【ヘリカルフュージョンの核心】究極の定常運転!日本の核融合ベンチャーとヘリカル型核融合炉の未来を徹底解説
「ヘリカルフュージョン」の概要
ヘリカルフュージョンとは、主に二つの意味があります。
一つは、核融合炉の方式の一つであるヘリカル型(ヘリカル方式)を指します。
これは、プラズマを閉じ込める磁場を、らせん状(ヘリカル)にねじれたコイル(ヘリカルコイル)によって形成する方式です。
もう一つは、このヘリカル型核融合炉の商用化を目指す日本のスタートアップ企業、株式会社Helical Fusionを指す場合が多く、同社は2030年代の実用発電を目指して開発を加速させています。
ヘリカル方式は、もう一つの主要な方式であるトカマク型と比べ、プラズマを長時間安定して維持できる定常運転の優位性があり、発電所としての実用化に適していると期待されています。
詳細
💡 ヘリカル型核融合炉の原理と構造
ヘリカル型核融合炉は、太陽と同じ原理でエネルギーを生み出す核融合発電を実現するための装置の一つです。
核融合反応を起こすには、燃料である重水素や三重水素を1億度以上の超高温プラズマ状態にし、これを強力な磁場で閉じ込める必要があります。
ヘリカル方式の最大の特徴は、ドーナツ状の容器(トーラス)の周囲に、二重らせん状(DNAのような形)に巻かれたヘリカルコイルを用いる点です。
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このヘリカルコイルが電流を流すことで、プラズマを閉じ込めるために必要なねじれた磁場を外部から作ります。
トカマク型がプラズマ内部の電流(プラズマ電流)を利用して磁場のねじれを作るのに対し、ヘリカル型は外部コイルのみで磁場を形成できるため、プラズマ電流の不安定性(ディスラプション)や長時間維持の難しさといった問題が原理的に起こりません。
この構造的な優位性から、ヘリカル型は24時間365日の安定的な定常運転が容易であり、商用発電所としての要件を満たす可能性が高いとされています。
日本の**核融合科学研究所(NIFS)にある大型ヘリカル装置(LHD)**は、世界最大級のヘリカル型装置であり、この方式の研究開発をリードしてきました。
🚀 Helical Fusion社の開発戦略
日本のベンチャー企業である株式会社Helical Fusionは、このヘリカル方式を採用し、2030年代の世界初の商用核融合炉実現を目指しています。
同社が目指す商用核融合炉の三要件は、「定常運転」「正味発電(投入エネルギーを上回るエネルギー出力)」「保守性(効率的なメンテナンス)」です。
特に、定常運転に優れたヘリカル方式の特長を活かし、商用化の鍵となる高温超伝導マグネットや、核融合エネルギーを回収し燃料を生産する液体金属ブランケットといった基幹技術の開発に注力しています。
同社は、日本の国立研究所の研究成果を引き継ぎ、国内の複数の企業や大学と連携する「Helix Program」を推進し、技術とビジネスの両面からフュージョンエネルギー産業をリードすることを目指しています。
開発計画では、統合実証装置「Helix HARUKA」の製作・建設に着手しており、実用発電に向けた具体的なステップを踏んでいます。
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まとめ
ヘリカルフュージョンは、未来のクリーンエネルギー源として期待される核融合発電の中でも、特に定常性と安定性に優れるヘリカル型核融合炉とその商用化を目指す取り組みを指します。
その原理は、らせん状の強力な磁場を超伝導コイルで外部から作り出すことにあり、トカマク型核融合炉の課題を克服する可能性を秘めています。
日本のベンチャー企業であるHelical Fusion社は、この日本発のヘリカル技術を世界に先駆けて実用化しようとしており、「2030年代に核融合発電」という目標は、人類のエネルギー問題解決に向けた大きなマイルストーンとなるでしょう。
この技術が実現すれば、無尽蔵かつ安全なベースロード電源が確保され、地球環境問題とエネルギー安全保障の抜本的な解決に貢献する社会的影響は計り知れません。
読者の皆様には、この「ヘリカルフュージョン 商用化」の動向に注目し、未来のエネルギー技術への理解を深めていただくことをお勧めします。
関連トピック
トカマク型核融合炉: 核融合炉のもう一つの主要な方式で、プラズマ電流を流すことで磁場をねじるのが特徴です。プラズマ性能は優れていますが、定常運転の難しさやディスラプションの問題が課題とされています。
LHD(大型ヘリカル装置): 日本の核融合科学研究所にある世界最大級のヘリカル型プラズマ実験装置です。ヘリカル方式の物理的実証とデータの蓄積において中心的な役割を果たしています。
ブランケット技術: 核融合炉の壁の役割を担う部分で、核融合反応で生じる熱を取り出して発電に利用するとともに、核融合燃料である三重水素(トリチウム)をリチウムから生産する重要な役割を果たします。
高温超伝導マグネット: 核融合炉のプラズマ閉じ込めに必須の強力な磁場を発生させるコイル技術です。従来の低温超伝導材よりも冷却コストを抑えられるため、商用炉の経済性を高める鍵となります。
関連資料
フュージョンエネルギー開発のすべて: 核融合エネルギーの基本原理から、トカマク型とヘリカル型の違い、そして日本の研究開発の現状について詳しく解説している書籍です。
核融合炉工学入門: 核融合炉を構成する要素技術(ブランケット、ダイバータ、超伝導マグネットなど)や炉設計、安全設計について専門的に学ぶための書籍です。
宇宙・未来のエネルギー: 核融合発電を含む、太陽光発電や宇宙太陽光発電など、未来の様々なエネルギー技術についてわかりやすくまとめた書籍です。
Helical Fusion社が金属工業と共同で進めている核融合炉の基幹部品「液体金属ブランケット」の開発について解説しているHelical Fusionと三井金属の共同開発の動画です。

