はじめに
スマートフォンの部品や電気自動車のモーターなどに欠かせない貴重な資源「レアアース」。ニュースなどで特定の国からの輸入に頼っているリスクが報じられるたび、「これからの日本の産業は大丈夫なのだろうか」と不安や疑問を感じていませんか?実は今、日本は海の底に眠る資源の確保や、レアアースをまったく使わない驚きの新技術の開発など、未来を守るための壮大な作戦を急速に進めています。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】南鳥島沖での深海底レアアース泥の採掘プロジェクトとその現実
- 【テーマ2】レアアースを一切使わない「フリー技術」の劇的な進化
- 【テーマ3】オーストラリアやアメリカとの連携による供給網の多角化と国家備蓄の重要性
この記事を読めば、日本の経済安全保障の最新動向と、未来の日本の産業を守るための官民一体となった取り組みがすっきりと分かります。私たちの生活を支える最先端テクノロジーの裏側にある、熱い資源戦略について一緒に見ていきましょう!
転換期を迎えるグローバル資源覇権と日本の経済安全保障戦略
産業のビタミン「レアアース」が持つ極めて重要な役割
現代の産業構造や技術革新において、レアアース(希土類)は「産業のビタミン」と呼ばれており、デジタル技術による社会の変革(DX)や、地球環境に優しいクリーンエネルギーへの転換(GX)を進める上で、なくてはならない極めて重要な物質としての地位を築いています。レアアースとは、ネオジムやジスプロシウムをはじめとするランタノイドと呼ばれる15個の元素に、スカンジウムとイットリウムを加えた、合計17個の元素のグループを指します。これらの元素は、それぞれ独自の優れた磁気的・光学的な特性を持っています。そのため、電気自動車(EV)を動かすモーター、風力発電に使う大型のタービン、スマートフォン、パソコンのハードディスク、LED照明といった身近な電化製品から、戦闘機やミサイルの誘導システムといった高度な防衛用の兵器に至るまで、非常に幅広い、そして国を守るためにも致命的な領域で使用されています。
中国による圧倒的な独占と、2025年に始まった輸出コントロールの衝撃
しかしながら、世界のレアアース市場は長年にわたり、中華人民共和国による圧倒的な寡占状態、つまり市場の独占状態に置かれてきました。中国は、陸上にある豊富な鉱床を持っているだけでなく、さまざまな元素が混ざり合っている鉱石から特定の元素だけを取り出す「分離・精錬」という、地球環境への負荷が非常に高く、技術的にも極めて難しい工程において、世界全体のシェアの90%以上を支配しているとされています。この精錬工程における圧倒的な独占的地位は、欧米や日本などの西側諸国に対する強力な政治的・外交的なカード(地政学的カード)として使われてきました。そしてこの懸念は現実のものとなり、2025年4月4日、中国政府(商務部および海関総署)は、国家の安全と利益を守ること、および軍事目的への転用を防ぐことを名目に、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムという「中・重希土類」と呼ばれる特に貴重な7つの元素に対して、輸出の管理を厳格化する措置(商務部海関総署公告2025年第18号)を開始しました。
日本の資源自立に向けた「三本柱」の国家戦略
このような国際情勢の激しい変化と、資源の供給網(サプライチェーン)が途絶えてしまうリスクを背景に、日本国内では自給率を向上させるための取り組みが急ピッチで進められています。その戦略は、特定の国への依存から脱却するための「三本柱」で構成されています。具体的には、①深海底にある資源の開発、②レアアースを一切使用しない(フリー)技術の確立、③同盟国や友好国との連携による調達ルートの多角化、という3つのアプローチが急速に推し進められています。とりわけ2026年2月には、東京都の遥か南東にある南鳥島沖合の、日本が管理できる海の範囲(排他的経済水域・EEZ)において、地球深部探査船を用いた「レアアース泥」の回収試験が世界で初めて成功を収め、日本の資源戦略における歴史的な転換点として大きな注目を集めました。この大きな成功を受けて、政治のトップからは、国産化による完全な資源の自給を力強く宣言する発言も飛び出しました。本記事では、2026年時点における最新の科学的データや国際的な動向に基づき、南鳥島沖のレアアース泥採掘の実態とこれからの展望、レアアースを使わない技術の最前線、コストが高いとされるオーストラリアやアメリカからの代替調達が持つ本当の意味、そして日本の経済安全保障戦略の全貌について、分かりやすく網羅的な分析をお届けします。
高市首相発言の真意と限界:南鳥島レアアース泥採掘の「現実」と深海底探査の最前線
探査船「ちきゅう」による水深6000メートルからの歴史的揚泥成功
日本の国産レアアースを確保するという長年の悲願は、2026年の初頭に極めて重要な大きな節目(マイルストーン)に到達しました。国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する、世界最高水準の能力を持つ地球深部探査船「ちきゅう」が、東京都心部から南東に約1950〜2000キロメートル離れた南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内において、水深約5700〜6000メートルという途方もない深海底から、レアアースを高濃度で含む泥(レアアース泥)を引き揚げることに見事に成功したのです。
