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【11月8日】刃物の日とボイラーデーの由来|ふいご祭が結ぶ「火と鉄」の記念日

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はじめに

11月8日のカレンダーを見ると、「刃物の日」と「ボイラーデー」という、一見まったく関係のなさそうな2つの記念日が並んでいます。包丁やハサミと、工場や病院の地下で働く大きな湯沸かし装置。実はこの2つは、どちらも「ふいご祭」という鍛冶職人のお祭りから生まれた、いわば兄弟のような記念日です。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】ふいご祭の起源としきたり
  • 【テーマ2】刃物の日が生まれた背景と産地の取り組み
  • 【テーマ3】ボイラーデーの歩みと安全への願い

「火」と「鉄」をめぐる昔の職人たちの祈りが、どのように現代の記念日につながっているのかを順番に見ていきます。読み終えるころには、台所の包丁や、ふだん目にしないボイラーが少し違って見えるはずです。

ふいご祭とは?鍛冶職人が火の神を祀る11月8日の行事

ふいご祭は、ふいごを使って火をおこす職人たちが、仕事道具を清めて神様に感謝する行事です。もともとは旧暦(昔のこよみ)の11月8日に行われてきました。

「ふいご(鞴)」とはどんな道具?

ふいご(漢字では「鞴」と書きます)は、炉に風を送りこんで火の勢いを強めるための道具です。山梨県の宝石美術専門学校の解説によると、箱の形をしたものが多く、中のピストンを押したり引いたりして風を送る仕組みになっています。

鉄を加工するには、とても高い温度が必要です。炭をただ燃やすだけでは足りないため、ふいごで空気をどんどん送りこみ、炎の温度を上げていました。刀や包丁、鍋や釜などの金属製品は、ふいごがなければ作れなかったと言ってよいでしょう。

「天からふいごが降ってきた日」という言い伝え

平凡社の『世界大百科事典』によると、ふいご祭の日は「天からふいごが降ってきた日」と言い伝えられてきました。名古屋市熱田区の公式サイトでも、11月8日は鞴が天から降ってきた日とされると紹介されています。

この祭りを行ってきたのは、刀や農具を作る鍛冶屋だけではありません。同じ事典によれば、次のような職人たちの間にも広がっていました。

  • 鋳物師(いもじ):溶かした金属を型に流して鍋や釜、鐘などを作る職人
  • たたら師:砂鉄と木炭から鉄を作る、昔ながらの製鉄の職人
  • 白銀屋(しろがねや):銀などで細工物を作る職人
  • 風呂屋・のり屋・石屋など、ふだんから火をたく仕事の人たち

みかんをまく、ちょっと楽しい風習

ふいご祭には、子どもにとってうれしい風習もありました。『世界大百科事典』によると、職人たちはふいごにいろいろなお供え物、とくにみかんを供え、集まってきた子どもたちにまいて配っていたそうです。

寒くなり始める季節に、鍛冶場の前でみかんが配られる光景は、地域のちょっとしたお祭りだったのでしょう。仕事場を清め、道具に感謝し、近所の人とも喜びを分け合う。ふいご祭は、職人の信仰と地域の楽しみがひとつになった行事だったことがわかります。

祀られる神様は?

ふいご祭で祀られる神様は地域や職種によって違いますが、金属の神様である金山彦命(かなやまひこのみこと)・金山姫命(かなやまひめのみこと)や、稲荷神(いなりしん)が多いとされています。稲荷神は商売繁盛の神様として知られますが、鍛冶の神としても信仰されてきたという説があります。

ふいご祭は今も続いている?各地の行事

「以前は行われていた」と過去形で語られることの多いふいご祭ですが、実は今も各地で続いています。新暦の11月8日に行う所が多く、地域によっては旧暦に合わせて12月に行う所もあります。

名古屋・金山神社の「ふいご祭」

名古屋市熱田区の金山神社は、鍛冶や鋳造の祖神を祀る神社として知られ、「尾張鍛冶の発祥地」と言われています。名古屋市熱田区の公式サイトによると、毎年11月8日に例祭として「ふいご祭」が行われ、境内では福引やお茶のふるまいのほか、この日だけ販売される「ふいご餅」も登場します。にぎやかな「金山」という地名も、この神社に由来しています。

