はじめに
「子どもが2人いる家庭で、少なくとも1人は男の子だとわかっています。もう1人も男の子である確率は?」と聞かれたら、多くの人は「男の子か女の子かの2択だから1/2」と答えます。ところが、この「2人の子ども問題」の答えは、条件の読み方によっては1/3になります。直感と計算がずれる、確率の世界でも有名なパズルです。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】2人の子ども問題の答えが1/3になる仕組み
- 【テーマ2】同じ問題が1/2にもなる「情報の得かた」の違い
- 【テーマ3】「火曜日生まれの男の子」問題の意外な答え
数式はほとんど使わず、組み合わせを書き出して数えるだけで説明します。読み終えるころには、身のまわりの「確率っぽい話」にだまされにくくなるはずです。
2人の子ども問題とは?問題文と多くの人の答え
2人の子ども問題は、「少なくとも1人は男の子」という情報が、確率をどう変えるかを問うパズルです。英語では「Boy or Girl paradox(男の子か女の子かのパラドックス)」とも呼ばれます。
この問題を広く知らしめたのは、アメリカの科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」で数学パズルのコラムを長く連載したマーティン・ガードナーです。英語版Wikipediaなどによると、ガードナーは1959年のコラムで、次のような2つの問題を並べて紹介しました。
- ジョーンズさんには子どもが2人いて、上の子は女の子です。2人とも女の子である確率は?
- スミスさんには子どもが2人いて、少なくとも1人は男の子です。2人とも男の子である確率は?
ガードナーが最初に示した答えは、1問目が1/2、2問目が1/3でした。ぱっと見ると同じような問題なのに、答えが違います。ここに多くの人が「えっ?」と引っかかるのです。
なお、この問題では計算をわかりやすくするため、「男の子と女の子が生まれる確率は半々」「1人目と2人目の性別は互いに影響しない」と仮定します。実際の日本では、総務省統計局の資料によると、生まれてくる赤ちゃんは女の子100人に対して男の子がおおむね105〜107人で推移しています。現実はぴったり半々ではありませんが、パズルとしては半々として考えます。
答えが1/3になる理由:4つの組み合わせで考える
結論から言うと、2人の子どもの性別の組み合わせは「3通り」ではなく「4通り」あり、そのうち条件に合うのが3通り、2人とも男の子なのが1通りだからです。順番に見ていきます。
生まれ順で区別するのがポイント
2人の子どもを「上の子」と「下の子」に分けて、性別の組み合わせをすべて書き出すと、次の4通りになります。どれも起こりやすさは同じで、それぞれ1/4です。
| 上の子 | 下の子 | 起こりやすさ | 「少なくとも1人は男の子」に当てはまるか |
|---|---|---|---|
| 男 | 男 | 1/4 | 当てはまる |
| 男 | 女 | 1/4 | 当てはまる |
| 女 | 男 | 1/4 | 当てはまる |
| 女 | 女 | 1/4 | 当てはまらない |
「少なくとも1人は男の子」とわかった時点で、「女・女」の組み合わせだけが消えます。残るのは「男・男」「男・女」「女・男」の3通りです。この中で、もう1人も男の子なのは「男・男」の1通りだけなので、答えは1/3になります。
ここでよくある反論が、「男・女と女・男は同じ『男女1人ずつ』なのだから、まとめて1通りと数えるべきでは?」というものです。しかし、まとめてしまうと起こりやすさが変わってしまいます。「男女1人ずつ」は、「2人とも男の子」の2倍起こりやすいのです。コインを2枚投げると「表と裏が1枚ずつ」が出る確率は1/2ですが、「2枚とも表」は1/4しかないのと同じ理屈です。
100家族で数えてみる
確率の分数がピンとこないときは、具体的な人数に置きかえると見通しがよくなります。子どもが2人いる家庭を100家族集めたとしましょう。
- 2人とも男の子:約25家族
- 上が男の子・下が女の子:約25家族
- 上が女の子・下が男の子:約25家族
- 2人とも女の子:約25家族
