はじめに
毎年10月18日は「世界メノポーズデー(World Menopause Day)」です。「メノポーズ」とは閉経のことで、その前後の「更年期」に起こる心と体の変化について、正しい知識を広めるための国際的な記念日です。「最近なんとなく調子が悪いけれど、これって更年期?」「家族の不調にどう向き合えばいい?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】世界メノポーズデーの由来と目的
- 【テーマ2】更年期症状の特徴と日本の最新データ
- 【テーマ3】更年期障害の治療法と受診の目安
更年期は誰にでも訪れる人生の節目ですが、正しく知っておくだけで、つらさを我慢しすぎずに済むようになります。ご本人だけでなく、家族や職場の仲間を支える立場の方にも役立つ内容をまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
世界メノポーズデーとは?10月18日の由来と目的
世界メノポーズデーは、更年期に関する情報を世界中に届け、女性の健康と生活の質を高めることを目的とした記念日です。中心となって活動しているのは、1978年に設立された国際閉経学会(International Menopause Society、略してIMS)です。
制定の経緯には2つの説明がある
制定の年については、情報源によって説明が異なります。日本女性医学学会によると、10月18日の世界メノポーズデーは、1999年に開かれた国際閉経学会で採択されたものです。
一方、国際閉経学会の公式サイトでは、学会が2009年に世界メノポーズデーを立ち上げ、毎年のテーマ設定や資料作りを主導していると説明しています。1999年に記念日として採択され、2009年から学会主導の世界的な啓発キャンペーンとして本格化した、と理解しておくとわかりやすいでしょう。
また、「世界保健機関(WHO)と国際閉経学会が共同で制定した」と紹介されることもあります。ただし、国際閉経学会の公式サイトではWHOとの共同制定には触れておらず、一次情報では確認できませんでした。WHOは2024年10月、世界メノポーズデーに合わせて閉経に関するファクトシート(基礎知識をまとめた資料)を公開しており、更年期の支援を医療の一部として位置づけています。
日本では「メノポーズ週間」として啓発
日本では、日本女性医学学会(旧・日本更年期医学会)が中心となり、10月18日から24日までの1週間を「メノポーズ週間」と定めています。2007年から毎年、講演会や動画、ポスターなどを通じて更年期の正しい知識を発信しています。
学会のポスターには「必要なのは、我慢ではなくてケアと理解」という趣旨の言葉が添えられており、ちょっとした不調でも気軽に医師に相談してほしいという思いが込められています。
2026年のテーマは「中年期の慢性的な痛み」
国際閉経学会は毎年テーマを決め、専門家による報告書(ホワイトペーパー)を公表しています。2025年のテーマは生活習慣の改善を治療に生かす「ライフスタイル医学」でした。2026年のテーマは、学会長のメッセージによると「中年期の慢性的な痛み(Chronic Pain in Midlife)」です(2026年10月時点)。肩こりや腰痛、関節の痛みなど、更年期世代に多い「痛み」に光を当てる内容です。
メノポーズ(閉経)と更年期の違い
「閉経」はある一時点のことを、「更年期」はその前後の約10年間を指します。言葉が似ているため混同されがちですが、意味は異なります。
閉経の定義と平均年齢
閉経とは、卵巣の働きが止まって月経が完全に終わることです。WHOによると、12か月続けて月経がない状態で確認され、多くの女性は45〜55歳の間に迎えます。
日本人の閉経年齢はおおむね50歳前後です。日本産科婦人科学会の1995年の調査では、半数の人が閉経を迎える年齢は50.54歳でした。その後、日本女性医学学会が2012年に報告した看護師対象の研究では、平均閉経年齢は52.2歳とされています。ただし個人差が大きく、40代前半で迎える人もいれば、50代後半まで月経が続く人もいます。
更年期は閉経をはさむ約10年間
更年期は、閉経の前5年と後5年を合わせた約10年間です。厚生労働省の資料では、45〜55歳がおおよその目安とされています。閉経は「最後の月経から1年たって初めてわかる」ため、自分が今まさに更年期かどうかは、その時点では正確にはわかりません。
