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【サイバー防御実務入門 第6回】パソコンを守る|Windows Updateとサポート期限、標準機能の点検

サイバー防御実務入門
この記事は約14分で読めます。

連載【サイバー防御実務入門】第6回

今回のゴール

  • 更新(アップデート)を後回しにしてはいけない理由を理解する
  • 使っているWindowsのサポート期限を確認できる
  • Windowsに標準で入っているセキュリティ機能を点検できる
  • 管理者権限、ソフトの入れ方、サポート詐欺への注意を知る

はじめに:毎日使う「道具」の守り

前回の第5回では、アカウントという「鍵」の守り方を学びました。今回は、その鍵を使うパソコンそのものの守りです。

第4回で、攻撃者はインターネット上の窓口(ポート)をノックして回り、開いている窓口の中で古いソフトが動いていないかを調べている、という話をしました。第1回で見たIPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの4位は「システムの脆弱性を悪用した攻撃」でした。パソコンの守りの基本は、まさにこの「弱点(脆弱性)をふさぎ続けること」です。

今回は、Windowsのパソコンを例に、更新、サポート期限、標準のセキュリティ機能、そして日々の使い方の注意を順番に点検していきます。

1. 更新はなぜ後回しにしてはいけないのか

Windowsの画面の隅に「更新して再起動」と出ても、作業中だとつい「あとで」を押してしまいます。私もよくやっていました。でも、この「あとで」が一番危ないことがわかりました。

修正プログラムは「弱点の地図」にもなる

ソフトウェアに脆弱性が見つかると、メーカーはそれをふさぐ修正プログラム(パッチ)を配布します。Microsoftの場合、定例の更新は毎月第2火曜日(米国時間)に公開され、日本ではその翌日の水曜日になります。

ここで大事なのは、修正プログラムが公開されると、「どこに弱点があったか」を攻撃者も知ることになるという点です。

🕵 攻撃者はこう考える
修正プログラムが公開されると、攻撃者はその中身を調べて、「まだ更新していない機器なら、この弱点を突ける」と考えます。つまり、更新が公開された直後から、更新していない機器は「弱点の場所が公表された状態」になってしまうのです。ふさぐ方法がまだない弱点(ゼロデイ脆弱性)が狙われることもありますが、実際には、修正プログラムが出ているのに適用されていない「既知の弱点」が狙われるケースが多いとされています。第3回で見た警察庁の報告書でも、ランサムウェアの侵入に「未修正の脆弱性」が使われていると説明されていました。

更新のコツ

  • 自動更新をオンのままにする:Windows Updateは、基本的に自動で更新プログラムをダウンロードします。止めないことが第一歩です。
  • 再起動を何日も先延ばしにしない:多くの更新は、再起動して初めて反映されます。作業の区切りや、寝る前などに再起動する習慣をつけましょう。
  • Windows以外のソフトも更新する:ブラウザ(Chrome、Edgeなど)、Office、PDF閲覧ソフトなども、脆弱性が見つかれば更新が出ます。ブラウザは再起動するだけで更新されることが多いので、何週間も開きっぱなしにしないのがコツです。

2. サポート期限:更新が「来なくなる」日

更新が大事だとわかると、次に気になるのが「その更新はいつまで届くのか」です。OSやソフトには、メーカーが修正プログラムを提供する期間、つまりサポート期限があります。期限が過ぎると、新しい弱点が見つかってもふさがれないままになります。

Windows 10は「延長された猶予期間」の中

Windows 10の通常のサポートは、2025年10月14日に終了しました。その後、個人向けには、条件を満たせばセキュリティ更新だけを受け取れる「拡張セキュリティ更新(ESU)」という仕組みが用意されました。

このESUは当初2026年10月13日までの予定でしたが、Microsoftは2026年6月、個人向けESUの期間を1年延ばし、2027年10月12日までとすると発表しました。報道によると、すでに登録している人は追加の手続きや費用なしで延長され、まだの人もこれから登録できるとされています。

項目 内容
Windows 10の通常サポート終了 2025年10月14日
個人向けESUの期限(延長後) 2027年10月12日(当初は2026年10月13日)
ESUで受け取れるもの 重要なセキュリティ更新のみ(新機能や技術サポートはなし)
登録の方法(報道による) Windowsのバックアップでクラウドに同期する、Microsoft Rewardsのポイントを使う、有料(30米ドル)で登録する、のいずれか

出典:窓の杜、Business Insider Japan(2026年6月)の報道をもとに筆者作成。登録条件の詳細は、Microsoftの公式案内でご確認ください。

