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【大人の極上脳トレ】「100年に1度の大雨」を確率で読み解き、焼き芋を一番甘くする温度を計算する!極値統計&食品化学パズル

大人の脳トレ
この記事は約11分で読めます。

はじめに

ニュースで「100年に1度の大雨」という言葉を聞くと、「では、あと100年は大丈夫なのかな」と思ってしまいがちです。ところが確率で考えると、話はまったく違って見えてきます。

一方、秋の味覚・焼き芋。同じサツマイモでも、焼き方しだいで甘さが大きく変わるのをご存じでしょうか。その秘密は、イモの中にある「酵素」が、どの温度でどれくらい働くかにあります。

大雨と焼き芋。まったく別の話題ですが、どちらも「確率」や「速さ」の数字を使えば、答えを計算で導けるという共通点があります。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】「100年確率降雨」の本当の意味と、一生のうちに出合う確率の計算方法
  • 【テーマ2】確率分布から雨量を推定し、堤防の安全な設計基準を逆算するコツ
  • 【テーマ3】β-アミラーゼの働きから、サツマイモを一番甘くする加熱方法を見つける考え方

使うのは、かけ算・わり算と、電卓の「ln(自然対数)」「e^x」ボタンくらいです。全部で6問のドリルを用意しました。ぜひ答えを開く前に挑戦してみてください。

第1部:極値統計・再現期間パズル

「100年に1度の大雨」の本当の意味

過去の観測データをもとに、「50年や100年といった長い期間に1回起こるような、まれな大雨がどれくらいの量か」を統計的に推定した値を「確率降水量」といいます。そして、その「50年」「100年」という期間を「再現期間」とよびます。

ここで大切なのは、「100年に1度」は「100年ごとに1回ずつ起こる」という意味ではない、という点です。気象庁の説明では、長い期間を平均すると100年に1回起こる大雨という意味で、ある100年の間に2回起こることもあれば、1回も起こらないこともある、とされています。サイコロで「6の目」が平均すれば6回に1回出るものの、6回続けて出ることもあるのと同じです。

計算のコツ:再現期間と超過確率の関係

再現期間T年の大雨について、次の関係が成り立ちます(毎年の雨が互いに無関係だと考えた場合です)。

  • ある1年に起こる確率 = 1 ÷ T
  • ある1年に起こらない確率 = 1 − 1 ÷ T
  • n年間に1度も起こらない確率 =(1 − 1 ÷ T)をn回かけた数
  • n年間に少なくとも1回起こる確率(リスク) = 1 −(n年間に1度も起こらない確率)

また、まれな出来事がポツポツと起こる様子は「ポアソン過程」というモデルでも表せます。このモデルでは、n年間に少なくとも1回起こる確率は「1 − e^(−n÷T)」で近似でき、上の式とほとんど同じ値になります。

【ドリル1】30年住む家で「100年に1度の大雨」に出合う確率は?

(1)これから30年間住む予定の家があります。この地域で「再現期間100年の大雨」が、30年のうちに少なくとも1回起こる確率は何%でしょうか。
(2)50年間ではどうでしょうか。

▶ 答えと解説を見る

答え:(1)約26% (2)約39.5%

  • (1)1年に起こらない確率は0.99。30年間起こらない確率は0.99を30回かけて約0.740。したがって、少なくとも1回起こる確率は1−0.740=約26%
  • (2)0.99を50回かけると約0.605。1−0.605=約39.5%

「100年に1度」と聞くと自分には関係なさそうに感じますが、30年住めば約4分の1、50年なら約4割の確率で出合う計算になります。まれな出来事でも、長い期間で見れば決して無視できないことがわかります。

【ドリル2】確率分布から「100年確率降水量」を推定せよ

毎年の「1年で一番多かった日雨量(年最大日雨量)」は、ふつうの左右対称な分布にはならず、大きい側に長くすそを引いた形になります。こうした「最大値」の分布を表すのによく使われるのが、「グンベル分布」という確率分布です。

グンベル分布では、再現期間T年の雨量xを、次の式で求められます。

  • x = μ − β × ln(−ln(1 − 1÷T))

μ(ミュー)は分布の中心の位置、β(ベータ)はばらつきの大きさを表す値です。ある観測地点のデータから、μ=100mm、β=30mmと推定されたとします(仮の値)。

(1)再現期間10年の日雨量は何mmでしょうか。
(2)再現期間100年の日雨量は何mmでしょうか。

▶ 答えと解説を見る

答え:(1)約167.5mm (2)約238.0mm

(1)T=10のとき

  • 1−1÷10=0.9
  • −ln(0.9)≒0.10536
  • ln(0.10536)≒−2.2504
  • x=100−30×(−2.2504)=100+67.5≒167.5mm

(2)T=100のとき

  • 1−1÷100=0.99
  • −ln(0.99)≒0.010050
  • ln(0.010050)≒−4.6002
  • x=100+30×4.6002≒238.0mm

