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【詳細版】特殊詐欺はお金持ちだけを狙う?情報漏洩との関係と2026年最新対策

生活
この記事は約25分で読めます。
  1. はじめに
  2. 結論:狙われるのは「お金を持つ人」から「お金を動かせる人全員」へ
  3. 「お金持ちが狙われる」を最新データで再検証
    1. 前回記事(2025年12月27日公開)の主張
    2. 最新データによる判定
    3. 2025年の主要統計(警察庁の確定値)
    4. 2026年の最新動向(暫定値)
    5. 評価:犯罪グループのやり方が変わった
  4. 「ほとんどの国民の個人情報が流出済み」は本当か
    1. 東京商工リサーチ(TSR)の集計:上場企業の漏えい・紛失事故
    2. 2026年に相次ぐ大型の漏えい
    3. 個人情報保護委員会への漏えい等の報告件数
    4. 重複を考えた現実的な評価
  5. 情報漏洩と特殊詐欺はどこまで関係しているのか
    1. 関係を示す確かな事実
    2. 因果関係の強さを整理すると
    3. 名簿がなくても「カモリスト」は作れる
  6. 海外でも同じことが起きているのか
    1. 米国:被害額は過去最大の約209億ドル
    2. 英国:「自分で送金させる詐欺」が増加
    3. 韓国:1件当たりの被害額が倍増
    4. シンガポール:統計開始以来初めての減少
    5. 東南アジアの詐欺拠点(ミャンマー・カンボジアなど)
    6. 台湾・中国
  7. 特殊詐欺の被害を防ぐには
    1. 個人・家族ですぐできる対策
    2. 国内の制度の最新動向
    3. 海外の先進的な対策
  8. 前回記事から修正するポイント
  9. データを読むときの注意点
  10. よくある質問
    1. 特殊詐欺は本当にお金持ちの高齢者だけが狙われるのですか?
    2. 自分の個人情報が漏れているか確認する方法はありますか?
    3. 国際電話を止めると、どんな不便がありますか?
    4. 「警察」を名乗る電話がかかってきたら、どうすればよいですか?
    5. 名簿業者から自分の情報を消してもらうことはできますか?
  11. まとめ
  12. 参考リスト
    1. 共有:

はじめに

「特殊詐欺はお金を持っている人が狙われる」「個人情報はもう全部漏れているのでは」と不安に思ったことはありませんか。本記事では、特殊詐欺と情報漏洩の関係を、2026年10月時点で確認できる警察庁や調査会社の最新データで一つずつ検証します。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】特殊詐欺で本当に狙われている人の最新事情
  • 【テーマ2】情報漏洩と特殊詐欺のつながりの実態
  • 【テーマ3】家族で今日からできる詐欺被害の防ぎ方

数字の裏付けとともに、「どこまでが本当で、どこからが言い過ぎなのか」を整理しました。ご自身やご家族を守るための判断材料として、ぜひ最後までお読みください。

結論:狙われるのは「お金を持つ人」から「お金を動かせる人全員」へ

先に結論をお伝えします。「お金を持っている人ほど大きくだまし取られる」は、2025〜2026年の統計でも正しいといえます。ただし、「犯罪グループはお金持ちしか狙わない」という考え方は、もう成り立ちません。

いまは国際電話の無差別な発信とSNS広告によって、20〜30代を含む全世代が網にかけられています。そのうえで、資産を持つ高齢者が最も大きな被害を受けるという構造に変わっています。要点は次の3つです。

  • 「持っている人が狙われる」は半分正しく、半分古い:2025年の特殊詐欺は認知件数(警察が把握した件数)27,832件、被害額1,423.1億円で過去最悪でした。1件当たりの被害額は523.6万円と高額化し、被害額では70代・60代が最多です。一方、ニセ警察詐欺の件数は30代の2,239件が最多、次が20代の1,718件で、警察庁は「20代、30代の認知件数が2倍以上増加」としています。
  • 「ほとんどの国民の個人情報が流出」は、何らかの情報なら概ね正しい:東京商工リサーチの集計では、上場企業だけで2012〜2025年に延べ2億1,313万人分が漏れた可能性があります。ただし重複が多く、メールアドレスだけの漏えいも多いため、「全国民の資産状況まで犯罪者に握られている」わけではありません。
  • 漏洩と詐欺の関係は「あるが、主因ではない」:名簿業者が特殊詐欺グループに名簿を売り、個人情報保護委員会から緊急命令を受けた事例など、つながりは実在します。しかし2025〜2026年の急増の主な原因は、国際電話番号による大量発信とSNS広告です。対策としては、漏えいを嘆くより「電話とSNSの入口を断つ」ことが優先です。