⚠ ESUは「引っ越しまでの猶予」
ESUは、Windows 11への移行が間に合わない人のための一時的な延命策です。期限の延長で時間の余裕はできましたが、ESUに登録しないままWindows 10を使い続けると、すでにセキュリティ更新が届かない状態です。Windows 10を使っている方は、まず「ESUに登録済みかどうか」を確認し、2027年10月までの移行計画を考えておきましょう。

パソコンだけでなく、スマホやタブレット、ルーターにもサポート期限があります。メーカーの更新が終わった機器は、大事なアカウントへのログインやネットバンキングには使わない、といった使い分けを考えるのがよさそうです。ルーターについては次回の第7回で取り上げます。

3. Windows セキュリティを点検する

Windowsには、「Windows セキュリティ」という標準の守りの機能がまとめて入っています。スタートメニューで「Windows セキュリティ」と検索すると開けます。主な項目は次のとおりです。

項目 役割 これまでの回との関係
ウイルスと脅威の防止 Microsoft Defender ウイルス対策。不正なプログラムを見つけて止める 第3回の「インストール」段階を止める
ファイアウォールとネットワーク保護 頼んでいない外からの通信を止める門番 第4回のファイアウォール
アプリとブラウザー コントロール 危険なサイトやアプリを警告する(SmartScreen) 第3回の「配送」段階を止める
アカウントの保護 サインインの方法や、Microsoftアカウントの守り 第5回のアカウント保護
デバイス セキュリティ パソコンの部品レベルの守り(機種により異なる) —

各項目に緑のチェックマークが付いていれば、基本的には問題ありません。黄色や赤の表示があれば、表示された案内に従って対処します。

ポイント:ウイルス対策ソフトは「1つ」で十分
市販のウイルス対策ソフトを入れると、多くの場合Microsoft Defenderは自動的に控えに回ります。複数のウイルス対策ソフトを同時に動かすと、かえって動作が重くなったり不具合の原因になったりすると言われています。「市販のソフトを入れているか」「Defenderが動いているか」のどちらか一方が有効になっていれば大丈夫です。また、市販のソフトにも有効期限があるので、期限切れのまま放置していないかも確認しましょう。

4. 普段は「管理者」で作業しない

第3回で、攻撃者は侵入したあと「管理者権限の奪取」を試みる、という話がありました。管理者権限があれば、ソフトのインストールやセキュリティ機能の停止など、パソコンのほぼすべてを変更できてしまうからです。

Windowsでは、ソフトのインストールや設定変更のときに「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」という確認画面が出ます。これは「ユーザーアカウント制御(UAC)」という仕組みで、管理者の力を使う前に、一度立ち止まらせるためのものです。

  • 確認画面が出たら、自分が今まさにインストールや設定変更をしているかを確かめる:心当たりがないのに出た場合は「いいえ」を選びます。
  • 確認画面を出なくする設定には変えない:面倒に感じても、大事な関所です。
  • さらに安全にしたい場合:普段の作業用に「標準ユーザー」のアカウントを作り、管理者アカウントは設定変更のときだけ使う、という方法もあります。家族でパソコンを共有している場合は、特に検討の価値があります。

5. ソフトの入れ方とサポート詐欺

ソフトは「公式」から入れる

無料ソフトを探して検索すると、公式サイトのふりをした偽サイトや、ダウンロードボタンに見せかけた広告に出会うことがあります。ソフトはMicrosoft Storeか、メーカーの公式サイトから入れるようにしましょう。第1回で紹介したように、無料のVPNアプリなどに、最初から不正なプログラムが仕込まれていた例も報告されています。

「ウイルスに感染しました」の偽警告に注意

IPAの10大脅威の個人向けに7年連続で選ばれているのが、サポート詐欺(偽警告)です。ホームページを見ているときに、突然「ウイルスに感染しました」という画面と警告音が出て、表示された番号に電話をかけさせる手口です。電話の相手は、サポートと称して遠隔操作ソフトをインストールさせたり、電子マネーで料金を払わせたりします。

警察庁の報告書によると、2026年上半期の「サポート名目」の詐欺は735件、被害額は約8億3,000万円でした。

⚠ 偽警告が出たときは

  • 表示された電話番号には絶対にかけない。本物のMicrosoftが、画面に電話番号を出して連絡を求めることはありません。
  • ブラウザを閉じます。閉じられない場合は、キーボードの「Ctrl」+「Alt」+「Delete」から「タスク マネージャー」を開いてブラウザを終了するか、パソコンを再起動します。
  • 心配なときは、IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」などの公的な窓口に相談しましょう。
  • もし遠隔操作ソフトを入れてしまったり、お金を払ってしまったりした場合は、ネットから切り離し、警察や消費生活センターに早めに相談してください。

