【驚きの技術】QRコードはなぜ汚れても読み取れる?最大30%欠損しても復元する「誤り訂正」の秘密
QRコードの「誤り訂正機能」の概要
スマホ決済、飛行機のチケット、Webサイトへのアクセスなど、今や生活のあらゆる場面で使われている「QRコード」。
バーコードと違って、多少汚れていたり、一部が破れていたり、あるいは真ん中に企業のロゴマークが重なっていても、スマホのカメラで一瞬で読み取れることに驚いたことはありませんか?
実は、QRコードには「誤り訂正機能」という強力な復元システムが組み込まれており、コードの最大30%が失われてもデータを完全に読み取ることができるのです。
この技術は、もともと過酷な工場現場で油まみれになっても使えるように開発されたものでした。
本記事では、日本が誇る発明であるQRコードの「汚れても大丈夫な仕組み」と、用途に合わせて使い分けられている「4つのレベル」について、分かりやすく解説します。
QRコードの構造と復元の仕組み詳細
QRコードの正体:白黒の点だけがデータではない
QRコードを見ると、ランダムな白黒の模様に見えますが、実はエリアごとに役割が厳密に決まっています。
- 切り出しシンボル(ファインダパターン): 3つの角にある大きな四角。「これはQRコードですよ」「こっちが上ですよ」とカメラに教えるための目印。
- アライメントパターン: 右下付近にある小さな四角。レンズの歪みや斜めからの撮影を補正するための基準点。
- データ領域: 実際にWebサイトのURLなどの情報が入っている部分。
- 誤り訂正符号領域: ここが今回の主役です。データそのものではなく、「データが壊れた時に直すための予備データ(修復用コード)」が格納されています。
最強の修復術「リード・ソロモン符号」
QRコードの誤り訂正機能には、「リード・ソロモン符号」という高度な数学的アルゴリズムが使われています。
これは、地デジ放送やCD/DVD、人工衛星との通信などでも使われている技術で、ノイズ(汚れや欠損)が混じっても、元のデータを数学的に逆算して復元することができます。
QRコードでは、データ領域の一部が汚れて読めなくなっても、残った「誤り訂正符号」の情報を使って、消えた部分の白黒パターンを計算で導き出すことができるのです。
用途で選べる「4つのレベル」
この誤り訂正能力は、実は作成者が自由に設定できます。レベルは以下の4段階です。
- レベルL(約7%復元可能): 訂正能力は低いが、その分データ領域を広く使える。多くの情報を詰め込みたい場合に使われる。
- レベルM(約15%復元可能): 一般的な利用に最適。多くのQRコードはこのレベル。
- レベルQ(約25%復元可能): 汚れやすい環境向け。
- レベルH(約30%復元可能): 最強レベル。工場の部品管理など、汚れることが前提の場所や、コードの上にイラストやロゴを重ねる「デザインQR」で使われる。
「ロゴ入りQR」の種明かし
最近よく見かける、真ん中にキャラクターや企業ロゴがドカンと載っているQRコード。
「邪魔じゃないの?」と思うかもしれませんが、あれは「レベルH」を使って、ロゴで隠れる部分を「汚れ(欠損)」と見なし、誤り訂正機能で無理やり復元させているのです。
つまり、最初から壊れた状態で作られているのですが、復元力の範囲内であれば問題なく読み取れるという、逆転の発想を利用したテクニックなのです。
QRコード技術解説の参考動画
QRコードの技術まとめ
QRコードが世界中で普及した最大の理由は、単に情報を詰め込めるからではなく、この「汚れても使えるタフさ」にあります。
日本企業デンソーウェーブが1994年に開発したこの技術は、特許をあえてオープンにしたことで世界標準となりました。
私たちが普段何気なく「ピッ」とかざしているその一瞬の間に、スマホの中では高度な数学パズルが解かれ、欠けた情報が修復されているのです。
もし次にQRコードを見かけたら、「どこまで隠しても読み取れるか」指で少し隠して実験してみてください(もちろん、隠しすぎると読めなくなりますが)。その技術の凄さを肌で感じられるはずです。
関連トピック
デンソーウェーブ: トヨタグループの自動車部品メーカー・デンソーから分離した、QRコードの開発元企業。
バーコード(JANコード): 横方向のみに情報を持つ一次元コード。容量が少なく、一部でも欠けると読み取れないことが多い。
マイクロQRコード: 誤り訂正機能を簡略化し、さらに小さなスペースに印字できるようにした極小QRコード。電子部品などに使われる。
フレームQR: 最初からイラストや写真を入れるスペース(キャンバス領域)を確保してある、公式なデザイン用QRコード規格。
関連資料
QRコードドットコム(デンソーウェーブ公式サイト): QRコードの仕組み、種類、歴史が網羅された最も信頼できる情報源。
書籍『QRコードの奇跡』: 開発秘話や世界標準化への道のりを描いたノンフィクション。
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