「お金持ちが狙われる」を最新データで再検証

当ブログの過去記事『特殊詐欺ニュースで抱く「被害者はなぜ大金を持っている?」の疑問を解明!富裕層が狙われる構造と心理的罠』の主張のうち、「被害額が大きいのは資産を持つ高齢者」という部分は最新データでも裏付けられました。一方で、「若者は狙われない」という部分は、現在のデータと合わなくなっています。

前回記事(2025年12月27日公開)の主張

前回記事では、日本の個人金融資産の多くを高齢者が持っていることから、犯罪グループは「闇名簿(カモリスト)」とアポ電(下調べの電話)で資産家を選び出していると説明しました。そして「彼らは効率を最優先するため、資産のない若者には電話をかけません」と結論づけていました。

最新データによる判定

前回記事の主張を論点ごとに、2025〜2026年のデータと照らし合わせた結果が次の表です。

論点 前回記事の主張 2025〜2026年のデータ 判定
被害額は高齢者・資産を持つ層に集中 集中している オレオレ詐欺の被害額は70代が最多で、次いで60代。ニセ警察詐欺の既遂1件当たりの被害額も70代が最多 正しい
1件当たりの被害額 数千万円規模の報道が多い 特殊詐欺の既遂1件当たり被害額は2024年350.3万円から2025年523.6万円へ。SNS型投資詐欺は1,358.2万円、金地金(金の延べ板)をだまし取るニセ警察詐欺は3,572.7万円 正しい(さらに高額化)
名簿で選び出している 名簿とアポ電で選抜 名簿の悪用例は多数。ただし予兆電話(資産などを探る電話)は2025年に331,653件と認知件数の約12倍で、大量に”ふるい”にかけている 一部正しい
若者は狙わない 電話をかけない 20代・30代の認知件数が2倍以上に増加。ニセ警察詐欺の件数は30代2,239件が最多、次いで20代1,718件。40代以下は携帯電話経由が9割以上 誤り(現在は成り立たない)

2025年の主要統計(警察庁の確定値)

警察庁が2026年に公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」の主な数字は次のとおりです。

  • 特殊詐欺:認知件数27,832件(前年比32.3%増)、被害額1,423.1億円(同98.0%増)。件数は2004年の25,667件、被害額は2024年の718.8億円をいずれも上回り、過去最悪です。
  • ニセ警察詐欺(2025年1月から統計開始):11,014件・1,005.0億円。件数では特殊詐欺全体の39.6%ですが、被害額では70.6%を占めます。件数は30代の2,239件が最多、次が20代の1,718件ですが、既遂1件当たりの被害額は70代が最多です。
  • SNS型投資詐欺:9,523件・1,288.0億円(既遂1件当たり1,358.2万円)。被害者は50代が最多ですが、増加率は30代が最多です。2025年7月以降は、著名人の画像や動画を無断で使ったバナー広告による被害が目立ちます。最初の接触ツールはInstagramが最多で、YouTubeは前年の約21倍に増えました。
  • SNS型ロマンス詐欺:5,645件・546.4億円。
  • 3種類の合計:43,000件・3,257.4億円(前年比63.6%増)。
  • 金地金の被害:特殊詐欺全体で173件・60.2億円。
  • お金の渡し方:振込型が約6割で、ネットバンキングによる被害額はATMの約3倍です。普段ネットバンキングを使わない高齢者が、犯人の指示で口座の開設や設定をさせられて被害に遭う例も確認されています。

2026年の最新動向(暫定値)

2026年に入っても被害は増え続けており、通年で2025年を上回るペースです。

  • 2026年上半期(1〜6月):警察庁の暫定値によると、認知件数22,031件(前年同期比18.3%増)、被害総額1,816.2億円(同51.7%増)で、1日当たり10.0億円です。内訳はSNS型投資詐欺797.9億円(5,893件)、ニセ警察詐欺507.9億円(4,466件)、SNS型ロマンス詐欺246.6億円(2,509件)です。
  • 年代の特徴:SNS型投資詐欺の被害額は60代が最多です。一方で、20〜50代が被害額の約4割、件数の約6割を占めます。ニセ警察詐欺は件数・被害額とも70代が最多で、接触手段の9割以上が電話です。
  • 2026年7月末時点:26,051件・2,108.1億円(前年同期より632.8億円増)です。

