【会社員の最強特権】給料の2/3が貰える「傷病手当金」完全ガイド!うつ病や退職後の受給条件、意外な落とし穴とは?
傷病手当金制度の概要
「病気で長期間会社を休むことになったら、生活費はどうしよう…」「うつ病で休職したいけれど、給料が止まるのが怖くて言い出せない」。
会社員として働く私たちにとって、病気やケガによる収入減は最大のリスクです。
しかし、日本の健康保険制度には、そんなピンチを救う非常に強力なセーフティネット「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」が存在します。
これは、業務外の理由で働けなくなった場合に、最長で1年6ヶ月の間、給与の約3分の2相当額が現金で支給される制度です。
フリーランスや自営業者が加入する国民健康保険にはない、まさに「会社員の特権」とも言えるこの制度ですが、実は「申請のタイミングを間違えると1円も貰えない」「退職日に出社すると受給資格を失う」といった、知らなければ損をする落とし穴が多数存在します。
本記事では、傷病手当金の基本的な仕組みから、メンタルヘルス不調での利用、退職後も貰い続けるための裏ワザ、そして多くの人が見落としがちな注意点までを徹底解説します。
傷病手当金の受給条件と注意点詳細
傷病手当金とは? 制度の基本スペック
傷病手当金は、会社員(健康保険の被保険者)が、病気やケガで会社を休み、十分な給与が受けられない場合に支給されます。
- 支給額: 「支給開始日以前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額」÷30日×3分の2。ざっくり言えば、毎月の給料の約67%が非課税で振り込まれます。
- 支給期間: 支給開始日から通算して1年6ヶ月。途中で復職してまた休んだ場合も、通算して1年6ヶ月分までは受給可能です(2022年の法改正でより使いやすくなりました)。
絶対に外せない「4つの受給条件」
以下の4つをすべて満たしている必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガであること: 仕事中のケガやうつ病(労災)は対象外です(その場合は労災保険を使います)。通勤中のケガも原則として労災です。
- 仕事に就くことができないこと: 医師の診断が必要です。「本人が辛いと言っている」だけでは認められません。
- 連続する3日間を含み4日以上休んでいること: 最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、手当金が出ません。4日目から支給対象となります。この3日間は有給休暇や土日祝日でもカウントされます。
- 休業期間中に給与の支払いがないこと: 給与が出る場合でも、傷病手当金より少なければ、その差額が支給されます。
うつ病・適応障害でも貰える?
結論から言えば、精神疾患ももちろん対象です。
近年、傷病手当金の申請理由として最も多いのが、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調です。
「骨折などの目に見えるケガではないから」と遠慮する必要はありません。
心療内科や精神科の医師から「労務不能(働くことができない)」という診断書を書いてもらえば、身体的な病気と同様に堂々と受給できます。
ただし、初診日より前にさかのぼって診断書を書いてもらうことは難しいため、「辛い」と感じたら我慢せずに早めに受診し、医師に相談の実績を作っておくことが重要です。
ここが落とし穴!「退職後」も貰い続けるための鉄則
「病気でこれ以上働けないから退職したい。でも生活が…」という場合、条件を満たせば退職後も継続して傷病手当金を受け取ることができます(資格喪失後の継続給付)。
しかし、これには絶対に守らなければならない「鉄の掟」があります。
- 退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること: 転職したばかり(加入1年未満)だと、退職後は貰えません(在職中は貰えます)。
- 退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること: これが最大の落とし穴です。退職日(最後の日)に、挨拶回りや引き継ぎなどで「出勤」してはいけません。
退職日に出勤してしまうと、「退職日は働けた(労務可能だった)」とみなされ、その後の継続給付の権利が消滅します。
退職日は必ず欠勤するか、有給休暇を取得して、実質的に休んでいる状態で籍を抜く必要があります。
見落としがちなリスクと注意点
- 社会保険料の支払いは続く: 傷病手当金を受給していても、会社に籍がある限り、健康保険料と厚生年金保険料は発生します(免除されません)。給与がないため、会社から直接請求書が届き、振り込む必要があります。
- 副業・アルバイトは厳禁: 「リハビリがてら少しだけ」とアルバイトをして収入を得ると、「働ける状態にある」と判断され、支給がストップするだけでなく、過去の分まで返還を求められる可能性があります。
- 失業保険との併用は不可: 失業保険(雇用保険の基本手当)は「働ける状態なのに仕事がない人」が対象です。傷病手当金は「働けない人」が対象なので、同時には貰えません。病気で退職した場合は、まず傷病手当金を貰い切り、働けるようになってから失業保険の受給期間延長手続きを行うのが黄金ルートです。
傷病手当金の参考動画
傷病手当金のまとめ
傷病手当金は、会社員が毎月高い社会保険料を支払っているからこそ受けられる、正当な権利です。
うつ病などで判断力が低下している時は、「会社に迷惑をかけるから辞めよう」と短絡的に考えがちですが、まずは休職してこの制度を利用し、ゆっくりと治療に専念すべきです。
退職を考えるのは、手当金を受け取りながらじっくり休んだ後でも遅くはありません。
もしもの時に路頭に迷わないよう、この「最強の特権」の存在とルールを、しっかりと頭の片隅に置いておいてください。
関連トピック
労災保険(労働者災害補償保険): 業務中や通勤中の原因による病気・ケガの場合はこちらを使います。傷病手当金よりも給付内容が手厚く、治療費も無料になります。
失業保険の受給期間延長: 病気ですぐに働けない場合、ハローワークで手続きをすることで、失業保険を貰える権利を最大4年間までキープできる制度。
障害年金: 傷病手当金の期間(1年6ヶ月)が終わっても病気が治らず、障害が残った場合に申請できる年金制度。
休職: 法律上の制度ではなく、会社の就業規則で定められた制度。給与が出るか出ないかは会社によりますが、社会保険の傷病手当金とは別物として理解しましょう。
関連資料
全国健康保険協会(協会けんぽ): 傷病手当金の申請書ダウンロードや、具体的なQ&Aが掲載されています。
書籍『知れば得する! 社会保険と公的年金の裏ワザ』: 傷病手当金を含めた、会社員が使える公的保障を網羅した実用書。
ご注意:これは情報提供のみを目的としています。個別のケースや申請手続きについては、会社の担当部署、全国健康保険協会、または社会保険労務士にご相談ください。

