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【2026年最新】中東危機で日本のエネルギー・産業政策はどうなる?政策批判の真偽と今後の課題を徹底解説!

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はじめに

2026年2月に突如勃発した中東危機。連日のニュースで「ガソリン代高騰」や「ホルムズ海峡封鎖」といった言葉を耳にし、「私たちの生活や日本経済はどうなってしまうの?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。さらに、ネット上では現在の政府の対応に対する厳しい批判も飛び交っており、何が正しい情報なのか判断するのが難しい状況です。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】ガソリン補助金とEV政策に対する批判の真実
  • 【テーマ2】原子力推進・SMR投資に隠された地政学的背景
  • 【テーマ3】日本がとるべき「経済安全保障」という生存戦略

本記事では、専門的な視点から最新のデータと事実に基づき、話題となっている政策批判の信憑性を徹底検証します。日本が直面している本当の危機と、これからの時代を生き抜くためのヒントが詰まっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

序論およびマクロ環境の定義

2026年2月末に突如として勃発した米国およびイスラエルによるイランへの直接的な軍事攻撃は、中東地域における限定的な紛争という枠を超え、グローバルなエネルギー供給網の心臓部であるホルムズ海峡の事実上の封鎖という未曽有の地政学的・経済的危機を引き起こしました。この危機は、一次エネルギーの化石燃料依存度が8割を超え、原油輸入の約94%を中東に依存する日本経済にとって、国家の存立基盤を揺るがす深刻な事態です。

こうした極めて緊迫したマクロ環境を背景に、元官僚であり経済評論家である古賀茂明氏により、現在の高市早苗政権の政策対応を厳しく批判するコラム「『過ちを認められない』高市首相が招いている経済パニック 中東危機なのに『ガソリン補助』と『原子力推進』という愚策」が発表されました。同氏は、日本政府が実施しているガソリン補助金政策、中国BYDを実質的に排除しているとされる電気自動車(EV)補助金政策、ならびに原子力発電の推進および石炭火力発電の輸出推進などを「3重の災害級大失策」と断じ、再生可能エネルギーと中国の先端技術の無条件な国内誘致による抜本的な構造転換を提唱しています。

本レポートは、専門的なマクロ経済学、地政学、および産業組織論の観点から、古賀氏の記述のファクトチェックを行うとともに、同氏の主張に内包される論理的妥当性と偏向性を精緻に評価するものです。また、国内外の最新の報道、研究資料、および確立された学問的理論を照合することで、同氏の意図を推論し、同氏の提言が抱える経済安全保障上の致命的な死角や問題点を浮き彫りにし、現在の日本が直面する真の政策的課題と取るべき戦略的選択肢を包括的に提示します。

2026年中東危機の実態とは?マクロ経済への深刻な打撃

古賀氏のコラムの前提となっている「中東危機」および「ホルムズ海峡の封鎖」は、国際情勢の客観的事実として極めて正確に記述されています。この危機の構造と経済的影響を精緻に把握することは、その後の政策評価の基盤となります。

2026年2月28日、米国とイスラエルはイランの核兵器保有阻止および軍事力の無力化を企図し、イランに対する大規模な軍事攻撃を開始しました。この攻撃の過程でイランのハメネイ最高指導者が暗殺されるという決定的な事態が発生し、後継者となったモジタバ・ハメネイ師の指導の下、イランは即座に猛烈な報復作戦に踏み切りました。イランは湾岸諸国(サウジアラビア、UAE、クウェート、カタールなど)に駐留する米軍基地のみならず、民間インフラや石油施設をも攻撃対象とし、さらには中東におけるエネルギー輸送の最大の要衝であるホルムズ海峡を事実上封鎖するに至りました。イラン側は「自国の許可を得た船舶のみ航行を認める」と主張していますが、対岸の近隣諸国への攻撃が日常化する中、安全な商業航行は不可能な状態に陥っています。

この物理的な供給網の寸断は、世界経済、とりわけエネルギー自給率の低いアジア太平洋地域に壊滅的な打撃を与えつつあります。アジア開発銀行(ADB)や第一生命経済研究所のグローバル・ベクター自己回帰(GVAR)モデルを用いたマクロ経済分析の推計結果は、この危機の深刻さを明確に示唆しています。

