存していることが分かります。
- 行政の無駄に対する厳格な姿勢:高市氏は、租税特別措置(租特)の透明化を巡る議論において、減収額が10年間で約2倍に膨れ上がっている現状を指摘し、効果検証の不透明さを批判しています。これは、漫然と続く既得権益や、効果の薄いバラマキ的補助金、そして形骸化した会議体に対する強力な「整理整頓」への期待に直結します。
- 国家機能の強化(クライシス・マネジメント):一方で、高市氏は経済安全保障やサイバー防御、先端技術育成には巨額の投資を惜しまない姿勢を示しています。
つまり、国民が期待しているのは「すべての会議をなくせ」ということではなく、「役に立たないリベラルな・あるいは形だけの会議(ポーズ)を全廃し、そのリソースを真に国家の存立に関わる領域(安保・経済成長)に集中せよ」という選別の論理です。
3.2 2026年改革における「高市的フィルタリング」
報道されている2026年の会議整理において、この「選別」の論理がどのように適用されようとしているのでしょうか。資料から読み取れるのは、安全保障や国家戦略に関わる会議体はむしろ強化・実質化されているという事実です。
強化される会議(残る会議)
- 経済安全保障関連:特定機能病院(88箇所)の指定や、国境周辺(沖縄・鹿児島・北海道)のインフラ監視に関わる調整会議。これらは「会議」というよりも、実働部隊の指揮命令系統に近いものです。
- 知的財産・AI戦略:「知的財産推進計画2025」に基づき、AI時代の著作権や産業競争力を議論する場。これらは国際競争に直結するため、政治的優先度が高くなります。
淘汰される会議(消える会議)
- 過去の政権が立ち上げた、抽象的なテーマ(例:「輝く未来のための懇談会」のような漠然とした社会啓発系)や、既に法制度化が終わり役割を終えた検討会。
つまり、2026年の改革は、単なる数合わせの削減ではなく、政府の機能を「調整・配慮型」から「危機管理・突破型」へとシフトさせるための構造改革であり、これが「高市政権への期待」という文脈で語られる理由です。
4. サンセット条項と自動廃止の制度設計
4.1 過去の失敗と「5年ルール」の教訓
政府が検討している「自動廃止規定(サンセット条項)」は、日本行政史において全く新しい概念ではありません。小泉政権下の2006年(平成18年)時点で、行政改革推進会議において既に議論されていました。当時は補助金や特殊法人に対し「原則5年以内」の終期を設定することが提言されました。
しかし、2026年まで問題が解決しなかった理由は、例外規定の乱用です。「原則5年」としても、「必要があると認められる場合」という抜け穴を通じて延長が常態化したためです。今回の2026年改革が画期的であるとすれば、それは「再延長のハードルを極端に上げる」あるいは「長期間(例えば2年)開催実績がない場合は問答無用で廃止する」という、裁量の余地を排したアルゴリズム的な廃止規定を導入できるかにかかっています。
4.2 「自動廃止」の実務的メリット
官僚の視点から見ると、実はサンセット条項は「救済措置」でもあります。通常、官僚が自発的に「大臣、この会議はもう不要です」と進言することは、大臣の顔に泥を塗る行為になりかねず、極めて困難です。しかし、「内閣官房の規定により、2年間未開催のため自動消滅しました」というルールがあれば、誰も責任を負うことなく、自然死させることができます。
これは、職員の心理的・政治的負担を減らしつつ、行政の肥大化を抑制する唯一の実効的な手段と言えます。報道にある「職員の負担減」は、単なる残業時間の削減だけでなく、こうした「不毛な忖度業務」からの解放を意味しています。
5. 職員負担の軽減と行政の質の転換
5.1 「88」の会議を支える黒衣の代償
「会議」という言葉から一般市民が想像するのは、有識者が集まって2時間議論する光景だけかもしれません。しかし、その裏側にある行政コストは膨大です。内閣官房における1つの有識者会議(特に首相や官房長官が出席するもの)を開催するためには、以下のようなプロセスが必要となります。
- 人選と委嘱:学者、財界人などのスケジュール調整と身辺調査。
- 根回し(事前調整):会議でサプライズが起きないよう、発言内容の事前調整や、各省庁との文言調整。これだけで数週間を要します。
- 資料作成:膨大なデータを集め、誰も傷つけないような絶妙な表現の資料を作成する。
- 議事録と事後処理:発言内容の確認と公開作業。
会議が88個あるということは、内閣官房の限られたエリート職員たちが、本来行うべき「国家戦略の立案」や「緊急事態対応」ではなく、これら「会議ロジ(Logistics)」に忙殺されていることを意味します。若手官僚の離職率増加が社会問題化する中、この「ブルシット・ジョブ(無意味な仕事)」の削減は、統治機能の維持にとって喫緊の課題です。
