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テキサスの狙撃兵の誤謬とは?病気の多発地域と占いが当たる仕組み

統計学
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はじめに

「この町では同じ病気の人が多い気がする」「占い師に言われたことがズバリ当たった」。そんな経験をすると、何か特別な原因や力があるように感じてしまいます。ところが、その多くはテキサスの狙撃兵の誤謬(ごびゅう)と呼ばれる考え方の落とし穴で説明できます。これは、あとから的を描いて「命中した」と思いこんでしまう心のクセのことです。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】テキサスの狙撃兵の誤謬の意味と名前の由来
  • 【テーマ2】病気が多発しているように見える地域の正体
  • 【テーマ3】占いや予言が当たったと感じる心理の仕組み

この記事を読めば、ニュースやSNS、占いの「当たった話」を冷静に受け止める目が身につきます。日常の思いこみから自由になるヒントとして、ぜひ最後までお読みください。

テキサスの狙撃兵の誤謬とは?「あとから的を描く」たとえ話

テキサスの狙撃兵の誤謬とは、偶然にできたかたまりを見つけてから、そこに意味や原因があると決めつけてしまう誤りのことです。名前は、ある射撃手のたとえ話から来ています。

その射撃手は、納屋(なや)の壁に向かってでたらめに銃を撃ちます。撃ち終わってから、弾の穴がいちばん集まっている場所を探し、そこを囲むように的を描きます。そして「自分は百発百中の名射手だ」と胸を張るのです。

本当の腕前を示すなら、的は撃つ前に描いておく必要があります。順番が逆になったとたん、どんなに下手な射撃でも「名人の成績」に見えてしまいます。データの読み方でも、まったく同じことが起こります。

論理の誤りを集めた解説サイト「The Fallacy Files」によると、この誤りは、データの中のかたまりを見て「何かの原因があるはずだ」と飛びつくことを指します。かたまりはただの偶然かもしれず、仮に偶然でなくても、思いついた原因とは別の理由で生まれている可能性があります。

名前の由来と広まり

この呼び名は、病気の広がり方を研究する「疫学」(えきがく)の分野から広まったとされています。The Fallacy Filesでは、疫学者のシーモア・グラファーマン氏が「テキサスの狙撃兵効果」という言葉を作ったと紹介されています。

言葉の歴史を調べているバリー・ポピック氏のまとめでは、射撃手のたとえ話自体は1970年代には文章に登場していました。「テキサスの狙撃兵効果」という呼び方は1982年、「テキサスの狙撃兵の誤謬」は1992年に使われた例があるとされています。日本語では「テキサスの名射手の誤謬」と訳されることもあります。

似た考え方:クラスター錯覚

よく似た心理現象に「クラスター錯覚」があります。クラスターとは「かたまり」や「群れ」という意味です。サンプル(調べる数)が少ないと、まったくの偶然でも筋やかたまりが必ずできます。それを「偶然ではない」と思いこんでしまうのがクラスター錯覚です。

懐疑論の事典サイト「The Skeptic’s Dictionary」では、テキサスの狙撃兵の誤謬は、疫学者がクラスター錯覚につけた名前だと説明されています。つまり、両者は同じ心の働きを別の角度から呼んだものと考えるとわかりやすいでしょう。

なぜ人はあとから的を描いてしまうのか

人があとから的を描いてしまう最大の理由は、偶然がどれほどムラのあるものかを、脳が小さく見積もってしまうからです。そこに「見たいものを探すクセ」が重なり、誤りが強まります。

偶然は「均等」にはならない

たとえば、方眼紙の上に米粒を100粒ばらまいてみてください。米粒はきれいに均等には散らばらず、あちこちに密集した場所とすき間ができます。これが偶然の自然な姿です。

ところが私たちは、偶然なら「ほどよくバラけるはずだ」と思いこんでいます。そのため、密集した場所を見ると「何か理由があるに違いない」と感じてしまうのです。The Skeptic’s Dictionaryでも、統計的に意味があるように見えるかたまりが、実は偶然の法則どおりに起きているにすぎない場合があると指摘されています。

見たいものを探す確証バイアスと後知恵

人には、自分の考えに合う情報ばかり集め、合わない情報を見落とす「確証バイアス」というクセがあります。さらに、結果を知ったあとで「最初からわかっていた」と感じる「後知恵バイアス」もあります。

心理学の話題を扱うブログ「You Are Not So Smart」では、テキサスの狙撃兵の誤謬を、後知恵バイアスと確証バイアスが組み合わさって生まれるものとして説明しています。また、科学者が先に仮説を立て、それを新しい調査で確かめようとするのは、この誤謬を避けるためでもあると述べています。まさに「撃つ前に的を描く」やり方です。