評価機関・モデル 経済指標への影響推計(2026年〜2027年) 備考
アジア開発銀行(ADB) アジア太平洋新興国の経済成長率を最大1.3ポイント下押し サプライチェーンの混乱と金融引き締めを含む
アジア開発銀行(ADB) アジア太平洋新興国の物価上昇率を最大3.2ポイント押し上げ インフレ圧力の急激な高まり
GVARモデル(原油33%上昇時) 日本およびユーロ圏の実質GDPを0.6%下押し エネルギー純輸入国への直接的打撃
GVARモデル(原油33%上昇時) 米国の実質GDPの下押しは0.2%に限定 産油国としてのエネルギーセクター収益拡大が緩衝材として機能

これらの定量的なデータが示す通り、エネルギー純輸入国である日本への経済的打撃は、エネルギー資源国である米国等と比較して明確な非対称性をもって現れます。したがって、古賀氏が冒頭で指摘する「あらためて日本のエネルギー供給構造の脆弱性がクローズアップされた」というマクロ的現状認識は、確立された経済学のデータと完全に合致しており、疑いようのない事実です。

ガソリン補助金は愚策?諸外国の政策と比較検証

古賀氏のコラムの中で最も鋭い経済学的批判が展開されているのが、日本政府の「燃料油価格激変緩和対策事業(ガソリン補助金)」に対するものです。同氏は、日本のように価格を以前の水準に引き下げる政策を中心とする国はなく、欧州やアジア諸国はより科学的な根拠に基づき需要を抑える政策に力を入れていると主張しています。

補助金がもたらすマクロ経済的悪循環のメカニズム

古賀氏が指摘する「ガソリン価格を人為的に下げれば、需要増(需要の維持)に作用し、結果として貿易収支が悪化して通貨安とインフレを招く」というメカニズムは、ミクロ経済学の価格弾力性理論およびマクロ経済学の国際収支理論の観点から完全に正当です。

本来、国際的な供給ショックによって原油価格が高騰した場合、国内のエネルギー価格が上昇することで市場の価格シグナルが機能し、消費者や企業は自発的に無駄なエネルギー消費を削減します(需要の価格弾力性による消費の抑制)。しかし、政府が巨額の税金を投入して小売価格を人為的に低く据え置いた場合、この価格シグナルは遮断されます。その結果、国内における化石燃料の需要は高止まりし、高騰した国際価格のまま大量の原油を輸入し続けることになります。これは日本からのドル買い・円売り圧力を恒常化させ、外国為替市場における自国通貨(円)の減価を引き起こします。円安の進行は、エネルギーのみならず食料や原材料全般の輸入物価を押し上げ、最終的に広範なインフレを誘発するという「悪循環」を生み出します。この一連のメカニズムに関する古賀氏の論理展開は、標準的なマクロ経済学の知見に裏打ちされた極めて精緻な分析です。

諸外国の政策動向に関するファクトチェックと偏向性

一方で、「単純なガソリン価格引き下げの補助金というような政策は取られていない」「日本のようにガソリン価格を何もなかったかのように以前の水準に引き下げる政策を中心にする国はない」という古賀氏の主張は、国際的な政策実態を恣意的に解釈したミスリードであると言わざるを得ません。

国際エネルギー機関(IEA)のデータや各国の報道によれば、2026年3月のエネルギー危機において、欧州やアジアの多数の国々が、直接的な価格介入や税制優遇措置を導入し、国民の負担軽減を図っている事実が確認されています。また、物流インフラを維持するため、各国は苦心の対応を迫られているのが実態です。

国・地域 2026年3月危機における主要なエネルギー政策・価格対策(例) 政策の性質
欧州連合(EU) 卸売ガス価格への上限設定(プライスキャップ)の検討、家計・企業への包括的補助 直接的な価格介入・補助金
スペイン・スウェーデン 燃料価格の上限設定、車両燃料税や物品税の引き下げ 価格引き下げ・減税
韓国 30年ぶりとなる燃料価格キャップの再導入、政府備蓄の放出 価格上限設定
韓国 公務員車両のナンバー末尾による週1日の使用制限(物理的制限) 需要抑制(物理的手段)
台湾 価格上昇分の60%を政府が吸収する仕組みの導入 価格介入・財政負担
日本 ガソリン補助金の継続、国家備蓄原油の放出 価格介入・供給増加

この表が示す通り、スペイン、スウェーデン、韓国、台湾など、多くの国が日本と同様に価格の高騰を財政的に吸収し、小売価格の急騰を抑制する政策を実施しています。欧州委員会においても、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が卸売ガス価格へのキャップ(上限設定)や補助金の導入を検討しており、これに対して専門家からは、価格上限を設定することで国際LNG市場での競争力を削ぎ、アジア諸国に「買い負ける」リスクが高まるという警告が発せられています。

