はじめに
スーパーで買うお肉のグラム数、ガソリンスタンドの給油量、毎月の水道やガスの使用量。私たちは毎日、だれかが「はかった数字」を信じてお金を払っています。11月1日の「計量記念日」は、その数字の正しさを支える仕組みに目を向ける日です。とはいえ、どんな記念日なのか、詳しく知っている人は多くありません。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】計量記念日が11月1日になった由来
- 【テーマ2】1993年施行の計量法で変わった単位のルール
- 【テーマ3】お店のはかりやメーターを守る身近な仕組み
読み終えるころには、レジのはかりや家のメーターを見る目が少し変わるはずです。「はかる」ことの裏側を、順番に見ていきましょう。
計量記念日とは?11月1日になった由来
計量記念日は、現在の計量法が1993年(平成5年)11月1日に施行されたことにちなむ記念日です。経済産業省が定めており、あわせて11月の1か月間を「計量強調月間」としています。
経済産業省の「4大記念日」のひとつ
北海道庁のページによると、計量記念日は、電気記念日(3月25日)、発明記念日(4月18日)、貿易記念日(6月28日)と並ぶ、経済産業省の4大記念日のひとつです。毎年この日には記念式典が開かれ、計量の分野で長年力を尽くした人や事業所が、経済産業大臣などから表彰されます。
また、全国の都道府県や市の計量検定所(はかりやメーターを検査する役所の窓口)でも、11月を中心に、計量器の展示やポスター掲示、標語の募集などの普及活動が行われています。
もともとは6月7日だった
実は、計量記念日の日付は一度変わっています。コトバンク(日本大百科全書)によると、最初の計量記念日は、旧計量法が公布された1951年6月7日にちなんで、1952年から設けられたものでした。その後、計量法が全面的に改正され、新しい法律が1993年11月1日に施行されたのを機に、記念日も11月1日に移りました。
さらにさかのぼると、1921年(大正10年)にメートル法を採用する改正度量衡法が公布された4月11日を「メートル法記念日」と呼んでいた時代もあります。法律が変わるたびに記念日の日付も動いてきたことは、日本の「はかる」ルールが段階的に整えられてきた歩みそのものといえます。
知っている人は3割に満たない
滋賀県が2019年11月に県政モニターへ行ったアンケートでは、「計量法」を知っていた人は62.5%でしたが、計量記念日と計量強調月間を知っていた人は28.2%にとどまりました。一方で、社会に「正しい計量」が必要だと答えた人は85.6%にのぼります。大切だと感じていても、仕組みはあまり知られていないのが、計量の世界の実情です。
1993年施行の現行計量法で何が変わったのか
現在の計量法の最大の特徴は、取引や証明に使う単位を、世界共通の「国際単位系(SI)」にそろえたことです。経済や科学の国際化に合わせ、日本の単位のルールを世界の基準にそろえ直した法律だといえます。
単位を国際単位系(SI)に統一
国際単位系(SI)とは、メートル(長さ)、キログラム(質量)、秒(時間)などを土台にした、世界共通の単位の決まりです。現行の計量法(平成4年法律第51号)は1992年5月20日に公布され、翌1993年11月1日から施行されました。
消防庁の通知によると、この改正で取引や証明に使う単位はSI単位に統一され、それまで使われていたSI以外の単位には、分野に応じて1995年、1997年、1999年の各9月30日までの猶予期間が設けられました。たとえば、力の単位「重量キログラム(kgf)」は「ニュートン(N)」へ、圧力の「kgf/cm²」は「パスカル(Pa)」へと、少しずつ置き換えられていきました。
天気予報の「ミリバール」が「ヘクトパスカル」に
この流れを最も身近に感じられたのが、天気予報です。気象庁は1992年12月1日から、気圧の単位を「ミリバール」から「ヘクトパスカル」に切り替えました。台風の中心気圧を「950ミリバール」と伝えていた時代を覚えている方も多いでしょう。
日本気象学会の機関誌『天気』によると、1ミリバールと1ヘクトパスカルはまったく同じ大きさなので、数字はそのままで、呼び名だけが変わったのです。なお、航空気象の分野では、それより早い1987年からヘクトパスカルが使われていました。
血圧の「mmHg」が今も使われる理由
一方で、例外として残された単位もあります。健康診断でおなじみの血圧の単位「mmHg(水銀柱ミリメートル)」です。経済産業省の資料によると、体の中の圧力をはかる分野ではパスカルへの移行が進まなかったため、猶予期間が何度か延長されました。そして2013年10月、生体内の圧力に関するmmHgなど6つの単位を恒久的に使えるようにする政令が施行され、これで1993年の法改正がひと区切りついたとされています。