大阪・生國魂神社の「鞴祭・刀剣鍛錬神事」

大阪市天王寺区の生國魂神社(いくくにたまじんじゃ)の境内にある鞴神社でも、11月8日に祭りが行われています。観光情報サイト「るるぶ&more.」によると、全日本刀匠会近畿支部の刀匠たちが古式のふいごで火をおこし、真っ赤に焼けた玉鋼(たまはがね:日本刀の材料になる良質な鉄)を打って、刀剣鍛錬の神事を奉納します。

職人の学校や会社でも

ふいご祭は神社だけの行事ではありません。山梨県の宝石美術専門学校では、ジュエリー職人を育てる学校として毎年「鞴祭り」を行い、身の回りやふいごを清め、ものを作る喜びに感謝して1年の無事を祈っています。溶接など火を使う仕事をする会社の中にも、11月8日に神棚を祀って1年の無事故を祈るところがあります。

形は変わっても、「火を扱う仕事の安全を祈り、道具に感謝する」という心は、現代の職場にもしっかり受け継がれています。

刃物の日の由来|「いい刃物」の語呂合わせとふいご祭

刃物の日は、「いい(11)は(8)もの」という語呂合わせと、ふいご祭の日であることにちなんだ記念日です。全国の刃物産地の団体が制定し、一般社団法人日本記念日協会に認定・登録されています。

制定したのは全国の刃物産地

刃物の日は、ひとつの会社や団体ではなく、全国の刃物の産地がそろって作った記念日です。制定した団体として、次のような名前が挙げられています。

  • 岐阜県関市、岐阜県関刃物産業連合会
  • 新潟三条庖丁連
  • 越前打刃物協同組合(福井県)
  • 東京刃物工業協同組合
  • 京都利器工具組合
  • 高知土佐山田商工会
  • 島根県吉田村
  • 堺刃物商工業協同組合連合会(大阪府)

刃物は、料理、裁縫、農作業、ものづくりなど、暮らしのあらゆる場面で使われる道具です。この記念日には、作り手と使い手がそろって刃物に感謝しようという思いが込められています。

刃物のまち・岐阜県関市

刃物の日を語るうえで欠かせないのが、岐阜県関市です。関市はドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並んで「世界三大刃物産地」と呼ばれることがあり、包丁の生産量は国内の約半分を占めるとも言われています。

岐阜県の観光情報サイトによると、関では鎌倉時代から700年以上にわたって「関鍛冶」の技が受け継がれてきました。関鍛冶伝承館では、日本刀を鍛える実演が定期的に公開されており、「トンテンカン」という槌(つち)の音とともに火花が飛び散る様子を間近で見ることができます。

使い終えた刃物を供養する「刃物供養祭」

関市では、刃物の日に合わせて刃物供養祭が行われています。岐阜県の観光情報サイトによると、関の刃物業界は使わなくなった刃物を回収し、毎年11月8日の刃物の日に供養祭を行ったうえで、資源としてリサイクルしているそうです。岐阜関刃物会館には、刃物の回収ボックスも置かれています。

長年使ってきた包丁を、ただ捨てるのではなく感謝して手放す。そして金属として次の製品に生まれ変わらせる。古い道具を大切にする日本の心と、現代のリサイクルの考え方がうまく重なった取り組みです。

ボイラーデーの由来|「汽罐」から始まった安全運動

ボイラーデーは、ふいご祭の日にちなんで、ボイラーの安全を広く呼びかけるために定められた日です。一般社団法人日本ボイラ協会の沿革によると、1949年(昭和24年)11月に11月8日をボイラーデーと定め、全国的な運動として広げてきました。

ボイラーとはどんな装置?

ボイラーは、燃料を燃やした熱で水を温め、お湯や蒸気を作る装置です。日本ボイラ協会の紹介によると、工場の生産設備、デパート、病院、ホテル、火力発電所、船など、私たちの身の回りにはたくさんのボイラーがあります。ふだんは工場の中やビルの地下に置かれているため目にする機会は少ないものの、見えないところで暮らしを支えています。

火を使って熱を生み出すという点で、ボイラーは鍛冶場の炉の「現代版」とも言えます。だからこそ、火を扱う職人たちの祭りの日が、ボイラーの記念日に選ばれました。

「汽罐(きかん)」という古い呼び名

ボイラーは、昔は「汽罐(きかん)」と呼ばれていました。厚生労働省の資料によると、日本ボイラ協会の前身にあたる「汽罐協会」は1934年(昭和9年)4月に発足し、1946年(昭和21年)11月に「日本汽罐協会」として新たに創立され、1949年(昭和24年)5月に現在の「日本ボイラ協会」へと名前を変えました。