古賀氏は、諸外国の政策を「リモートワークの推進」や「EVへの乗り換え促進」といった需要抑制・構造転換のみに焦点を当てて美化し、日本だけが愚かな価格介入を行っているかのような論法を用いています。しかし実際の国際社会では、いかなる政府も急激なエネルギー価格の高騰による国民生活の破綻と中小企業の連鎖倒産を容認することはできず、中長期的な構造転換政策と並行して、短期的な「価格介入(補助金や減税)」という緊急避難的措置を講じざるを得ないのが現実です。したがって、同氏の日本批判の論理自体は経済学的に正しいものの、国際比較の事実提示においては強い確証バイアスが存在していると評価できます。

中国EV「BYD」は排除されている?自動車産業政策の真相

自動車産業は日本の基幹産業であり、その競争力の行方は国家の経済的命運に直結します。古賀氏は、経済産業省とトヨタ自動車が結託し、意図的にEVシフトを遅らせてきたと主張し、とりわけ2026年度の「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金」において、中国BYDの車両に対する補助額を不当に低く抑え込んでいると痛烈に批判しています。

CEV補助金制度の実態と評価基準

「トヨタのbZ4Xには最大130万円の補助金を出すのに、BYDのドルフィンにはわずか35万円の補助金しか出さない」という古賀氏の指摘は、金額という数値の表面的な事実としては正しいと言えます。2026年2月10日の情報によれば、BYDの「ドルフィン(BaselineおよびLong Range)」に適用されるCEV補助金は一律35万円に設定されています。一方、日本のCEV補助金の上限額は、一般的なEVで85万円、一定の要件を満たした場合は最大130万円まで引き上げられる制度設計となっています。

しかしながら、古賀氏がこれを「姑息な手段によるBYD排除政策」と断定する背景には、現代の産業政策における「外部不経済の内部化」や「エコシステム全体の評価」という視点の欠如が見受けられます。2026年度のCEV補助金制度は、単に「バッテリーを積んだ車であるか否か」という車両単体のスペックだけで補助金額を決定しているわけではありません。経済産業省が設定した評価軸は多岐にわたり、自動車メーカーが国内のモビリティインフラ構築にどれだけ貢献しているかを総合的に勘案する仕組みとなっています。

CEV補助金 算定の主な評価項目(2026年度基準) 政策的意義と目的
車両の基本性能(航続距離・電費) 直接的な環境性能の評価
充電インフラの整備状況 社会的インフラコストの企業負担に対するインセンティブ
整備網・アフターサービスの充実度 消費者保護と長期的な車両運用の安全性確保
サイバーセキュリティ対応 コネクテッドカーにおける経済安全保障と個人情報保護
GX推進(環境負荷低減)に向けた鋼材の導入 ライフサイクル全体(製造段階から)のカーボンニュートラル促進

欧米諸国においても、例えば米国のインフレ抑制法(IRA)やフランスの新たなEV補助金制度などにおいて、バッテリーの調達網や製造・輸送過程におけるカーボンフットプリントを評価基準に組み込み、実質的に中国製EVを排除または冷遇する政策が標準化しつつあります。日本のCEV補助金における差額は、トヨタが国内に広範な整備網を持ち、充電インフラへの投資を行い、製造工程における環境配慮(GX鋼材の採用など)を行っているという「見えざるインフラ投資」に対する正当な対価としての側面が強いと言えます。これを単なる「騙し商法」「姑息な排除」と切り捨てる古賀氏の論理は、自国産業の基盤維持や経済安全保障という国家の責務を軽視するものです。

中国の「ナマズ効果」と日本の産業構造の違い

古賀氏は、中国政府がかつて米国のテスラを国内市場に参入させ、自国メーカーに激しい競争を強いることでBYDのような世界的強者を育成した「ナマズ効果」を引き合いに出し、日本もBYDを無条件に参入させてトヨタと競争させるべきだと主張しています。

この「競争による産業の淘汰と進化」というイノベーション理論自体は、シュンペーターの創造的破壊の概念にも通じるものであり、学問的に一つの真理です。しかし、当時の中国と現在の日本の置かれた産業構造の違いを無視することはできません。当時の中国におけるEV産業は「雨後の筍」と表現されるように、無数のスタートアップが乱立する未成熟な黎明期でした。そこで淘汰が起きても、国家全体のマクロ経済に与える負のインパクトは限定的であり、むしろ統廃合による効率化の恩恵が大きかったのです。

