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テスト効果とは?覚えるより「思い出す」が効く想起練習と学び直しのコツ

心理学
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はじめに

資格の勉強や語学、趣味の歴史など、大人になってから学び直しを始めると「何度読んでも覚えられない」「翌週にはすっかり忘れている」と感じることはありませんか。実は、記憶に残りやすい勉強のしかたには、心理学の研究で確かめられた「テスト効果」という強力なコツがあります。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】テスト効果(想起練習)のしくみ
  • 【テーマ2】読み返しとテスト効果の研究結果
  • 【テーマ3】学び直しで使える想起練習のやり方

テスト効果は、特別な道具も費用もいらず、今日の勉強からすぐに取り入れられる方法です。研究でわかっていることと、具体的なやり方の順に、わかりやすく紹介していきます。

テスト効果(想起練習)とは?「思い出す」が記憶を強くするしくみ

テスト効果とは、覚えたことを記憶から「思い出す」こと自体が、その記憶を強くするという現象です。教科書を読み返すよりも、本を閉じて思い出そうとするほうが、時間がたっても忘れにくくなります。

テストは「測る道具」ではなく「覚える道具」

ふつう、テストは「どれだけ覚えたかを確かめるもの」と考えられています。しかし研究者たちは、テストを受けること自体に、学んだ内容を記憶に定着させる働きがあることを示してきました。このため英語では「テスト効果(testing effect)」のほか、「想起練習(retrieval practice、記憶から情報を取り出す練習)」とも呼ばれます。

ここでいうテストは、点数で評価される本番の試験ではありません。自分で問題を出して答える、何も見ずに覚えたことを書き出すといった、気軽な「思い出す練習」全般を指します。アメリカのヴァンダービルト大学の教育センターも、学習を高めるのは成績に響かない気軽な想起練習だと説明しています。

なぜ思い出すと記憶が強くなるのか

はっきりした仕組みは研究者の間でも議論が続いていますが、有力な考え方がいくつかあります。ひとつは、苦労して思い出す作業によって記憶の「手がかり」が整理され、次に思い出すための道筋が太くなるという説明です。

たとえるなら、草むらに道をつけるようなものです。地図(教科書)を何度眺めても道はできませんが、実際に歩いてみるたびに踏み跡がはっきりしていきます。思い出す練習は、この「歩いて道をつける」作業にあたります。

研究でわかったテスト効果の実力

テスト効果は、数十年にわたる多くの実験で確かめられてきた、学習科学のなかでも特に信頼性の高い発見のひとつです。ここでは、よく引用される代表的な研究を3つ紹介します。

読み返すより「思い出す」ほうが1週間後に差がつく(2006年)

ワシントン大学(セントルイス)のロディガー氏とカーピック氏は2006年、大学生に科学の短い文章を学ばせる実験を行いました。文章を何度も読み返すグループと、一度読んだあとに思い出して書き出すテストを繰り返すグループを比べたのです。

学習から5分後のテストでは、読み返したグループのほうが成績が上でした。ところが1週間後には逆転し、論文によると、テストを繰り返したグループは約61%を覚えていたのに対し、読み返しのみのグループは約40%にとどまりました。さらに、読み返したグループのほうが「自分は覚えている」という自信は高かったと報告されています。

覚えたあとも「思い出し続ける」ことが大切(2008年)

カーピック氏とロディガー氏は2008年、科学誌「サイエンス」に、スワヒリ語と英語の単語40組を覚える実験の結果を発表しました。一度正しく答えられた単語を「その後も読み続ける」場合と「その後もテストし続ける」場合などを比べています。

その結果、覚えたあとに読み返しを続けても1週間後の成績はほとんど変わりませんでしたが、テストを続けると大きなプラスの効果がありました。また、学生自身の「どれくらい覚えていられるか」という予想は、実際の成績とほとんど関係がありませんでした。「一度覚えたから終わり」ではなく、思い出す練習を続けることが定着のカギだとわかります。

図にまとめるより思い出すほうが効いた(2011年)

パデュー大学のカーピック氏とブラント氏は2011年、合計200人の学生を対象に、科学の文章を「コンセプトマップ(概念どうしのつながりを図にまとめる方法)」で学ぶ場合と、思い出す練習で学ぶ場合を比較しました。多くの学生は図にまとめるほうが効果的だと予想していました。

しかし実際には、思い出す練習をしたグループのほうがよく学べていました。パデュー大学の発表によると、この差は単純な暗記だけでなく、内容の理解や推論が必要な問題でも見られ、テストがコンセプトマップを描く形式でも思い出す練習のほうが上回りました。

読み返しやマーカーが「わかったつもり」を生む落とし穴

多くの人が頼りがちな「読み返し」や「マーカー引き」は、時間をかけたわりに記憶に残りにくい方法だと評価されています。原因は、何度も目にした文章に「見覚え」が生まれ、それを「理解できた」と勘違いしやすいことです。

2013年、ケント州立大学のダンロスキー氏らの研究チームは、学生がよく使う10種類の学習法について、これまでの研究を総合的に評価しました。心理科学協会(APS)の発表によると、最も高い評価を受けたのは「練習テスト」と「分散学習(間隔をあけて学ぶこと)」の2つでした。

