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ジニ係数とは?ローレンツ曲線でわかる格差の測り方と日本の現状

統計学
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はじめに

ニュースで「格差が広がった」「日本のジニ係数は0.38」と聞いても、その数字が何を意味するのか、ピンとこない方も多いはずです。ジニ係数は、社会の中で所得がどれだけ偏っているかを、0から1までの数字ひとつで表す便利な物差しです。この物差しの土台になっているのが、ローレンツ曲線という1本のグラフです。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】ジニ係数とローレンツ曲線の仕組み
  • 【テーマ2】5人の例で体験するジニ係数の計算方法
  • 【テーマ3】日本のジニ係数の最新事情と読み方の注意点

数式が苦手な方でも、身近なたとえと小さな計算例でスッキリ理解できるように書きました。読み終えるころには、ニュースのジニ係数を自分で読み解けるようになります。

ジニ係数とは?格差を0〜1で表す指標

ジニ係数とは、所得などの「分け方の不平等さ」を0から1の数字で表した指標です。0に近いほど平等で、1に近いほど一部の人に偏っていることを示します。

0と1が意味する状態

厚生労働省の解説によると、ジニ係数は0から1までの値をとり、0に近いほど分布が均等、1に近いほど不均等になります。極端な2つの状態を思い浮かべると、意味がつかみやすくなります。

  • ジニ係数が0:全員の所得がまったく同じで、格差がない状態
  • ジニ係数が1:たった1人がすべての所得をひとり占めし、ほかの人の所得はゼロの状態

現実の社会がこのどちらかになることはありません。実際の値はその間のどこかに入り、数字が大きいほど格差が大きいと読みます。所得だけでなく、資産(貯金や土地などの財産)の偏りを測るときにも使われます。

考えたのはイタリアの統計学者ジニ

ジニ係数の名前は、考案者であるイタリアの統計学者コッラド・ジニに由来します。ジニは1912年にイタリア語で出版した著書『変動性と可変性』の中で、この指標を初めて示しました。経済学の研究誌に掲載された論文によると、ジニはこの本の中で、指標の計算式を13通りも提案していたそうです。

一方、ジニ係数の土台となるローレンツ曲線は、それより少し前の1905年に、アメリカの経済学者マックス・O・ローレンツが発表しました。ローレンツは当時ウィスコンシン大学の大学院生で、アメリカ統計学会の機関誌に短い論文を載せています。つまり、ローレンツが「格差を見える形にする方法」を作り、ジニが「格差を1つの数字にする方法」を作ったと整理できます。

ローレンツ曲線とは?格差を「線のふくらみ」で見るグラフ

ローレンツ曲線は、所得の少ない人から順に並べたとき、全体の何割の人が全体の所得の何割を持っているかを表すグラフです。格差が大きいほど、曲線が下へ大きくふくらみます。

ローレンツ曲線の描き方

総務省統計局の解説をもとに、描き方を順番にまとめると次のようになります。

  1. 世帯(または人)を、所得の少ない順に左から一列に並べます。
  2. 横軸に「人数の累積の割合」をとります。左端が0%、右端が100%です。
  3. 縦軸に「所得の累積の割合」をとります。下から順に足し上げた所得が、全体の所得の何%にあたるかを表します。
  4. それぞれの点を打ってつなぐと、ローレンツ曲線ができあがります。

たとえば「下から50%の人が、全体の所得の20%しか持っていない」なら、横軸50%・縦軸20%の位置に点を打ちます。点をつないだ線は、必ず左下の原点から右上の角(100%・100%)に向かいます。

均等分布線との距離が格差の大きさ

全員の所得が同じなら、「下から30%の人が所得の30%」「下から70%の人が所得の70%」となり、線は原点から右上へまっすぐ伸びる45度の直線になります。この直線を均等分布線(完全に平等なときの線)と呼びます。

厚生労働省の説明では、所得が不均等であればあるほど、ローレンツ曲線はこの直線から遠ざかります。所得の少ない人たちが全体の所得をあまり持っていないと、左側の点が低い位置に来るため、曲線が右下へ弓のようにたわむのです。洗濯物を干したロープが、重みで下へたるむ様子をイメージするとわかりやすいでしょう。たるみが大きいほど格差が大きいと読み取れます。

ジニ係数の計算方法を「5人の村」で体験

ジニ係数は、ローレンツ曲線のたるみの部分の面積を使って計算します。ここでは5人だけの小さな村を例に、実際に計算してみます。

ジニ係数は「たるみの面積」の割合

総務省統計局によると、均等分布線と縦軸・横軸で囲まれた三角形の面積のうち、均等分布線とローレンツ曲線にはさまれた部分(たるみ)の面積が占める割合がジニ係数です。図で、たるみの部分をA、ローレンツ曲線より下の部分をBとすると、次の式になります。

ジニ係数 = A ÷(A+B)

グラフの縦と横をそれぞれ1(100%)とすると、三角形A+Bの面積は1×1÷2で0.5です。そのため、ジニ係数は「たるみの面積Aの2倍」と言いかえることもできます。