翻って日本の場合、自動車産業は就業人口の約1割(約550万人)を抱え、重層的なケイレツ(系列)構造と精密な部品サプライチェーンを持つ極めて成熟した基幹産業です。ここに国家の防波堤を取り払い、政府の莫大な補助金によって価格競争力を人為的に高められた中国企業(BYDなど)を意図的に引き入れ、急激なショック療法(ナマズ効果)を適用した場合、部品・素材メーカーの広範な倒産と数百万規模の雇用喪失という社会的破局を招くリスクが極めて高いと言えます。イノベーション政策においては、競争の導入速度(トランジション・マネジメント)が重要であり、古賀氏の主張する急進的な完全競争主義は、現実の社会コストを度外視した机上の空論に近い側面を持っています。

原発推進とSMR(小型モジュール炉)投資は時代遅れか?

古賀氏の矛先は、日本のエネルギー供給の中核を担う原子力発電政策にも向けられています。同氏は、中東での原発攻撃を教訓とせず、日本海側の柏崎刈羽原発6号機を再稼働させること、また米国での小型モジュール炉(SMR)投資に巨額の資金を投じることを「時代錯誤の政策音痴」と厳しく断じています。

柏崎刈羽原発6号機の再稼働と地政学的脆弱性

報道によれば、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機は、機器のトラブル(漏電を示す警報の作動)による一時的な延期を経て、2026年4月16日に営業運転を開始する予定で原子力規制委員会に申請されています。

古賀氏が指摘する「原発の軍事的な脆弱性」に関する懸念は、国際安全保障の観点から極めて妥当です。実際に、2026年の米国・イスラエルによるイラン攻撃では、軍事施設や石油インフラのみならず、ウラン濃縮施設周辺や重水炉などの核関連施設への攻撃が実行されたとの報道が複数存在しています。既存の大型軽水炉は、巨大な冷却設備と広大な敷地を必要とし、ミサイル攻撃やドローン兵器に対する防衛能力には限界があります。特に日本海側に位置する原発群が、周辺の敵対的非民主主義国家からの非対称攻撃(テロや武力攻撃)の標的となった場合、その被害はチェルノブイリや福島第一原発事故を上回る放射能汚染を国土にもたらす危険性があります。この点において、「原発が狙われた時にどうするのかという議論が起きない」という古賀氏の警鐘は、危機管理の要諦を突いた正当な批判です。

SMR(小型モジュール炉)投資に対する批判の偏向

しかしながら、古賀氏が「小型モジュール炉(SMR)への投資のために米国に10兆円単位の寄付金を出させられるのもまた、時代錯誤の政策」と批判している点については、エネルギー技術の進展と国際戦略に対する無理解が露呈しています。

2026年3月中旬、高市首相は訪米し、トランプ米大統領との日米首脳会談において「日米間の戦略的投資に関する共同発表」を発出しました。この枠組みの中で、テネシー州およびアラバマ州におけるSMR建設プロジェクト(推定最大400億ドル)等の戦略分野における協力が合意されています。

SMRは、古賀氏が危惧する既存の大型原発の脆弱性を克服するために設計された次世代技術です。原子炉を工場でモジュール単位で組み立てることで品質管理とコスト削減を図り、受動的安全系(外部電源喪失時でも自然循環で冷却される仕組み)を採用することで過酷事故のリスクを劇的に低下させています。さらに、一部のSMR設計は地下に配置することが可能であり、ミサイル攻撃や航空機テロに対する耐性が従来の原発とは比較にならないほど高いです。

また、再生可能エネルギー(太陽光・風力)は天候に左右される間欠性電源であり、電力網の安定化(周波数維持等)には必ず調整力を持つベースロード電源が必要となります。蓄電池のみで一国の電力網をバックアップすることは現在のコストと資源制約では不可能に近いです。そのため、欧州委員会も2026年3月にSMRの初期展開を支援する戦略を発表し、自立的なクリーンエネルギーシステムの中核として位置付けています。

このような国際的潮流と技術的背景を無視し、SMRへの戦略的投資を単なる「米国への寄付金」と矮小化して切り捨てる古賀氏の主張は、技術的近視眼に陥っていると言わざるを得ません。

石炭火力輸出に関する小林政調会長への批判

一方で、自民党の小林鷹之政調会長が「電力を石炭に依存せざるを得ない国々があるとすれば、我が国の高効率の石炭火力技術を輸出して支援することは、責任ある対応である」と述べ、石炭火力の輸出推進を主張した点に関する古賀氏の批判は的を射ています。