ここで注意したいのは、2026年の速報値がSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺を含めた総額として報じられている点です。2025年の「特殊詐欺1,423.1億円」と比べると過大に見えるため、比較するなら2025年の3種類合計3,257.4億円を使うのが適切です。

評価:犯罪グループのやり方が変わった

前回記事の「被害額が大きいのは資産を持つ高齢者」という部分は、最新データでも裏付けられます。しかし、犯罪グループのやり方は「名簿で選んだ資産家にだけ電話する」方式から変わりました。

いまは国際電話・携帯電話・SNS広告で全世代に大量に接触し、引っかかった人から”出せるだけ”出させる方式です。若い世代は1件当たりの額は小さいものの、件数が急増しています。ネットバンキングや暗号資産(仮想通貨)での送金によって、手元に現金がなくても被害が成立するようになりました。

つまり、狙われるのは「お金を持っている人」から「お金を動かせる人全員」へと変わったと考えるのが正確です。なお、前回記事で引用した「個人金融資産2,000兆円超の60%以上を60代以上が保有」という数字は、今回は再検証していません。最新の値は、日本銀行の資金循環統計や総務省の全国家計構造調査で確認してください。

「ほとんどの国民の個人情報が流出済み」は本当か

メールアドレスや氏名など「何らかの情報」であれば、ネットや通販を使う大人の多くがどこかで漏れていると考えるのが現実的です。ただし、詐欺にそのまま使える詳しいデータが全国民分そろっているわけではありません。

東京商工リサーチ(TSR)の集計:上場企業の漏えい・紛失事故

東京商工リサーチは、上場企業とその子会社が自主的に公表した個人情報の漏えい・紛失事故を、2012年から集計しています。主な年の結果は次のとおりです。

年 事故件数 漏えい・紛失人数 主な出来事
2021年 137件 574万9,773人分 2012年からの累計1億1,979万人分で、ほぼ日本の人口に匹敵
2022年 165件 592万7,057人分 累計1億2,572万人分
2023年 175件 4,090万8,718人分(過去最多) NTTグループの元派遣社員による持ち出し928万人分
2024年 189件(過去最多) 1,586万5,611人分 2012〜2024年の累計1,454件・1億8,249万人分(人口の約1.5倍)
2025年 180件(歴代2番目、社数158社は最多) 3,063万6,910人分(前年比93.1%増、歴代3番目) 最大はAOKI HD(快活CLUB)の729万87人分。アサヒグループHD、アスクルもランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の被害
2026年(10月5日時点) ― ― 100万件以上の事故が10件(2025年は年間6件)。1,000万件以上は3件で、2012〜2025年の14年間の合計と同数

TSRによると、2012〜2025年の累計は1,634件、漏れた可能性のある個人情報は延べ2億1,313万人分です。TSRは、単純計算で国民1人当たり2回漏えいした計算になると説明しています。

2025年の原因は「ウイルス感染・不正アクセス」が116件(64.4%)で最多でした。この原因による1件当たりの平均漏えい人数は56万3,637人分と突出しています。人数を公表していない「調査中・不明等」も70件あり、TSRは実態はさらに深刻だと指摘しています。

2026年に相次ぐ大型の漏えい

2026年は、1,000万件を超える大型の漏えいが続いています。TSRが挙げた主な事例は次のとおりです。

  • KDDI:プロバイダー向けメールシステムへの不正アクセスで、1,223万1,954件のメールアドレスが漏えい
  • 物語コーポレーション:「焼肉きんぐ」の公式アプリから会員情報1,078万8,963件が漏えい
  • タイムズモビリティ:約660万件(アカウント数)が漏えい

民間の集計サイトによると、9〜10月にはskyticket(最大約1,464万件)、バーガーキング公式アプリ(約1,118万件)、第一興商(約872万件のおそれ)、ローソンID(215万件超)なども公表されています。ただし、これらは各社の発表をもとにした二次集計です。正確な数字は各社の一次発表で確認してください。

