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ニュートン・ピープス問題|サイコロ6個と12個、6が出やすいのは?

統計学
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はじめに

「サイコロを6個振って6が1つ以上出る」のと、「12個振って6が2つ以上出る」のとでは、どちらが起こりやすいと思いますか。数を2倍にしただけなので同じに見えますが、実は答えははっきり決まっています。この問題は「ニュートン・ピープス問題」と呼ばれ、約330年前、万有引力で知られるニュートンが賭けの相談に答えたことで有名になりました。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】ニュートン・ピープス問題の歴史的な背景
  • 【テーマ2】サイコロ6個・12個・18個の正確な確率と答え
  • 【テーマ3】ニュートンの説明に隠れていた意外な落とし穴

答えだけでなく、「なぜそうなるのか」を数式なしでイメージできるように説明します。確率に苦手意識がある方も、クイズを解く気持ちで読み進めてみてください。

ニュートン・ピープス問題とは?1693年の賭けの相談

ニュートン・ピープス問題は、1693年に役人のサミュエル・ピープスが、科学者アイザック・ニュートンに手紙で尋ねたサイコロの確率の問題です。きっかけは、ピープスがしようとしていた賭けでした。

相談したピープスとはどんな人物か

サミュエル・ピープス(1633〜1703年)は、イギリス海軍の行政を担った役人です。現在では、1660年代のロンドンの暮らしを書き残した「日記」の作者として世界的に知られています。ただし、その日記が広く読まれるようになったのは死後のことで、1693年の時点ではまだ「未来の有名な日記作家」でした。

ピープスは1684〜1686年に王立協会(イギリスの科学者の学会)の会長を務めていました。ニュートンの主著『プリンキピア』の初版の扉には、出版を許可した会長としてピープスの名前が記されています。二人はそうした縁でつながっていました。

手紙で出された3つの選択肢

ピープスは1693年11月22日付の手紙で、ニュートンに次のような問題を送りました。もともとは、ジョン・スミスという学校の先生がピープスに出した問題だったと伝えられています。統計学者スティーブン・スティグラーの論文による整理では、問題は次の3つのうち「どれがいちばん成功しやすいか」というものです。

  1. A:公平なサイコロを6個振り、6の目が少なくとも1つ出る
  2. B:公平なサイコロを12個振り、6の目が少なくとも2つ出る
  3. C:公平なサイコロを18個振り、6の目が少なくとも3つ出る

サイコロの数が6個、12個、18個と増えるのに合わせて、必要な6の数も1つ、2つ、3つと増えています。「割合は同じだから、どれも同じくらいでは?」と感じるのが自然です。

答えは「6個で6を1つ以上」が一番出やすい

結論から言うと、いちばん起こりやすいのはAの「6個で6を1つ以上」です。12個のBがそれに続き、18個のCがもっとも起こりにくくなります。

3つの確率を比べてみる

現在では「二項分布(成功か失敗かの試行を何回か繰り返したとき、成功が何回起こるかの確率)」という考え方で、正確に計算できます。数学の百科事典サイトのMathWorldなどに載っている値を、改めて計算で確かめた結果は次のとおりです。

選択肢 サイコロの数 必要な6の数 起こる確率
A 6個 1つ以上 約66.5%
B 12個 2つ以上 約61.9%
C 18個 3つ以上 約59.7%

Aは、6が1つも出ない確率(6分の5を6回かけた値、約33.5%)を全体から引くだけで求められます。分数で書くと、Aの確率は46656分の31031です。100回この賭けをしたとすると、AとBでは約5回、AとCでは約7回の差がつく計算です。

ピープスの予想はまったく逆だった

スティグラーの論文によると、ピープスは最初、Cがいちばん有利だと考えていました。サイコロをたくさん振るほうが、チャンスが多いように感じたのかもしれません。しかし、ニュートンの答えはAでした。ピープスは納得できず何度も質問を重ねましたが、最終的にニュートンの説明を受け入れています。

なお、ピープスが実際にどんな賭けをして、その後どうしたのかについては、はっきりした記録が残っていません。スティグラーは、ピープスが自分の持ちかけた賭けから手を引いたらしいと紹介していますが、詳しい事情は不明です。

なぜサイコロが少ないほうが有利なのか

サイコロが少ないほうが有利になるのは、「ちょうど平均どおりの数だけ出る」確率が、サイコロが増えるほど小さくなるからです。少し順を追って見てみましょう。

平均の数は、どれも同じ

サイコロ1個で6が出る確率は6分の1です。ですから、6個振れば平均1つ、12個なら平均2つ、18個なら平均3つの6が出ます。A・B・Cはどれも「平均以上の数が出れば勝ち」という、そっくりな条件になっています。ここまでは、どれも同じに見えます。

違いを生むのは「ちょうど平均」の重み

違いが出るのは、結果のばらつき方です。それぞれの場合で、ちょうど平均の数だけ6が出る確率を計算すると、次のようになります。

  • 6個で6がちょうど1つ:約40.2%
  • 12個で6がちょうど2つ:約29.6%
  • 18個で6がちょうど3つ:約24.5%

サイコロが増えると、出る6の数は「0個から18個まで」のように幅が広がります。そのぶん、確率がいろいろな数に散らばり、「ちょうど平均」の取り分が減っていきます。A・B・Cでは平均ちょうどでも勝ちになるので、この取り分が大きいほど有利です。サイコロが6個のAは、ここがいちばん大きいのです。