日本の「はかる」ルールの歩み
日本の計量制度は、昔ながらの尺貫法から、メートル法、そして国際単位系へと、100年以上かけて段階的に移り変わってきました。主な出来事を表にまとめます。
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1885年(明治18年) | 日本がメートル条約に加盟 |
| 1891年(明治24年) | 度量衡法を制定(尺貫法を基本に、メートル法も公認) |
| 1921年(大正10年) | 改正度量衡法を公布し、メートル法の採用を決定 |
| 1951年(昭和26年) | 旧計量法を制定(6月7日公布) |
| 1959年(昭和34年) | 土地・建物を除き、メートル法を完全実施 |
| 1966年(昭和41年) | 土地・建物も含め、メートル法を全面実施 |
| 1993年(平成5年) | 現行の計量法を施行(11月1日) |
| 2019年(令和元年) | キログラムの定義を改定(5月20日) |
尺貫法とは、長さの「尺」、重さの「貫」、体積の「升」、面積の「坪」などを使う、日本で古くから使われてきた単位の仕組みです。取引や証明での使用は禁じられましたが、畳の大きさ(3尺×6尺)や着物の寸法、お酒の「一升瓶」など、暮らしの中には今も尺貫法に由来するサイズがたくさん残っています。
暮らしの中で計量法が守っているもの
計量法は、私たちが買い物や公共料金で損をしないように、「はかる道具」と「はかった量」の両方にルールを設けています。ここでは、日常で出会う代表的な場面を紹介します。
お店のはかりは2年に1回の定期検査
取引や証明に使うはかりは「特定計量器」と呼ばれ、国や都道府県などの検査に合格したしるしである「検定証印」、または指定された製造事業者の製品に付く「基準適合証印」がなければ使えません。さらに、横浜市などの案内によると、使い始めてからも2年に1度の「定期検査」を受けることが義務づけられています。
スーパーの量り売り、病院や学校の身体測定、薬局での調剤なども対象です。高松市の案内によると、定期検査を受けないまま取引や証明に使うと、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
家庭用のはかりは取引に使えない
家庭で使うキッチンスケールや体重計には、「家庭用計量器」のマークが付いたものがあります。横浜市によると、こうしたはかりは定期検査を受けることができず、取引や証明にも使えません。たとえ高性能でも、お店や病院の業務には、検定証印などが付いたはかりを使う必要があります。
メーターには「有効期限」がある
水道やガス、電気のメーター、ガソリンスタンドの給油メーターなどには、検定の有効期間が決められています。期間が過ぎたメーターは、取引に使えません。各自治体の案内をもとに、主なものをまとめました(2026年10月時点)。
| 計量器 | 検定の有効期間 |
|---|---|
| タクシーメーター | 1年 |
| ガソリンスタンドの燃料油メーター | 7年 |
| 灯油の移動販売などの燃料油メーター | 5年 |
| 水道メーター | 8年 |
| ガスメーター | 10年または7年(種類による) |
| 電気メーター | 10年、7年または5年(種類による) |
| はかり(非自動はかり) | 有効期間なし(2年ごとの定期検査) |
メーターには、有効期限の年月を示すシールなどが付いています。北九州市によると、2017年9月の制度改正以降に検定に合格したメーターでは、期限の表示が和暦から西暦に変わりました。
商品の内容量には「許される誤差」がある
パック詰めのお肉や野菜、魚介類などは、表示された内容量どおりに入っているかどうかもルールで決められています。宮城県の案内によると、食肉・野菜・魚介類など29種類の「特定商品」は、「量目公差(りょうめこうさ)」と呼ばれる許容誤差を超えないように計量しなければなりません。
量目公差は、中身が表示より少ない場合にだけ適用されます。ただし「誤差の範囲なら少なくてよい」という意味ではなく、あくまで正確な計量が前提です。また、一部の特定商品を密封して売る場合は、内容量に加えて、表示した人の氏名や住所も書くことが義務づけられています。自治体の職員は、スーパーなどに立ち入って、内容量が正しいかを抜き打ちで確認しています。
2019年、キログラムの定義も変わった
「はかる」ルールは、今も進化を続けています。2019年5月20日、質量の単位「キログラム」の定義が、約130年ぶりに改められました。
