ゴジラは「放射合成」で生きている?チェルノブイリの黒いカビが解き明かす怪獣王のエネルギーの謎
ゴジラのエネルギー源と「放射合成」の概要
「ゴジラ」といえば、核実験の影響で巨大化し、口から放射熱線を吐く怪獣王として世界中で知られています。
劇中、ゴジラは原子力発電所を襲ったり、核エネルギーを吸収して体力を回復させたりします。
これまで、これは完全な「SF上の設定」として片付けられてきました。生物が致死量の放射線を浴びて、それをエネルギーにするなどあり得ないと思われていたからです。
しかし、21世紀に入り、その常識を覆す発見がなされました。
チェルノブイリ原子力発電所の事故跡地で発見された「放射線を食べるカビ」の存在です。
本記事では、現実の生物学で発見された「放射合成(Radiosynthesis)」という驚異のメカニズムを解説し、それがゴジラの生物学的リアリティをどう裏付けているのか、科学とエンターテインメントの交差点を探ります。
詳細解説:空想科学が現実に追いついた日
ゴジラのエネルギー源:従来の解釈
1954年の初代『ゴジラ』から最新の『ゴジラ-1.0』に至るまで、ゴジラと放射能は切っても切れない関係にあります。
設定としては、体内に「生体原子炉」のような器官を持ち、核分裂反応を制御してエネルギーを得ているとされることが一般的です。
特にハリウッド版『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、瀕死のゴジラに核爆弾を起爆させてエネルギーチャージさせるシーンが描かれました。
これは「放射線を浴びる=食事」という描写ですが、通常の生物ならDNAが破壊されて即死します。なぜゴジラは平気なのでしょうか?
現実に見つかった「放射線を食べる」生物
1991年、廃炉となったチェルノブイリ原子力発電所の壁面で、真っ黒なカビ(真菌)が繁茂しているのが発見されました。
調査の結果、このカビ(クリプトコッカス・ネオフォルマンスなど)は、高い放射線量のある環境下で、通常よりも成長速度が速まることが判明しました。
この現象を説明するために提唱されたのが「放射合成(Radiosynthesis)」です。
植物が葉緑素(クロロフィル)を使って太陽光をエネルギーに変える「光合成」を行うように、これらのカビは「メラニン色素」を使ってガンマ線などの放射線を化学エネルギーに変換していたのです。
「黒い皮膚」の謎が解ける?
ここで注目したいのが「メラニン」です。
メラニンは私たち人間の肌や髪を黒くする色素ですが、放射合成を行うカビもまた、大量のメラニンを含んでいるため真っ黒な色をしています。
これをゴジラに当てはめてみましょう。
ゴジラの皮膚は、伝統的に「ごつごつした木炭のような黒色」をしています。
もしゴジラが、この現実のカビと同じように「放射合成を行うための高濃度のメラニン」を皮膚に持っているとしたらどうでしょうか?
ゴジラのあの黒い体色は、単なるデザインではなく、空気中や水中の放射線を効率よく吸収し、エネルギーに変換するための「ソーラーパネル(放射線パネル)」の役割を果たしているという仮説が成り立ちます。
SFが現実に追いついた瞬間
かつて、放射線をエネルギーにする生物など空想の産物でした。
しかし、極限環境微生物の研究が進み、深海や宇宙空間、そして原発事故現場といった過酷な環境で生きる生命の強さが明らかになってきました。
ゴジラというキャラクターは、核の恐怖の象徴として生まれましたが、現代科学の視点で見ると「放射線すらも糧にして適応・進化する、生命の究極の可能性」を体現した存在と言えるのかもしれません。
火星移住への応用も?
この「放射合成」の研究は、単なる怪獣学にとどまりません。
NASAなどは、宇宙空間の強力な放射線から宇宙飛行士を守るための「生体シールド」として、この放射線を吸収するカビを利用できないか研究しています。
ゴジラのモデルになったかもしれないメカニズムが、人類の火星進出を助けるかもしれないのです。
参考動画
まとめ:生命のしたたかさと怪獣王
「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、ゴジラの「放射能を食べる」という荒唐無稽な設定は、チェルノブイリの黒いカビによって科学的な裏付けを得つつあります。
「放射合成」という言葉を知ってからゴジラ映画を見直すと、あの黒く輝く背びれや皮膚が、また違った意味を持って見えてくるはずです。
破壊神として描かれるゴジラですが、その生態システムは、私たちがまだ知らない生命の神秘を秘めているのかもしれません。
関連トピック
極限環境微生物 (Extremophiles)
高温、高圧、高放射線など、通常なら生物が住めない環境で繁殖する微生物の総称。クマムシなどが有名です。
メラニン (Melanin)
紫外線から肌を守るだけでなく、放射線をエネルギー変換する可能性を秘めた色素。ゴジラの黒さの秘密かもしれません。
チェルノブイリ原発事故 (Chernobyl Disaster)
1986年の事故後、人の立ち入りが制限された区域で独自の生態系進化が見られ、放射合成真菌発見の地となりました。
関連資料
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 (Blu-ray)
ゴジラが海底の古代遺跡で放射線を吸収し、復活するプロセスが詳細に描かれた、生物学的描写の濃い作品です。
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真菌類の驚くべき能力や、放射線との関係について、専門的ながら分かりやすく解説されています。
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こちらは「核分裂」をエネルギー源とする設定ですが、急速な進化と適応というテーマは放射合成の生存戦略に通じるものがあります。
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