高効率石炭火力(IGCC等)は既存の旧式石炭火力よりはCO2排出量が少ないものの、LNGや再生可能エネルギーと比較すれば依然として環境負荷は極めて高いです。国際的な金融機関や機関投資家がESG(環境・社会・ガバナンス)投資の基準を厳格化し、石炭関連事業からのダイベストメント(投資撤退)を加速させている現在、国家として石炭火力の輸出を政策の柱に据えることは、国際社会における気候変動対策への逆行とみなされ、日本の「経済的孤立」を招くリスクを含んでいます。この点において、古賀氏の懸念は十分な根拠に基づいています。

過激な政策批判の裏にある意図とは?論理構造を読み解く

上述の多角的な検証を通じて、古賀茂明氏が本コラムを執筆した背景にある深い意図と思想的スタンスを推論することができます。同氏の主張は、単なる現政権への個別政策批判にとどまらず、より根本的な「日本型経済システム」への破壊的変革の要求です。

官民癒着批判と「ショック・ドクトリン」の実践

記事全体を通じて最も色濃く表れているのは、経済産業省を中心とする官僚機構と、トヨタ自動車に代表される既存の大企業との「既得権益の癒着構造」に対する強烈な敵意です。古賀氏は元官僚としての経験から、日本独自の漸進的な政策(ハイブリッド車重視の現実路線や、既存産業の緩やかな移行)が、結果としてグローバル市場におけるイノベーションの遅れと競争力の喪失をもたらしたと確信しています。

同氏の意図は、今回の中東危機に伴うホルムズ海峡封鎖という「外部からの巨大なショック」をテコとして利用し、これまで遅々として進まなかった日本の産業構造の転換を強行することにあります。これは、危機に乗じて過激な市場原理主義的政策を導入する「ショック・ドクトリン」の手法そのものです。ガソリン補助金を廃止して国民に痛みを強いることや、BYDなどの外国勢を補助金で強力に支援して国内メーカーを淘汰させるという過激な主張は、既存のエコシステムを一度完全に破壊しなければ、日本に真の再生はないという同氏の強い危機感(あるいは絶望感)の表れです。

グローバル・イノベーション至上主義の罠

また、古賀氏は「全く新しい技術や新サービスの開発」「ウィンウィンの協力関係」「ナマズ効果」といった市場競争を礼賛する用語を多用しています。同氏の思想は、国境や国籍に囚われず、世界で最も優れた技術(現在はそれが中国のEVや蓄電池である)を国内に導入することで、最も効率的な経済発展が遂げられるという純粋な「グローバル・イノベーション至上主義」に基づいています。

しかし、この思想は平時における自由貿易の枠組みの中では完全に正しいものの、現在の地政学的分断(デカップリング)が進行する世界においては、極めてナイーブな前提に立脚していると言わざるを得ません。

極端な構造転換の罠!経済安全保障上の致命的な死角

古賀氏の論考の最大の問題点は、経済安全保障という極めて重要な概念を「中国排除の愚策」として矮小化し、中国の先端技術(再エネ・蓄電池・EV)への過度な依存がもたらす地政学的リスクを意図的かつ完全に捨象している点にあります。

新たな「アキレス腱」の創出リスク

古賀氏は、中東の化石燃料に依存する現在のエネルギー供給構造の脆弱性を激しく非難しています。しかし、同氏の提言通りに「数十兆円の資金を投入して再エネに舵を切り、世界最強の中国企業の国内製造拠点作りに補助金を出し、中国の新しい蓄電技術を導入する」路線を全面的に採用した場合、日本はどうなるでしょうか。

結果として生じるのは、中東の「産油国」への依存から、中国の「クリーンテック・サプライチェーン」への完全依存という、依存先のすげ替えに過ぎません。太陽光パネルのシリコンウエハー、蓄電池のリチウムイオンやレアアース、そしてEV用ソフトウェアに至るまで、中国企業に国内インフラの心臓部を掌握させることは、安全保障上、極めて危険な賭けです。

コネクテッドカーである現代のEVは、単なる移動手段ではなく、街中を走り回る巨大なデータ収集デバイス(カメラ、センサー、位置情報)です。これらが潜在的な戦略的競争相手である中国の法域(国家情報法など)の強い影響下にある企業によって独占された場合、平時の情報漏洩リスクのみならず、有事における遠隔からの機能停止(キルスイッチ)や電力グリッド網へのサイバー攻撃の踏み台にされるリスクが生じます。

