巨大地震に備える新常識「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは?仕組みから私たちがとるべき行動まで徹底解説
概要:
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは、北海道から東北地方の太平洋沖にある「日本海溝・千島海溝」沿いでマグニチュード7クラスの地震が発生した際に発表される、巨大地震への注意喚起情報です。
この情報は、2022年12月16日から運用が開始された比較的新しい防災情報システムです。
過去の世界的な地震発生データを分析すると、大規模な地震(先発地震)が発生した後、隣接する領域でさらに巨大な地震(後発地震)が連鎖して発生する事例が確認されています。
この統計的傾向に基づき、平時よりも巨大地震発生の可能性が高まっていることを住民や自治体、企業に伝え、事前の備えを再確認してもらうことを目的としています。
重要なポイントは、この情報は「地震予知」ではなく、あくまで「可能性の高まり」を伝えるものだという点です。
情報が発表されたからといって必ずしも巨大地震が起きるわけではありませんが、万が一発生した際に逃げ遅れを防ぎ、命を守るための猶予期間として活用することが求められています。
対象地域は北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県など広範囲に及びます。
この情報が発表された際、私たちは日常生活を続けながらも、すぐに避難できる態勢を整えるという、冷静かつ具体的な行動が必要となります。
詳細:
【制度導入の背景と目的】
日本海溝・千島海溝沿いでは、東日本大震災のような巨大地震が将来的に発生することが懸念されています。
政府の地震調査委員会や専門家の分析によると、この地域ではマグニチュード7クラスの地震が発生した後、1週間以内にマグニチュード8以上の巨大地震が発生する頻度が、平時に比べて約100倍に高まることが分かっています。
「100倍」と聞くと非常に切迫しているように感じますが、確率論的には「およそ100回に1回」程度です。
つまり、99回は何も起きない(空振りになる)可能性がありますが、その「1回」が起きたときの被害が甚大であるため、あらかじめ注意を呼びかける制度が作られました。
この情報の最大の目的は、不意打ちによる被害を減らすことです。
先発地震で一度揺れを感じて安心してしまう心理(正常性バイアス)を防ぎ、もう一度大きな揺れや津波が来るかもしれないと警戒レベルを維持させることにあります。
【発表される条件とタイミング】
この情報は、日本海溝・千島海溝沿いの想定震源域、またはその周辺で、モーメントマグニチュード(Mw)7.0以上の地震が発生した場合に発表されます。
気象庁と内閣府が合同で記者会見を開き、地震発生から概ね2時間後を目処に発表される流れとなります。
「震度」ではなく「マグニチュード」が基準である点に注意が必要です。
たとえ陸地での揺れが小さくても、海域で規模の大きな地震が発生した場合は、後発地震のリスクが高まったと判断され、情報が出されることがあります。
【情報の対象となる地域】
対象となるエリアは、北海道から千葉県にかけての太平洋側を中心とした地域です。
具体的には、巨大地震が発生した場合に震度6弱以上の激しい揺れ、または高さ3メートル以上の津波が想定される地域が対象となります。
これには沿岸部の自治体だけでなく、内陸部の自治体も含まれる場合があります。
また、直接の対象地域外であっても、物流の停滞や親戚・知人の安否確認など、日本全国に関接的な影響が及ぶ可能性があるため、全国民が知っておくべき情報と言えます。
【発表されたらどう行動すべきか?】
この情報のキーワードは「事前避難は行わない」です。
南海トラフ地震臨時情報の一部(警戒)では事前避難が呼びかけられることがありますが、北海道・三陸沖後発地震注意情報では、精度上の限界から事前避難までは求められません。
基本的には「普段通りの生活(社会経済活動)」を継続しながら、地震への備えを「1週間」徹底することになります。
具体的には以下のような行動が推奨されます。
1. 家具の固定と配置の見直し
寝室やリビングにある背の高い家具が固定されているか再確認してください。
もし固定されていない場合は、つっぱり棒やL字金具ですぐに対策するか、あるいは家具が倒れてこない部屋で寝るようにしましょう。
特に就寝中は無防備になるため、寝る場所の安全確保は最優先事項です。
2. すぐに逃げられる服装での就寝
就寝中に地震が起きてもすぐに避難できるよう、枕元にスニーカーや動きやすい服を準備しておきましょう。
パジャマではなく、ジャージなどそのまま外に出られる服装で寝ることも推奨されます。
また、眼鏡や補聴器、入れ歯などを普段使っている方は、それらも枕元にセットしておきます。
3. 非常持ち出し袋の確認と玄関への配置
水、食料、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオ、モバイルバッテリーなどが入った非常持ち出し袋の中身を確認してください。
賞味期限が切れていないか、電池が液漏れしていないかチェックし、すぐに持ち出せるよう玄関先に置いておきましょう。
冬場であれば、防寒具(カイロ、アルミブランケット、厚手の上着)の追加も必須です。
4. 家族との連絡手段と避難場所の確認