この時期には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンは子宮だけでなく、骨、血管、皮膚、脳など全身に作用しているため、その変化がさまざまな不調として現れます。
更年期症状と更年期障害の主な症状
更年期に現れる不調のうち、ほかの病気が原因でないものを「更年期症状」、その症状で日常生活に支障が出ている状態を「更年期障害」と呼びます。症状の出方には大きな個人差があり、ほとんど症状がない人もいます。
厚生労働省の資料などをもとに、代表的な症状を整理すると次のとおりです。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 血管運動神経の症状 | ほてり、のぼせ、急な発汗(ホットフラッシュ)、動悸 |
| 心の症状 | イライラ、不安、気分の落ち込み、意欲の低下、不眠 |
| 体の症状 | 疲れやすさ、肩こり、腰痛、関節痛、頭痛、めまい、冷え |
| 泌尿器・生殖器の症状 | 腟や外陰部の乾燥・かゆみ、頻尿、尿もれ |
厚生労働省の資料によると、日本の更年期女性は、ホットフラッシュよりも倦怠感や肩こり、物忘れなどを訴える人が多いのが特徴です。症状が続く期間は平均で7年ほどとされ、10年以上続く人もいます。
また、閉経後はエストロゲンの減少により、骨粗しょう症や脂質異常症、動脈硬化などのリスクが高まります。WHOも、閉経後は骨密度の低下や心血管の病気のリスクに注意が必要だと指摘しています。更年期は、その後の健康を見直すきっかけでもあるのです。
データで見る日本の更年期事情
日本では、更年期の不調を感じながらも医療機関を受診していない人が大半です。厚生労働省が2022年3月に全国の20〜64歳の男女5,000人を対象に行った「更年期症状・障害に関する意識調査」から、その実態が見えてきます。
- 更年期障害の可能性があると考えている女性は、40代で28.3%、50代で38.3%
- 医療機関で更年期障害と診断された女性は、40代で3.6%、50代で9.1%にとどまる
- 症状があっても「受診していない」女性は、40代で81.7%、50代で78.9%
- 受診しない理由で最も多いのは「医療機関に行くほどのことではないと思うから」
この調査では、男性でも更年期障害の可能性があると考えている人が40代で8.2%、50代で14.3%いました。男性も40歳以降、男性ホルモン(テストステロン)の減少によって似た症状が出ることがあります。ただし、男性の更年期障害は仕組みが複雑で、まだ十分に解明されていません。
更年期の不調は、仕事にも大きな影響を与えます。経済産業省が2024年2月に公表した試算によると、更年期症状による経済損失は女性で年間約1.9兆円、男性で約1.2兆円にのぼります。欠勤や仕事の効率低下、離職などが積み重なった結果で、更年期はもはや個人だけの問題ではないことがわかります。
更年期障害の治療とセルフケア
更年期障害は「我慢するしかないもの」ではなく、治療やセルフケアでつらさを和らげることができます。治療は、まず丁寧な問診を行い、生活習慣の改善から始めるのが基本です。
まずは生活習慣の見直し
厚生労働省の資料では、食事・運動・睡眠を整え、禁煙を心がけることが重要とされています。具体的には次のようなポイントです。
- 主食・主菜・副菜・乳製品・果物のそろったバランスのよい食事
- 買い物ついでのウォーキングなど、日常生活に取り入れやすい運動
- 就寝と起床の時刻をそろえ、朝に光を浴びる
- 喫煙はほてりや不眠を悪化させる要因になるため、禁煙を心がける
医療機関での主な治療法
生活習慣を見直しても改善しない場合は、医療機関で薬による治療が検討されます。主な治療法は次の3つです。
- ホルモン補充療法(HRT):減ったエストロゲンを少量補う治療で、特にほてりや発汗に効果的です。飲み薬、貼り薬、塗り薬があります。乳がんや子宮体がん、静脈血栓症などのリスクがあるため、検査を受けたうえで医師の管理のもとで行います。
- 漢方療法:体質や症状に合わせて処方されます。女性ホルモンに作用しないため、ホルモン補充療法が使えない人にも選択肢となります。
- 向精神薬:気分の落ち込みや不安などの心の症状が強い場合に使われることがあります。
大豆イソフラボンやエクオールなどのサプリメントを使う人もいますが、薬との飲み合わせや効果の個人差に注意が必要です。服用中の薬がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