個人情報保護委員会への漏えい等の報告件数

国の機関である個人情報保護委員会(PPC)にも、漏えいの報告が毎年大量に届いています。2026年7月に公表された年次報告の主な内容は次のとおりです。

  • 令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の処理件数は、民間事業者17,139件(前年度の19,056件は過去最多)、行政機関等2,278件でした。官民合計は19,417件で、前年度より7.6%減っています。
  • 最も多いのは、病院や薬局での書類の渡し間違いなど、人為的なミスです。委託先からの漏えいでは不正アクセスが中心で、令和6年度は委託先からの漏えい2,248件のうち62.8%を占めました。
  • PPCの件数は「事案の数」で、人数ではありません。令和6年度には、1件で50,001人以上が漏えいした事案が144件ありました。

重複を考えた現実的な評価

「延べ2億人分」という数字は大きなインパクトがありますが、そのまま「2億人が被害」と読むのは誤りです。次の4つの点を押さえておく必要があります。

  1. 延べ人数と実際の人数は違う:同じ人が通販、飲食アプリ、通信会社など複数のサービスで重ねて数えられています。退会済みのアカウントや法人の情報も含まれます。
  2. 漏れた中身は事故ごとにばらばら:KDDIの事例のようにメールアドレス(一部パスワード)だけの場合もあれば、氏名・住所・電話番号・生年月日までそろう場合もあります。特殊詐欺に直結する「固定電話番号+高齢+資産状況」がそろった情報は、企業の漏えいからはむしろ得にくいものです。
  3. 上場企業以外は統計に入っていない:TSRの集計は上場企業の自主公表分だけです。非上場企業や自治体、名簿業者経由の流通、ダークウェブ(一般の検索では見えない闇サイト)での売買は含まれていません。
  4. 判定:ネットや通販を使う大人の大半は、メールアドレス、氏名、電話番号のいずれかが、どこかで漏れていると考えるのが現実的で安全な前提です(推測を含む評価です)。一方で、「ほぼ全国民の、詐欺に使える詳しいデータが犯罪者の手にある」とまではいえません。

情報漏洩と特殊詐欺はどこまで関係しているのか

情報漏洩と特殊詐欺は、確かにつながっています。ただし、つながりが最も強いのは「名簿業者が流通させる高齢者名簿」と「メール・パスワードの漏えいによるフィッシング」で、企業の大規模漏えいそのものではありません。

関係を示す確かな事実

公的な資料や主要な報道から確認できる事実は、次のとおりです。

  • 警察庁の公式見解:2024年2月の警察庁の通達は、犯罪グループが特殊詐欺の標的を選ぶ際に、氏名や住所などをリスト化した名簿を使っている様子がうかがえると明記しています。悪質な名簿業者を見つけた場合は、個人情報保護委員会へ情報を提供するよう定めています。
  • 名簿業者への緊急命令(2025年5月16日):個人情報保護委員会は、名簿業者の有限会社ビジネスプランニング(東京都中野区)に、個人情報保護法に基づく緊急命令を出しました。同社は2023年5月〜2024年10月、販売先が違法行為に及ぶ可能性を知りながら名簿を提供し、その名簿は特殊詐欺グループに渡っていました。発覚のきっかけは、特殊詐欺グループの容疑者が同社名義の口座へ送金していたという警察からの情報提供です。同社は2024年1月にも、転売業者に名簿を売ったとして指導を受けていました。販売件数は公表されていません。
  • NTT西日本子会社からの大量持ち出し(約928万人分):NTTビジネスソリューションズの元派遣社員が、2013年7月頃〜2023年2月頃に、委託元(民間30社、地方公共団体38団体など)の顧客・住民情報を持ち出しました。個人情報保護委員会は、売却先を名簿業者2社(中央ビジネスサービス、ネクストステージ)と認定しています。報道によると約250回売却し、約2,500万円を受け取ったとされます(捜査関係者からの情報で、判決で認められた額ではありません)。発覚の端緒は、委託元の顧客から寄せられた不審な投資勧誘電話の苦情でした。ただし、この情報が特殊詐欺の被害に使われたと公的に確認された記述は見当たらないため、「詐欺に悪用された」とは断定できません。
  • 押収された名簿の例(2026年の報道):北九州市では、ニセ電話詐欺の受け子(現金の受け取り役)の運転手役として逮捕された30代の男のスマートフォンから、75歳以上の北九州市民7,000人以上の名前・住所・電話番号が載った名簿が見つかったと報じられました。警察は1,000人以上に連絡して注意を呼びかけたとされます。また、タイ・バンコクでは詐欺拠点とされる豪邸から、日本人約600人分の「闇名簿」や、家族構成・預金残高などを記した資料が押収されたと報じられています。日本人4人を含む14人が拘束され、現地警察は「ボスは中国人、日本人は末端」とみているとのことです。
  • 「ルフィ」グループ:広域強盗事件では、自宅金庫の場所や金額、家族構成、在宅時間まで記した「ネタ元」からの事前情報が使われていたと、取材本『檻の中のルフィ』(栗田シメイ著)が伝えています。ここで使われたのは企業へのハッキングではなく、身内などからのリーク情報でした。行政から漏れた資産情報が使われた疑いは国会の質問主意書でも取り上げられましたが、公的に確認された事実ではありません。