5人の所得を並べてみる

村人5人の年間所得が、次のようになっているとします。数字は説明用に作ったものです。

村人(少ない順) 所得 全体に占める割合 人数の累積 所得の累積
太郎さん 100万円 5% 20% 5%
花子さん 200万円 10% 40% 15%
次郎さん 300万円 15% 60% 30%
桃子さん 400万円 20% 80% 50%
健一さん 1,000万円 50% 100% 100%

村全体の所得は2,000万円です。いちばん右の2列が、ローレンツ曲線の点になります。たとえば「下から60%にあたる3人で、所得の30%」という意味です。

面積を計算してジニ係数を出す

ローレンツ曲線より下の面積Bは、横幅0.2(20%)の台形を5つ足して求めます。台形の面積は「(上の辺+下の辺)÷2×高さ」です。

  1. 1つ目の台形:(0+0.05)÷2×0.2=0.005
  2. 2つ目の台形:(0.05+0.15)÷2×0.2=0.02
  3. 3つ目の台形:(0.15+0.30)÷2×0.2=0.045
  4. 4つ目の台形:(0.30+0.50)÷2×0.2=0.08
  5. 5つ目の台形:(0.50+1.00)÷2×0.2=0.15

合計すると、Bの面積は0.3です。三角形全体は0.5なので、たるみの面積Aは0.5−0.3=0.2になります。ジニ係数は0.2÷0.5で、この村のジニ係数は0.4です。

もし5人全員が400万円ずつ持っていれば、ローレンツ曲線は均等分布線と重なり、ジニ係数は0になります。反対に、健一さん1人が2,000万円すべてを持つ場合を同じ方法で計算すると、ジニ係数は0.8です。人数が少ないと、ひとり占めでもぴったり1にはなりません。人数が多くなるほど、最大値は1に近づいていきます。

「2人を選んだときの差」で考える別の見方

ジニ係数には、面積を使わない見方もあります。村人の中から2人を選んで所得の差を測り、すべての組み合わせ(同じ人どうしも含む25通り)で平均すると、差の平均は320万円になります。これを平均所得400万円の2倍(800万円)で割ると、やはり0.4になります。

つまりジニ係数は、「適当に2人を選んだとき、所得の差が平均所得と比べてどのくらい開いているか」を表す数字でもあります。ジニがもともと考えたのも、このような「お互いの差の平均」をもとにした計算でした。グラフの面積と、2人の差の平均という2つの見方が、同じ答えにたどり着くところがこの指標のおもしろさです。

日本のジニ係数はいくつ?最新の所得再分配調査

厚生労働省の「令和5年所得再分配調査」によると、税や社会保障で調整した後の日本のジニ係数(世帯単位)は0.3825でした。調整前の0.5855から、大きく縮まっています。

当初所得と再分配所得の違い

この調査では、2種類の所得を比べています。当初所得は、給料や事業の収入、財産からの収入、仕送りや企業年金などを合わせたもので、公的年金などの社会保障の給付は含みません。再分配所得は、当初所得から税金と社会保険料を差し引き、年金などの現金給付と、医療・介護・保育といったサービスの給付を加えたものです。

項目 令和5年調査の値 前回(令和3年)からの変化
当初所得のジニ係数(世帯単位) 0.5855 0.0155ポイント上昇
再分配所得のジニ係数(世帯単位) 0.3825 0.0012ポイント上昇
再分配による改善度(世帯単位) 34.7% 1.6ポイント上昇
再分配所得のジニ係数(世帯員単位・等価所得) 0.3163 0.0019上昇
再分配による改善度(世帯員単位・等価所得) 37.2% 1.2ポイント上昇

改善度とは、税と社会保障によってジニ係数が何%小さくなったかを示す値です。世帯単位では、格差の数字がおよそ3分の1縮んだことになります。厚生労働省は発表の見出しで、再分配後のジニ係数は横ばいで推移していると説明しています。なお、この調査はおおむね3年ごとに行われ、令和5年調査の結果は2025年12月に公表されました(2026年11月時点で確認した最新の結果です)。

当初所得には公的年金が含まれないため、仕事を引退して年金で暮らす世帯は、当初所得が少なく計算されます。そのため、当初所得のジニ係数は、社会の高齢化によって大きく出やすい性質があります。ニュースで日本のジニ係数を見るときは、「当初所得」と「再分配所得」のどちらの数字なのかを確認することが大切です。

統計によって日本の値が違う理由

日本のジニ係数は、使う統計によって数字が変わります。代表的なものを並べると、次のとおりです。

統計 対象の所得 日本の値
厚生労働省「所得再分配調査」(2023年) 世帯単位の再分配所得 0.3825
厚生労働省「所得再分配調査」(2023年) 世帯員単位の再分配所得(等価所得) 0.3163
OECD所得分配データベース(2021年) 等価可処分所得 0.338
総務省「全国家計構造調査」(2019年) 等価可処分所得(過去と比べられる従来の計算方法) 0.274