このうち「少なくとも1人は男の子」の家族は、約75家族です。その75家族の中で、2人とも男の子なのは約25家族ですから、25÷75で1/3になります。「男の子がいる家族」の中には、男女のきょうだいの家族が約50家族も含まれている、というのがポイントです。
英語版Wikipediaによると、雑誌のコラムニストとして知られるマリリン・ボス・サバントが1996年に、2人の子どもがいて少なくとも1人が男の子という家庭について読者から回答を集めたところ、約1万8千件のうち2人とも男の子だったのは35.9%でした。理屈どおりの約33%に近い結果です。
「上の子が男の子」なら1/2になる理由
同じ「男の子が1人いる」という話でも、どの子が男の子なのかが特定されると、答えは1/2に戻ります。ガードナーの1問目(上の子が女の子)が1/2なのも、この理由です。
たとえば「上の子は男の子です」とわかったとします。先ほどの表で上の子が男の子なのは、「男・男」と「男・女」の2通りです。この2通りのうち、もう1人も男の子なのは「男・男」の1通りなので、答えは1/2です。消える組み合わせが「女・女」だけでなく「女・男」も含めて2つになるため、残りの数が変わるのです。
| わかっていること | 残る組み合わせ | 2人とも男の子の確率 |
|---|---|---|
| 少なくとも1人は男の子 | 男・男、男・女、女・男 | 1/3 |
| 上の子が男の子 | 男・男、男・女 | 1/2 |
「上の子か下の子かがわかるだけで、確率が変わるのはおかしい」と感じるかもしれません。けれども、「少なくとも1人は男の子」は家族全体についての大まかな情報で、「上の子が男の子」は特定の1人についての情報です。情報の中身が違うので、残る可能性の数も変わる、と考えると納得しやすくなります。
実は1/2も正解になりうる?情報の「得かた」で答えが変わる
この問題が「パラドックス」と呼ばれ、今も議論されるのは、「少なくとも1人は男の子」という情報をどうやって知ったかによって、正しい答えが1/3にも1/2にもなるからです。
ガードナーが後に認めたあいまいさ
英語版Wikipediaなどによると、ガードナーは読者からの指摘を受けて、2問目は問題文があいまいだったと認めています。その情報がどんな手順で得られたのかが書かれていないと、答えを1つに決められない、という趣旨です。
1/3が正解になるのは、たとえば次のような状況です。
- 子どもが2人いる家庭の中から、男の子が1人以上いる家庭だけを選び出し、その中から1家族を選んだ場合
- スミスさんが「男の子がいるなら必ず『少なくとも1人は男の子』と言う」と決まっている場合
一方で、スミスさんが男女1人ずつの親で、話のたびに「男の子がいる」「女の子がいる」のどちらかをランダムに言う人だったとします。この場合、男女1人ずつの家庭では半分の確率で「女の子がいる」と言うため、「男の子がいる」と聞いた時点での計算が変わり、答えは1/2になります。
「男の子と歩いているのを見た」場合
英語版Wikipediaでは、心理学者のバーヒレルとフォークが1982年に紹介した、次のような変形版も取り上げられています。スミスさんが、男の子を連れて歩いているところに出会い、「息子です」と紹介された、という状況です。
連れて歩く子どもが2人のうちからランダムに選ばれるなら、もう1人が男の子である確率は1/2です。目の前の男の子という「特定の1人」がわかったので、「上の子が男の子」の場合と同じ形になるからです。ただし、スミスさんが男の子がいれば必ず男の子を連れて歩く人なら、答えは1/3になります。
つまり、この問題の本当の教訓は「答えは1/3」と覚えることではありません。同じ言葉でも、その情報がどんな経路で手に入ったかによって確率は変わる、という点にあります。
さらに不思議な「火曜日生まれの男の子」問題
2人の子ども問題には、さらに直感に反する変形版があります。アメリカの科学ニュースサイト「サイエンスニュース」などによると、パズル作家のゲイリー・フォシーが2010年、数学者やパズル愛好家が集まる「ギャザリング・フォー・ガードナー」という会合で、次の問題を出しました。
子どもが2人いて、1人は火曜日生まれの男の子です。2人とも男の子である確率は?
