【スマホ水没の真実】「IP68=完全防水」は大間違い!お風呂や海でスマホが壊れる科学的理由
スマホの防水規格「IP68」の正しい理解と誤解
「私のスマホは防水だから、お風呂で動画を見ても大丈夫」「汚れたからハンドソープで洗おう」。
もしあなたがそう考えているなら、あなたのスマホはいつ「水没故障」してもおかしくありません。
iPhoneやAndroidのハイスペックモデルに記載されている「IP68」という等級は、確かに最高レベルの防塵・防水性能を示しています。
しかし、この規格にはメーカーがあまり大声では言わない「重大な条件(前提)」が存在します。
実は、防水テストは「常温の真水(水道水)」で行われており、お湯や石鹸水、海水、そして「湿気(湯気)」は想定されていないのです。
本記事では、多くの人が誤解している防水スペック「IP68」の正しい読み方と、なぜお風呂や海で使うと防水スマホがいとも簡単に壊れてしまうのか、その科学的なメカニズムを徹底解説します。
IP68の本当の意味とお風呂使用のリスク詳細
IP68の「数字」が持つ本当の意味
スマホのスペック表にある「IP68」などのコード。これは国際電気標準会議(IEC)が定めた規格です。
- 前の数字「6」:防塵性能(固形物に対する保護)。6は最高等級で「粉塵が内部に入らない」ことを意味します。
- 後ろの数字「8」:防水性能(水に対する保護)。8は現時点での最高等級で、「継続的に水没しても内部に浸水しない」ことを意味します。
一見完璧に見えますが、この「IPX8」のテスト条件は、あくまで「常温で、静止した、水道水」の中に沈めるというものです。
つまり、「お風呂の熱湯」「シャワーの強い水圧」「プールの塩素」「海の塩分」に対する耐性は保証されていないのです。
なぜ「お風呂」が最も危険なのか?
お風呂には、スマホの防水パッキン(ゴム)を無力化する3つの敵がいます。
- 石鹸・シャンプー(界面活性剤): これが最も危険です。防水機能は、網目の細かいメッシュや撥水加工で保たれていますが、石鹸に含まれる界面活性剤は「水の表面張力を下げる」性質があります。これにより、水が本来弾かれるはずの微細な隙間から「ぬるり」と侵入してしまうのです。
- 温度変化と結露: スマホをお風呂の温かい空気にさらすと、本体内部の空気が温められ、その後に冷えることで内部に気圧差が生まれます。また、冷えたスマホを浴室に持ち込むと、内部で「結露」が発生します。水没していなくても、内側から発生した水滴で基盤が腐食(ショート)してしまうのです。
- パッキンの熱劣化: 防水用のゴムパッキンは熱に弱く、繰り返しの温度変化で硬化・変形し、防水性能が急速に失われます。
「洗えるスマホ」以外は洗ってはいけない
「スマホが汚れたから洗いたい」という場合も注意が必要です。
一部の国内メーカー製スマホ(arrowsやTORQUEなど)には「ハンドソープ洗浄対応」を明記しているものがありますが、それ以外のiPhoneやGalaxyなどは、石鹸や洗剤で洗うことは想定されていません。
洗う場合は、必ず「常温の水道水」のみを使用し、水圧をかけすぎないように優しく流すのが鉄則です。
水没故障は「保証対象外」という現実
残酷な事実として、AppleやSamsungなどの主要メーカーは、「防水性能を持っていても、水濡れによる故障は保証対象外」としています。
スマホの内部には「水没インジケーター(リトマス試験紙のようなもの)」があり、これが赤く反応していると、たとえ購入から1年以内でも有償修理(数万円〜)となります。
「防水だから大丈夫だと思った」という言い訳は通用しないのです。
スマホ防水性能解説の参考動画
IP68防水規格とスマホ利用のまとめ
「IP68」は、「万が一水に落としても、すぐに拾えば助かる可能性が高い保険」程度に捉えるのが正解です。
決してお風呂やプールで積極的に使うための「水中カメラ機能」ではありません。
どうしてもお風呂でスマホを使いたい場合は、防水性能を過信せず、必ず「防水ケース(ジップロックタイプなど)」に入れて物理的に水を遮断してください。
数百円のケースひとつで、10万円以上のスマホとあなたの大切なデータを守ることができます。
「防水スマホだからこそ、水には近づけない」。このパラドックスこそが、スマホを長持ちさせる秘訣です。
関連トピック
水没インジケーター(LCI):スマホ内部にある白いシール。水に触れると赤色に変色し、修理担当者に「水没した事実」を知らせる証拠となる。
結露(けつろ):暖かい場所から急に寒い場所へ移動した際などに、空気中の水分が水滴化する現象。防水スマホの天敵。
TORQUE(トルク):京セラが製造する高耐久スマホ。海水や温水にも耐える独自のタフネス性能を持つ例外的な存在。
AppleCare+:通常は保証対象外の水没故障も、この有料プランに入っていれば比較的安価な自己負担額で交換修理が受けられる。
関連資料
Apple公式サイト「iPhone 7 以降の防沫・耐水・防塵性能について」:水濡れによる損傷は保証対象外であることや、サウナやスチームルームでの使用禁止が明記されている。
JIS規格(日本産業規格):電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)の詳細な定義が閲覧可能。

