はじめに
私たちが毎日見上げている空。飛行機に乗ったことがある方なら、雲の上に出るとどこまでも澄み切った青空が広がっているのを見たことがあるかもしれません。しかし、「そのさらに上」の空がどうなっているのか、想像したことはありますか?
実は、1902年の6月8日、私たちの頭上には気温の変化が地上とは全く異なる不思議な層「成層圏(せいそうけん)」が存在することが初めて発表されました。今回は、この「成層圏発見の日」をテーマに、空の上の知られざる世界と、それが私たちの命をどう守ってくれているのかをわかりやすく解説します。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】空は高いほど寒い…はウソ?高度と温度の意外な関係
- 【テーマ2】フランスの気象学者レオン・ティスラン・ド・ボールの執念の大発見
- 【テーマ3】なぜ成層圏の気温は上がるのか?地球を守るオゾン層の力
この記事を読めば、ただの「空」だと思っていた空間が、まるで何層にも重なった見えないバリアのように地球を包み込んでいる奇跡の仕組みがわかります。専門的な言葉はなるべく使わずにお伝えしますので、気球に乗って空の旅に出るような気持ちで、ぜひ最後までお楽しみください。
空は高いほど寒い…はウソ?高度と温度の意外な関係
私たちが普段生活している地上では、「高い山に登れば登るほど、気温が下がって寒くなる」というのが常識です。たとえば、標高約3,776メートルの富士山の山頂は、真夏でも防寒着が必要なほど冷え込みます。この「上空へ行くほど気温が下がる」空間のことを、科学の言葉で「対流圏(たいりゅうけん)」と呼びます。雨が降ったり、風が吹いたり、雲ができたりといった天気の変化は、すべてこの対流圏の中で起きています。
昔の科学者たちも、「空は上に行けば行くほど、宇宙の冷たさに近づいて永遠に気温が下がり続けるのだろう」と考えていました。しかし、ある一定の高さ(地上から約10〜11キロメートル)を超えると、気温が下がるのがピタリと止まり、なんと**「上に行けば行くほど逆に気温が上がり始める」**という奇妙な空間が現れるのです。この、下層の冷たい空気と上層の暖かい空気が混ざらずに層のようになっている空間こそが「成層圏」です。
気象学者レオン・ティスラン・ド・ボールの執念の大発見
この常識を覆す事実を発見したのが、フランスの気象学者レオン・ティスラン・ド・ボールです。彼がこの発見を発表した1902年6月8日が、「成層圏発見の日」の由来となっています。
現代のように高性能な人工衛星やレーダーがない時代、はるか上空の気温を測ることは至難の業でした。そこで彼は、「観測気球」と呼ばれる無人の気球に温度計などの観測機器を取り付け、空高く飛ばすという方法を思いつきます。彼は昼夜を問わず、なんと200個以上もの気球を空へ放ちました。気球は上空のデータを記録しながら上昇し、やがて破裂してパラシュートで地上に落ちてきます。それを回収してデータを読み解くという、非常に根気のいる地道な作業を繰り返したのです。
その結果、どの気球のデータを見ても、高度約11キロメートル付近で気温の低下がストップしていることが判明しました。彼の執念とも言える徹底的なデータ収集が、「成層圏」という新しい概念を人類にもたらしたのです。
なぜ成層圏の気温は上がる?地球を守る「オゾン層」の力
では、なぜ成層圏では、太陽から遠ざかる(=宇宙に近づく)わけでもないのに、上に行くほど気温が上がるのでしょうか?その秘密は、成層圏の中に存在する「オゾン層」にあります。
太陽からは、私たちを温めてくれる光と一緒に、生物にとって非常に有害な「紫外線」が大量に降り注いでいます。オゾン層は、この危険な紫外線を吸収して熱に変える性質を持っています。つまり、成層圏の上の方(太陽に近い方)のオゾンが紫外線をたっぷりと吸収して熱を出すため、上空に行けば行くほど空気が暖められ、気温が上昇するというわけです。
もし、この成層圏とオゾン層が存在しなかったら、強力な紫外線がそのまま地上に降り注ぎ、陸上で植物や動物が生きていくことはできなかったでしょう。ティスラン・ド・ボールが見つけたのは、単なる「空の層」ではなく、地球上のあらゆる生命を宇宙の脅威から守ってくれている「巨大な命の盾」だったのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、「成層圏発見の日」にちなんで、私たちの頭上に広がる大気圏の不思議な仕組みについて解説してきました。
1902年6月8日、フランスの気象学者レオン・ティスラン・ド・ボールが観測気球を使った執念の調査によって見つけ出した「成層圏」。それは「上に行くほど寒くなる」という当時の常識を覆し、オゾン層の力で紫外線を熱に変える、地球にとって欠かせない見えないバリアの発見でした。
私たちが当たり前のように外を歩き、太陽の光を心地よく感じることができるのは、はるか上空にある成層圏が今日も静かに有害な光を遮ってくれているおかげです。次に晴れた空を見上げるときは、飛行機が飛ぶさらにその上にある「命を守るあたたかい層」に、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