「曜日なんて関係ないのでは?」と思うところですが、「少なくとも1人は火曜日生まれの男の子がいる家庭」と読んで計算すると、答えは13/27(約48%)になります。1/3よりも、ぐっと1/2に近い数字です。
計算の考え方は、先ほどの表を細かくしたものです。1人の子どもには「男・女」の2通りと、「月〜日」の7通りの組み合わせで、14通りの可能性があります。2人なら14×14=196通りです。このうち「火曜日生まれの男の子」が少なくとも1人いる組み合わせを数えます。
- 上の子が火曜日生まれの男の子:下の子は14通り
- 下の子が火曜日生まれの男の子:上の子は14通り
- ただし「2人とも火曜日生まれの男の子」を2回数えているので、1つ引く
合計は14+14−1=27通りです。このうち2人とも男の子なのは、7+7−1=13通りなので、答えは13/27になります。
なぜ曜日で確率が変わるのでしょうか。2人とも男の子の家庭は、男の子が2人いるぶん「火曜日生まれの男の子」がいるチャンスも多くなります。そのため、「火曜日生まれの男の子がいる」という条件で選ぶと、男の子2人の家庭が少し多めに含まれるのです。条件が細かく特定的になるほど、「特定の1人がわかった」状態に近づき、答えは1/2に近づきます。
アメリカ・タフツ大学の研究者による論文でも、「男の子が1人以上」なら1/3なのに、「アダムという名前の男の子が1人いる」とすると答えはほぼ1/2になる、という変形版が紹介されています。ただし、サイエンスニュースの記事も指摘しているように、13/27が正しいのは「火曜日生まれの男の子がいる家庭だから、その話をした」という前提がある場合です。ここでも、情報の得かたが答えを左右します。
直感がだまされる理由と、日常に役立つ考え方
2人の子ども問題で直感が外れるのは、「何通りの可能性が、どれくらいの起こりやすさで残っているか」を数えずに、2択だと思い込んでしまうからです。こうした「ある情報がわかったうえでの確率」を、数学では条件付き確率と呼びます。
英語版Wikipediaによると、フォックスとレバフが2004年に発表した研究では、経営学の大学院生(MBAの学生)に同じ内容を言い方を変えて尋ねました。「少なくとも1人は男の子」と聞いた場合は85%が1/2と答えたのに対し、「2人とも女の子ではない」と聞いた場合は1/2と答えた人が39%に減りました。言っていることは同じでも、言葉の印象で判断が大きくぶれることがわかります。
この問題から得られる、日常で使える考え方は次の3つです。
- 迷ったら、ありうる組み合わせをすべて書き出してから数える
- 「男女1人ずつ」のようにまとめた選択肢は、起こりやすさが違わないか確かめる
- その情報を「誰が、なぜ、どうやって」伝えたのかを考える
ニュースの統計、くじや懸賞の当選確率、健康診断の検査結果の読み方など、条件付き確率の考え方が関わる場面は身近に多くあります。「なんとなく半々」と感じたときほど、一度立ち止まって数えてみる価値があります。
よくある質問
結局、2人の子ども問題の正解は1/3と1/2のどちらですか?
「子どもが2人いる家庭のうち、少なくとも1人が男の子の家庭を選んだ」という意味なら1/3です。目の前の男の子のように、特定の1人が男の子だとわかった場合は1/2です。問題文だけでは情報の得かたが決まらないため、前提によってどちらも正解になりえます。
「男・女」と「女・男」を分けて数えるのはなぜですか?
2人の子どもは別々の人なので、生まれ順で区別すると、4つの組み合わせがそれぞれ同じ起こりやすさになるからです。「男女1人ずつ」とまとめると、それは「2人とも男の子」の2倍起こりやすい選択肢になり、同じ重みで数えられなくなります。
実際の男女の生まれる割合は半々ですか?
ぴったり半々ではありません。総務省統計局の資料によると、日本の出生時の男女比は、女の子100人に対して男の子がおおむね105〜107人で推移しています。2人の子ども問題は、考え方をわかりやすくするために半々と仮定したパズルです。
火曜日生まれの問題の13/27は本当に正しいのですか?
「少なくとも1人は火曜日生まれの男の子がいる家庭」と読んで、男女と曜日の起こりやすさが均等だと仮定すれば13/27になります。ただし、話し手がなぜその情報を伝えたのかによって答えが変わるという指摘もあり、今も議論が続いている問題です。
まとめ
2人の子ども問題は、「少なくとも1人は男の子」と聞いたとき、もう1人も男の子である確率が1/2ではなく1/3になる、という直感に反するパズルです。理由は、組み合わせが「男・男」「男・女」「女・男」「女・女」の4通りあり、条件に合う3通りのうち2人とも男の子は1通りだけだからです。
一方で、「上の子が男の子」のように特定の1人がわかると答えは1/2になり、「火曜日生まれの男の子」のように条件を細かくすると13/27という中間の値になります。大切なのは答えの数字を覚えることではなく、情報の中身と、その情報の得かたで確率が変わると知っておくことです。
次に「確率は半々でしょ」と感じる場面に出会ったら、紙に組み合わせを書き出して数えてみてください。コインを2枚用意して何十回か投げ、「少なくとも1枚が表」のときに「2枚とも表」が何回あるかを記録してみると、1/3に近づくことを自分の目で確かめられます。
参考リスト
- Boy or girl paradox – Wikipedia
- 【数学クイズ】子どもが2人いて、1人が男の子だったとき、もう1人も男の子である確率は?(現代ビジネス)
- The Two-Children Problem(Marquette University)
- When intuition and math probably look wrong(Science News)
- Bear Born on a Tuesday(Cut The Knot)
- Variations on the two-child problem(arXiv)
- Frequently Questioned Answers: The Other Child(The Math Doctors)
- 平成22年国勢調査 男女別人口及び人口性比(総務省統計局)

