【徹底解説】インフルエンザ脳症とは?初期症状のサインと親が知っておくべき対策
インフルエンザ脳症の概要
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスの感染に伴って発症する、急速に進行する重篤な脳の病気です。
主に5歳以下の乳幼児に多く見られますが、学童期のお子さんにも発症することがあります。
ウイルスが直接脳に侵入するのではなく、ウイルスに対する免疫反応が過剰に起こり、全身の炎症(サイトカインストーム)が脳にダメージを与えることで発症すると考えられています。
発熱から数時間〜1日程度という極めて短い時間で、けいれんや意識障害などの重い神経症状が現れるのが特徴です。
早期発見と早期治療が予後(その後の経過)を大きく左右するため、保護者が「いつもと違う」サインを見逃さないことが非常に重要です。
インフルエンザ脳症の詳細
主な症状とサイン
インフルエンザ脳症の初期症状には、主に以下の3つの特徴があります。
1. 意識障害
呼びかけても反応が鈍い、目が合わない、ぼーっとしている状態が続く、あるいは昏睡状態になることです。
これは最も重要なサインであり、短時間でも意識がはっきりしない場合は注意が必要です。
2. けいれん(ひきつけ)
インフルエンザ発熱時のけいれんは「熱性けいれん」であることが多いですが、脳症の場合はけいれんが長時間(15分以上)続く、あるいは短時間に繰り返す、体の片側だけがピクピクするといった特徴が見られることがあります。
3. 異常言動・異常行動
「両親のことが分からない」「いない人がいると言う(幻覚)」「意味不明なことを口走る」「急に怯える、怒り出す」といった様子が見られます。
高熱による「熱せん妄」との区別が難しい場合もありますが、これらの異常行動が頻繁に見られる、または1時間以上続く場合は脳症の疑いがあります。
治療と対策
インフルエンザ脳症が疑われる場合は、直ちに集中治療室などでの全身管理が必要です。
治療法としては、抗インフルエンザ薬の投与に加え、ステロイドパルス療法(炎症を抑える)、ガンマグロブリン療法、脳低体温療法(脳を冷やしてダメージを抑える)などが行われます。
以前は死亡率が高い病気でしたが、これらの治療法の進歩により、救命率は向上しています。
しかし、現在でも運動障害や知的障害などの後遺症が残るケースがあるため、警戒が必要です。
家庭での注意点:解熱剤の使用について
インフルエンザにかかった際、自己判断で市販の解熱鎮痛剤を使うことは避けてください。
特に「ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)」「メフェナム酸(ポンタールなど)」や「アスピリン」が含まれる解熱剤は、脳症やライ症候群のリスクを高めるとして、インフルエンザ患児への使用は禁忌(禁止)とされています。
解熱剤を使用する場合は、医師に処方されたもの、あるいは安全性が高いとされる「アセトアミノフェン」を使用してください。
インフルエンザ脳症の参考動画
まとめ
インフルエンザ脳症は、発症から進行が非常に早く、親御さんにとっては非常に恐ろしい合併症の一つです。
しかし、すべてのインフルエンザが脳症になるわけではなく、過度に恐れすぎる必要はありません。
重要なのは、インフルエンザにかかった際にお子さんの様子をこまめに観察し、「けいれんが止まらない」「意識がおかしい」「異常な言動が続く」といったサインがあれば、迷わず救急車を呼ぶか、直ちに医療機関を受診することです。
また、予防接種(ワクチン)は、インフルエンザ自体の発症を抑えるだけでなく、重症化を防ぐ効果も期待できるため、流行前の接種が推奨されます。
関連トピック
熱性けいれん(発熱に伴うけいれん発作。脳症との見極めが重要ですが、多くは良性で後遺症を残しません)
ライ症候群(インフルエンザや水痘などの感染症の際に、アスピリンなどを服用することで発症する重篤な脳症)
異常行動(タミフル等の薬の副作用と誤解されがちですが、高熱そのものやウイルスによる影響でも起こります)
サイトカインストーム(免疫の暴走状態。脳症や重症肺炎などの原因となる生体反応です)
関連資料
『小児救急ガイドブック』(日本小児科学会などが監修する、急な病気の際のホームケアや受診目安がわかる書籍)
『はじめてのママ&パパのしつけと育脳』(脳の発達と病気に関する基礎知識が得られる育児書シリーズ)
『こどもの救急箱』(家庭でできる応急処置や、危険なサインをまとめた実用書)
ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