因果関係の強さを整理すると

情報の流れ(経路)ごとに、証拠の強さを整理すると次のようになります。

経路 証拠の強さ 説明
名簿業者 → 特殊詐欺グループ → 高齢者への電話 強い 緊急命令、押収名簿、警察庁の通達で裏付けがある
企業の大規模漏えい(メール・ID)→ フィッシング・不正ログイン 強い 漏れたメールアドレスやパスワードは、なりすましメールやアカウント乗っ取りに直結する
企業の大規模漏えい → 電話型の特殊詐欺 弱い〜中程度 名簿業者への転売経路は確認されているが、詐欺被害との直接の結びつきを公的に確認した例は限られる
漏えいが2025〜2026年の詐欺急増の主因か 弱い 急増の主因は国際電話番号による大量発信(犯行番号の75.5%、92,996件)とSNS広告で、名簿がなくても成立する

名簿がなくても「カモリスト」は作れる

警察が把握した予兆電話(住所・氏名・資産・取引金融機関を探る電話)は、2025年に331,653件(前年比71.4%増)にのぼりました。これは、名簿がなくても犯罪グループが電話で自前の「カモリスト」を作れることを示しています。漏えいを防ぐことも大切ですが、それだけでは特殊詐欺は止まりません。

海外でも同じことが起きているのか

海外でも構図はよく似ています。どの国でも「件数は若い世代や働き盛りの世代にも広がり、1件当たりの被害額は高齢者が最大、損失総額で最も大きいのは投資詐欺」という傾向がはっきりしています。日本の特徴は、警察官を装う電話で現金や振込をさせる手口が、被害額の中心になっている点です。

米国:被害額は過去最大の約209億ドル

FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)が2026年4月に公表した「2025年インターネット犯罪報告書」の主な内容は次のとおりです。

  • 苦情は1,008,597件、被害額は208.77億ドル(前年比26%増)でした。
  • 60歳以上は201,266件・約77億ドルで、年代別で最多です。平均被害額は約3万8,500ドルで、10万ドルを超える被害者は1万2,000人を超えます。
  • 60歳以上の被害は投資詐欺が約35億ドルで最多です。「個人データ侵害」の項目でも3.24億ドルの被害が報告されています。
  • AIに関係する詐欺を初めて独立した項目で集計し、22,364件・約8.93億ドルでした。
  • 60歳以上の増加率について、FBIの2026年5月15日の記事は苦情件数37%増・損失59%増としています。ただし、IC3の高齢者向けパンフレットは37%を「損失の増加」と書いており、FBI自身の資料にも食い違いがあります。

米国の連邦取引委員会(FTC)にも、2025年に約300万件の詐欺報告が寄せられ、損失は159億ドル(2024年は125億ドル)でした。投資詐欺が79億ドルで約半分を占め、なりすまし詐欺は100万件超・35億ドルです。損失は50歳以上が43億ドル、それ未満が23億ドルでした。FTCは、報告されない分を含めた実際の損失を2024年で最大1,959億ドルと推計しています。

大規模漏えいでは、2024年のNational Public Data事件で、氏名・住所・社会保障番号などを含む約29億件の記録が盗まれたとされます(対象は米国・英国・カナダ)。

英国:「自分で送金させる詐欺」が増加

英国の銀行業界団体UK Financeの「Annual Fraud Report 2026」によると、2025年の決済詐欺の損失は12.8億ポンド(前年比4%増)で、件数は400万件を超えました。