この画期的なプロジェクトは、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として実施されました。探査船「ちきゅう」には、日本の専門商社であるコスモス商事を通じて納入された、採鉱試験用の採鉱機、揚泥管(泥を吸い上げるパイプ)、浮力体、そして遠隔操作ができる無人探査機などが搭載され、最新鋭の装備でこの前人未到の深海探査に臨みました。全体のスケジュールとしては、2026年1月12日に事実上の母港である静岡県の清水港を出港し、1月17日に現地の海域へと到着しました。船独自のシステム試験を丁寧に行った後、1月30日から実際の泥の回収作業を開始し、2月1日の未明に、最初のレアアース泥が船の上にしっかりと揚泥されたことが確認されました。この作業は、長さ10メートルの揚泥管(パイプ)を約600本も実につなぎ合わせ、ものすごい水圧や激しい海流の影響を受ける過酷な環境下で、海底の泥を連続的に吸い上げ続けるという、世界で初めての実証試験でした。また、このプロジェクトには、日本の町工場の素晴らしい知恵と技術を結集して作られた小型無人深海探査機「江戸っ子1号」も大きく貢献しており、日本の複合的な技術力が結集された輝かしい成果であると言えます。
南鳥島の周辺にある海底の泥には、中国が先んじて輸出の規制を敷いているジスプロシウム、ネオジム、サマリウム、イットリウム、ガドリニウムなど、価値が非常に高い中・重希土類が極めて高い濃度で含まれていることが、東京大学の加藤泰浩教授らの研究グループによって2011年および2013年にすでに確認されており、その資源としての潜在能力(ポテンシャル)は世界有数であるとされています。松本洋平文部科学相は、パイプを傷つけることなく大深度から泥を揚げ続ける高度な技術力を高く評価し、「世界最先端の、わが国の大きな一歩になるかもしれない」と称賛しました。また、小野田紀美科学技術担当相(経済安全保障担当)も、特定の国への依存から脱却するための重要なプロセスが証明されたことを歓迎し、次の段階である経済性の評価へと進むことに大きな期待を寄せました。
これらの歴史的な成果を背景に、高市早苗首相は街頭演説において「日本はこれから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」と力強く訴えました。この発言の本当の狙いは、四方を海に囲まれた海洋国家である日本が、長年の弱点(アキレス腱)であった重要鉱物の中国依存を完全に断ち切り、自立した資源大国へと生まれ変わるという「国家としての強い意志」を、国内だけでなく、資源を外交の武器として使う諸外国に向けて力強くアピールすることにあったと解釈することができます。
資源開発の第一人者による指摘と立ちはだかる「死の谷」
しかしながら、科学的な、そして資源経済学的な現実をよく知る専門家からは、この政治的な発言に対して、強い懸念や厳しい意見も巻き起こりました。レアメタルやレアアースの研究に長年第一線で取り組んできた専門家である、東京大学生産技術研究所の岡部徹教授は、首相の「レアアースには困らない」という言葉に対して「いいかげんにしろ」とあきれ顔を見せ、「コストや本当に実用化できるかどうかの可能性を、まさにこれから検証していこうという段階なのに、首相の発言は確実におかしい」と厳しく指摘しました。
この指摘の背景には、資源の学問において、単に地球上に存在する量を指す「埋蔵量」と、ビジネスとして実際に採掘して利益を出せる量を指す「商業的に採掘可能な量(可採鉱量)」との間には決定的な違いがあること、そして莫大な費用という大きな壁が厳然として立ちはだかっているという現実があります。深海底に質の高い資源の泥が存在するという科学的な発見から、それをビジネスとして安く安定して世の中に供給する実用化の段階にたどり着くまでには、容易には越えられない「死の谷(デスバレー)」と呼ばれる大変な困難が横たわっているのです。
第一の壁は、「天文学的な運用・採掘コスト」です。地球深部探査船「ちきゅう」を動かすためには、年間で百数十億円、1日あたりに換算するとなんと数千万円という途方もない費用が必要とされます。東京都から約2000キロメートルも離れた絶海の孤島の周辺で、水深6000メートルという気の遠くなるような深さまで巨大なシステムを下ろし、連続して泥を吸い上げて長い距離を運んでくるという一連のプロセスは、物理的にも工学的にも、どうしてもコストが高くなってしまう構造を持っています。現段階の試算では、安い労働力とすでに整っているインフラを使って、陸の上で地面を削るようにして(露天掘り)大量に生産される中国産のレアアースが持つ圧倒的な安さに立ち向かうことは、経済的な合理性の観点からほぼ不可能に近いと言わざるを得ません。
第二の壁は、「国内における分離・精錬インフラの不足と環境への負荷」です。海底から引き揚げた泥は、そのままではスマートフォンや自動車などの工業製品に使うことはできません。多種多様なレアアースの元素が複雑に混ざり合っている泥から、目的の元素だけを不純物のない純粋な物質としてバラバラに分ける(分離精製する)ためには、大量の化学薬品を使った非常に複雑な工程が必要となります。この分離の工程においては、重金属を含んだ汚泥や有毒なガス、場合によっては微量の放射性物質(トリウムなど)といった、深刻な環境汚染物質が発生してしまいます。かつては欧米の国々や日本もこの精錬事業を自国内で行っていましたが、厳しい環境規制に対応するための費用が高騰したことにより事業から撤退してしまいました。その結果、環境への規制が比較的緩く、国からの手厚い補助金があった中国に、世界の精錬シェアが集中するという現在の事態を招いてしまったのです。
国内精錬技術の歴史と再結集に向けた課題