家族が離れ離れになった場合の集合場所や、連絡手段(災害用伝言ダイヤル171やSNSなど)を話し合っておきましょう。
ハザードマップを確認し、津波浸水想定区域や土砂災害警戒区域を確認し、どこへ逃げるか、どのルートを通るかを共有します。
5. 正確な情報の入手
SNS上ではデマが拡散される可能性があります。
気象庁や自治体、NHKなどの報道機関が発信する公式情報を信頼してください。
「○月○日に必ず来る」といった予言めいた情報はデマである可能性が高いため、惑わされないようにしましょう。
【情報の解除と「空振り」への理解】
発表から1週間が経過し、その間に大規模な後発地震が発生しなければ、特段の「解除情報」が出されるわけではありませんが、防災対応の呼びかけは終了します。
これを「空振り」と捉えて批判するのではなく、「何も起きなくて良かった」と捉える社会的な土壌が必要です。
この制度は「空振りを許容する」ことを前提に設計されています。
「前回は何も起きなかったから、今回も大丈夫だろう」という油断(オオカミ少年効果)が最も危険です。
何度発表されても、その都度、命を守るための基本動作を忠実に行うことが、サバイバルの鉄則です。
【企業や自治体の対応】
企業においても、従業員の安全確保や事業継続計画(BCP)の再確認が求められます。
ただし、原則として事業を停止する必要はありません。
在庫の積み増しや、緊急連絡網のテスト、帰宅困難者対策の準備など、操業しながらできる対策を行います。
学校や幼稚園・保育園についても、原則として休校や休園は求められませんが、保護者への引き渡しルールの確認などが行われるでしょう。
社会全体が過剰反応せず、しかし正しく警戒するというバランス感覚が試される制度です。
参考動画:
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の参考動画
まとめ:
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のまとめ
北海道・三陸沖後発地震注意情報は、私たちに「猶予」を与えてくれる貴重な情報です。
いつ来るかわからない巨大地震に対して、常に100%の緊張感を保ち続けることは不可能ですが、この情報が出た「1週間」だけは、ギアを一段上げて警戒することができます。
この制度を正しく理解し活用できるかどうかが、あなたとあなたの大切な人の命を左右するかもしれません。
「どうせ起きないだろう」と無視するのではなく、また「怖くて何も手につかない」とパニックになるのでもなく、「来るかもしれないから、準備だけは完璧にして普通に暮らそう」という冷静な態度が最も重要です。
家具の固定や備蓄は、この情報が出た時だけでなく、普段からやっておくべきことです。
この機会に、改めてご自宅の防災対策を見直してみてはいかがでしょうか。
災害は忘れた頃にやってくるものですが、この情報があれば、思い出した頃に備えることができるのです。
関連トピック:
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日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震
北海道から東北地方の太平洋沖にある海溝沿いで発生が懸念されているM9クラスの巨大地震です。東日本大震災に匹敵する、あるいはそれを上回る津波被害が想定されています。
南海トラフ地震臨時情報
静岡県から宮崎県にかけての南海トラフ沿いで異常現象が観測された際に発表される情報です。「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」の2種類があり、北海道・三陸沖後発地震注意情報と類似した制度ですが、一部地域で事前避難が求められる点が異なります。
津波避難タワー・避難ビル
津波浸水想定区域において、高台への避難が間に合わない場合に一時的に緊急避難するための施設です。自宅や職場の近くにある指定緊急避難場所を確認しておくことが生存率を高めます。
正常性バイアス
災害時などに、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」と思い込んだりしてしまう心理作用のことです。逃げ遅れの主要因となるため、意識的に打破する必要があります。
関連資料:
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防災セット 地震対策30点避難セット
プロの防災士が厳選した、災害時に本当に必要な30点のアイテムが揃った非常持ち出し袋です。軽量で女性や高齢者でも持ち運びやすく、機能性とデザイン性を兼ね備えています。
家具転倒防止伸縮棒(つっぱり棒)
地震の揺れによる家具の転倒を防ぐための器具です。天井と家具の間を突っ張ることで固定します。ネジや釘を使わずに設置できるため、賃貸住宅でも利用しやすいのが特徴です。
東京防災(書籍・ハンドブック)
東京都が発行している防災ハンドブックですが、その内容は地域を問わず普遍的に役立つ防災知識の宝庫です。イラストが豊富で読みやすく、家庭に一冊置いておきたいバイブル的資料です。
非常食 アルファ米セット
お湯や水を注ぐだけで食べられるご飯のセットです。長期保存が可能で、白米だけでなく五目ご飯やドライカレーなど味のバリエーションも豊富。災害時のストレス軽減にも役立ちます。