この誤謬が起こる流れを、射撃のたとえと実際の例で比べると次のようになります。

場面 弾の穴にあたるもの あとから描いた的 出てくる思いこみ
納屋の射撃 でたらめに撃った弾の跡 穴が集まった場所を囲む円 自分は名射手だ
病気の多発 地図上の患者の住所 患者が多い範囲を囲む境界線 この地域には原因がある
占い・予言 占い師の多くの言葉 当たった言葉だけを選んだ記憶 この人は本物だ

病気が多発する地域に見える仕組み

「ある地域で特定の病気が多い」と感じられる現象の多くは、患者が集まって見える範囲に、あとから境界線を引いていることで生まれます。もちろん本当に原因がある場合もあるため、科学的な調べ方で見分けることが大切です。

境界線をあとから引くと「異常」が生まれる

がん患者が近所に多く見える状態は「がんクラスター」と呼ばれます。アメリカ国立がん研究所(NCI)の解説によると、がんは比較的よくある病気のため、互いに関係がなくても患者が集まって見えることがあり、偶然でクラスターが生じうるとされています。

問題は、地図を先に眺めてから「患者が多い範囲」を囲んでしまうことです。統計学の論文でも、患者の分布を見て小さな範囲に境界線を引き、そのあとで「この範囲は偶然より多いか」と調べると、まちがって「異常あり」と判定する確率がふくらむと説明されています。

具体的に考えてみましょう。仮に1,000の町があり、どの町でも病気のなりやすさがまったく同じだとします。それでも偶然のムラによって、いくつかの町では患者数が平均よりかなり多くなります。その町だけを取り出して報道すれば、「異常な多発地域」に見えてしまうのです。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者による学会発表の要旨でも、がんクラスターの判断が難しい理由としてこの誤謬が挙げられています。そこでは、時間と場所の範囲をどう決めるか、そして気づかないうちに何度も比べていることが問題だと指摘されています。

アメリカの調査で分かったこと

アメリカの州や連邦の保健機関が行った調査をまとめた2012年の論文(グッドマン氏ら)は、この問題の大きさをよく示しています。

  • 見直した調査は428件で、対象となったがんは567種類
  • 実際に患者の増加が確認できたのは72種類(約13%)
  • NCIの解説によると、72件のうち疑われた原因と結びつけられたのは3件
  • はっきりした原因が突きとめられたのは、わずか1件

つまり、住民が「多い」と感じて調査を求めたケースの大半は、詳しく調べると偶然の範囲内でした。アメリカがん協会(ACS)も、ほとんどの場合、疑われたクラスターは本当のがんクラスターではないと説明しています。

本当のクラスターを見分ける手がかり

一方で、すべてが偶然というわけではありません。NCIは、慎重な調査によって環境中の特定の発がん物質が原因と示されたクラスターもあると説明しています。

専門家が「本物のクラスターかもしれない」と考えるのは、次のような場合です。

  • いろいろな種類のがんではなく、同じ種類のがんが多い
  • めったに見られない、まれな種類のがんが多い
  • ふだんはその病気にかかりにくい年齢層などで患者が増えている

また、アメリカのコーネル大学の数学教材では、ある工場が有害物質を捨てた疑いがあるなど、調べる前から「ここは多いはずだ」と考える理由がある場合は、この誤謬にあたらないと説明されています。これは、撃つ前に的を描いている状態だからです。

アメリカ疾病対策センター(CDC)は、地域のがんの心配に対応するための手引きを2013年に出し、その後改訂版を公表しています。まず統計で本当に多いかを確かめ、確認できた場合にだけ原因探しに進むという、順序を重んじた手順がとられています。

なお、健康に関する内容は一般的な情報としてお伝えしています。個人の状況によって異なるため、心配なことがある場合は医師や保健所などの専門家・公的機関にご相談ください。

占いや予言が当たったように見える仕組み

占いや予言が当たったと感じるのも、当たった部分だけをあとから選んで「的中」と数えていることが大きな理由です。さらに、誰にでも当てはまる言葉の性質が、それを後押しします。

誰にでも当てはまる言葉:バーナム効果

誰にでも当てはまるあいまいな性格の説明を、「まさに自分のことだ」と感じてしまう現象を「バーナム効果」といいます。実験で示した心理学者の名前から「フォアラー効果」とも呼ばれます。

アメリカの心理学者バートラム・フォアラー氏は、1948年に大学の授業でこんな実験をしました。学生39人に性格検査を受けさせ、後日「あなた専用の分析結果」を渡しました。学生たちは、その内容がどれだけ当たっているかを0〜5点で評価しました。