幸いなことに、日本国内には、信越化学工業や三井金属といった、過去の素晴らしい経験に基づく世界トップクラスの精錬技術を持つ企業が今も存在しています。信越化学工業は1961年、当時カラーテレビの画面を光らせるための蛍光体の需要が高まったことをきっかけにレアアースの研究をスタートさせ、希土類が含まれる液体と有機溶媒の性質の違いを利用して各元素をきれいに分ける「溶媒抽出法」という技術をコアとして確立しています。同社は福井県にある武生工場において、非常に精密な分析装置(ICP発光分光分析装置やグロー放電質量分析装置・GDMS)をフルに活用した高度な評価体制を整え、世界的な基準(ISO規格)にしっかりと準拠した高品質な製品の製造を今も続けています。
また、三井金属のレアマテリアル事業部も、日本におけるレアアース産業を文字通り引っ張ってきた先駆者(パイオニア)です。1963年に設立された日本イットリウムという会社をルーツに持ち、1966年には日本で初めて「イオン交換法」という技術を使って高純度な酸化イットリウムの精製に成功しました。さらに1967年には、イギリスの有名な鉱山会社(リオティント社)のグループから溶媒抽出法を導入し、中・重希土類(サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウムなど)を大量に生産できる体制を作り上げました。その後も、サマリウムとコバルトを使った特殊な合金の粉末や、電子部品の製造に使うスパッタリングターゲットと呼ばれる材料の生産など、技術の幅をどんどん拡大してきました。そして2025年には、日本イットリウムを三井金属に完全に吸収合併して新しく「レアマテリアル事業部」を立ち上げるなど、技術を守り育てるための体制強化を図っています。
これらの企業が持つ技術力は非常に素晴らしいものであるものの、現在、日本国内には大規模に最初の精錬を行うための工場(一次精錬インフラ)が存在していません。海底の泥からビジネスとして成り立つ規模で精錬を再び始めるためには、これら国内企業が持つ優れた精錬技術をもう一度一つに集めるだけでなく、数千億円規模という膨大な設備への投資、そして厳格な環境への影響調査(環境アセスメント)をクリアすることが絶対に必要となります。したがって、高市首相の発言は資源としての可能性を強調した前向きなメッセージであり、実際の中身としては「国産化への貴重な第一歩を踏み出したばかりであり、本当に国として自立できるようになるまでには、数十年の時間とたくさんの費用がかかる」というのが、美化されていない本当の現実です。
海洋発掘の将来展望:商業化へのロードマップと地政学的リスク(まだまだ先の話か?)
読者の皆さんが抱く「海洋発掘で実際にレアアースが使えるようになるのは、まだまだ先の話なのだろうか?」という疑問に対しては、「ビジネスとして大量に生産し、安く販売できるようになるまでには、やはりそれなりの時間(少なくとも2030年代以降)がかかりますが、国を挙げた一大プロジェクトとしての実験や証明の段階は、事前の予想を上回るスピードで着実に進んでいます」とお答えすることができます。
これからの具体的な計画(ロードマップ)として、日本政府とJAMSTECは、2026年1〜2月の水深6000メートルでの回収成功をバネにして、次なるステップとして2027年2月に「1日あたり350トンものレアアース泥を実際に海底から採掘する、本格的な実証試験」へと進む計画を立てています。経済産業省などは、将来的にビジネスとして採算が取れる境界線をこの「1日350トン」と見込んでおり、これを実現するためには、使う船や泥を吸い上げるシステムをさらに巨大化させること、そして南鳥島の現地で引き揚げた泥から水分を絞り出すための施設を新しく整備するなど、インフラの大幅なパワーアップが求められています。引き揚げた泥から実際にレアアースを取り出す試験や、費用対効果の評価が順調に進めば、国産レアアースが持つ戦略的な価値がよりはっきりとし、国としてどれくらいの補助金を出してこの実用化を強力に後押ししていくかという、本格的な議論がいよいよ始まります。
さらに、海の底の資源開発を語る上で、絶対に避けて通ることができないのが「国際的な安全保障のリスク(地政学的リスク)」への対応です。2025年6月には、中国海軍の航空母艦「遼寧」を中心とする軍艦の艦隊が、南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内に一時的に侵入するという事案が発生しました。この行動は、日本が進めている海底資源の探査活動に対する、あからさまな牽制やプレッシャーを与える意図があったと、軍事の専門家から指摘されています。加えて、日本国内での資源の自給自足が進むのを邪魔するために、将来的にこの海底レアアース事業に対して技術の協力やお金のサポートを行う日本の民間企業を狙って、中国側が「言うことを聞かなければ、我が国からレアアースを輸出してあげないぞ」と脅しをかけるような、経済的な圧力(経済的威圧)への懸念も現実のものとして浮き彫りになっています。
このような目に見える脅威に対して、日本政府は同盟国との固い連携によって、相手に思いとどまらせる力(抑止力)を高める動きを見せています。2026年3月に行われた日米首脳会談においては、「海洋鉱物資源の開発に関する覚書」という大切な約束が交わされ、その文書の中に「南鳥島」という具体的な名前がはっきりと明記されました。これは、最先端の産業に欠かせない重要鉱物を確保するという日米共通の大きな課題に対して、アメリカが日本の深海底探査を公式にサポートし、共同で開発を進める枠組みを作ることで、特定の国の独占に対抗していくという強い意志の現れにほかなりません。したがって、海洋発掘は単なる科学技術の枠を超えて、海や空の防衛力を維持することとも直結した、国全体の総合的な安全保障プロジェクトとして進めざるを得ない緊迫した状況にあります。