6. 持ち出し・紛失への備え:ドライブの暗号化

ノートパソコンを持ち歩く場合や、修理・処分に出す場合に備えて、ディスクの中身を暗号化しておく方法もあります。Windowsには「デバイスの暗号化」や「BitLocker」という機能があり、パソコンを盗まれても、中のデータを読み出されにくくなります(使える機能は、Windowsの種類や機種によって異なります)。

⚠ 暗号化するなら「回復キー」の保管を
暗号化を使う場合、故障や設定変更のときに「回復キー」という長い番号を求められることがあります。これがないと、自分でもデータを取り出せなくなるおそれがあります。多くの場合、回復キーはMicrosoftアカウントに保存されていますが、一度確認しておくと安心です。第2回で学んだように、機密性を高めすぎて可用性を失わないよう、バランスが大切です。

7. やってみた:自分のパソコンを点検する

今回は、次の3つを自分のパソコンで確かめてみましょう。どれも「見るだけ」なので、設定が変わる心配はありません。

① Windowsのバージョンを確認する

キーボードの「Windows」キー+「R」を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、次のように入力してEnterキーを押します。

winver

表示された画面で、Windows 10かWindows 11か、どのバージョンかがわかります。

② 更新の状況を確認する

「設定」→「Windows Update」を開き、「最新の状態です」と表示されているか、最後に確認した日時がいつかを見ます。「更新の履歴」から、最近どんな更新が入ったかも確認できます。

③ Windows セキュリティを確認する

スタートメニューから「Windows セキュリティ」を開き、各項目に緑のチェックマークが付いているかを確認します。

※メニューの名前や場所は、Windowsのバージョンや更新によって変わることがあります。

用語メモ

修正プログラム(パッチ)
見つかった脆弱性や不具合を直すために、メーカーが配布するプログラム。
ゼロデイ脆弱性
メーカーがまだ把握しておらず、修正プログラムが存在しない弱点。
サポート期限
メーカーが修正プログラムなどを提供する期間。過ぎると新しい弱点がふさがれなくなる。
ESU(拡張セキュリティ更新)
サポートが終わったWindows 10に、期間限定でセキュリティ更新だけを提供する仕組み。
ユーザーアカウント制御(UAC)
管理者の権限が必要な操作の前に確認画面を出し、勝手な変更を防ぐWindowsの仕組み。
サポート詐欺
偽のウイルス感染警告で電話をかけさせ、遠隔操作や支払いをさせる詐欺。

まとめと、今日からできること

  • 修正プログラムが出ると、更新していない機器は「弱点の場所が公表された状態」になる。更新と再起動は先延ばしにしない。
  • Windows 10は通常のサポートが終了済み。個人向けESUは2027年10月12日まで延長されたが、あくまで移行までの猶予。
  • 「Windows セキュリティ」で、ウイルス対策・ファイアウォール・SmartScreenなどが有効かを確認する。
  • 管理者の確認画面(UAC)は大事な関所。心当たりのない確認には「いいえ」。
  • ソフトは公式から入れ、偽警告の電話番号には絶対にかけない。
✅ 今日からできること

  1. 今日、パソコンを再起動する:溜まっている更新を反映させましょう。ブラウザも一度閉じて開き直すと、更新されることがあります。
  2. 家にあるパソコンのWindowsの種類を確認する:Windows 10があれば、ESUに登録済みかどうかを確認しましょう。
  3. 家族に「偽警告の電話番号にはかけない」と伝える:自分だけでなく、家族のパソコンも守る一番手軽な対策です。

参考資料

  • 窓の杜「Windows 10の個人向けESUが1年延長」(2026年6月26日)
    https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/2120202.html
  • Business Insider Japan「Windows 10のサポートが延長」(2026年6月25日)
    https://www.businessinsider.jp/article/2606-windows-10-support-extended/
  • Microsoft サポート「Windows セキュリティによる保護」
    https://support.microsoft.com/ja-jp/windows
  • IPA「情報セキュリティ安心相談窓口」
    https://www.ipa.go.jp/security/anshin/index.html
  • IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
    https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
  • 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月)
    https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R8kami/R08_kami_cyber_jousei.pdf

※本記事は2026年11月時点の情報をもとに作成しています。

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