5.2 「聞く力」から「決める力」へ
今回の整理縮小は、行政スタイルの転換を示唆しています。従来の「有識者会議」偏重は、合意形成を重視し、批判を分散させる「ボトムアップ・偽装」型の意思決定でした。これに対し、会議を減らすということは、政治家と官僚が直接責任を持って政策を決定する「トップダウン・直結」型への回帰を意味します。これは、読者の意見にある「やる気のない無駄」を排除し、政治主導で迅速に物事を進める体制への渇望に応えるものです。
6. 詳細事例分析:整理されるべきもの、強化されるもの
6.1 経済安全保障と特定機能病院
経済安全保障法制に関する議論の中で、特定機能病院88カ所の指定について触れられています。ここで重要なのは、会議の数が減ったとしても、国家が管理すべき「ネットワーク」は拡大しているという逆説です。沖縄や北海道などの国境周辺地域における医療インフラの維持や、重要データの保護(内視鏡画像データ等の利活用と保護)に関する議論は、単なる諮問機関ではなく、実務的な調整会議として残存・強化されます。これは「高市政権への期待」である「強い国家」の具現化であり、無駄の削減とは対極にある「必要な投資」に分類されます。
6.2 知的財産・DX戦略の現在地
「知的財産推進計画2025」に関連する会議群は、デジタル人材の育成やAI時代の特許制度を扱います。これらは2026年時点での最重要課題であり、ここでの議論は活発であると推測されます。改革の対象となるのは、こうした最前線の会議ではなく、例えば「一昔前のIT戦略」や「アナログ規制撤廃」など、既にデジタル庁等の定常業務に移管されるべきにもかかわらず、内閣官房に残っている古い会議体です。これらを整理統合(スクラップ・アンド・ビルド)し、AIやサイバー防衛といった新規課題にリソースを集中させることが、2026年改革の本質です。
7. 結論:ポピュリズムを超えた行政構造改革へ
7.1 読者の問いへの回答
「作っただけでやる気のない無駄!歴代政権のやってるポーズ?」という批判は、データ(88への急増、租特の不透明な拡大)に照らして正当なものです。政府が会議体を乱立させた背景には、問題解決そのものよりも、「取り組んでいる姿勢」を見せることへの政治的インセンティブが強く働いていました。
しかし、2026年1月の報道にある「休眠会議の整理」と「自動廃止規定の検討」は、この「ポーズの政治」に対する自己批判的な是正措置であると評価できます。それは単なるコストカットではなく、行政の意思決定プロセスを正常化し、官僚機構の機能不全(パンク状態)を解消するための生存戦略です。
7.2 「高市政権」的改革の展望
この改革が成功するか否かは、単に会議の数が88からいくつに減ったかという数字ではなく、「減らした結果、政府の意思決定スピードが上がったか」にかかっています。高市早苗氏やその支持層が期待する行政像とは、無数の会議でお茶を濁す政府ではなく、明確な国家戦略に基づき、必要な領域(安保、先端技術)には果断にリソースを投じ、不要な領域からは撤退するメリハリの効いた政府です。
サンセット条項の導入は、政府自身に「常にその会議の必要性を証明し続けること」を義務付けるメカニズムです。これが厳格に運用されれば、日本の行政は「過去の経緯」に縛られる体質から脱却し、現在の危機に即応できる体制へと変貌する可能性があります。2026年の改革は、その試金石となる歴史的な転換点であると結論付けられます。
7.3 今後の監視ポイント
- 削減の質:数合わせのために、重要だが地味な会議(人権擁護や弱者支援など)ばかりが切られ、政治家の利権に関わる会議が温存されていないか。
- 新規設置の抑制:古い会議を消すと同時に、新しい会議を安易に作らせない「入り口規制」が導入されるか。
- 事後検証:廃止された会議が過去に出した提言が、実際に政策として実行されたのか、それとも提言そのものが無視されたのか(=完全な無駄だったのか)の総括が行われるか。
これらの監視を通じて初めて、「ポーズ」ではない真の行政改革が完遂されることになります。
補遺:関連データ・資料分析
表2:行政改革における主な論点と対立軸
| 論点 | 従来の行政(~2025) | 2026年改革・高市的アプローチへの期待 |
|---|---|---|
| 会議の目的 | 合意形成、ガス抜き、アリバイ作り(ポーズ) | 即断即決、戦略策定、責任の明確化 |
| 存続基準 | 政治的配慮、省庁の縄張り | 実効性、国益への直結度、稼働実績(サンセット条項) |
| 財政規律 | 租税特別措置の恒常化・拡大 | 透明化、効果検証に基づくスクラップ・アンド・ビルド |
| 安全保障 | 平和主義的配慮、経済との分離 | 経済安全保障の統合、重要インフラの国策管理 |
参考文献・出典