レアアース危機を契機とした代替・省資源化技術の飛躍的進化(フリー技術の現在地)
海の底にある資源をビジネスとして使えるようにする取り組みが長期戦となる中で、日本の産業界が最も早く効果が出る対抗策として全力を注いできたのが、「レアアースを最初から使わない、あるいは使う量を限界まで減らす技術(代替・省資源化技術)」の開発です。とりわけ2025年から2026年にかけて、この分野において世界をリードする素晴らしい技術的な大進歩(ブレイクスルー)が達成されました。
プロテリアルによる「重希土類フリー」ネオジム焼結磁石の開発
2025年7月22日、日本の大手素材・部品メーカーである株式会社プロテリアルは、電気自動車(EV)を動かすモーターにそのまま使える「高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石」の開発に見事に成功したと発表しました。この技術は、長い間中国の資源に縛られてきた世界中のモーター業界の前提をガラリと変えてしまう、歴史的な成果と言えます。
これまでは、EVやハイブリッド車の強力なモーターに使用される高性能な永久磁石(ネオジム-鉄-ボロン磁石)を作る際、モーターが激しく動いて高温になったときに磁力が弱まってしまうのを防ぐために、ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった「重希土類」と呼ばれる元素を混ぜることがどうしても不可欠でした。これらの重希土類は、一般的なネオジムなどに比べて地球上に存在する量が圧倒的に少なく、しかも中国南部の特定の地域に生産が極端に偏っているため、常に資源がなくなってしまうリスクや、価格が急激に跳ね上がったり暴落したりするリスクを抱え続けていました。
プロテリアルが開発した新しい技術は、これらの心配な重希土類を「完全に一切使わない(使用量ゼロ)」という、驚くべき画期的なものです。同社は、長年コツコツと積み重ねてきた独自の金属組織や成分をコントロールする優れた技術に加え、製品を作るプロセスにおいて不純物を徹底的に排除し、成分のバランスを極限まで最適化することで、重希土類をまったく使わないにもかかわらず、強い磁力(残留磁束密度)と、熱に負けて磁力が弱まらない粘り強さ(保磁力)を高いレベルで両立させることに成功したのです。
新しく開発された次世代の磁石は、使う目的やその特徴に合わせて、以下の2つのタイプ(世代)に分けられています。
| 開発材料の世代 | 製品名 | 磁力の強さ (残留磁束密度: Br) |
熱への強さ (保磁力: HcJ) |
想定される用途および量産化のスケジュール |
|---|---|---|---|---|
| 第3世代 | NMX™-F1SH-HF材 | 1.40T | ≥1671kA/m | 自動車の電動パワーステアリング、エアコンのコンプレッサー、EVの駆動モーターなど。すでに量産工場で作ったサンプルの提供をスタートさせています。 |
| 第4世代 | NMX-G1NH-HF材 | 1.42T | ≥1830kA/m | 特に強い力と高い耐熱性が求められるEVの駆動用モーター向け。100℃以上の厳しい高温環境にもしっかりと対応します。2026年4月より量産工場でのサンプル対応を開始しています。 |
表1:プロテリアルが開発した重希土類フリーネオジム焼結磁石の特性比較(出典:株式会社プロテリアル、2025年発表データに基づく)
この重希土類をまったく使わない画期的な技術が確立されたことにより、日本のEVメーカーやモーターを作る企業は、相手の国の気まぐれな輸出規制に怯えることなく、高性能なモーターをいつでも安定して設計・生産することができるようになりました。また、値段の変動が激しい高価な重希土類を使わないことで、材料を買い揃える費用の乱高下を未然に防げるだけでなく、磁石そのものの基本性能(磁力の強さ)がこれまでのものよりもアップしたため、モーター自体をより小さく、そして力強く(高トルクに)作ることが可能になりました。その結果、自動車全体のエネルギー効率が良くなり、走るために使う電気が減ることで、二酸化炭素(CO₂)の排出量を減らすことができるという、地球環境にとっても嬉しいプラスアルファのメリットを同時に生み出しています。
家庭用電化製品からのリサイクル技術の確立
使わない技術の開発と並行して、私たちの身の回りにある使用済みの製品を「都市の鉱山」に見立てて、そこからレアアースを賢く回収するリサイクル技術も、いよいよ本格的に役に立つ段階を迎えています。2026年6月、総合電機メーカーの三菱電機は、日本国内で初めてとなる、使い終わった家庭用のルームエアコンなどのコンプレッサー(心臓部の機械)からレアアースの磁石を直接きれいに取り出し、それを自社の新しい製品の部品としてもう一度生まれ変わらせる「自己循環リサイクル」を本格的に始めると公式に発表しました。
これまでは、家電製品の中に組み込まれていたレアアースの磁石は、細かく分解して取り出すために大変な手間と費用がかかるという理由から、製品ごと大きな機械で粉々に粉砕(シュレッダー)され、鉄などの一般的な金属と一緒に価値の低いスクラップとして処理されてしまうか、そのままゴミとして捨てられてしまうことがほとんどでした。三菱電機が作り上げた自己循環システムは、製品を新しくデザインする段階から、後でバラバラに解体して回収しやすいような工夫(エコデザイン)をあらかじめ取り入れ、専用の自動分解装置や、磁石の磁力を一時的に消し去る高度な技術を組み合わせることで、非常に高い確率で資源を回収し、再び利用することを可能にしたものです。
