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ドーピングとは?スポーツ界の根幹を揺るがす薬物使用の仕組み、禁止理由、超厳格な検査体制を徹底解説!

スポーツ
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ドーピングとは?スポーツ界の根幹を揺るがす薬物使用の仕組み、禁止理由、超厳格な検査体制を徹底解説!

「ドーピング」の概要

ドーピング(Doping)とは、スポーツの競技能力を向上させる目的で、薬物を使用したり、特殊な物理的手法を用いり、あるいはそれらの使用を隠蔽したりする全ての行為を指します。

競技における「公平性(フェアプレー)」の原則、選手の「健康被害」、そして「スポーツの価値」を守るため、世界的に厳しく禁止されています。

ドーピングが疑われる場合に行われるドーピング検査は非常に厳格で、意図的でなくても禁止物質が体内に検出された場合、「アンチ・ドーピング規則違反」として重い制裁が課されます。

この問題に取り組むのが、国際的な統括機関であるWADA(世界アンチ・ドーピング機構)と、日本国内のJADA(日本アンチ・ドーピング機構)です。

「ドーピング」の詳細

ドーピングは、単なるルール違反ではなく、スポーツの根幹を揺るがす重大な倫理的・医学的問題として捉えられています。

ドーピングが禁止される3つの理由

なぜ、自分の身体に何を使うかを選手個人の自由に任せてはいけないのでしょうか。アンチ・ドーピングの活動は、主に以下の3つの観点から正当化されています。

1. 公平性(フェアプレー)の原則

ドーピングは、選手が持つ本来の能力を超えた不当な優位性を獲得する行為であり、スポーツが持つ「公正な競争」という原則を破壊します。ドーピングが容認されれば、競争は薬物開発競争へと変質し、努力や才能といったスポーツ本来の価値が失われてしまいます。

2. 選手の健康保護

ドーピングに用いられる禁止薬物(特に筋肉増強剤など)の多くは、重篤な副作用や健康被害をもたらします。例えば、心臓病、肝臓障害、精神障害、ホルモン異常などを引き起こすリスクがあり、最悪の場合、選手の命を危険に晒します。アンチ・ドーピング活動は、選手の身体を守るための医療的な側面を持っています。

3. スポーツの精神と倫理

オリンピズムに代表されるように、スポーツは人類の相互理解や友愛の精神を広げるという文化的役割を担っています。ドーピングは、このスポーツが持つ精神的、倫理的な価値を損なう行為であり、スポーツへの信頼を失墜させます。

ドーピングの主な種類と禁止物質

世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は毎年「禁止表国際基準(Prohibited List)」を公表し、禁止される薬物と方法を明確に定めています。これらは「常に禁止される物質」「競技会時のみ禁止される物質」「特定の競技でのみ禁止される物質」に分類されます。

  • 筋肉増強剤(アナボリック・ステロイドなど): 筋肉量を増加させ、筋力とパワーを劇的に高める作用があるため、最も広く使用される禁止物質です。

  • ペプチドホルモン、成長ホルモンなど: エリスロポエチン(EPO)のように赤血球を増やし持久力を高めるものや、ヒト成長ホルモン(HGH)のように筋力増強効果があるものなどがあります。

  • 血液ドーピング: 自分の血液を採取し、体外で保存した後に競技直前に輸血することで、酸素運搬能力を高める手法です。薬物ではない物理的な方法ですが、これも禁止されています。

  • マスキング剤: ドーピング検査で禁止物質が検出されるのを隠蔽するために使用される薬物です。これもまた禁止行為とみなされます。

ドーピング検査の仕組みと厳格なプロセス

ドーピング検査は、競技の公平性を保つため、非常に厳格な手順(ドーピング・コントロール・プロセス)で行われます。

1. 検査対象者の選定(通知)

