結論:中国内部からの「崩壊」は起きないが、外部への「暴走」リスクは過去最大に
「中国経済がヤバいらしい」「軍のトップが次々と消えている」――最近、こんなニュースを目にすることが増えていませんか?建軍100周年となる2027年を目前に控えた2026年現在、中国の内情はかつてないほどの激動期を迎えています。
まず結論からお伝えします。現在の中国において、軍部によるクーデターや、国民の不満爆発による大規模な暴動(政権崩壊)が起きる可能性はほぼゼロです。高度なAI監視システムと徹底したデジタル統制によって、反乱の芽は完全に摘み取られているからです。
しかし、安心はできません。内部がガチガチに統制されているからこそ、「習近平国家主席への過剰な忖度(そんたく)」が生じ、現実を無視した対外的な軍事暴走(台湾有事など)を引き起こすリスクがかつてなく高まっているのです。国際社会でも、2025年5月に就任したドイツのフリードリヒ・メルツ首相が中国を訪問するなど、このいびつな国家構造がもたらす地政学リスクを強い警戒感を持って注視しています。
本記事では、一見難しく感じる中国の「国家安全保障」と「社会の安定性」について、最新のデータをもとにわかりやすく解説していきます。
1. なぜ中国軍(人民解放軍)のトップが次々と消えているのか?
「汚職追放」のウラで進む、深刻な軍の弱体化
現在、中国の人民解放軍では「反腐敗闘争(汚職の取り締まり)」という名目で、歴史的な大粛清が行われています。2026年初頭のデータによると、少なくとも101名の将軍・中将クラスの高級将校が公式に粛清されたり、行方不明になったりしています。これは、2020年以降に習近平主席自身が昇進させた幹部の約87%が排除された計算になり、異常事態と言わざるを得ません。
軍の司令塔が「空席だらけ」の機能不全に
この粛清の波は、日本の防衛省にあたる最高軍事指導機関「中央軍事委員会(CMC)」も直撃しました。本来7名で構成されるはずのトップ陣営が、汚職や「政治的忠誠心の欠如」を理由に次々と追放され、実質的に習近平主席と、思想統制を担当する役人の2名しか残っていない状況に陥りました。
経験豊富なトップがいなくなったことで、現場には以下のような深刻な悪影響が出ています。
- 兵器開発の麻痺:汚職撲滅の煽りを受け、軍事衛星の打ち上げ遅延や、最新鋭潜水艦の沈没事故など、兵器の質と信頼性が大幅に低下しています。
- 指揮官の不在:台湾有事などを想定した重要な部隊(戦区)で、トップのポストが空席または代理状態になっており、いざという時の意思決定ができません。
- 「事なかれ主義」の蔓延:残された将校たちは「成果を出すこと」よりも「粛清されないように目立たないこと」を最優先にするため、軍全体の活力が失われています。
弱体化しているのに「威嚇」が激しくなる矛盾
「軍が弱っているなら、おとなしくなるのでは?」と思うかもしれません。しかし現実は逆です。2025年中、中国軍の戦闘機が台湾の防空識別圏へ侵入した回数は前年比22.4%増の3,764回に達しました。
これは、残された将校たちが「私は絶対に裏切りません!役に立ちます!」と習主席にアピールするため、過剰に攻撃的な行動をとっている(威嚇行動の過激化)からです。強さの証明ではなく、恐怖からの自己防衛が、危険な軍事活動を引き起こしています。
2. 不満爆発?クーデター?中国内部で反乱が起きない理由
AIと「デジタル人民元」が反乱を100%封じる
これほど無茶苦茶な粛清が続けば、追い詰められた軍人たちがクーデターを起こしそうなものです。しかし、最新のAI予測モデルが弾き出した「2026年末までに中国でクーデターが起きる確率」は、わずか2%に過ぎません。
その理由は、中国が過去10年で作り上げた「デジタル全体主義(テクノロジーによる超監視社会)」の壁があまりにも高すぎるからです。
- 24時間体制のAI監視:誰と誰が連絡を取り合ったか、どこで会ったかなど、将校たちの日常はすべてAIで分析されています。少しでも怪しい動き(クーデターの相談など)があれば、瞬時に検知されます。
- お金の動きも丸見え:「デジタル人民元」の導入により、誰が何にいくら使ったか、国家がすべて把握できます。反乱のための資金集めや武器の購入は物理的に不可能です。
イエスマンばかりの組織が抱える「本当の暴走リスク」
影響力のある実力者が一掃されたことで、今の軍上層部には「習主席の言うことに絶対服従するイエスマン」しか残っていません。誰もクーデターを起こす力はありませんが、これが別の大きな危機を生み出しています。
耳の痛い現実(例:「今の軍事力では台湾侵攻は無理です」という専門的な意見)を進言できるベテランがいなくなったため、トップの周辺には「戦争は簡単に勝てます!」という非現実的な楽観論ばかりが集まるようになりました。この「間違った情報による自信過剰」が、意図しない大きな戦争(対外的な暴走)を引き起こす最大の火種なのです。
3. 経済低迷と若者の「寝そべり」…市民の暴動は起きないの?