また、先ほどご紹介した三井金属も、持続可能な社会を目指す世界共通の目標(SDGs)への取り組みとして「つくる責任 つかう責任」を掲げ、独自の高度な精製技術をフルに活かして、レンズの磨き粉などに使われるセリウムと呼ばれるレアアースのリサイクル事業を、国の機関(JOGMEC)の協力のもとで2009年から地道に推進しており、現在そのリサイクルの範囲をさらに大きく広げています。このように、国内でぐるぐると資源を回し続けるリサイクル技術が社会の中に普及していくことは、外国からの輸入に頼る割合を引き下げ、国内だけで資源の守りを固める上で、非常に心強いディフェンスの手段となっています。
供給網の多角化戦略:高価な豪州・米国産調達の経済的合理性と日米豪アライアンス
日本国内における深海底からの資源採掘が本当にビジネスとして成り立つまでにはそれなりの時間がかかり、プロテリアルなどが開発したレアアースを使わない技術(フリー技術)が、今世の中にあるすべての製品を今すぐそっくりそのまま置き換えられるわけではありません。そのため、これからの数年から十数年という期間をしっかりと乗り切るための、最も現実的で、かつ絶対に欠かせない解決策は、中国以外の国(大切な同盟国や友好国)からの確実な調達ルートをいくつも確保し、資源の仕入れ先をバラバラに分散させること(多角化)に尽きます。
読者の皆さんの疑問にある「オーストラリアやアメリカなどから輸入するレアアースは値段が高いのではないか」という指摘は、自由な市場経済のルールから見れば、完全にその通り、事実です。中国産のレアアースがこれほどまで圧倒的に安かった理由は、長年、地球環境を守るための対策費用をほとんど無視して強引に採掘や精錬を行ってきたことや、国からの手厚い補助金を使って意図的に価格を安くコントロールすることで、他の国の新しいレアアース企業がビジネスに参入してくるのを徹底的に邪魔する戦略(略奪的価格設定)を取ってきたためです。しかし、この「安さ」という甘い蜜の裏には、政治的な思惑によってある日突然供給を止められてしまうかもしれないという、非常に恐ろしいリスク(チャイナリスク)が常に背中合わせで潜んでいます。そのため、日本をはじめとする西側諸国は今、多少の費用の高さを「国の安全や産業を守るための、絶対に払うべき大切な保険料」として割り切り、政府が先頭に立って、特定の国に頼らない強固な調達ネットワークの構築に全力を挙げています。
双日、JOGMEC、そしてライナス社の戦略的提携の深化
日本が進める調達先の多角化戦略において、最も大きな成功を収め、そして現在もドラマチックな拡大を続けているのが、オーストラリアの巨大なレアアース企業である「ライナス・レアアース社」との非常に強いパートナーシップです。
日本の総合商社である双日は、前身の会社時代を含めて1960年代からレアアースを扱ってきた、この分野の頼もしいパイオニアです。その双日が、国の独立行政法人である「エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」と共同で、新しく「日本オーストラリア・レアアース株式会社(JARE)」という特別な会社を立ち上げました。このJAREは、2011年に起きたレアアースショック(尖閣諸島周辺での重大な事件をきっかけに、中国が日本への輸出を事実上ストップさせた事件)の苦い経験を忘れることなく、ライナス社に対して大規模なお金のサポート(投融資)を行い、西オーストラリア州にあるマウントウェルド鉱山から掘り出される「軽希土類」という資源の、日本向けの独占販売権をしっかりと獲得し、日本のものづくり産業の土台を長年支え続けてきました。
この戦略的な協力関係は、2025年から2026年にかけて、一般的な軽希土類だけでなく、最も手に入りにくい最重要物資である「重希土類」の確保へと、非常に大きな進化を遂げました。
| 時期 | 双日・JOGMEC・ライナス社による連携の主要な成果 |
|---|---|
| 2011年 | 双日とJOGMEC(JARE)がライナス社への大規模な資金協力を開始しました。軽希土類を日本向けに独占して販売する契約を結び、日本の調達ルートの大きな土台をしっかりと確保しました。 |
| 2023年3月 | JAREはライナス社との間で、電気自動車のモーターなどに絶対に欠かせない「ジスプロシウム(Dy)」と「テルビウム(Tb)」の全生産量の中で、**最大65%**という高い割合を日本市場に向けて優先的に供給してもらうという、非常に心強い契約を結びました。 |
| 2024年 | 日本側からの技術的な、そして資金的なバックアップを受け、オーストラリアのマウントウェルド鉱山において新しい地道な探査掘削プログラムを完了させました。これにより、地中に眠る資源の量を再確認し、これからの採掘の土台を一段と強固なものにしました。 |
| 2025年10月 | ライナス社から日本へ向けた、大変貴重な「重希土類(ジスプロシウム、テルビウム)」の記念すべき最初の輸入が正式にスタートしました。オーストラリアで掘り出した鉱石を、マレーシアにある高度な工場で丁寧に分離精製して届けるという、世界的な大成功事例となりました。 |
| 2026年3月 | 双日とライナス社は、新しい鉱山の探査や新しい開発に関する大切な覚書(MoU)を交わしました。長年の供給契約をさらに良い内容に見直し、貴重な中・重希土類の日本への優先供給量を、生産量の**75%**へとさらに大きく引き上げることで合意しました。 |