違いが生まれる主な理由は、「世帯ごとに見るか、1人あたりに直して見るか」と「どの所得を数えるか」です。等価所得とは、世帯の所得を世帯人数の平方根(ルート)で割った値です。4人家族なら2で割ります。家族が多いと生活費は増えますが、家賃や光熱費は人数分そのまま増えるわけではないため、このような調整をします。比べるときは、同じ統計の数字どうしで比べるのが基本です。

世界と比べた日本のジニ係数

OECD(経済協力開発機構)のデータで比べると、日本のジニ係数はアメリカやイギリスより低く、北欧やフランスより高い位置にあります。主要国の中では、中くらいからやや高めのグループです。

労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較2025」に掲載された、OECDのデータ(2024年8月現在)をもとにまとめると、次のようになります。

国 ジニ係数(2021年)
アメリカ 0.375
イギリス 0.354
日本 0.338
イタリア 0.330
韓国 0.329
フランス 0.298
カナダ 0.292
スウェーデン 0.286
フィンランド 0.273

同じ資料では、ドイツは2020年が0.303、デンマークは2019年が0.268となっており、2021年の値は載っていません。北欧の国々は全体的に低く、所得の差が比較的小さい社会だとわかります。

ジニ係数は、国によって少しずつ値が動きます。たとえばアメリカは、2021年の0.375から2022年には0.396になっています。1年の数字だけで「どの国が上か下か」を決めつけず、何年かの流れで見ることが大切です。

ジニ係数を見るときの注意点

ジニ係数はとても便利ですが、数字ひとつで格差のすべてがわかるわけではありません。読むときに知っておきたい注意点を整理します。

「0.4は警戒ライン」は絶対の基準ではない

小学館の『デジタル大辞泉』の補足には、0.4が社会が不安定になる警戒ラインとされると書かれています。ただし、先ほど見たとおり、同じ日本でも当初所得なら0.5855、再分配所得なら0.3825と、測り方によって値が大きく変わります。どの所得を使った数字なのかを確かめずに、「0.4を超えたから危ない」と判断するのは早すぎます。

同じジニ係数でも格差の形は違う

ジニ係数は、ローレンツ曲線のたるみの「面積」だけを見ています。そのため、たるみの形が違っても、面積が同じなら同じ数字になります。「所得の少ない人がとくに苦しい社会」と「一部のお金持ちがとくに多く持つ社会」が、同じジニ係数になることもあるのです。中身を詳しく知りたいときは、ローレンツ曲線そのものや、貧困率(所得が一定の基準より低い人の割合)などの指標も合わせて見る必要があります。

所得の格差と資産の格差は別もの

ニュースで目にするジニ係数の多くは、1年間の「所得」をもとにしています。しかし、貯金や株、土地などの「資産」の偏りは、所得の偏りとは別に存在します。所得のジニ係数が中くらいでも、資産の格差が大きいということはありえます。どちらの格差の話なのかを意識すると、ニュースの理解がぐっと深まります。

よくある質問

ジニ係数が0.38とは、どのくらいの格差ですか?

この記事の5人の村の例では、ジニ係数は0.4でした。1人が全体の半分を持ち、いちばん少ない人は全体の5%という分け方です。現実の社会は人数も所得の分かれ方も複雑なので単純には比べられませんが、目安のイメージとして参考になります。

日本の格差は広がっているのですか?

厚生労働省によると、税や社会保障で調整した後のジニ係数は、令和5年調査で0.3825となり、横ばいで推移しています。一方、調整前の当初所得のジニ係数は0.5855で、前回より上がりました。どちらの数字を見るかで印象が変わる点に注意が必要です。

ジニ係数は自分でも計算できますか?

できます。所得を少ない順に並べ、累積の割合を出して台形の面積を足し、0.5から引いて2倍すれば求められます。人数が多い場合は、表計算ソフトを使うと簡単です。

なぜ「再分配」でジニ係数が小さくなるのですか?

税金や社会保険料は所得の多い人ほど多く負担し、年金や医療などの給付は所得の少ない世帯にも届くためです。その結果、所得の差が縮まり、ローレンツ曲線のたるみが小さくなります。令和5年調査では、世帯単位で34.7%の改善効果がありました。

まとめ

ジニ係数は、ローレンツ曲線と45度の均等分布線にはさまれた「たるみの面積」から求める、0から1までの格差の物差しです。0なら完全に平等、1に近いほど一部の人に偏っています。5人の村の例のように、台形の面積を足すだけで、自分でも計算できます。

  • ローレンツ曲線は、所得の少ない順に並べて「人数の累積」と「所得の累積」を結んだグラフ
  • 日本の再分配後のジニ係数は0.3825(令和5年調査)で、税と社会保障によって約35%縮まっている
  • 統計や所得の種類によって値が違うため、同じ統計どうしで比べることが大切

次にニュースで「ジニ係数」という言葉を見かけたら、それが当初所得と再分配所得のどちらの数字なのか、どの統計なのかを確かめてみてください。それだけで、格差のニュースがぐっと立体的に見えてきます。

参考リスト

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