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プロの投資家も猿のダーツ投げに勝てない?ランダムウォーク理論で解き明かす株式投資の真実

統計学
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はじめに

「これから株価が上がる銘柄を事前に見つけ出して、大きな利益を出したい!」投資を始めるとき、誰もが一度はそう考えるのではないでしょうか。しかし、専門的な知識を持つプロのアナリストやファンドマネージャーでさえ、株式市場の短期的な動きを正確に予測し続けることは困難です。実は、株式市場には「目隠しをした猿が新聞の株価表にダーツを投げて選んだ銘柄の成果と、プロが分析して選んだ銘柄の成果に差はない」という有名な説が存在します。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。そのカギを握るのが、数学や統計学の考え方に基づく「ランダムウォーク理論」です。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】株価の短期的な動きが予測できないとされる「ランダムウォーク理論」の仕組み
  • 【テーマ2】なぜプロの投資家が猿のダーツ投げと同じ成績になってしまうのかという理由
  • 【テーマ3】予測不能な株式市場で着実に資産を増やしていくための賢い運用方法

本記事では、一見難しく思える金融の理論をわかりやすく紐解きながら、私たちが実際の資産運用でどのような行動をとるべきなのかについて詳しく解説していきます。予測に頼らない新しい投資の考え方を身につけて、無理のない資産形成の一歩を踏み出してみましょう。

株価は予測不能?「ランダムウォーク理論」とは何か

株式市場における「ランダムウォーク理論」とは、株価の短期的な値動きには過去の動きとの関連性がなく、まるで「お酒に酔っぱらった人が千鳥足でどちらに進むか分からない状態」と同じように予測不可能であるという考え方です。次に右へ進むのか左へ進むのかが完全に確率に支配されているのと同様に、明日の株価が上がるか下がるかも五分五分の確率で決まるとされています。

この理論が成り立っている背景には、「効率的市場仮説」と呼ばれる重要な前提があります。効率的市場仮説とは、企業の業績、経済ニュース、世界情勢など、株価に影響を与えるあらゆる情報が、市場に存在するすべての投資家に瞬時に伝わり、すでに現在の株価に正しく反映されているという考え方です。

すでに知られている情報がすべて株価に織り込まれているとすれば、これから株価を動かすのは「まだ誰も知らない新しいニュース(サプライズ)」だけになります。未来にどのようなニュースが飛び出してくるかを事前に予測することは誰にもできません。予期せぬ良いニュースが出れば株価は上がりますし、予期せぬ悪いニュースが出れば株価は下がります。その結果として、株価の動きは完全にランダムになり、過去のデータやチャートの形をどれだけ分析しても、明日の動きを当てることはできないのです。

プロでも勝てない?「猿がダーツで選んだ株」の実験

ランダムウォーク理論を広く世界に知らしめた名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者バートン・マルキール教授は、刺激的な主張を行いました。それが「目隠しをした猿が新聞の株価表にダーツを投げて選んだ銘柄の組み合わせは、専門家が苦心して選んだ銘柄の組み合わせと変わらない成果を上げる」という言葉です。

この主張が本当かどうかを確かめるため、アメリカの有名経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』などは、実際にプロの投資家と「適当に選んだ株」の成績を比較するコンテストを長年にわたって開催しました。プロたちが膨大な時間をかけて企業分析を行い、勝ち誇って選んだ銘柄群と、ダーツ投げやランダムな抽選で選ばれた銘柄群の運用成績を競わせたのです。

長期間にわたる実験や数々の研究データが示した結果は、非常に驚くべきものでした。一時的な短期間であればプロが勝つこともありましたが、何年もの長い期間で比較すると、プロの成績はダーツで選んだ適当な銘柄グループや市場全体の平均値とほとんど変わらないか、あるいはそれらを下回ってしまうケースが多発したのです。

プロの投資家が成果を出せない大きな理由は「運用コスト」にあります。プロが分析を行うためには人件費や情報収集の費用がかかり、売買を繰り返すたびに取引手数料が発生します。こうした費用が引かれてしまうため、仮にプロの選んだ株が一時的に良い成績を出したとしても、手元に残る利益では「ただランダムに株を買ってじっと持ち続けただけ」の成績に勝てなくなってしまうのです。

市場のプロが直面する分析の限界とコストの壁

プロの投資家は大きく分けて2つの方法で株式を分析します。1つは企業の売上や利益、財務状況を調べる「ファンダメンタルズ分析」、もう1つは過去の株価の値動きやグラフのパターンを見る「テクニカル分析」です。しかし、ランダムウォーク理論の観点から見ると、どちらの分析方法にも限界があります。