それまでの1キログラムは、1889年に作られた白金とイリジウムの合金でできた分銅「国際キログラム原器」の質量そのものでした。しかし、人の手で作った物である以上、わずかな変化は避けられません。そこで、2018年11月16日の国際度量衡総会で、自然界の決して変わらない数「プランク定数」を使った新しい定義が採択され、2019年5月20日から施行されました。
産業技術総合研究所(産総研)によると、新しい定義の決定に使われた8つの測定データのうち、4つに産総研が貢献しました。欧米以外の国が世界共通の単位の改定に決定的な役割を果たしたのは、長い度量衡の歴史でも初めてのことだとされています。
ちなみに5月20日は、1875年にメートル条約が結ばれた日にちなむ「世界計量記念日」です。日本の計量記念日(11月1日)と世界計量記念日(5月20日)は、それぞれ別の由来を持つ記念日です。
計量記念日にできる「はかる」チェック
計量記念日をきっかけに、身の回りの「はかる」を少しだけ確かめてみると、ふだんは見過ごしている仕組みが見えてきます。特別な道具は必要ありません。
- 自宅の水道メーターやガスメーターに付いている、有効期限のシールや表示を見てみる
- ガソリンスタンドの給油機に貼られた、有効期限のシールを探してみる
- スーパーの量り売りコーナーで、はかりに検定証印や定期検査の合格シールがあるか見てみる
- パック商品の「内容量」の表示と、表示した人の名前や住所の欄を読んでみる
お店ではかりを使う事業者の方は、定期検査の時期や受け方が地域によって異なります。具体的な手続きは、お住まいの都道府県や市の計量検定所、または計量の担当窓口に確認してください。法律に関わる内容は、個人の状況によって異なるため、専門家や公的機関にご相談ください。
よくある質問
計量記念日は祝日ですか?
祝日ではありません。経済産業省が、計量制度への理解を広めるために定めた記念日です。当日は記念式典が開かれ、計量に貢献した人などが表彰されます。
家庭用のキッチンスケールも定期検査を受けられますか?
受けられません。「家庭用計量器」のマークが付いたキッチンスケールや体重計は、定期検査の対象外で、取引や証明にも使えません。家庭で料理や健康管理に使う分には問題ありません。
ミリバールとヘクトパスカルでは数字が違うのですか?
同じです。1ミリバールと1ヘクトパスカルはまったく同じ大きさなので、数字は変わらず呼び名だけが変わりました。気象庁では1992年12月1日から切り替えています。
表示より中身が多い場合も違反になりますか?
量目公差は、中身が表示より少ない場合にだけ適用されます。ただし、多い側についても、正確な計量を進めるためのガイドラインが設けられています。正確にはかることが基本です。
まとめ
11月1日の計量記念日は、1993年に現行の計量法が施行されたことにちなむ記念日です。この法律によって、日本の単位は世界共通の国際単位系(SI)にそろえられ、天気予報の気圧はヘクトパスカルになりました。
そして今も、お店のはかりは2年ごとの定期検査を受け、水道やガスのメーターには有効期限が決められ、パック商品の内容量には許される誤差のルールがあります。毎日なにげなく信じている数字の裏には、こうした仕組みと、それを支える人たちの仕事があります。
まずは今日、自宅のメーターに貼られた有効期限の表示を一度のぞいてみてください。「はかる」ことへの信頼が、身近なところで守られていることを実感できるはずです。
参考リスト
- 11月1日は計量記念日です(北海道)
- 令和5年度計量記念日式典を開催します(経済産業省)
- 計量記念日(コトバンク)
- 11月の「計量月間」の取り組みについて(京都府計量検定所)
- 計量法についてのアンケート結果(滋賀県)
- 計量制度の最近の動向と概要(経済産業省)
- 消防用設備等に係る技術上の基準における計量単位のSI化について(消防庁)
- 計量計測データバンク資料(日本計量新報社)
- 気象庁の単位のSI化について(日本気象学会『天気』)
- 台風の気圧に「ミリバール」が使われなくなったのはいつから?(現代ビジネス)
- メートル原器・キログラム原器に関する記事(ニューズウィーク日本版)
- 尺貫法(三井住友トラスト不動産 用語集)
- はかりの定期検査(横浜市)
- 計量に関するよくある質問(横浜市)
- はかりの購入を考えている事業者の方へ(高松市)
- 特定計量器定期検査(鳥取県)
- 検定(埼玉県計量検定所)
- 計量器の検定(千葉県計量検定所)
- 各メーターの有効期間(北九州市)
- 商品量目制度について(宮城県)
- 商品量目制度(島根県)
- 立入検査等(名古屋市)
- キログラムの定義の変遷と新定義(産業技術総合研究所)
- キログラムの定義改定(日本アイソトープ協会)