結果は平均4.26点という高い評価でした。ところが実は、全員にまったく同じ文章が配られていたのです。文章は、新聞などの星占いのような一般的な内容をもとに作られていました。この結果は1949年に論文として発表され、その後何度もくり返し確かめられ、平均はおよそ4.2点前後になると紹介されています。

「バーナム効果」という名前は、19世紀のアメリカの興行師P.T.バーナムにちなみ、心理学者ポール・ミール氏が1956年に名づけたものです。もともとは、心理学者が自分たちの性格検査の報告を戒めるための言葉でした。

当たった部分だけを数える

占いの言葉を一度にたくさん聞くと、その中のいくつかは自然と当たります。私たちは当たった言葉を強く覚え、外れた言葉はすぐに忘れてしまいます。これは、たくさんの弾の跡のうち、集まった場所だけを囲んで的にするのと同じ構図です。

相手の服装や表情、反応から情報を読み取り、言い当てたように見せる話し方は「コールドリーディング」と呼ばれます。経済誌の解説によると、バーナム効果を利用して相手に「自分をよく理解してくれている」と感じさせる技術とされています。言葉が少しずれても、聞き手のほうが自分の経験に合わせて意味を補ってしまうのです。

予言の「あとづけ解釈」

予言の世界では、この誤謬がとくにはっきり表れます。あいまいな言葉で書かれた予言は、出来事が起きたあとに「これはあの事件のことだった」と結びつけられやすいからです。

日本で大ブームになったノストラダムスの「1999年7月」の詩もその一例です。ある解説記事によると、詩そのものは人類滅亡を述べておらず、滅亡説は日本での解釈によって広まったものだと紹介されています。また、学術的な訳書の序文でも、この予言集ほどこじつけの解釈をされた作品は少ないと述べられているそうです。

あいまいな言葉は、どんな出来事にも当てはめることができます。出来事が起きてから言葉を探せば、どこかに「当たった」ように見える一文が必ず見つかります。これこそ、あとから的を描くやり方そのものです。

テキサスの狙撃兵の誤謬にだまされないための4つのチェック

この誤謬を見破るコツは、「的はいつ描かれたのか」を確かめることです。次の4つを意識するだけで、思いこみにかなり強くなれます。

  1. 予想や判断の基準は、結果を見る前に決められていたかを確かめる
  2. 外れた例や、何も起きなかった例も数に入っているかを考える
  3. 範囲(地域・期間・対象者)の区切り方が、都合よく選ばれていないかを疑う
  4. 新しいデータでも同じ結果がくり返し出るかを確かめる

たとえば「この地域は病気が多い」と聞いたら、地域の線引きを少し広げたり、別の年のデータで見たりしても同じかを考えてみましょう。占いなら、言われたことを先にメモしておき、あとで当たり外れを全部数えてみると冷静に判断できます。

よくある質問

テキサスの狙撃兵の誤謬を一言でいうと何ですか?

偶然できたかたまりを見つけてから、そこに意味や原因があると決めつける誤りです。撃ったあとで弾の跡の周りに的を描き、名射手を名乗るたとえ話が名前の由来です。

病気が多い地域は、すべて偶然なのですか?

すべてではありません。アメリカNCIによると、慎重な調査で特定の発がん物質が原因と示された例もあります。ただし、アメリカの調査の見直しでは、原因がはっきり分かったのはごく一部でした。

バーナム効果とテキサスの狙撃兵の誤謬は同じものですか?

別のものですが、占いが当たったように感じる場面では一緒に働きます。バーナム効果は誰にでも当てはまる言葉を自分のことと感じる現象で、テキサスの狙撃兵の誤謬は当たった部分だけをあとから選ぶ誤りです。

この誤謬を避けるために科学ではどうしていますか?

調べる前に仮説や判断の基準を決め、それを新しいデータで確かめる方法がとられます。いわば「撃つ前に的を描く」やり方で、あとづけの思いこみを防いでいます。

まとめ

テキサスの狙撃兵の誤謬は、でたらめに撃ったあとで弾の集まった場所に的を描き、「命中した」と思いこむ心のクセです。偶然には必ずムラがあり、私たちの脳はそのムラに意味を見つけたがります。

病気が多発しているように見える地域も、占いや予言が当たったように見える体験も、多くはこの「あとから的を描く」仕組みで説明できます。一方で、本当に原因がある場合もあるため、順序を守った科学的な確認が欠かせません。

次に「すごい偶然」や「ズバリ的中」の話を見かけたら、「この的は、撃つ前に描かれていたのか?」と一度だけ自分に問いかけてみてください。それだけで、情報との付き合い方がぐっと落ち着いたものになります。

参考リスト

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