  • 被害者自身に送金させる詐欺(APP詐欺)は5億7,640万ポンド(19%増)・248,070件でした。このうち投資詐欺は2億2,150万ポンド(40%増)で過去最高です。
  • APP詐欺の66%はオンライン、17%は電話などの通信網が起点です。
  • 2024年10月から銀行による返金が義務化され、2025年にはAPP詐欺の損失の61%(3億5,430万ポンド)が返金されました。

韓国:1件当たりの被害額が倍増

韓国警察庁の2025年11月の発表として、2025年1〜10月のボイスフィッシング(電話詐欺)の被害額が1兆566億ウォン(約1,100億円)・19,972件だったと報じられています。政府が2006年に集計を始めて以来、初めて1兆ウォンを超えたとされます。

件数は2021年の30,982件から減った一方、1件当たりの平均被害額は2021年の2,498万ウォンから5,290万ウォンへ倍増したとされます。手口の中心は、スマホに悪質なアプリを入れさせて金融情報を抜き取る方法です。中国に拠点を置き、60代以上の韓国人の氏名・電話番号・住所のデータベースを使って約102億ウォンをだまし取った組織も摘発されており、漏えいデータと詐欺が直結した海外の典型例といえます。

なお、韓国政府は2025年8月に対策チームを作り、詐欺に使われた電話番号の緊急遮断などを進めました。その結果、2025年10月以降は件数が前年より減り続けていると、韓国の主要紙が報じています。

シンガポール:統計開始以来初めての減少

シンガポールでは、2025年の詐欺が37,308件(前年比27.6%減)・約9億1,310万シンガポールドル(17.9%減)となり、統計を始めて以来初めて減少しました。被害者の85.2%は65歳未満ですが、1人当たりの被害額は高齢者が最も高くなっています。

東南アジアの詐欺拠点(ミャンマー・カンボジアなど)

国境を越えた詐欺拠点の問題も深刻です。数字はいずれも推計で、幅がある点に注意してください。

  • 米議会調査局(CRS)によると、国連は2025年初めに、66か国から最大30万人が人身取引で詐欺拠点に送り込まれたと推計しています。国際刑事警察機構(INTERPOL)は、被害者の出身国を80か国としています。
  • 東アジア・東南アジア・豪州・ニュージーランドの詐欺被害額は、2025年に880億〜1,140億ドル(国連薬物犯罪事務所の推計)です。米国人が東南アジアの拠点から受けた損失は、少なくとも182億ドル(米国務省の推計)とされます。
  • 米国平和研究所(USIP)の2024年5月の報告書は、カンボジアの詐欺収益を年125億ドル超、同国のGDPの約40%相当と推計しています。米国の機関にはGDPの最大60%相当とする推計もありますが、フン・マネット首相は「60%」説を否定しています。
  • 日本向けの拠点も、フィリピン(ルフィ事件)からタイ・カンボジアなどへ広がっています。

台湾・中国

台湾と中国については、今回の調査では2025〜2026年の公的な統計を確認できませんでした。詳しく知りたい場合は、台湾の内政部警政署や中国の公安部の発表を確認してください。