サイコロを増やし続けると50%に近づく

同じルールでサイコロをもっと増やすと、どうなるでしょうか。計算すると、24個で6を4つ以上なら約58.5%、60個で10以上なら約55.4%、600個で100以上なら約51.7%と、少しずつ下がっていきます。サイコロを限りなく増やすと、確率は50%に近づいていきます。数が多いほど有利どころか、だんだん「五分五分の勝負」に近づいていくわけです。

ニュートンの答えに隠れていた「勘違い」

ニュートンが出した「Aが最も有利」という結論は正しいものでした。ところが、その理由づけの一部には誤りがあったことが、300年以上たってから指摘されています。

3通の返事と、見事な計算

ニュートンはピープスに、1693年11月26日、12月16日、12月23日の3通の返事を書きました。スティグラーによると、確率についてのニュートンの考えを知る手がかりは、ほぼこの3通しか残っていません。

この中でニュートンは、AとBの起こりやすさを、場合の数を一つずつ数え上げる方法で正確に求めました。Cについては「さらに小さくなる」と述べるにとどめています。当時はまだ二項分布のような道具が整っていなかったため、これは手間のかかる大仕事でした。スティグラーは、この数え上げの部分を見事で誤りのないものと評価しています。

「直感的な説明」のほうに落とし穴があった

問題は、ニュートンが計算とは別に示した「理屈による説明」でした。ニュートンは、サイコロを6個ずつの組に分けて考え、「1組に6が1つずつ出ればよい」というイメージで、Aが有利だと論じました。

しかし、実際のルールは「全体で6が何個以上出るか」です。たとえば、18個のうち最初の6個で6が3つ出て、残り12個で1つも出なかった場合、Cのルールでは勝ちです。ところが「各組に1つずつ」という考え方では負けになってしまいます。統計学者スティグラーは2006年の論文で、この食い違いを指摘しました。

イカサマのサイコロでは答えが逆転する

スティグラーがこの説明を誤りとした決め手は、6が出やすいように細工したサイコロを考えると、結論が変わることです。6の出る確率を4分の1にしたサイコロでは、6個で1つ以上が約82.2%、12個で2つ以上が約84.2%となり、Bのほうが有利になります。

ニュートンの理屈はサイコロの公平さを使っていないので、細工したサイコロにもそのまま当てはまってしまいます。それなのに結論が逆転する場合がある以上、その理屈だけでは正しい説明になりません。答えは正しく、計算も正しいけれど、言葉による説明には穴があったというわけです。

ニュートン・ピープス問題から学べること

この問題が今も紹介され続けるのは、「直感はあてにならない」ことと「問題の条件を正確に読む大切さ」を、わかりやすく教えてくれるからです。

ピープスは「たくさん振るほうがチャンスが多い」と考え、まちがえました。偉大なニュートンでさえ、言葉で説明しようとしたときに、問題の条件を少しずらして考えてしまいました。一方で、地道に数え上げた計算のほうは正確でした。迷ったときは、イメージだけで決めずに、実際に数えたり計算したりして確かめることが確実だとわかります。

この問題は、統計学者フレデリック・モステラーの有名な問題集『Fifty Challenging Problems in Probability』にも取り上げられています。確率の入門書で見かけることも多い、定番の話題です。

よくある質問

Q. 結局、いちばん出やすいのはどれですか?

Aの「サイコロ6個で6が1つ以上」です。確率は約66.5%で、12個で2つ以上(約61.9%)、18個で3つ以上(約59.7%)より高くなります。

Q. 問題を出したのは本当にピープスなのですか?

ニュートンに手紙で尋ねたのはピープスですが、問題そのものはジョン・スミスという学校の先生がピープスに出したものだと伝えられています。そのため、この問題は「ジョン・スミスの問題」と呼ばれることもあります。

Q. ニュートンは間違えたのですか?

答えと正確な計算は正しく、間違っていたのは理屈による説明の一部です。2006年にスティグラーが論文で指摘するまで、この点はあまり注目されていませんでした。

Q. 自分で確かめる方法はありますか?

表計算ソフトで二項分布の関数を使うと計算できます。また、実際にサイコロを何十回も振って記録すると、Aの成功率が高めに出る傾向を体感できます。ただし回数が少ないと差が見えにくいため、たくさん試すのがおすすめです。

まとめ

「6個で6を1つ以上」と「12個で6を2つ以上」では、6個のほうが約66.5%対約61.9%で出やすくなります。サイコロが増えるほど結果が散らばり、「ちょうど平均」が出る確率が下がるためで、数を増やし続けると確率は50%に近づいていきます。

1693年にこの賭けの相談に答えたニュートンは、正しい結論と見事な計算を示しました。一方で、言葉による説明には小さな落とし穴が隠れていました。「たくさん振れば有利」という直感が外れる、確率の面白さが詰まった問題です。

次にサイコロのあるゲームをするときは、ぜひ6個と12個で実際に試して、何回目でAとBの差が見えてくるか記録してみてください。

参考リスト

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