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【初心者向け】「量子もつれ」とは何か?アインシュタインが「不気味」と呼んだ謎の現象と、未来を変えるテクノロジー

技術
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【初心者向け】「量子もつれ」とは何か?アインシュタインが「不気味」と呼んだ謎の現象と、未来を変えるテクノロジー

「量子もつれ」の概要

「量子もつれ(Quantum Entanglement)」――SF映画や科学ニュースでこの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

これは、ミクロの世界(量子力学の世界)で起きる、常識では考えられない不思議な現象のことです。

簡単に言えば、「遠く離れた2つの粒子が、目に見えない糸で繋がっているかのように、瞬時にお互いの状態に影響を与え合う現象」を指します。

その距離は、数メートルであろうと、宇宙の果てと果てであろうと関係ありません。

あのアインシュタインでさえ「不気味な遠隔作用」と呼び、死ぬまでその存在を完全には認めようとしなかったこの現象。

しかし現在では、実験で実証され、2022年のノーベル物理学賞のテーマにもなりました。

本記事では、この「量子もつれ」の仕組み、なぜそれが私たちの常識を覆すのか、そして「量子コンピュータ」や「量子テレポーテーション」といった未来技術にどう応用されるのかを徹底解説します。

「量子もつれ」の詳細

私たちの住むマクロな世界(古典物理学の世界)では、物体はそれぞれ独立して存在しています。

例えば、日本にあるコインと、ブラジルにあるコインは、互いに何の影響も及ぼしません。

しかし、原子や電子といった極小の「量子」の世界では、この常識が通用しない瞬間があります。

運命共同体の粒子ペア

まず、「量子もつれ」を理解するために、双子の粒子(ペア)を想像してください。

特別な方法で生成された2つの粒子(AとB)は、運命共同体のような「もつれ状態」になります。

この2つを引き離し、Aを地球に、Bを100億光年先の銀河に置いたとしましょう。

量子力学には「重ね合わせ」という性質があり、観測するまで粒子の状態(例えば、回転の向きが上か下か)は確定していません。

しかし、地球にいる観測者が粒子Aを見た瞬間、Aの状態が「上向き」に確定したとします。

するとその瞬間、100億光年離れた粒子Bの状態は、何の通信もしていないのに、強制的に「下向き」に確定するのです。

アインシュタインの苦悩とEPRパラドックス

ここに、アインシュタインが悩んだパラドックスがあります。

アインシュタインは「光より速く伝わるものはない」とする特殊相対性理論を提唱していました。

もし粒子Aの情報が瞬時に粒子Bに伝わっているとしたら、それは光速を超えていることになり、物理学の根底が揺らぎます。

彼は「隠れた変数理論」を主張し、「最初から手袋を左右の箱に入れたようなもので、開けた瞬間に決まったように見えるだけだ(最初から決まっていた)」と反論しました。

これを「EPRパラドックス」と呼びます。

実験による証明とノーベル賞

しかし、その後の物理学者たち(ジョン・ベル、アラン・アスペ、アントン・ツァイリンガーら)の研究と実験により、アインシュタインの直感は間違っていたことが証明されました。

「ベルの不等式の破れ」という実験結果は、粒子の状態は観測するまで本当に決まっておらず、観測した瞬間に宇宙の距離を超えて相関関係が生まれることを示したのです。

これは、私たちの宇宙が「局所的(近くのもの同士しか影響しない)」ではなく、「非局所的(離れていても本質的に繋がっている)」な性質を持っていることを示唆しています。

未来を変える応用技術

現在、この奇妙な現象は単なる理論にとどまらず、革命的なテクノロジーに応用され始めています。

その筆頭が「量子コンピュータ」です。

量子もつれを利用することで、従来のコンピュータでは何万年もかかる計算を数秒で解く可能性を秘めています。

また、「量子暗号通信」では、盗聴者が情報を覗き見ようとすると「もつれ」が壊れて痕跡が残るため、物理的に解読不可能な究極のセキュリティが実現します。

さらに、「量子テレポーテーション」という技術も研究されています。

これはSFのように物体そのものを移動させるわけではありませんが、粒子の「量子状態(情報)」を、量子もつれを使って遠隔地に瞬時に転送する技術であり、将来の「量子インターネット」の基盤となると期待されています。

「量子もつれ」の参考動画

「量子もつれ」のまとめ

「量子もつれ」は、私たちが当たり前だと思っている「時間」や「空間」の概念を根底から問い直す現象です。

「ここ」にあるものが、宇宙の彼方にある「あそこ」のものと、空間を超えて深く結びついている。

この事実は、科学的な発見であると同時に、どこか哲学的なロマンさえ感じさせます。

アインシュタインが「不気味」と恐れたその現象は、今や人類が次のステージへ進むための鍵となりました。

量子コンピュータが実用化されれば、新薬の開発、金融モデルの最適化、気候変動の予測など、社会課題の解決スピードは劇的に向上するでしょう。

目に見えないミクロの世界の「絆」が、私たちのマクロな未来を大きく変えようとしています。

まだ多くの謎が残されていますが、量子力学の世紀はまだ始まったばかりなのです。

関連トピック

シュレーディンガーの猫: 箱の中の猫が「生きている状態」と「死んでいる状態」の重ね合わせで存在するという、量子力学の奇妙さを指摘した有名な思考実験。

量子テレポーテーション: 量子もつれを利用して、ある場所にある粒子の量子状態(情報)を、離れた場所にある別の粒子に瞬時に転送する技術。

EPRパラドックス: アインシュタインらが提唱した、量子力学の完全性に異議を唱えるための思考実験。「神はサイコロを振らない」という言葉でも有名。

ベルの不等式: 「隠れた変数(最初から決まっている)」が存在するかどうかを実験的に検証するために考案された数式。この破れが確認されたことで、量子力学の正しさが証明された。

量子コンピュータ: 量子の「重ね合わせ」と「もつれ」を利用して、並列計算を行う次世代のコンピュータ。

関連資料

書籍『量子論を楽しむ本』: 難しい数式を使わずに、量子論の不思議な世界(もつれや重ね合わせ)をイラスト付きで解説した入門書。

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