ストライキは激増中!でも「大暴動」にはならないカラクリ
一方、市民生活に目を向けると、不動産バブルの崩壊や、若者の記録的な失業率により、経済は深刻な停滞期に入っています。終わりの見えない過酷な競争(内巻)に疲れ果てた若者たちは、あえて競争から降りて最低限の生活を送る「寝そべり」というライフスタイルを選び、静かに抵抗しています。
生活が苦しくなった労働者による未払い賃金を求めるストライキなどの抗議活動は、2025年には前年比44%増と爆発的に増えています。しかし、これが政権を倒すような大暴動に発展することはありません。中国政府は「アメとムチの使い分け」が非常に上手いからです。
- ただの「お金の不満」は適度にガス抜き:工場での賃金未払いデモなどは、すぐに武力鎮圧せず、企業に少しだけ支払いをさせて労働者をなだめます。
- 「政治的な不満」は徹底的に潰す:全国規模で連帯しようとする動きや、体制を批判する組織に対しては、容赦なく徹底的に弾圧し、運動が広がるのを物理的に遮断します。
中国発の最新AIがデモの火種を瞬時に消し去る
さらに、社会の不満を抑え込む最強の武器となっているのが「サイバー検閲」です。2025年に世界に衝撃を与えた中国の超高性能AI「DeepSeek」などの技術は、監視インフラにも応用されています。
例えば、若者に人気のSNSでデモを呼びかけるような動画が投稿されても、AIが即座に文脈や映像を解析し、人の目に触れる前に自動で削除してしまいます。人々が集まって不満を共有する「場」そのものが、ネット上から完全に消し去られているのです。
4. まとめ:私たちが本当に警戒すべき「中国の脅威」とは?
ここまで見てきたように、現在の中国は「内部の反乱は絶対に起きない鉄壁の監視体制」と、「軍事・経済がボロボロになりつつある機能不全」を同時に抱え込んだ、非常にアンバランスな状態にあります。
私たちや国際社会が想定すべきメインシナリオは、「中国が内側から崩壊すること」ではありません。真に警戒すべきは以下の点です。
- 国内の経済的ストレスから国民の目をそらすため、台湾や周辺海域で過激な軍事行動(外への八つ当たり)に打って出るリスク。
- 正しい助言ができる専門家が不在のため、指導部が現実を見誤り、破滅的な軍事衝突を引き起こしてしまうリスク。
圧倒的な統制力を持つがゆえに、軌道修正ができなくなっている巨大国家・中国。その「いびつな安定」が外の世界へどのような影響を及ぼすのか、私たちは冷静に、かつ強い警戒感を持って備える必要があります。
参考リンク
- China’s five-year plan confronts economic reform amid geopolitical competition
- Analysis of China’s 15th Five-Year Plan and Its Expected Impact on China’s Military Modernization – Defense Security Monitor
- Proposal of the Central Committee of the Chinese Communist Party on Drawing Up the 15th Five-Year Plan for National Economic and Social Development
- The Purges Within China’s Military Are Even Deeper Than You Think
- China’s ‘Involuted’ Economy – Socialist Alternative
- Taiwan redefines first strike definition against China | China to use TikTok to influence 2024 US elections, says the US Director of National Intelligence
- The People’s Republic of China’s Military Purge Nexus – Sovereign …
- Discipline and Power: Xi Jinping’s 2026 Military Purges | India’s World
- When Loyalty Becomes Liability: The Fall of Zhang Youxia and Xi’s …
- Chairman of the Central Military Commission (China) – Wikipedia
- 中国、制服組トップ2人が失脚:崩れゆく中国と動き始めた米国 2026年、東アジア秩序の再編が始まった(1/5)
- Xi Jinping, the Chinese Military and the Struggle for Power – MP-IDSA
- Xi Vs The Generals: Why It Matters To India – Rediff.com
- Liu Zhenli: Latest News and Updates | South China Morning Post
- Operation Sindoor may be longest beyond-visual-range air battle ever: IISS | India News
- ¿Puede la purga de un general del Ejército chino puede afectar al …
- He Weidong: The general who tested Xi Jinping’s ultimate taboo
- China’s fragile online spaces for debate | Merics
- Censored but unstoppable: How male desire and grievances go viral in China
- Analysis of the psychological path of merchants’ use of central bank digital currency: evidence from digital RMB – Frontiers
- Architecting Inclusion in e-CNY: Settlement-Upon-Payment, Domestic Interoperability, and User Control – MDPI
- Xi Jinping’s Military Purges Leave Him Increasingly Powerful but Isolated
- China’s 15th Five-Year Plan + German Chancellor Merz’s visit to China
- China’s 15th Five-Year Plan: PLA Modernization, Military-Civil Fusion and the Structural Contradictions of Xi Jinping’s Purge-Driven Defense Reforms (2026–2030)
- “Lie Flat”– Chinese Youth Subculture in the Context of the Pandemic and National Rejuvenation – ResearchGate
- Issue 11: October – December 2025 – Freedom House
- Labor Protest in China – После – Posle Media
- Lost Signals: How the China Labor Bulletin Closure Affects Economic Intelligence – Medium
- Full article: Tactics and Targets: Labor Protest and State Response in China
- Full article: The Logic of Stability Maintenance in China’s NGO Governance: Balancing Weiwen Through Incorporation and Suppression – Taylor & Francis
- How the AI boom shrugged off the DeepSeek shock and keeps gaining steam | PIIE
- Chips, China, and a Lot of Money: The Factors Driving the DeepSeek AI Turmoil
- What DeepSeek Really Changes About AI Competition – RAND
- DeepSeekの衝撃 | 経済 | 中国学.com
- Is DeepSeek a proof of concept? – Atlantic Council
- Chinese Regulator Summons ByteDance, Alibaba’s Platforms Over Content Violations
- (PDF) Analysis of the Public Opinion Evolution on the Normative Policies for the Live Streaming E-Commerce Industry Based on Online Comment Mining under COVID-19 Epidemic in China – ResearchGate