特殊詐欺の被害を防ぐには

今日からできる最も効果的な対策は、詐欺の「入口」である電話とSNSを断つことです。効果が高い順に紹介します。

個人・家族ですぐできる対策

  1. 固定電話の国際電話を止める:「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364、通話料無料)に申し込むと、固定電話・ひかり電話の国際電話の発信と着信を無料で休止できます。申し込みはウェブ・電話・郵送のいずれでも可能です。オペレーター案内は平日9時〜17時、自動音声は24時間受け付けています。止まるまで数日〜1週間程度かかり、家族や仕事の国際電話も止まる点に注意してください。
  2. 携帯電話の着信設定を見直す:「+」から始まる番号には出ない、かけ直さないようにします。非通知や通知不可能な着信を拒否し、電話帳にない番号は留守番電話で確認します。警察庁の推奨アプリを入れると、犯行に使われた番号や国際電話をブロックできます(国際電話の一括ブロックはAndroidのみ)。40代以下のニセ警察詐欺の被害は、9割以上が携帯電話経由です。
  3. 固定電話は常に留守番電話にする:迷惑電話防止機能付きの電話機を使うことも、政府の総合対策で勧められています。
  4. 「警察」「検察」を名乗る電話への対応を家族で決める:「捜査のため」「資産の確認のため」と言われ、現金・金地金・振込・ネットバンキングの設定を求められたら、その時点で詐欺と判断します。いったん電話を切り、自分で調べた警察署の代表番号か「#9110」にかけ直してください。警察がLINEのビデオ通話で逮捕状を見せたり、口座確認のために送金させたりすることはありません。
  5. 家族の合言葉と「お金の話は必ず家族に相談」のルールを作る:SNS型投資詐欺では、著名人のなりすまし広告からLINEの投資グループへ誘導される例が約9割です。「広告からLINEグループへ」という流れ自体を危険信号として、家族で共有しておきましょう。
  6. ATMとネットバンキングに気をつける:通話しながらATMを操作しないことが大切です(愛知県警などの「STOP!ATMでの携帯電話」運動)。高齢の親のネットバンキングは振込の上限額を下げ、使わないなら申し込まないことも有効です。
  7. 情報漏えいに備える:パスワードを使い回さず、二段階認証を設定します。漏えいの通知が届いたら、すぐにパスワードを変更してください。メールアドレスが漏れていないかは、「Have I Been Pwned」のような公開サービスで確認できます。
  8. 名簿から自分の情報を外してもらう:名簿業者(オプトアウト届出事業者)には、本人が第三者への提供の停止を求めることができます。心当たりのないダイレクトメールが届いたら、送り主にどこから名簿を入手したか確認し、停止を依頼しましょう。

なお、詐欺被害やお金に関わる判断は、個人の状況によって異なります。不安なときは、警察相談専用電話「#9110」や消費生活センターなどの公的機関にご相談ください。

国内の制度の最新動向

国も対策を強化しています。2025年4月22日に犯罪対策閣僚会議が決定した「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」には、主に次の内容が盛り込まれました。

  • 国際電話サービスの悪用対策と、国際電話不取扱受付センターの体制強化
  • 詐欺電話を遮断するサービスへの支援
  • 高額の払い戻しをする高齢者への、金融機関による声かけ
  • 悪質な名簿業者の取り締まりと、押収した名簿を使った注意喚起

総務省は、携帯電話各社が提供する迷惑電話対策サービスの無償化を含めた措置を検討するよう求めています。

さらに、改正個人情報保護法が2026年7月10日に成立し、7月17日に公布されました(令和8年法律第56号)。主な内容は次のとおりです。

  • 課徴金制度の新設(1,000人を超える個人データの不正取得や不正利用などが対象)
  • 不正取得罪の新設と、不正提供罪の範囲の拡大(2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)
  • 名簿業者などに、提供先の身元と利用目的の確認を義務化
  • 罰則の一部は2027年1月17日に先に施行され、主要部分は公布から2年以内に施行

これまで名簿業者は、指導に従わなくても処罰されにくい状態でした。今回の改正は、その状況を変える初めての本格的な手当てです。

海外の先進的な対策

海外では、銀行や通信会社、SNS企業にも詐欺対策の責任を負わせる動きが進んでいます。

  • 豪州:2025年2月に「詐欺防止枠組み(Scams Prevention Framework)法」が成立し、銀行・通信・デジタルプラットフォームに詐欺防止の法的な義務と罰則を課しました。通信事業者は2020年12月以降に28億件超の詐欺電話を、2022年7月以降に10億件超の詐欺SMSをブロックしています(2025年10〜12月期だけで電話1億990万件、SMS4,110万件)。ルールに違反した通信事業者には、豪州通信メディア庁(ACMA)が罰金を科しています。
  • 英国:APP詐欺の返金を銀行に義務づけています。業界団体は、詐欺の起点となるテック企業や通信事業者にも責任と費用負担を求めています。
  • シンガポール:2024年12月から「責任分担枠組み(Shared Responsibility Framework)」を導入し、義務を怠った金融機関や通信事業者がフィッシング被害を負担する仕組みにしました。2025年7月1日には「詐欺防止法(Protection from Scams Act)」が施行され、説得に応じない被害者の銀行取引を警察が一時的に制限できるようになりました。2025年に被害が件数・金額ともに初めて減ったのは、これらの効果とみられています(因果関係は推定です)。

