【保存版】人工内耳の手術は怖い?費用は?入院期間から術後のリハビリ日程まで徹底解説
人工内耳手術の概要と不安への回答
「人工内耳(じんこうないじ)」は、補聴器の効果が十分に得られない重度の難聴者にとって、再び音を取り戻すための最後の砦であり、大きな希望です。
しかし、「頭の手術」と聞くと、恐怖心や不安を感じるのは当然のことです。
「手術の痛みは?」「何日くらい入院するの?」「費用は何百万円もかかるのでは?」
このような疑問がハードルとなり、受診をためらってしまう方も少なくありません。
実際には、医療技術の進歩により手術は低侵襲(体への負担が少ない)化しており、費用面でも日本の公的制度を活用すれば、自己負担額は驚くほど低く抑えられるケースがほとんどです。
本記事では、人工内耳手術の具体的な流れ、リアルな費用負担、そして手術よりも重要と言われる「術後の音入れとリハビリ」のスケジュールについて、分かりやすく解説します。
人工内耳手術の詳細:費用とスケジュール
手術の実際:所要時間と身体への負担
人工内耳の手術は、全身麻酔下で行われます。
耳の後ろの皮膚を数センチ切開し、頭蓋骨(側頭骨)の一部を削ってインプラント本体を固定、そこから電極を蝸牛(かぎゅう)へ挿入します。
- 手術時間: 平均して2〜3時間程度です。
- 入院期間: 病院の方針によりますが、通常は1週間〜10日程度です。抜糸が不要な埋没縫合を行う病院も増えており、その場合は早期退院も可能です。
- リスク: 顔面神経麻痺やめまい、味覚障害などのリスクはゼロではありませんが、術中モニタリング技術の向上により、発生率は非常に低くなっています。
費用の真実:自己負担はいくらかかる?
ここが最大の誤解ポイントです。人工内耳の機器本体と手術費用の総額は片耳で約300万〜400万円とも言われますが、患者さんが窓口で支払う額は全く異なります。
日本では「健康保険」が適用されるため、以下の制度を組み合わせることで、負担は大幅に軽減されます。
- 高額療養費制度: 所得に応じて、ひと月の医療費の上限が決まります(一般的な所得で月額8万円程度)。
- 自立支援医療(更生医療・育成医療): 身体障害者手帳(聴覚障害)をお持ちの場合、さらに負担が軽減されます。自治体や所得によりますが、自己負担上限額が「月額5,000円〜20,000円」程度になるケースが多く、実質的な負担は非常に軽くなります。
※ただし、術後の電池代や修理費などの維持費(ランニングコスト)については、一部助成がある自治体を除き、自己負担となることが多いため確認が必要です。
術後のスケジュール:音が入るまでの道のり
手術が終わっても、すぐに聞こえるようになるわけではありません。傷が癒えるのを待ってから、機器のスイッチを入れる「音入れ(おといれ)」を行います。
- 手術当日: 全身麻酔。術後は安静。
- 術後1週間〜10日: 退院。この時点ではまだ音は聞こえません(外部装置を付けていないため)。
- 術後2〜3週間後: 外来にて「音入れ(初回マッピング)」を行います。初めて人工内耳を通して音を聞く瞬間です。最初は「ピーピー」「響く音」のような機械音に聞こえることが多いです。
- 音入れ後〜数ヶ月: 「マッピング」と呼ばれる調整を繰り返します。電極ごとの電気の強さを調整し、少しずつ音に慣らしていきます。
- 長期リハビリ: 脳が新しい電気信号を「言葉」として理解するための訓練です。会話の実践や、テレビ、オーディオブックなどを活用し、数ヶ月から年単位で聞こえの質を高めていきます。
人工内耳手術の参考動画
人工内耳手術のまとめ
人工内耳手術は、決して「魔法の手術」ではありません。手術を受ければ翌日からペラペラと会話ができるわけではなく、その後の「マッピング」と「リハビリ」という地道な努力があって初めて、豊かな「聞こえ」が手に入ります。
しかし、費用面に関しては、日本の手厚い医療制度のおかげで、経済的な理由で諦める必要はほとんどありません。
「手術が怖い」「費用が心配」という不安の霧を晴らし、医師と相談しながら前向きに検討することは、あなたやご家族の世界を再び音で満たすための大きな第一歩となるはずです。
関連トピック
- マッピング(調整):人工内耳の聞こえを最適化するために、言語聴覚士(ST)と共に行うプログラミング作業。術後の聞こえの質を左右する最重要プロセス。
- 自立支援医療制度:心身の障害を除去・軽減するための医療費を公費で負担する制度。人工内耳手術の自己負担を劇的に下げる鍵となる。
- 残存聴力活用型(EAS):低音域の聴力が残っている場合、低音は補聴器、高音は人工内耳で聞くハイブリッド手術。より自然な聞こえが期待できる。
- 人工内耳の電池:空気亜鉛電池や充電池を使用する。自治体によっては電池代の助成制度があるため、住んでいる地域の福祉課に確認が必要。
関連資料
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:人工内耳の適応基準や実施施設リストが公開されています。
- ACITA(人工内耳友の会):手術体験談や、術後の生活、電池の助成情報など、ユーザー目線の貴重な情報が集まっています。
ご注意:これは情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

