【三体考察】なぜ4光年離れていても会話できる?『智子(ソフォン)』のリアルタイム通信の仕組みを徹底解説
「智子(ソフォン)」の概要
SF超大作『三体』において、人類に絶望的な技術格差を見せつけた存在、それが「智子(ソフォン)」です。
地球と三体星系は4光年も離れており、通常なら通信に片道4年もかかります。
しかし、三体文明はこの智子を使うことで、タイムラグゼロの「リアルタイム通信」を実現しました。
この記事では、なぜそんなことが可能なのか、作中で語られる「量子もつれ」や「高次元の折りたたみ」といった概念をわかりやすく解説します。
智子が単なる通信機ではなく、最強の兵器と呼ばれる理由も紐解いていきましょう。
「智子(ソフォン)」の詳細
「三体」の物語において、最大の脅威の一つがこの「智子(ソフォン)」の存在です。
まず、地球と三体星系の距離について整理しましょう。
両者の距離は約4光年、つまり光の速さで移動しても4年かかる距離にあります。
通常の電波通信では、「もしもし」と言ってから相手に届くまで4年、返事が来るまでにさらに4年、合計8年もかかってしまいます。
これでは戦争や侵略の指揮をとることは不可能です。
そこで三体人が開発したのが、陽子(ようし)を改造したスーパーコンピューター「智子」でした。
智子のリアルタイム通信を可能にしている鍵は、「量子もつれ(Quantum Entanglement)」という物理現象です。
作中の説明によれば、量子もつれ状態にある2つの粒子は、どれだけ距離が離れていても、片方の状態が変化すると、もう片方も瞬時にその影響を受けます。
三体人はこの性質を利用し、2つの智子をペアにして「もつれ状態」を作り出しました。
片方を三体星系に残し、もう片方を地球へと送り込みます。
三体側にある智子に入力された情報は、量子もつれを通じて、地球にある智子へ瞬時に伝わります。
これにより、4光年という絶望的な距離を無視して、リアルタイムでの監視と通信が可能になったのです。
しかし、ただ通信するだけではありません。
智子のもう一つの凄さは、その作り方にあります。
陽子という極小の粒子を、11次元から2次元に「展開」することで、表面積を巨大化させました。
2次元に展開された陽子は惑星を包み込むほどの大きさになり、そこに集積回路を蝕刻(エッチング)してコンピューターを作り上げたのです。
その後、再び高次元に折りたたんで元の陽子のサイズに戻します。
こうして完成した智子は、光速に近い速度で宇宙を移動でき、地球のあらゆる場所に潜入できます。
加速器の中に入り込んで実験結果を改竄(かいざん)し、地球の物理学の発展を止めることこそが、智子の真の目的でした。
物理学が発展しなければ、人類は三体人の科学力に対抗する術を持ちません。
智子は、「科学の封鎖」と「全人類の監視」を同時に行う、まさに究極の兵器なのです。
ちなみに現実の物理学では、「量子もつれで情報は伝達できない(情報の伝達速度は光速を超えない)」というのが定説です。
しかし、『三体』ではこのルールをあえてSF的に拡張解釈することで、スリリングな物語を生み出しています。
「智子(ソフォン)」の参考動画
まとめ
智子(ソフォン)によるリアルタイム通信は、人類にとって「隠れ場所がない」という絶望を意味しました。
こちらの作戦会議も、密談も、科学実験も、すべて筒抜けだからです。
しかし、この絶望的な状況が、逆に人類を「面壁者(ウォールフェイサー)」という奇策へと走らせることになります。
智子は私たちの物理世界を支配しましたが、唯一覗けないものがありました。
それが「人間の心の中」です。
この一点の希望を頼りに人類がどう反撃するのかが、物語の最大の見どころと言えるでしょう。
もしも現実に智子のような技術が生まれたら、プライバシーという概念は消滅してしまうかもしれません。
関連トピック
量子もつれ – 離れた粒子同士が瞬時に影響し合う物理現象。
面壁者(ウォールフェイサー) – 智子の監視に対抗するために選ばれた、思考だけで作戦を練る4人の英雄。
水滴(ドロップレット) – 後に登場する、智子以上に物理法則を無視した三体文明の宇宙探査機。
暗黒森林理論 – 宇宙文明同士が出会った時に必然的に起こる対立構造を示した理論。
関連資料
書籍『三体』 – 劉慈欣による原作小説。SFの歴史を変えた傑作。
ドラマ『三体』(Netflix) – 世界的なスケールで映像化された話題作。
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ドラマ『三体』(テンセント版) – 原作に忠実な描写で評価が高い中国制作のドラマ。
書籍『三体II 黒暗森林』 – 智子との対決が本格化する続編。
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