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宇宙からの来訪者「恒星間天体」とは?オウムアムア、ボリソフ、そして最新の3I/ATLASまで徹底解説

科学
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宇宙からの来訪者「恒星間天体」とは?オウムアムア、ボリソフ、そして最新の3I/ATLASまで徹底解説

「恒星間天体」の概要

夜空を見上げると輝く星々。
その恒星と恒星の間、広大な「星間空間」を孤独に旅し、時折私たちの太陽系へと迷い込んでくる天体があります。
それが「恒星間天体(Interstellar Object)」です。

かつては理論上の存在でしたが、観測技術の向上により、2017年に史上初めて発見されました。
これらは、太陽系がどのように生まれたのか、あるいは地球の生命はどこから来たのかという根源的な問いに対する重要な手がかりを握っています。
本記事では、恒星間天体の定義から、世界を驚かせた「オウムアムア」、そして2025年に確認されたばかりの最新の天体「3I/ATLAS」まで、その謎と魅力に迫ります。

「恒星間天体」の詳細

恒星間天体とは何か

通常、私たちが目にする惑星や小惑星、彗星は、太陽の重力に縛られ、太陽の周りを回っています。
しかし、恒星間天体は特定の恒星の重力に縛られていません。
はるか彼方の別の惑星系で弾き飛ばされ、何億年、何十億年もの間、銀河系を漂流してきた「宇宙の放浪者」です。

これらが太陽系内を通過する際、二度と戻ってこない「双曲線軌道」を描くことや、太陽系の天体にはあり得ないほどの猛スピードで移動していることから判別されます。

第1の使者:謎多き「オウムアムア (1I/’Oumuamua)」

2017年10月、ハワイのパンスターズ望遠鏡が観測史上初の恒星間天体を発見しました。
ハワイ語で「遠方からの最初の使者」を意味する「オウムアムア」と名付けられたこの天体は、天文学者を困惑させました。

  • 奇妙な形状: 全長が幅の5〜10倍もある極端に細長い「葉巻型」、あるいは平たい「円盤型」をしていると推定されました。
    これほど極端な形状の天体は太陽系内では見つかっていません。
  • 謎の加速: 太陽から遠ざかる際、重力の影響だけでは説明がつかない加速をしていました。彗星のようにガスを噴き出して加速した可能性が考えられましたが、ガスや塵の放出(尾)は観測されませんでした。
    このため、一部の科学者からは「地球外知的生命体の探査機ではないか」という大胆な仮説も提唱されました。

第2の使者:ありふれた姿の「ボリソフ彗星 (2I/Borisov)」

オウムアムアの衝撃から2年後の2019年、2番目の恒星間天体が発見されました。
アマチュア天文学者のゲンナディ・ボリソフ氏によって発見されたこの天体は、オウムアムアとは対照的でした。

尾やコマ(ガス雲)を持つ典型的な「彗星」の姿をしており、成分も太陽系の彗星とよく似ていたのです。
これは、他の恒星系でも太陽系と同じような物質やプロセスで惑星が作られていることを示唆する重要な発見となりました。

最新の発見:第3の恒星間天体「3I/ATLAS」

そして2025年、新たに3番目の恒星間天体「3I/ATLAS」が確認されました。
現在も詳細な観測・解析が世界中の天文台で進められています。

初期の観測では、銀河宇宙線による表面処理の痕跡や、特徴的なジェット構造が報告されています。
オウムアムアの「特異性」とボリソフの「普遍性」に続き、この第3の来訪者がどのような新たな知見をもたらしてくれるのか、科学界は固唾を飲んで見守っています。

なぜ発見が難しいのか

理論上は、太陽系内には常に多数の恒星間天体が存在していると考えられています。
しかし、それらは非常に暗く、速く、小さいため、地球のごく近くを通過しない限り発見することは困難です。
近年の観測網の発達により、ようやくその姿を捉えられるようになってきたのです。

「恒星間天体」の参考動画

まとめ

恒星間天体は、いわば「宇宙のタイムカプセル」です。これらを調べることは、直接行くことのできない遠く離れた他の恒星系の物質を手にとって調べることに等しい価値があります。

オウムアムアが突きつけた謎、ボリソフが示した普遍性、そして3I/ATLASから得られるであろう新発見。
これらは、太陽系の形成論だけでなく、「生命の種は宇宙を移動できるのか(パンスペルミア説)」という議論にも大きな影響を与えます。
今後、探査機を直接恒星間天体に送り込む「待ち伏せ型ミッション」なども計画されており、私たちの宇宙観はさらにアップデートされていくことでしょう。

関連トピック

パンスペルミア説

生命の起源は地球ではなく、宇宙から飛来した微生物や有機物にあるとする仮説。

オールトの雲

太陽系を球殻状に取り囲んでいると考えられる、無数の氷微惑星の集まり。

系外惑星

太陽以外の恒星の周りを回る惑星。恒星間天体の故郷。

プロジェクト・ライラ

高速で遠ざかるオウムアムアや他の恒星間天体に探査機を追いつかせようという構想。

関連資料

『地球外生命体』

アヴィ・ローブ著/オウムアムア=人工物説を唱えたハーバード大教授の著書。

『星間空間の時代』

ジム・ベル著/ボイジャー計画から恒星間天体まで、太陽系外への探求を描く。

『オウムアムアの謎』

関連する科学雑誌の特集号やムック本など。

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