前回記事から修正するポイント

今回の検証を受けて、当ブログの前回記事の内容を次のように更新します。

  1. 「若者には電話をかけない」は撤回します:2025年の警察庁の確定値では、20代・30代の認知件数が2倍以上に増え、ニセ警察詐欺の件数は30代2,239件が最多、20代1,718件が2番目でした。正確には「被害”額”は資産を持つ高齢者に集中し、被害”件数”は全世代に広がっている」と、二つの物差しで考える必要があります。
  2. 「全国民の情報が流出」は但し書きとセットで考えます:「上場企業だけで延べ2億人分超」という数字には、「重複やメールアドレスのみの漏えいを含む延べ数」という但し書きが欠かせません。数字だけを強調すると、誇張になってしまいます。
  3. 漏えいと詐欺をつなぐ主役は「名簿業者」です:最も裏付けが強いのは、企業へのハッキングではなく名簿業者を通じた流通です(緊急命令、北九州の7,000人名簿、タイの拠点の600人名簿)。
  4. 対策は「入口を断つ」が最優先です:今日できる行動の第一は、親の固定電話の国際電話休止と、携帯電話の「+」番号ブロックです。漏えいの確認やパスワード対策は、フィッシング対策として分けて考えると整理しやすくなります。

データを読むときの注意点

本記事の数字には、性質の違うものが含まれています。読み違えを防ぐため、次の点にご注意ください。

  • 2026年の数値は暫定値で、年末の確定値で変わる可能性があります。また、2026年の速報値はSNS型投資・ロマンス詐欺を含む総額なので、2025年の特殊詐欺単体(1,423.1億円)とは比べられません。
  • TSRの漏えい人数は、上場企業が自主的に公表した延べ数で、重複や「漏えいの可能性」も含みます。PPCの件数は事案の数で、人数ではありません。
  • NTTの事案の売却額(約2,500万円)は報道ベースで、詐欺への悪用は公的に確認されていません。「ルフィ」事件の名簿の出どころは書籍・報道に基づくもので、行政からの流出は確認されていません。
  • 海外の数値は、制度・集計方法・通貨が異なるため、単純には比べられません。東南アジアの詐欺拠点の規模や損失額は推計値で、幅があります。FBIの高齢者向けの数値には、資料によって食い違いがあります。
  • 台湾・中国の最新統計は今回確認できていません。

よくある質問

特殊詐欺は本当にお金持ちの高齢者だけが狙われるのですか?

いいえ、現在は全世代が狙われています。被害額では70代・60代が最多ですが、2025年のニセ警察詐欺の件数は30代が最多、20代が2番目でした。若い世代は携帯電話やSNSを通じて被害に遭うケースが目立ちます。

自分の個人情報が漏れているか確認する方法はありますか?

メールアドレスについては、「Have I Been Pwned」のような公開サービスで、過去の漏えい事件に含まれていないか確認できます。企業から漏えいの通知が届いた場合は、すぐにそのサービスのパスワードを変更し、二段階認証を設定しましょう。

国際電話を止めると、どんな不便がありますか?

海外に住む家族や仕事相手との国際電話も、発信・着信ともに止まります。また、申し込みから休止まで数日〜1週間程度かかります。海外との通話が必要ない家庭であれば、固定電話の国際電話休止は効果の高い対策です。

「警察」を名乗る電話がかかってきたら、どうすればよいですか?

その場で指示に従わず、いったん電話を切ってください。そのうえで、自分で調べた警察署の代表番号か、警察相談専用電話「#9110」にかけ直して確認します。本物の警察が、捜査のために現金や送金を求めることはありません。

名簿業者から自分の情報を消してもらうことはできますか?

名簿業者(オプトアウト届出事業者)には、本人が第三者への提供を止めるよう求めることができます。心当たりのないダイレクトメールが届いたら、送り主に名簿の入手先を確認し、停止を依頼しましょう。

まとめ

特殊詐欺で大きな被害を受けやすいのは、今も資産を持つ高齢者です。しかし犯罪グループは、国際電話とSNS広告で全世代に大量に接触する方式に変わりました。狙われるのは「お金を持っている人」から「お金を動かせる人全員」へと広がっています。

個人情報の漏えいは確かに深刻で、何らかの情報が漏れていると考えるのが現実的です。ただし、詐欺急増の主な原因は漏えいではなく、電話とSNSという「入口」にあります。漏えいを嘆くより、入口を断つ対策が効果的です。

まずは今日、ご自身やご両親の固定電話について、国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)で国際電話の休止を申し込めるか確認してみてください。

参考リスト

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