⏰人類滅亡への秒読み?終末時計(Doomsday Clock)の警告と複合リスクの深層
終末時計(Doomsday Clock)の概要
終末時計(Doomsday Clock)とは、核戦争や気候変動など、人類の生存に対する地球規模の脅威を象徴的に表す架空の時計です。
アメリカの科学誌『原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists:BAS)』の科学者たちが1947年に創設しました。
深夜0時を「人類滅亡の瞬間」と見立て、世界情勢の危機が高まるごとに針を進め、危機が遠ざかれば針を戻します。
当初は核戦争の脅威を警告する目的でしたが、2007年以降は気候変動、さらに近年は生物兵器や人工知能(AI)のリスクなども判断材料に加えられています。
この時計は、単なる予言ではなく、人類が直面する複合的な危機に対する科学者の切迫した警告として機能しています。
終末時計(Doomsday Clock)の詳細
終末時計の時刻は、ノーベル賞受賞者を含む専門家で構成されるBASの**科学安全保障委員会(SASB)**によって、毎年1月に過去1年間の世界情勢を総合的に評価した上で決定・発表されます。
1. 終末時計の歴史と主な時刻の変動
終末時計は、1947年の登場時に「7分前」でスタートしました。その後の主な時刻の変動は、冷戦下の核開発競争と国際的な軍縮の歴史を反映しています。
最短時刻(2023年以降): 90秒前。ロシアによるウクライナ侵攻、核兵器使用のリスク増大、気候変動の深刻化、AI技術の悪用懸念などが複合的に考慮され、史上最も短い残り時間となりました。
最長時刻(1991年): 17分前。冷戦が終結し、米ソ間で戦略兵器削減条約(START)が調印されるなど、核軍縮が最も進展した時期に設定されました。
危機的な時刻(1953年、2018年): 2分前。1953年は米ソが水爆実験に成功し核開発競争が激化した時期、2018年は核軍縮の停滞と気候変動の悪化により危機が再認識された時期です。
特に2020年以降は、それまでの「分単位」から「秒単位」で表示されるようになり、人類が前例のない危機の時代に突入したことが象徴的に示されています。
2. 終末時計の針を進める主な脅威
終末時計の時刻は、複合的なグローバルリスクによって決定されます。主な要因は以下の通りです。
核兵器のリスク
依然として世界には大量の核兵器が存在し、大国間の対立(例:米ロ間の軍縮条約の失効、ウクライナ侵攻)や、核保有国の増加(例:北朝鮮の核・ミサイル開発)により、偶発的な核戦争のリスクが高まっています。
気候変動の危機
温室効果ガスの排出量が増加し続け、地球の平均気温が過去最高を更新するなど、熱波、洪水、干ばつといった極端な気象現象が世界中で深刻化しています。国際的な具体的な対策の遅れが、大きな懸念材料です。
破壊的技術と偽情報
近年、人工知能(AI)の急速な進化が新たな脅威として加わりました。
AIが自律的な兵器システムに利用されるリスクや、AIによって生成された**偽情報(フェイクニュース)**が社会の分断や不信感を助長し、国際的な協力体制を崩壊させる危険性が指摘されています。
3. 終末時計の意義と私たちの行動
終末時計は、人類に対する絶望的な未来を示すものではなく、行動を促すための警鐘です。
時計の針は、人々の意識と行動によって戻すことが可能です。過去に冷戦終結など国際的な協力が進んだ際には、針が大きく戻されました。
科学者たちがこの時計を通じて私たちに求めているのは、核軍縮の推進、気候変動対策の強化、そして新たな技術の倫理的な管理に関する国際的な対話と協力です。
終末時計(Doomsday Clock)の参考動画
終末時計(Doomsday Clock)のまとめ
終末時計が示す残り時間は、人類が自らの手で未来を変えることができる猶予期間を意味しています。
2025年時点(執筆時)で過去最短の危機的状況が続いていますが、これは「世界が終わる」という運命論ではなく、「今すぐに行動しなければならない」という明確な警告です。
核兵器の廃絶、再生可能エネルギーへの転換、そしてAIなどの新技術を平和と人類の福祉のために活用するための国際的なルール作りが急務です。
私たち一人ひとりが、これらの地球規模の危機を「自分ごと」として捉え、政治への働きかけや、持続可能なライフスタイルへの転換を通じて、時計の針を午前0時から遠ざける努力を続ける必要があります。
終末時計(Doomsday Clock)の関連トピック
原子力科学者会報(BAS): 終末時計を創設・運営しているアメリカの科学誌で、核問題や地球規模の危機に関する議論を牽引しています。
気候危機時計: 終末時計とは別に、地球の平均気温上昇をパリ協定の目標内に抑えるために残された時間をカウントダウン形式で表示する時計です。
核軍縮: 核兵器の削減と最終的な廃絶を目指す国際的な取り組みで、終末時計の針を戻すための重要な要素の一つです。
人工知能(AI)の倫理: AI技術がもたらす便益とともに、自律型兵器や偽情報拡散などのリスクを管理し、倫理的な利用を確立するための国際的な議論です。
相互確証破壊(MAD): 核抑止論の根幹をなす概念で、核兵器を持つ大国同士が、報復によって相互に破滅することを確信し合うことで、核戦争を思いとどまる状態を指します。
終末時計(Doomsday Clock)の関連資料
『原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)』: 終末時計が表紙を飾る科学誌で、オンラインでも危機に関する専門家の論考を読むことができます。
『ひろしまレポート』: 広島県が公表する核軍縮・不拡散の動向に関する報告書で、核兵器のリスクを理解する上で重要です。
『IPCC報告書』: 気候変動に関する政府間パネルの報告書で、気候危機の科学的根拠と深刻さを理解するための最も重要な資料です。
『核兵器の終焉』: 核兵器の歴史、抑止論、廃絶への道のりについて論じた書籍です。
この動画は、2023年に終末時計の残り時間が過去最短の90秒になったことを伝えるニュース映像で、針が進んだ主な理由を分かりやすく解説しています。