まず「ファンダメンタルズ分析」についてです。ある企業の業績が良いという情報は、プロの投資家が気づいた時点ですでに市場全体に広まっており、株価は上がった後の状態になっています。他の人より早く情報を手に入れて先回りして買わない限り、利益を得ることはできません。現代のようにインターネットで情報が瞬時に世界中に広まる時代において、他人より早く確実な情報を得続けることは不可能です。

次に「テクニカル分析」についてです。過去のチャートで「このような形が出たら次は上がる」というパターンを探す手法ですが、過去の値動きと将来の値動きに全く関係がないのであれば、いくらグラフを分析しても意味がありません。コイン投げで10回連続で表が出たからといって、11回目に表が出る確率が上がるわけではないのと全く同じです。

さらに、アクティブファンドと呼ばれる「プロが厳選して高い成果を目指す投資信託」の多くが、市場の平均成果(インデックス)に勝てないことも数学的に証明されています。ファンドの運用手数料(信託報酬)という目に見えないコストが常に引かれ続けるため、長期的になればなるほど、プロの手による運用はコストの分だけ不利になっていくのです。

予測不能な相場で勝ち残るための「インデックス投資」

株式相場の動きがランダムで予測不可能であり、プロでさえ平均に勝てないのであれば、私たちはどのように資産運用を行っていけば良いのでしょうか。その答えとして、ランダムウォーク理論が導き出す最良の戦略が「インデックス投資」です。

インデックス投資とは、市場全体の動きを表す指標(日経平均株価や、アメリカのS&P500など)と同じ成果を目指す投資方法です。特定の会社を1社ずつ選んで買ったり売ったりするのではなく、市場全体に含まれる何百社、何千社という企業を丸ごとセットで購入します。

どの銘柄が上がるかを当てる必要がないため、高額な分析費用や人件費がかからず、運用手数料を極限まで安く抑えることができます。また、市場全体に広く投資するため、1つの会社が倒産したり業績が落ちたりしても、他のたくさんの会社の成長がカバーしてくれるため、大きな損をするリスクを減らすことができます。

ランダムウォーク理論は「明日の株価」や「来月の株価」という短期的な値動きは予測不可能だと教えてくれます。しかし、世界全体の経済や産業は、人間の人口増加や技術革新に伴って、何十年という長いスパンで見れば拡大し続けています。個別銘柄の短期的な上がり下がりを追いかけるのをやめて、世界経済全体の長期的な成長に味方することこそが、数学的に最も賢いアプローチなのです。

長期・積立・分散投資がもたらす安心感

インデックス投資の価値を最大限に引き出すための具体策が「長期・積立・分散」の原則です。

1つ目の「分散」は、投資する国や地域、業界を広く分けることです。世界中のさまざまな企業に資金を分散させておくことで、一部の地域や業界が不調であっても、全体の資産へのダメージを最小限にとどめることができます。

2つ目の「積立」は、一度にまとめて買うのではなく、毎月定額で買い続けることです。株価が高い時には少ない数を買い、株価が安い時には多くの数を自動的に買うことになるため、平均購入単価を低く抑える効果(ドル・コスト平均法)が得られます。株価が下がった時でも「安く買えるチャンスだ」と捉えることができるため、心理的にも落ち着いて投資を継続できます。

3つ目の「長期」は、買った資産を売らずに10年、20年と持ち続けることです。短期間で見ると株価はランダムに激しく上下しますが、保有期間が長くなればなるほど、短期的な揺れの影響が薄まり、全体の平均的な成長率に落ち着いていきます。時間を味方につけることで、利益がさらに利益を生む「複利効果」も大きく働くようになります。

「明日の株価を当てる」というギャンブルのような考え方を捨てて、機械的に長く買い続けるシステムを作ることこそが、個人投資家が資産運用で成功するための近道と言えます。

まとめ

株式市場の短期的な動きは「ランダムウォーク(千鳥足)」であり、プロの投資家であっても、目隠しをした猿のダーツ投げ以上に将来の値を正確に当てることは困難です。市場にはすでに膨大な情報が反映されており、次に起こる未予測のニュースによって株価が左右されるためです。

だからこそ、どの銘柄が上がるかを予測しようとする無駄な努力をやめ、余計なコストをかけずに市場全体に投資する「インデックス投資」が強力な選択肢となります。短期的な相場の乱高下に一喜一憂することなく、長期・積立・分散投資を愚直に続けることで、誰でも着実に世界の経済成長の恩恵を受け取ることができます。

投資の世界において、特別な才能や専門知識は必ずしも必要ありません。ランダムウォーク理論の仕組みを正しく理解し、無理のない範囲でじっくりと時間をかけた資産形成を進めていきましょう。

参考リスト


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