受診の目安とセルフチェック
受診すべきかどうか迷ったときは、「簡略更年期指数(SMI)」などのセルフチェックが目安になります。ほてり、発汗、冷え、動悸、不眠、イライラ、憂うつ、頭痛、疲れやすさ、肩こりの10項目を点数化するもので、厚生労働省研究班の「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」のサイトでも同様のチェックができます。
注意したいのは、更年期の症状に見えて、実はほかの病気が隠れている場合があることです。不正出血が続く、乳房にしこりがある、強い動悸や胸の痛みがくり返す、急に体重が減るといった場合は、早めに医療機関を受診してください。受診先に迷うときは、婦人科やかかりつけ医に相談するのが第一歩です。
家族や職場など周りの人ができるサポート
更年期のつらさを和らげるには、周囲の理解が大きな支えになります。経済産業省の資料によると、働く女性の約7割が望むサポートは「上司や周囲の理解」です。
一方、厚生労働省の調査では、女性ホルモンや男性ホルモンの変化が健康に影響することを「よく知っている」男性は、どの年代でも1割程度にとどまりました。家族や同僚が更年期について少し知っておくだけでも、本人が不調を打ち明けやすくなります。
- イライラや疲れやすさを「性格」や「気のせい」と決めつけない
- 受診をためらっている場合は、そっと背中を押す
- 職場では、休暇の取りやすさや勤務時間の柔軟な調整を検討する
世界メノポーズデーは、更年期を「女性だけの問題」ではなく、社会全体で考えるきっかけにする日でもあります。
よくある質問
世界メノポーズデーはいつですか?
毎年10月18日です。日本では、10月18日から24日までの1週間が「メノポーズ週間」とされ、日本女性医学学会を中心に啓発活動が行われています。
更年期は何歳ごろから始まりますか?
更年期は閉経をはさむ前後約10年間で、日本では45〜55歳ごろがおおよその目安です。ただし閉経年齢には個人差があるため、40代前半から変化を感じる人もいます。
更年期障害は何科を受診すればよいですか?
女性の場合は、まず婦人科に相談するのが一般的です。厚生労働省の調査でも、更年期症状で受診した40代・50代の女性は婦人科を選ぶ人が最も多くなっています。迷うときは、かかりつけ医に相談するのもよい方法です。
男性にも更年期はありますか?
あります。男性も40歳以降、男性ホルモンの減少によって疲れやすさ、ほてり、イライラ、不眠などの症状が出ることがあります。泌尿器科などで相談できますが、仕組みはまだ十分に解明されていない部分があります。
まとめ
世界メノポーズデーは、更年期を正しく理解し、我慢せずにケアすることを呼びかける日です。更年期は閉経をはさむ約10年間で、ほてりや疲れやすさ、気分の落ち込みなど多様な症状が現れますが、生活習慣の見直しやホルモン補充療法、漢方薬などで和らげることができます。日本では不調があっても受診しない人が約8割にのぼるため、まずは「知ること」と「相談すること」が大切です。
なお、症状や治療の選び方は個人の状況によって異なるため、気になる症状がある方は医師や公的な相談窓口にご相談ください。今年の10月18日をきっかけに、まずはセルフチェックで自分の体の状態を確かめるところから始めてみましょう。
参考リスト
- World Menopause Day – International Menopause Society
- IMS会長メッセージ(2026年4月、World Menopause Day 2026のテーマ発表) – International Menopause Society
- 一般社団法人 日本女性医学学会のこれまでの取り組み(世界メノポーズデー)
- Ménopause(閉経に関するファクトシート) – 世界保健機関(WHO)
- 「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果 – 厚生労働省
- 更年期世代の女性の健康支援に関する学習資材 – 厚生労働省
- 女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について – 経済産業省
- 閉経とは? 専門医にきく5つの基本 – メディカルノート