再現期間を10倍にしても、雨量は10倍にはならず、約1.4倍にとどまります。まれな大雨ほど「起こりにくさ」は急に増えますが、「量」はゆるやかにしか増えないのです。この性質を知っていると、設計の考え方がぐっと理解しやすくなります。

【ドリル3】堤防の安全率を逆算せよ

使用期間50年を想定した堤防を設計します。「50年の間に、設計した雨量を超える大雨が来る確率を10%以下に抑えたい」という条件があります。

(1)設計には、再現期間が最低何年の雨量を使えばよいでしょうか。
(2)ドリル2と同じグンベル分布(μ=100mm、β=30mm)を使うと、その設計雨量は何mmでしょうか。また、それは100年確率降水量の何倍に当たるでしょうか。

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答え:(1)約475年 (2)約284.9mm、100年確率降水量の約1.2倍

(1)50年間に1度も起こらない確率を90%以上にしたいので、

  • (1−1÷T)を50回かけた数 ≧ 0.9
  • 両辺を「50乗根」にすると、1−1÷T ≧ 0.9の50乗根 ≒ 0.997895
  • 1÷T ≦ 0.002105 → T ≧ 約475年

ポアソン過程の近似で確かめると、1−e^(−50÷475)≒1−e^(−0.105)≒0.0999で、ちょうど約10%になります。

(2)T=475をグンベル分布の式に入れると、

  • −ln(1−1÷475)≒0.0021075
  • ln(0.0021075)≒−6.1622
  • x=100+30×6.1622≒284.9mm

100年確率降水量(238.0mm)と比べると、284.9÷238.0≒1.2倍です。

「50年のうちに超えられる確率を10%以下に」という一見ひかえめな目標でも、475年に1度という、とてもまれな大雨を想定する必要があるのです。ただし雨量で比べると約2割増しで済む、というのも、ドリル2で見た性質のおかげです。なお、実際の河川計画では、雨量だけでなく流域の地形や川の断面など、多くの条件をもとに安全性が決められています。

第2部:酵素反応速度・マルトース生成パズル

焼き芋が甘くなるしくみ

生のサツマイモには、甘い麦芽糖(マルトース)はほとんど含まれていません。加熱によって糊化(デンプンがほぐれて、炊きたてのごはんのようにもっちりした状態になること)したデンプンに、サツマイモ自身が持っている「β-アミラーゼ」という酵素が働くことで、麦芽糖がたくさん作られます。

ここで、温度について2つの「関所」があります。

  • デンプンの糊化:サツマイモのデンプンは、65℃以上で糊化するとされています。糊化する前のデンプンには、酵素はうまく働けません。
  • 酵素の失活:β-アミラーゼは70℃前後で最もよく働きますが、75℃以上になると働きが悪くなるとされています。

つまり、「デンプンはほぐれているけれど、酵素はまだ元気」という65〜75℃ぐらいの温度帯を、どれだけ長く通るかが甘さの決め手になります。じっさい、β-アミラーゼをほとんど持たない品種では、加熱しても麦芽糖がほとんどできず、糖度がふつうの品種の3分の1以下にとどまると報告されています。また、デンプンの糊化温度が従来の品種より約20℃低い「クイックスイート」という品種では、より早い段階から麦芽糖ができはじめることも知られています。

計算のコツ:ミカエリス・メンテン式と「失活」

酵素が働く速さは、「ミカエリス・メンテン式」で表すことができます。

  • 反応速度 v = Vmax × S ÷(Km + S)
  • S:酵素が使える材料(ここでは糊化したデンプン)の量
  • Vmax:最大の速さ(酵素の量と元気さで決まります)
  • Km:速さが最大の半分になるときの材料の量

材料がたっぷりあるとき、vはほぼVmaxになります。逆に材料が減ってくると、速さも落ちていきます。さらに、熱で酵素がこわれていく(失活する)と、Vmaxそのものが小さくなります。以下のドリルの数値は、計算練習のための仮の値です(単位の「g/kg」は、イモ1kgあたりのグラム数です)。

【ドリル4】材料が減ると、甘くなる速さはどう変わる?

70℃でのβ-アミラーゼについて、Vmax=毎分1.0g/kg、Km=20g/kgとします。

(1)糊化したデンプンがS=180g/kgあるとき、麦芽糖ができる速さは毎分何g/kgでしょうか。
(2)反応が進んでデンプンがS=20g/kgまで減ったとき、速さはどうなるでしょうか。

▶ 答えと解説を見る

答え:(1)毎分0.9g/kg (2)毎分0.5g/kg

  • (1)v=1.0×180÷(20+180)=180÷200=0.9
  • (2)v=1.0×20÷(20+20)=20÷40=0.5

材料が9分の1に減っても、速さは約半分にしか落ちません。材料がたっぷりあるうちは、速さはほぼ上限(Vmax)に近く、材料が少なくなってから急にペースが落ちていく。これがミカエリス・メンテン式の特徴です。

【ドリル5】一番甘くなる加熱プロファイルはどれ?