この記念日は、もともと戦前に「汽罐祭」という名前で始まり、のちにボイラーデーへ改められたという説もあります。協会の名前が「汽罐」から「ボイラ」へ変わったのと同じ年に、ボイラーデーが全国運動として始まったことになります。

今も続く安全への取り組み

ボイラーは高い圧力と温度を扱うため、ひとたび事故が起きると大きな被害につながります。そのため日本ボイラ協会は、ボイラーデーのある11月に全日本ボイラー大会を開き、全国のボイラーを使う事業所やボイラー技士が集まって、安全意識を高め、事故を防ぐ工夫を共有しています。

労働新聞社の報道によると、2019年の大会では、燃料の弁の故障など機械的な原因で起きた爆発事故の分析が発表され、安全装置を省かないことなどの対策が示されました。各地の支部でもボイラーデー大会が開かれ、長年まじめに安全な運転を続けてきたボイラー技士が表彰されています。

2つの記念日に共通する「火と道具への感謝」

刃物の日とボイラーデーに共通しているのは、火の恵みに感謝しながら、その危うさを忘れないという姿勢です。ふいご祭の心は、形を変えて2つの記念日に受け継がれています。

2つの記念日を比べると、次のようになります。

項目 刃物の日 ボイラーデー
日付の由来 「いい刃物」の語呂合わせとふいご祭 ふいご祭
制定した団体 関市・堺・三条など全国の刃物産地の団体 日本ボイラ協会
主な目的 刃物への感謝と刃物文化の発信 ボイラーによる事故の防止
主な行事 関市の刃物供養祭など 全日本ボイラー大会、各地の表彰など

鍛冶職人がふいごを清めたのは、火がなければ仕事ができない一方で、火の扱いを誤ればやけどや火事につながるからです。刃物も同じで、よく切れる道具ほど便利で、そして危険でもあります。「ありがたい」と「気をつけよう」を同時に思い出させてくれるのが、11月8日という日なのかもしれません。

この日をきっかけに、家庭でもできることがあります。たとえば、切れ味の落ちた包丁を研いだり、使わなくなった刃物の処分方法を確かめたりすることです。刃物の捨て方は自治体によってルールが違うため、お住まいの市区町村の案内を確認すると安心です。

よくある質問

ふいご祭はなぜ11月8日なのですか?

ふいご祭は、旧暦の11月8日に行われてきた行事で、この日は「天からふいごが降ってきた日」と言い伝えられています。現在は新暦の11月8日に行う所が多く、旧暦に合わせて12月に行う地域もあります。

ふいご祭でみかんをまくのはなぜですか?

平凡社『世界大百科事典』によると、職人たちはふいごにさまざまな物、とくにみかんを供え、集まった子どもたちにまいて配る習わしがありました。なぜみかんなのかについては、はっきりした答えは確認できませんでした。

刃物の日に、いらなくなった包丁を供養してもらえますか?

岐阜県関市では、関の刃物業界が不要になった刃物を回収し、11月8日の刃物の日に供養祭を行ったうえでリサイクルしています。岐阜関刃物会館には回収ボックスが置かれています。受け付けの方法や期間は変わることがあるため、事前に施設へ確認するのがおすすめです。

ボイラーデーは誰が決めたのですか?

ボイラーの安全を進める団体である一般社団法人日本ボイラ協会が、1949年(昭和24年)11月に11月8日をボイラーデーと定め、全国的な運動として展開しました。日付は、火を使う職人たちのふいご祭にちなんでいます。

まとめ

11月8日の「刃物の日」と「ボイラーデー」は、どちらも鍛冶職人たちが火の神に感謝した「ふいご祭」から生まれた記念日です。ポイントを振り返ります。

  • ふいご祭は、ふいごを使う職人が道具を清め、神に感謝する旧暦11月8日の行事で、今も名古屋や大阪などで続いている
  • 刃物の日は、「いい刃物」の語呂合わせとふいご祭にちなみ、全国の刃物産地の団体が制定した
  • ボイラーデーは、日本ボイラ協会が1949年に定め、ボイラー事故を防ぐ全国運動として続いている

今年の11月8日は、台所の包丁を手に取って、刃こぼれや切れ味を確かめてみてください。長く使ってきた道具に感謝しながら手入れをすることが、昔の職人たちが大切にしてきたふいご祭の心に、いちばん近い過ごし方です。

参考リスト

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