中国の「レッドライン」とは？台湾問題や米中関係で絶対に譲れない一線

中国のレッドラインの概要

国際ニュースや外交問題で度々耳にする「中国のレッドライン（越えてはならない一線）」。

これは、中国政府が外交や安全保障において「これ以上踏み込めば、断固たる対抗措置（軍事行動や制裁）をとる」と定めた、絶対に譲歩できない境界線のことを指します。

特にアメリカとの関係において強調されることが多く、最も重要かつ危険なレッドラインとして「台湾問題」が挙げられます。

本記事では、中国が設定する具体的なレッドラインの中身と、それが世界や日本に与える影響について分かりやすく解説します。

習近平国家主席がバイデン米大統領（および歴代の米政権）に対して繰り返し伝えている、最も重要かつ妥協の余地がない「第一のレッドライン」が台湾問題です。

中国は「台湾は中国の一部である（一つの中国）」という原則を国是としています。そのため、以下の行為はレッドラインを越えるものと見なされます。

1. 台湾の独立：台湾当局が法的に独立を宣言すること。

2. 外部勢力の介入：アメリカなどが台湾へ過度な軍事支援を行ったり、高官が公式訪問して国家として扱ったりすること。

このラインが踏み越えられた場合、中国は「平和的統一の可能性がなくなった」と判断し、「武力統一（台湾有事）」に踏み切るリスクが跳ね上がると懸念されています。

近年の米中首脳会談において、中国側は台湾以外にも守るべき核心的利益として、以下の要素をレッドラインとして提示しています。これらは中国共産党の支配体制そのものに関わるため、議論の余地がないとされています。

1. 台湾問題：前述の通り、中米関係の政治的基礎であり、越えてはならない一線。

2. 民生・制度（体制の安全）：中国共産党による指導体制や社会主義制度を否定・攻撃すること。アメリカが中国の内部変革（政権転覆など）を画策することは許されないとしています。

3. 発展の権利：中国の経済成長や科学技術の発展を、不当に封じ込めること。例えば、先端半導体の輸出規制や、中国企業への制裁を通じて中国の現代化プロセスを止める行為を指します。

4. 民主・人権問題への干渉：香港、新疆ウイグル自治区、チベットなどの問題について、欧米的な価値観で「人権侵害」と批判し、内政干渉すること。

アメリカは「一つの中国」政策を維持しつつも、台湾関係法に基づいて台湾への自衛用兵器の供与を続けており、中国はこの動きに常に反発しています。

米中の軍艦や戦闘機が台湾海峡や南シナ海で至近距離で対峙するケースが増えていますが、これは互いに相手のレッドラインを探り合っている状態とも言えます。

もし誤算や偶発的な衝突によってこの一線を越えてしまえば、日本も無関係ではいられません。

在日米軍基地が拠点となる可能性や、シーレーン（海上交通路）の封鎖など、経済・安全保障の両面で甚大な影響を受けることになります。

中国のレッドラインとは、単なる外交上のスローガンではなく、国家の存亡や共産党の正当性に関わる「絶対に譲れない核心的利益」のことです。

特に台湾問題は、いつ火がついてもおかしくない火薬庫のような状態が続いています。

私たち日本人も、隣国で起きているこの緊張状態を「対岸の火事」と思わず、ニュースの背景にある「越えてはならない一線」の意味を正しく理解しておく必要があります。