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軌道エレベーターのケーブルはなぜたるまない?宇宙規模の「遠心力」と建設の仕組み

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軌道エレベーターのケーブルはなぜたるまない?宇宙規模の「遠心力」と建設の仕組み

建設の謎:空から紐を垂らして張る方法

「空から紐を垂らして、本当にピンと張るのか?」「重力で落ちてこないのか?」
軌道エレベーター(宇宙エレベーター)を想像する際、最も不思議に感じるのがこの点でしょう。通常の建物は下から積み上げますが、軌道エレベーターは全く逆で、「宇宙から吊り下げる」構造物です。

ケーブルがピンと張り続ける理由は、地球の自転が生み出す「遠心力」と、地球が引っ張る「重力」による、壮大な綱引きにあります。本記事では、ケーブルがたるまずに宇宙空間へ伸び続ける物理的な仕組みと、SFのような建設プロセスを解説します。

ケーブルが張る原理と建設手順・詳細

【原理:地球を回す「紐付きの石」】

子供の頃、紐の先に石を結びつけてグルグル回したことはありませんか? 手を離さない限り、紐は遠心力でピンと張り詰め、石は外へ飛び出そうとします。
軌道エレベーターもこれと全く同じ原理です。

  • 手: 地球(私たち)
  • 紐: エレベーターのケーブル
  • 石: カウンターウェイト(宇宙側の重り)

地球は猛スピードで自転しています。ケーブルの先端に重り(カウンターウェイト)をつけて、高度36,000km(静止軌道)よりもはるか遠く、高度約10万kmまで伸ばすと、宇宙空間へ放り出そうとする「遠心力」が、地球へ引き寄せようとする「重力」を上回ります。
この「外へ引っ張られる力」が常に働き続けるため、ケーブルは決して地上に落ちてこず、天空に向かってピンと張り続けるのです。

【建設プロセス:空から地上へ「垂らす」】

では、そのケーブルをどうやって設置するのでしょうか? 地上からロケットで持ち上げるのは不可能です。現在の構想では、以下のような手順が現実的とされています。

  1. 静止軌道への輸送:
    まず、建設用宇宙船(母船)にケーブルの材料を積み込み、赤道上空約36,000kmの「静止軌道」へ打ち上げます。ここは重力と遠心力が釣り合う場所で、地球に対して静止していられます。
  2. 上下への同時展開:
    母船から、地上へ向けてケーブルを少しずつ垂らし始めます。しかし、それだけではバランスが崩れて地球に落ちてしまいます。そこで、反対側の宇宙空間へ向けても同時にケーブル(または重り)を伸ばします。
    「地上への重力」と「宇宙への遠心力」のバランスを常に保ちながら、少しずつケーブルを長くしていきます。
  3. 着地と固定:
    やがて地上へ向かったケーブルの先端が、赤道上の基地(アース・ポート)に到達します。これを地上にしっかりと固定します。
  4. テンション(張力)の調整:
    地上に固定した後、宇宙側のケーブルをさらに遠くへ伸ばすか、カウンターウェイト(重り)をさらに外側へ移動させます。すると、外へ引っ張る遠心力が強まり、ケーブル全体がググッと引き上げられ、完璧なテンションがかかって完成します。

【最大の課題:自重で切れない素材】

原理はシンプルですが、実現を阻んでいるのは「素材」です。
鋼鉄のケーブルでこれを行おうとすると、自身の重さに耐えきれず、数千キロの長さになる前にちぎれてしまいます。この壮大な張力に耐えるためには、鋼鉄の数100倍の強度を持ち、かつ非常に軽い素材が必要です。そこで期待されているのが、炭素原子の網である「カーボンナノチューブ」です。

参考動画

大林組による公式の宇宙エレベーター建設構想ムービーです。今回解説した「宇宙からケーブルを垂らす」手順が美しいCG映像でシミュレーションされており、文字だけでは想像しにくい建設プロセスが一目で理解できます。

まとめ

軌道エレベーターのケーブルが張る仕組みは、地球そのものを巨大な回転体として利用した物理学の勝利です。「遠心力」という自然のエネルギーを利用して、構造物全体を宇宙空間へ引っ張り上げているのです。

建設は「地上から積み上げる」のではなく「宇宙から垂らして、引っ張る」。このコペルニクス的転回とも言える発想の転換こそが、人類を宇宙へ運ぶ鍵となります。現在、日本の建設会社(大林組など)も真剣にこの工程を研究しており、遠くない未来、空から一本の糸が降りてくる日が来るかもしれません。

関連トピック

遠心力と重力の均衡 (エレベーターを成立させる物理の基本)

カウンターウェイト (ケーブルを引っ張り上げるために末端に設置する重り)

カーボンナノチューブ (理論上、この張力に耐えうるとされる唯一の素材)

大林組宇宙エレベーター建設構想 (2050年の完成を目指す、日本のゼネコンによる具体的な計画)

静止軌道 (建設の拠点となる、地球の自転と同じ速度で回る軌道)

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Webサイト 「JSEA 日本宇宙エレベーター協会」 (最新の研究成果やイベント情報を発信)

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