検査は、競技会中だけでなく、競技会外(抜き打ち検査)でも行われます。検査員(ドーピング・コントロール・オフィサー)は、選定された選手に検査対象となったことを正式に通知します。選手は通知後、検査員から常に監視され、検体採取場所へ移動するまで視界から離れることはできません。

2. 検体(尿・血液)の採取

検体採取は、同性の検査員の立ち会いのもと、不正がないかを確認しながら行われます。選手は、用意された未開封のキットの中から自ら検体採取容器を選び、密室ではない状態で採尿します。この際、選手は検査員に検体が自分のものであることを示すために、尿が排出される瞬間を直接目視させなければなりません。

3. 検体の分割と封印

採取された尿は「A検体」と「B検体」の2つに分割され、選手自身の手で封印されます。これは、後の分析段階で不正がないことを保証するためです。

4. 分析と裁定

A検体はWADAが認定した検査機関で分析されます。もしA検体から禁止物質が検出された場合、選手はB検体の再検査を要求できます。B検体からも検出された場合、アンチ・ドーピング規則違反が確定し、資格停止などの制裁が科されます。

知っておくべき「うっかりドーピング」

ドーピング規則違反は、意図的であるかどうかに関わらず、選手本人の責任となります。

特に問題となるのが「うっかりドーピング」です。これは、選手が風邪薬やサプリメント、海外で食べた肉などに禁止物質が含まれていることを知らずに摂取してしまうケースです。

海外の肉には、牛の成長を早めるために投与された禁止物質が残っている場合があります。

治療目的で禁止物質を含む薬が必要な場合は、事前に「TUE(治療使用特例)」という申請手続きを行い、承認を得る必要があります。

選手やその関係者は、日頃から使用する全ての薬やサプリメントについて、細心の注意を払うことが求められます。

参考動画

まとめ

ドーピングは、スポーツの「公平性」「健康」「倫理」という3つの柱を脅かす深刻な問題です。

アンチ・ドーピングの活動は、WADA、JADA、そしてスポーツ界全体が連携して、厳格な検査と啓発活動を通じてクリーンなスポーツを守るために行われています。

選手は、競技能力を向上させるために安易に薬物に頼る誘惑に打ち勝ち、自身の健康とスポーツの価値を守る責任があります。

そして私たち観客もまた、ドーピングのリスクや検査の仕組みを理解し、フェアプレーの精神を支持することが、スポーツの未来を支えることに繋がるでしょう。

関連トピック

WADA(世界アンチ・ドーピング機構): Antidoping Agencyの略。国際的なアンチ・ドーピング活動を統括する独立した機関で、禁止リストの作成や世界共通ルールの策定を行います。

JADA(日本アンチ・ドーピング機構): WADAと連携し、日本国内におけるアンチ・ドーピング活動(検査、啓発、教育など)を実施する中心的な組織です。

TUE(治療使用特例): 選手が病気や怪我の治療のために、禁止物質を含む薬を服用する必要がある場合に、事前にアンチ・ドーピング機構に申請し、承認を得る制度です。

禁止表国際基準(Prohibited List): WADAが毎年発行する、競技会時と競技会外で禁止される薬物や手法を一覧にした文書です。

関連資料

WADA発行の『禁止表国際基準』: ドーピング禁止薬物の一覧表です。JADAのウェブサイトなどから日本語版を入手できます。

『アンチ・ドーピングガイドブック』: JADAなどが発行する、選手や指導者、保護者向けにドーピングの基礎知識やリスク、TUEの手続きなどを分かりやすく解説した冊子です。

スポーツ栄養学に関する書籍: 筋力やパフォーマンスの向上を、ドーピングに頼らず、適切な食事やサプリメント、トレーニングによって実現する方法を学ぶための資料です。

オリンピック・パラリンピックのドキュメンタリー: 有名選手のドーピング違反が発覚し、メダルを剥奪された事例などが、スポーツの倫理的な側面を考える上で参考になります。

ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

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