| 2026年度 第1四半期 |
中国が2025年に輸出のコントロールを開始した「サマリウム(Sm)」を含む、4つの新しいレアアース元素の日本向け輸入を本格的に開始しました。 |
表2:双日・JOGMECとライナス社による豪州産レアアース調達の進展(出典:双日株式会社およびLynas社プレスリリース)
これまでライナス社が持つ工場の設備では、技術的な限界から、ネオジムなどの軽希土類しか作ることができませんでした。しかし、日本政府からの力強いお金のバックアップと、両社が持つ高い技術力を組み合わせることにより、マレーシアにある精錬プラントなどにおいて、ビジネス規模で重希土類をきれいに分離して作り出す仕組みが完全に見出されたのです。特に2026年からのサマリウムなどの新しい輸入のスタートは、相手の国が行ってきた突然の輸出規制に対して、非常にスピーディーで、かつピンポイントで効果を発揮する見事な対抗策(カウンターメジャー)として、専門家の間でも高く評価されています。
米国防総省の直接投資と日米共同の「オンショアリング」
オーストラリアとの強力なタッグに加え、大切な同盟国であるアメリカ国内における資源の供給網の再構築も、日本の経済安全保障と深く結びついています。2025年から2026年にかけて、アメリカの国防を司る「米国防総省(DoD)」は、最先端の武器や産業に使うレアアース磁石の国内調達パワーを強めることを目的に、アメリカ国内で唯一今も稼働しているマウンテンパス鉱山を保有する「MPマテリアルズ社」に対して、約4億ドルという驚くほど巨額の直接投資を行いました。
これまでアメリカは、自分の国の中でレアアースの鉱石をたくさん掘り出しながらも、それをきれいに分けるための精錬工場が国内になかったため、掘り出した泥や石の大半をわざわざ一度中国へと輸出し、中国の工場で加工された完成品の永久磁石をわざわざ高いお金を払って輸入し直すという、非常に脆く、矛盾に満ちた一本道のサプライチェーン構造を抱えていました。国防総省による今回の巨額の投資は、鉱山の採掘から、高度な分離精製、金属の合金化、そして最終的な磁石の製造に至るまでのすべての工程を、すべて北米大陸の中で完結させる「オンショアリング(自国回帰)」を一気に推し進めるための、決定的な一手となりました。長期的には、アメリカ国内で生まれたクリーンで安全なレアアース製品が、日米の固い同盟国ネットワークの中でピンチの際にお互いに融通し合える体制が整う見込みであり、日本の調達先の多角化をすぐ横から強力にサポートしてくれる心強い追い風となっています。
中国による「資源の武器化」と日本の防衛策:タングステン・ショックと国家備蓄180日体制
これまでご紹介してきた日本のさまざまな取り組み(深海底からの採掘の実験、重希土類をまったく使わない磁石の開発、オーストラリアからの多少高価な調達の容認など)が、これほどまでにハイスピードで、そして多額の国家予算を惜しみなく投入して進められている最大の理由は、特定の国による「資源を外交の武器として使う行為(資源の武器化)」が、かつてないほどあからさまに、そして容赦なく実行されつつあるからです。
2025年における特定レアアース輸出管理厳格化の衝撃
先ほども触れました通り、中国政府は2025年4月4日、自国の法律(両用物資輸出管制条例など)を根拠にして、7種類の大変貴重な中・重希土類に対する大規模な輸出のコントロール(規制)を発動しました。この規制のターゲットに選ばれた各元素とその主な使い道を見てみると、現代のハイテク産業の急所を正確に突いてくる、非常に戦略的なチョイスになっていることが分かります。
- サマリウム(Sm): 非常に高い温度の環境下でも磁力がまったく落ちない「サマリウム・コバルト磁石」のメインの原料です。軍事用のレーダーや、宇宙へ行くロケット、航空機器になくてはならない存在です。
- ガドリニウム(Gd): 病院で行うMRI検査の造影剤や、原子力発電所の原子炉の出力をコントロールする制御棒(中性子を吸収する材料)、特殊な強い合金などに使われます。
- テルビウム(Tb): ネオジム磁石の熱への強さを大幅にパワーアップさせるために必須の元素です。緑色に光る蛍光灯などの材料としても活躍します。
- ジスプロシウム(Dy): テルビウムと同じく、電気自動車(EV)のモーターに使う磁石が熱でダメにならないようにするために、絶対に欠かせない最重要の重希土類です。
- ルテチウム(Lu): がんの検査などで使われるPETスキャナーの精密な結晶材料や、化学工場での特定の触媒として使用されます。
- スカンジウム(Sc): 軽くて強いアルミニウムと混ぜ合わせることで、航空機や宇宙船の、非常に軽くて頑丈な機体パーツを作るために使われます。
- イットリウム(Y): 電気抵抗がゼロになる高温超伝導の材料や、レーザー手術などで使うレーザー発振器(YAGレーザー)、特殊な強いセラミックスなどに広く利用されています。
中国政府は資源を輸出する業者に対して、これらの物資を海外へ送り出す際には、軍事用にも民生用にも使える特別な物資(両用物資)としての非常に厳しい審査と、国からの許可証(ライセンス)の申請を義務付けました。これにより、書類にほんの少しの不備があるという理由や、「我が国の安全保障上の心配がある」といった大義名分を盾にして、相手の国の胸三寸で、いつでも合法的に日本やアメリカなどへの輸出をピタリと差し止めたり、手続きをわざと遅らせたりすることが可能な、恐ろしい仕組みが完成してしまったのです。
2026年タングステン・ショックが示す未来のリアルなシナリオ