学習法 評価 どんな方法か
練習テスト 高い 自分でテストをする、問題集を解く
分散学習 高い 同じ内容を、日をあけて何度か学ぶ
要約 低い 内容を短くまとめる
マーカー・下線引き 低い 大事なところに線を引く
読み返し 低い 同じ文章を何度も読む

ケント州立大学の発表では、評価の低かった方法こそ、学生が最もよく使っている方法だと指摘されています。ただし研究チームは、これらの学習法がすべての人に効く万能薬ではないとも述べています。読み返しが無意味というわけではなく、「読んだあとに思い出す」ひと手間を加えることが大切です。

今日からできる想起練習のやり方(学び直し向け)

想起練習のコツは、本やノートを閉じて、まず自分の頭から答えを出そうとすることです。忙しい大人でも、すきま時間で取り入れられる方法がたくさんあります。

基本の流れ

  1. 教材を一度ていねいに読む(ここで何度も読み返さない)
  2. 教材を閉じ、覚えていることを思い出して書き出す、または声に出す
  3. 教材を開いて答え合わせをし、抜けていた点や間違いを確認する
  4. 間違えたところを中心に、数日後にもう一度思い出す

すぐに試せる想起練習の例

  • 白紙に書き出す:読んだ章の内容を、何も見ずに紙に書き出してみる
  • 人に説明するつもりで話す:家族や友人、ペットや鏡に向かって、要点を説明してみる
  • 単語カードやアプリを使う:表に問題、裏に答えを書いて、答えを見る前に考える
  • 見出しから問題を作る:教科書の見出しを「〜とは何か?」という質問に変えて答える
  • 過去問や章末問題を解く:資格試験なら、問題集を「確認」ではなく「学習」の中心にする

ウォーキング中や通勤中に「昨日学んだことを3つ思い出してみる」だけでも、立派な想起練習になります。机に向かう時間が取れない日でも続けやすいのが、この方法の良いところです。

テスト効果を高めるコツと注意点

想起練習は、やり方を少し工夫するだけで効果がさらに高まります。特に大切なのは「答え合わせ」「間隔をあけること」「思い出しにくさを怖がらないこと」の3つです。

答え合わせ(フィードバック)を必ずする

思い出したあとに正解を確認すると、テスト効果はより大きくなることが、複数の研究のまとめ(メタ分析)で報告されています。間違ったまま覚えてしまうのを防ぐためにも、思い出した後は必ず教材と照らし合わせましょう。

日をあけて繰り返す

先ほどの評価で「分散学習」も高評価だったように、同じ内容を一度にまとめて勉強するより、日をあけて何度か思い出すほうが長く覚えていられます。たとえば「学んだ当日、翌日、数日後、1週間後」のように、少しずつ間隔を広げて思い出してみるのがおすすめです。

「思い出せない」苦しさは効いている証拠

思い出す練習は、読み返しより疲れますし、うまく思い出せないと不安になります。しかし、少し苦労して思い出すくらいのほうが記憶は強くなると考えられています。研究者の間では、こうした学習を助ける適度な難しさを「望ましい困難」と呼ぶことがあります。

なお、すぐに効果を感じにくい点には注意が必要です。2006年の実験でも、5分後のテストでは読み返しのほうが成績が良かったように、想起練習の効果は時間がたってから表れます。数日から1週間ほど続けて、忘れにくさを実感してみてください。

よくある質問

年齢を重ねてからでもテスト効果はありますか?

テスト効果は、実験室だけでなく実際の学校の授業でも確認されており、特定の年代だけの現象ではないと考えられています。ただし記憶力には個人差があるため、効果の大きさは人によって異なります。焦らず、自分のペースで「思い出す」習慣を取り入れることが大切です。

選択問題でも効果はありますか?

選択問題でも、短い答えを書く問題でも、テスト効果は報告されています。ただし、どちらがより効果的かは研究によって結果が分かれています。迷ったら、選択肢を見る前にまず自分で答えを考えてから選ぶと、思い出す作業を増やせます。

読み返しはまったく意味がないのですか?

最初に内容を理解するための読み込みや、答え合わせのための確認には意味があります。問題なのは、思い出す練習をせずに読み返しだけで「覚えたつもり」になってしまうことです。読む時間の一部を、思い出す時間に置きかえるのがポイントです。

1回にどれくらいの時間をかければよいですか?

時間の長さについて、決まった正解は示されていません。研究からは、1回に長くやるより、短くてもよいので日をあけて何度も思い出すほうが効果的だと考えられます。5分程度の思い出し練習を毎日続けるところから始めてみてください。

まとめ

テスト効果とは、覚えたことを「思い出す」行為そのものが、記憶を強くするという現象です。読み返しは直後には成績が良く見えても、1週間後には思い出す練習をした人のほうがよく覚えていることが、多くの研究で確かめられています。

  • 覚えるより「思い出す」ほうが記憶に残る
  • 一度覚えたあとも、思い出す練習を続けることが定着のカギ
  • 答え合わせをして、日をあけて繰り返すと効果が高まる
  • 思い出しにくい苦しさは、記憶が強くなっているサイン

まずは今日学んだことについて、本を閉じて「3つ思い出して書き出す」ことから試してみてください。そして明日、同じ内容をもう一度思い出せるか確かめてみると、テスト効果の手ごたえを感じられるはずです。

参考リスト

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