欧州・アジア諸国のしたたかな現実主義との乖離

古賀氏は「欧州諸国やアジア諸国も馬鹿ではない。中国企業とのウィンウィンの関係を築く方向だ」と主張していますが、欧州の現実の動きは古賀氏の描写よりも遥かに警戒感に満ち、したたかです。

欧州連合(EU)は、中国製EVの過剰生産と不公正な政府補助金に対する相殺関税を課す方向で激しい貿易摩擦を展開しています。同時に「ネット・ゼロ産業法(NZIA)」などを通じて、クリーンテクノロジーの域内製造能力を自力で引き上げるための巨大な産業政策を始動させており、「無条件に中国企業を誘致してウィンウィンを狙う」ような牧歌的な状況には全くありません。各国が中国企業を誘致する際にも、技術移転の強要防止、データの域内保存(データローカライゼーション)、合弁会社における主導権の確保など、厳格な防衛策を幾重にも張り巡らせています。

経済安全保障とは「排除」ではなく「過度な依存の回避(ディリスキング)」です。高市政権がCEV補助金などで国内企業や同盟国企業を実質的に優遇し、米国とSMR投資で協調する動きは、特定の権威主義国家に基幹インフラを握られるリスクをヘッジするための極めて合理的かつ国際標準の対応です。これを「3流以下の失策」と断ずる古賀氏の主張は、国家の生存戦略という視点が決定的に欠落しています。

まとめ

2026年3月のホルムズ海峡封鎖という中東危機は、日本のエネルギー供給構造の脆弱性を白日の下に晒しました。古賀茂明氏のコラムは、この危機に際して対症療法(ガソリン補助金)に終始し、マクロ経済の歪みを拡大させている日本政府の政策硬直性に対して、経済学的観点から極めて正当で鋭い警鐘を鳴らしています。特に、補助金による需要維持がもたらす貿易赤字と円安の悪循環に関する指摘は、政府が直視すべき不都合な真実です。

しかしながら、同氏の提示する処方箋——すなわち、既存の産業構造を破壊し、中国企業を無条件に誘致して再エネとEVに全振りするという極端な構造転換——は、東アジアの地政学的現実を無視した危険な劇薬です。化石燃料への依存から脱却するために、特定の外国資本によるデータ・インフラの掌握という新たな安全保障上の脆弱性を創出すべきではありません。

この未曽有の危機において、日本が志向すべき真の戦略的政策は以下の3点に集約されます。

  • 価格シグナルの回復と戦略的需要抑制への移行:
    市場の価格メカニズムを歪める無制限なガソリン補助金は段階的に縮小すべきです。生じた余剰財源を用いて、真に保護が必要な低所得者層や物流インフラを担う特定業種への「直接給付」へと政策を転換します。同時に、省エネ投資や高効率な機器への切り替えに対するインセンティブを強化し、エネルギー消費量自体を構造的に削減する方向へ誘導します。
  • 経済安全保障を担保した上でのトランジション・マネジメント:
    自動車産業のEVシフトは不可避ですが、その移行プロセスにおいて国内の雇用とサプライチェーンを守ることは国家の責務です。外国企業(BYDなど)の参入を単に拒むのではなく、サイバーセキュリティ基準の厳格化、データローカライゼーションの義務付け、ライフサイクル全体のカーボンフットプリント評価といった「ルールベースの壁」を設け、これらをクリアする企業とのみ競争と協調を行う体制を構築します。
  • 地政学リスクを分散する多層的エネルギーポートフォリオの構築:
    再生可能エネルギーと蓄電池への投資を大幅に拡大することは必須ですが、間欠性電源のみで国家の産業を支えることは不可能です。中東への化石燃料依存を減らすためにも、日米連携による次世代技術であるSMR(小型モジュール炉)の開発・実装や、国内の地熱、水素、アンモニア混焼など、いかなる単一のショックにも耐え得る「分散・多層化されたエネルギーポートフォリオ」を構築し維持し続けることこそが、最も現実的かつ強靭な国家戦略です。

「過ちを認めない」という批判は政治家に対して容易に向けられる言葉ですが、マクロ政策において真に避けるべき「過ち」とは、一つの危機に対処するために、新たな、そしてより致命的な国家のリスクを創り出してしまうことです。日本は今、市場のダイナミズムと強固な経済安全保障を冷徹なリアリズムの視座から統合する、高度な国家運営能力が問われています。

参考リスト


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