「レアアースの供給が止まるかもしれないなんて、ただの脅しや机の上の空論だろう」と楽観視することは絶対にできません。なぜなら、他の貴重な金属(レアメタル)の市場で、まさに同じような事件が起きて日本のものづくり産業を恐怖に陥れたからです。それが、2026年の前半に日本の製造業を直撃した「タングステン・ショック」と呼ばれる大事件です。
タングステンは、地球上の金属の中でもトップクラスに硬く、ものすごい熱を加えても溶けない(融点が高い)という非常に優れたレアメタルです。自動車の頑丈なエンジン部品を削って加工する工具や、飛行機のパーツ、そして半導体を製造する精密な装置の微細な加工に用いられる「超硬工具」の材料として、絶対に代わりが利かない唯一無二の存在です。このタングステンもまた、世界全体の生産量の約8割を中国が握っています。そして2026年の2月から4月にかけて、中国政府の輸出規制の強化により、中国から日本へ向けたタングステン関連製品の輸出が「3カ月連続で完全にゼロ」になるという、前代未聞の異常事態が発生したのです。
この事実上の禁輸措置(輸出ストップ)により、タングステンの国際的な取引価格は、あっという間にこれまでの「3倍以上」へと跳ね上がりました。これにより、日本の調達ルートがいかに一本の細い糸のように脆弱であったかが白日の下にさらされることとなりました。資源が手に入らなくなった直撃を受けた日本の大手素材・電気メーカーである住友電気工業は、ものづくりに使う超硬工具などの製品の販売価格を最大で6割も引き上げざるを得なくなり、さらに三菱マテリアルに至っては、道具の元となる超硬素材の価格をなんと一気に3倍以上に引き上げるという、これまでの製造業の常識では考えられないような、異例の価格転嫁(値上げ)に踏み切らざるを得なくなりました。業界団体のトップが「もはや中国一極集中からの脱却は、1分1秒も待ったなしの緊急事態だ」と強く警鐘を鳴らす通り、このタングステンの苦い事例は、相手の国が本気になって供給の蛇口をキュッと閉めたとき、一企業の個人的な努力などはるかに吹き飛ばし、市場の価格が3倍に大暴騰するという大混乱が本当に引き起こされることを、身をもって証明してしまいました。これはまさに、近いうちにレアアースの市場でも同じことが起きるかもしれないという、恐怖の未来の予行演習と言えるでしょう。
国家備蓄目標の抜本的引き上げ(180日分体制の構築)
このような極限の供給ストップのリスクを和らげ、最悪の事態が起きたときでも日本の産業の息の根を止めないための「最後の砦」として機能するのが、国が主導して行う重要鉱物の「備蓄制度」です。日本政府(経済産業省)は、2023年1月に「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」という大切な指針を定め、経済安全保障推進法という法律に基づいて、2030年の時点で国内の永久磁石の需要をしっかりとキープする目標を掲げていました。
しかし、2025年に起きた中国によるレアアースの輸出規制や、2026年のタングステン輸出ストップという非常に深刻な事態を目の当たりにし、これまでの備蓄量(国内で使う量のわずか数十日分程度)では、何ヶ月にも及ぶかもしれない長期の経済的な圧力には到底耐えられないことが誰の目にも明らかとなりました。これを重く受け止め、日本政府は国家の安全保障と、国内の産業の土台を絶対に揺るがないものにするため、主要なレアメタルに関する国の備蓄日数を「少なくとも180日分(約半年分)以上」へと大幅に引き延ばす、非常に大胆なポリシーの大転換へと舵を切りました。
この国の方針変更に伴い、国の大切な予算(税金)をどこに優先して使うべきかという議論が活発に行われています。多くの専門家や経済界からは、過去の古い仕組みに囚われた過度な農業への保護政策などにいつまでも固執するのではなく、これからの未来の産業の競争力の源泉、つまり命綱となるレアメタルの確保に対して、国のリソースを集中してドカンと投資すべきだという強い主張が湧き起こっています。特に、ジスプロシウムやテルビウムのように、中国からの輸入への依存度が極めて高く、他の材料で今すぐ代用することがどうしても難しい高機能な材料については、最優先で国が買い集める備蓄の量を増やすという方針が明確に打ち出されています。
同時に、日本という一つの国だけの財布や倉庫のスペースにはどうしても限界があるため、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダといった、自由や民主主義という共通の価値観を持っている資源国や友好国との間で、「国際共同備蓄体制」という世界規模の助け合いのネットワークを作る動きも進んでいます。これにより、万が一どこかの国からの供給が止まるような有事の際には、同盟国同士でレアメタルを融通し合い、お互いの産業を守るための、より強靭なディフェンスの網の目が張り巡らされつつあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、国内外の最新のニュースや非常に多角的なデータに基づき、日本のレアアース戦略と経済安全保障のリアルな今について、じっくりと解説してきました。
