もったいないをなくそう!食品ロス(フードロス)の現状、原因、SDGsと私たちの対策
食品ロス(フードロス)の概要
食品ロス(フードロス)とは、まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品のことです。
日本では、年間約523万トン(2021年度推計)もの食品ロスが発生しており、これは国民一人あたり毎日お茶碗一杯分の食べ物を捨てている計算になります。
食品ロスは、**家庭から出るもの(家庭系食品ロス)**と、食品関連事業者から出るもの(事業系食品ロス)**の二つに大別されます。
この問題は、単に「もったいない」という経済的損失だけでなく、食料資源の浪費、ごみ処理による環境負荷の増大(温室効果ガス排出)など、地球規模の課題と深く結びついています。
食品ロス(フードロス)の詳細
食品ロスが発生する主な原因と内訳
1. 家庭系食品ロスの原因
家庭系食品ロス(約244万トン)の主な原因は、以下の三つです。
* 食べ残し: 食卓にのぼったものの、食べきれずに廃棄されたものです。外食時の食べ残しも含まれます。
* 直接廃棄: 期限切れや腐敗などにより、手つかずのまま廃棄されたものです。冷蔵庫の奥で存在を忘れてしまい、賞味期限を過ぎてしまうケースなどがあります。
* 過剰除去: 野菜の皮や茎など、本来は食べられる部分を過剰に取り除いて捨ててしまうことです。例えば、ブロッコリーの茎や大根の皮を厚くむきすぎるなどが該当します。
2. 事業系食品ロスの原因
事業系食品ロス(約279万トン)は、食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業などで発生します。
* 規格外品・返品: 製造工程での品質基準に満たないものや、流通過程で破損したもの、過剰生産による売れ残りや返品などがあります。
* 商慣習: 業界特有の商慣習も原因の一つです。特に、賞味期限までの期間のうち、納品を期限とする期間を短く設定する**「3分の1ルール」*など、まだ十分に食べられる食品が流通から外されてしまう問題が指摘されてきました。
需要予測のズレ: 気象条件や流行の変化などにより、商品の需要予測が外れて売れ残りが発生することも大きな要因です。
食品ロス削減の重要性とSDGsとの関係
食品ロスを減らすことは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に不可欠な取り組みです。
特に目標12「つくる責任、つかう責任」のターゲット12.3には、「2030年までに、小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」という具体的な目標が掲げられています。
食品ロスを削減することは、以下のような環境的・社会的メリットがあります。
環境負荷の軽減: 廃棄された食品を焼却処理する際には、大量のエネルギーが消費され、CO2が排出されます。また、埋め立てた場合は、CO2の25倍以上の温室効果を持つメタンガスが発生します。食品ロスを減らすことは、これらの温室効果ガス排出を抑制し、地球温暖化対策に直接つながります。
資源の有効活用: 食料生産に使われた水や土地、エネルギーといった貴重な資源の無駄遣いを防ぐことができます。
飢餓問題への貢献: 世界には食料不足に苦しむ人々がいる一方で、大量の食品が捨てられているという*「貧困と飽食のミスマッチ」**を是正する取り組みでもあります。
日本の法制度と企業・個人の対策
日本では、2019年10月に**「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行されました。
この法律に基づき、国、地方公共団体、事業者、消費者それぞれの責務が明確化され、食品ロス削減が国民運動として進められています。
企業・事業者の対策
商慣習の見直し: 賞味期限の「3分の1ルール」の緩和や、「年月表示」への切り替えなど、流通の非効率を改善する取り組みが進められています。
フードバンク: まだ食べられる食品を企業がNPOなどに寄付し、生活困窮者や福祉施設などに提供する活動が広がり、食品の有効活用に貢献しています。
* 「てまえどり」の推奨: 小売店舗において、消費期限の近い商品を積極的に購入してもらうための啓発活動が行われています。
私たち個人にできること
* 計画的な買い物: 冷蔵庫や食品庫の在庫を確認し、必要な分だけ購入することで、買いすぎや消費期限切れによる廃棄を防ぎます。
* 「てまえどり」の実践: 店頭で期限の近い商品から選んで購入することで、店舗での食品ロス削減に協力します。
* 食べきれる量の調理と注文: 作りすぎないように工夫し、外食時にも食べきれる量だけを注文します。残ってしまった料理は、適切に保存したり、リメイクしたりして食べきります。
* 適切な保存: 食品の特性に合わせて冷凍や乾燥保存をしたり、冷蔵庫内を見やすいように整理したりして、食品の劣化や食べ忘れを防ぎます。
食品ロス(フードロス)の参考動画
食品ロス(フードロス)のまとめ
食品ロスは、私たち一人ひとりの行動が直接的に影響する、非常に身近な社会問題であり、SDGs達成のための最重要課題の一つです。
家庭での「もったいない」意識を高め、**「必要な分だけ買う」「食べきれる量を作る」「美味しく食べきる」**というシンプルな行動を徹底することが、削減への第一歩となります。
企業や行政による制度や技術の改善と並行して、消費者である私たちのライフスタイルを変革していくことが、持続可能な社会、そして食料資源を大切にする未来を築く鍵となります。
今日から、冷蔵庫のチェックや外食時の注文量など、小さな意識改革を始めてみませんか。
食品ロス(フードロス)の関連トピック
SDGs(持続可能な開発目標):特に目標12.3で、食品ロス削減が具体的なターゲットとして設定されています。
食品ロス削減推進法:2019年10月に施行された日本の法律で、食品ロス削減を国民運動として進めるための基本方針や責務を定めています。
フードバンク:まだ安全に食べられる食品を企業などから引き取り、福祉施設や生活困窮者に無償で提供する活動です。
賞味期限と消費期限:賞味期限は美味しく食べられる期限(過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではない)で、消費期限は安全に食べられる期限(過ぎたら食べない方がよい)であり、この違いを理解することが食品ロス削減につながります。
てまえどり:小売店舗で、消費期限や賞味期限の近い商品から選んで購入することを推奨する消費者行動です。
食品ロス(フードロス)の関連資料
賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか(幻冬舎新書):食品ロス問題ジャーナリストである井出留美氏の著書で、食品の期限表示をめぐる業界の慣習や、食品ロス発生の背景について深く切り込んだ書籍です。
食品ロスの大研究 なぜ多い? どうすれば減らせる?(PHP研究所):食品ロスの現状、原因、企業や学校、家庭でできる取り組みなどを分かりやすく解説した学習向けの書籍です。
食品ロス削減ガイドブック(消費者庁):消費者庁が作成している資料で、家庭でできる具体的な食品ロス削減のヒントや取り組み事例がまとめられています。
この動画では、家庭でできる食品ロス削減の具体的な方法について、分かりやすく解説されています。