合計60分の加熱で、どの温度の組み合わせが一番甘くなるかを比べます。10分ごとの麦芽糖の生成量を、次のように単純化して考えます(すべて仮の値です)。

温度 10分間の生成量 酵素の状態
60℃ 3g/kg(糊化が進まず少なめ) 失活しない
70℃ 10g/kg×酵素の残り具合 10分ごとに元気さが0.8倍に
80℃ 最初の10分で2g/kg(元気な酵素から始めた場合。すでに弱った酵素はすぐこわれて0)、その後0 10分で完全に失活

次の4つの加熱プロファイルで、麦芽糖の合計はそれぞれ何g/kgになるでしょうか。

  • A:70℃で60分
  • B:60℃で30分 → 70℃で30分
  • C:80℃で60分
  • D:70℃で30分 → 80℃で30分
▶ 答えと解説を見る

答え:Aが最大(約36.9g/kg)。Bは約33.4、Dは24.4、Cは2g/kg

  • A:10+8+6.4+5.12+4.10+3.28≒36.9
  • B:60℃で3×3=9、70℃で10+8+6.4=24.4、合計33.4
  • C:最初の10分で2、その後は酵素がこわれて0、合計2
  • D:70℃で24.4、そのあと80℃で酵素がこわれるので追加は0、合計24.4

Cのように最初から高温にすると、デンプンは糊化しても、肝心の酵素がすぐにこわれてしまい、ほとんど甘くなりません。電子レンジで急に加熱した焼き芋があまり甘くないのは、同じ理由だと考えられます。

Dを見ると、70℃の後半30分をいかに大切にするかで差が出ることもわかります。この単純なモデルでは、60℃で糊化が進まない時間は「もったいない時間」になるため、最初から70℃前後を保ったAが一番甘くなりました。

【ドリル6】目標の甘さまで何分かかる?限界はどこ?

ドリル5と同じく、70℃では10分ごとに生成量が10、8、6.4……と0.8倍ずつ減っていくとします。

(1)麦芽糖を30g/kg以上にするには、70℃で最低何分加熱すればよいでしょうか(10分単位で)。
(2)70℃のまま、いくら長く加熱しても超えられない麦芽糖の量の上限は何g/kgでしょうか。

▶ 答えと解説を見る

答え:(1)50分 (2)50g/kg

(1)合計を10分ごとに足していきます。

  • 10分:10
  • 20分:18
  • 30分:24.4
  • 40分:29.52
  • 50分:33.62

40分ではわずかに届かず、50分で30g/kgを超えます。

(2)10+8+6.4+……は、毎回0.8倍になる数をどこまでも足していく「等比級数」です。その合計は、最初の数÷(1−かける数)=10÷(1−0.8)=50で求められます。どんなに長く加熱しても、酵素が少しずつこわれていくので、合計は50g/kgに近づくだけで、超えることはありません。

「時間をかければかけるほど甘くなる」わけではなく、酵素の寿命が上限を決めているのです。実際には、加熱しすぎるとイモの水分が抜けてかたくなるなど、食感とのかね合いも考える必要があります。

2つのパズルに共通する「考え方」

  • 「まれ」と「ゼロ」はちがう:100年に1度の大雨も、長く暮らせば出合う確率は小さくありません。0.8倍ずつ減る生成量も、ゼロにはならず少しずつ積み上がっていきます。小さな確率や小さな量の積み重ねを正しく見積もるのが、計算の醍醐味です。
  • 上限と逆算を意識する:ドリル3では目標のリスクから必要な再現期間を、ドリル6では目標の甘さから必要な時間を逆算しました。答えから条件をさかのぼる考え方は、仕事や暮らしの計画にも役立ちます。
  • 自作問題に挑戦:自分の住む地域の確率降水量を調べて、ドリル1のように「自分が住む期間」で計算してみたり、ドリル5の表の数字を変えて、低温でじっくり加熱するプロファイルを考えてみたりするのもおすすめです。

まとめ

第1部では、「100年に1度の大雨」が100年ごとに来るわけではなく、30年住めば約26%、50年なら約4割の確率で出合うことを計算しました。グンベル分布を使って再現期間ごとの雨量を推定し、「50年でリスク10%以下」という目標から、475年に1度の雨量、つまり100年確率の約1.2倍を設計の目安として逆算することもできました。

第2部では、サツマイモの甘さが、デンプンの糊化と、β-アミラーゼという酵素の働きで決まることを学びました。ミカエリス・メンテン式で反応の速さを計算し、酵素がこわれる温度を避けて70℃前後をじっくり保つ加熱が一番甘くなること、そして酵素の寿命が甘さの上限を決めていることを確かめました。

大雨への備えも、おいしい焼き芋も、数字で追いかけると理由がはっきり見えてきます。ぜひ紙とペン、そして電卓を手に、じっくり挑戦してみてください。

参考リスト

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