高市首相の「これからはレアアースには困らない」という前向きな言葉の背景には、2026年2月に深部探査船「ちきゅう」が成し遂げた、水深6000メートルという過酷な海の底からレアアース泥を引き揚げることに成功したという、世界中が驚いた歴史的な偉業がありました。しかし、専門家が厳しく指摘する通り、1日動かすだけで数千万円という巨額のコストがかかることや、日本国内にきれいに元素を分ける精錬工場をゼロから作り直さなければならないという現実の大きな壁を考えると、経済的な採算を合わせながら「完全に自給自足」できるようになるまでには、やはり数十年単位の長い時間が必要です。今の状況をただ楽観視してしまうことは危険ですが、2027年に予定されている1日350トン採掘という実証試験へのステップアップなど、国を挙げた技術の検証は着実に進んでおり、相手の国に対して「日本はいつでも自給できる準備があるぞ」と無言のプレッシャーを与える、非常に強力な外交のカード(抑止力)としてすでに機能し始めています。
また、海の底の資源開発という長期的な戦いと並行して、日本のものづくり企業が誇る「レアアースを使わない、あるいは極限まで減らす技術(フリー技術)」の進化は、事前の予想をはるかに超えるハイスピードで進んでいます。特にプロテリアルが開発し、2026年から自動車メーカーなどへのサンプル配布を開始した「第4世代重希土類フリー磁石」は、最も手に入りにくく危険だったジスプロシウムやテルビウムを最初から1グラムも使わずに、電気自動車のモーターに求められる強い磁力と高い耐熱性を見事にクリアした、世界を揺るがす歴史的な大発明です。さらに、三菱電機によるエアコンの古いコンプレッサーから資源をきれいに取り出して再利用する自己循環リサイクルの実用化など、資源を無駄にせず国内で回し続ける取り組みは、すでに私たちの生活の中で実際に役に立つ段階を迎えており、外国からの圧力に立ち向かうための、即効性のある素晴らしい武器となっています。
オーストラリアのライナス社(双日やJOGMECの地道な努力の賜物です)や、アメリカから輸入するレアアースは、地球環境をしっかりと守るための対策費用や、働く人々の適切な人件費が正しく価格に含まれているため、国からの補助金で無理やり価格を安く歪めている中国産に比べれば、どうしても値段が高くなってしまいます。しかし、2025年に中国が仕掛けてきた特定元素の輸出規制や、2026年にタングステンの価格が3倍に大暴騰して日本の工場が悲鳴を上げたという生々しい危機を目の前にした今、この価格の差額は、日本の素晴らしい産業と私たちの平和な暮らしを守るために国全体で支払うべき「なくてはならない安心のための保険料(安全保障プレミアム)」として、完全に正当化されています。ライナス社との強い絆により、貴重な重希土類の日本向け優先供給枠が75%という高い数字にまで引き上げられたことは、仕入れ先をバラバラに分散させる戦略の、最も輝かしい大成功のシンボルです。
現在の日本のレアアース戦略は、何か一つの「魔法の杖(たった一つの新しい発見や技術)」だけに頼るような、ギャンブルのような真似は決してしていません。「海の底の資源開発という、未来に向けた大きな可能性を大切に育てつつ、中・短期的にはプロテリアルなどの使わない技術をどんどん世の中に普及させ、同時にオーストラリアやアメリカからの調達ルートをガッチリと固めながら、最後の砦として180日分の国家備蓄を急ピッチで積み増していく」という、非常に賢く現実的な、いくつものディフェンスを組み合わせたチームプレイ(複合的アプローチ)を採用しています。政府と民間企業が文字通りがっちりとスクラムを組んだ絶え間ない努力により、日本の経済安全保障の弱点は、今この瞬間も、確実にかつ根本的な構造から克服されつつあると言えます。これからも、私たちの生活を支える日本のものづくり技術の未来を、誇りを持って温かく応援していきましょうね!最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
参考リスト
- nippon.com:南鳥島レアアースの採掘に成功:中国依存の低減につながるか
- YouTube:南鳥島沖“レアアース”の回収に成功 水深6000mから世界初(2026年2月2日)
- Science Portal:南鳥島EEZでレアアース試掘に成功 深部探査船「ちきゅう」活用
- YouTube:南鳥島沖でレアアース泥採取試験 探査船「ちきゅう」出航(2026年1月12日)
- 三洋貿易(コスモス商事):地球深部探査船「ちきゅう」への採鉱試験用装備の納入について
- YouTube Music:【国策発動】南鳥島レアアース、試験採掘への移行と本命銘柄
- Yahoo!リアルタイム検索:「岡部徹」に関するポストの検索結果
- Yahoo!リアルタイム検索:「小野田紀美 レアアース」に関するポストの検索結果
- KYODO NEWS IMAGELINK:報道写真・ニュース映像提供サービス
- はてなブックマーク:南鳥島レアアースと政府の資源戦略に関する議論
- プロテリアル:EV駆動モーター用高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石の開発
- 三菱電機:国内初 家庭用空調製品からレアアース磁石を回収・再利用する自己循環リサイクルの開始
- BigGo Finance:中国、タングステン対日輸出が3カ月連続ゼロ 調達難で価格3倍超に
- オーストラリア政府(PM&C):日豪重要鉱物協力に関する共同声明
- 双日:ライナス社との間におけるレアアース鉱山の共同開発および探査に関する契約
- 双日:オーストラリアからの重希土類(ジスプロシウム・テルビウム)の輸入開始について
- Lynas Rare Earths:双日・JOGMECとの共同開発に関する覚書(英文)
- ジェトロ(日本貿易振興機構):米国防総省、レアアース磁石の国内供給強化に向け、MPマテリアルズに4億ドル投資
- 経済産業省:重要鉱物の安定供給確保に向けた取組方針
- UMC:レアメタル千夜一夜 第54夜 日本の未来を拓く戦略的資源政策

