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偏差値の仕組みとは?標準偏差と正規分布でわかる偏差値70の珍しさ

統計学
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はじめに

「偏差値70ってすごいらしいけれど、実際どのくらいすごいの?」「そもそも偏差値はどうやって計算しているの?」と思ったことはないでしょうか。受験や模試で当たり前のように使われる偏差値ですが、その仕組みをきちんと説明できる人は意外と多くありません。この記事では、偏差値の仕組みを、数学が苦手な方にもわかるように一歩ずつ解説します。

👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇

  • 【テーマ1】偏差値の計算式と標準偏差の意味
  • 【テーマ2】偏差値70が「上位約2.3%」になる仕組み
  • 【テーマ3】偏差値を見るときの注意点と誕生の歴史

読み終えるころには、模試の結果表に並ぶ数字が「自分は集団のどのあたりにいるのか」を示す地図のように見えてくるはずです。それでは、まず偏差値の基本から見ていきましょう。

偏差値とは?「集団の中での位置」を示す数字

偏差値とは、テストを受けた集団の中で、自分の成績が平均からどれくらい離れているかを示す数字です。点数そのものではなく、「集団の中での位置」を表している点が最大の特徴です。

デジタル大辞泉(コトバンク掲載)では、偏差値を「学力などの検査結果が、集団の平均値からどの程度へだたっているかを示す数値」と説明しています。平均点をとった人の偏差値は、テストの難しさに関係なく必ず50になります。

なぜ点数だけでは不十分なのでしょうか。たとえば、同じ70点でも、平均点が40点の難しいテストと、平均点が80点のやさしいテストでは、意味がまったく違います。前者なら上位の成績ですが、後者なら平均より下です。点数だけを見ると、この違いが見えません。

偏差値は、このような「テストごとの難しさの差」をならして、同じものさしで比べられるようにした数字です。富山県の統計解説でも、難易度の違う数学と国語の成績は素点(そのままの点数)では比べられないが、偏差値なら同じ集団の中での位置を比べられる、と説明されています。

偏差値の計算式と標準偏差のやさしい意味

偏差値は「平均点との差」を「標準偏差」で割り、10倍して50を足すことで求めます。式にすると次のとおりです。

偏差値=(自分の点数-平均点)÷標準偏差×10+50

この式に出てくる「標準偏差」が、偏差値を理解するカギです。標準偏差とは、点数の散らばり具合(ばらつき)を表す数字です。みんなの点数が平均点の近くに集まっていれば小さくなり、高い人と低い人に大きく分かれていれば大きくなります。

標準偏差の求め方を4人のテストで確認

標準偏差は、次の手順で求めます。

  1. 全員の点数を合計し、人数で割って平均点を出す
  2. 一人ひとりの点数から平均点を引く(これを「偏差」といいます)
  3. 偏差をそれぞれ2乗し、その平均を出す(これを「分散」といいます)
  4. 分散の平方根(2乗すると分散になる数)を求める。これが標準偏差です

たとえば、4人の点数が50点、50点、70点、70点だったとします。平均点は60点で、偏差は全員「±10点」です。2乗するとすべて100になり、その平均(分散)も100、平方根をとると標準偏差は10点になります。

一方、4人の点数が40点、40点、80点、80点なら、平均点は同じ60点でも、偏差は「±20点」になり、標準偏差は20点です。平均が同じでも、点数が広く散らばっているほど標準偏差は大きくなることがわかります。

偏差を2乗するのは、プラスとマイナスが打ち消し合わないようにするためです。偏差をそのまま足すと、平均より上の人と下の人の差が相殺されて、必ず0になってしまいます。

同じ70点でも偏差値が変わる例

標準偏差の違いが偏差値にどう影響するか、具体例で見てみましょう。

テスト 自分の点数 平均点 標準偏差 偏差値
数学 70点 50点 20点 60
国語 70点 60点 5点 70

数学は平均より20点も上ですが、点数のばらつきが大きいテストなので、20点の差は「標準偏差1つ分」にすぎず、偏差値は60です。国語は平均より10点上なだけですが、みんなの点数が平均付近に固まっているため、10点の差が「標準偏差2つ分」にあたり、偏差値は70になります。

つまり偏差値は、「平均から標準偏差いくつ分離れているか」を、50を中心に10刻みの目盛りで表したものです。標準偏差1つ分上なら60、2つ分上なら70、1つ分下なら40という具合です。コトバンク掲載の日本大百科全書でも、そのままでは目盛りが粗く、平均以下でマイナスがつく不便を解消するために、平均を50とする形にしていると説明されています。

正規分布とは?釣り鐘型のグラフが偏差値の土台

偏差値から「上位何%か」を読み取れるのは、点数の分布が「正規分布」に近いと考えられているからです。正規分布とは、平均のあたりが一番多く、平均から離れるほど人数が左右対称に少なくなる、釣り鐘のような形の分布です。

身長や大人数のテストの点数などは、この形に近くなることが多いとされます。満点に近い人や0点に近い人は少なく、平均点付近の人が最も多いという、私たちの実感に近い形です。この分布は、数学者ガウスの名前をとって「ガウス分布」とも呼ばれます。

正規分布には、平均と標準偏差がわかれば、どの範囲に何%の人が入るかが決まっているという便利な性質があります。マイナビニュースの解説によると、次のような割合になります。

  • 平均±標準偏差1つ分(偏差値40〜60):約68.27%
  • 平均±標準偏差2つ分(偏差値30〜70):約95.45%
  • 平均±標準偏差3つ分(偏差値20〜80):約99.73%

これは統計学で「68-95-99.7ルール」と呼ばれる目安です。偏差値は平均50、標準偏差10になるように変換した数字なので、このルールをそのまま偏差値に当てはめることができます。富山県の統計解説でも、素点が正規分布に従うと考えられるとき、偏差値もまた正規分布に従うと説明されています。

偏差値70の本当の珍しさは「約44人に1人」

正規分布を前提にすると、偏差値70以上の人は上位約2.28%です。言いかえると、およそ44人に1人という珍しさになります。

仕組みはこうです。偏差値30〜70の範囲には約95.45%の人が入ります。残りの約4.55%が、偏差値70より上と30より下に半分ずつ分かれるので、偏差値70以上は約2.28%になります。コトバンク掲載の日本大百科全書でも、得点分布が正規分布の場合、偏差値70以上には上位から2.28%が含まれると説明されています。

ほかの偏差値についても、正規分布の計算で上位の割合を出すと、次の表のようになります(筆者が標準正規分布の式で計算した値で、小数点以下は四捨五入しています)。

偏差値 その偏差値以上の人の割合 およそ何人に1人か 受験者1,000人なら
50 50% 2人に1人 約500人
55 約30.9% 約3人に1人 約309人
60 約15.9% 約6人に1人 約159人
65 約6.7% 約15人に1人 約67人
70 約2.3% 約44人に1人 約23人
75 約0.62% 約161人に1人 約6人
80 約0.13% 約741人に1人 約1人

40人のクラスにたとえると、偏差値70以上の生徒はクラスに1人いるかどうか、という計算です。偏差値60でも約6人に1人なので、クラスの上位6〜7人に入る成績にあたります。

注目したいのは、偏差値が5上がるごとに「珍しさ」が加速していく点です。60から65では約6人に1人から約15人に1人に、70から75では約44人に1人から約161人に1人になります。釣り鐘型の分布は端に行くほど人数が急に減るため、同じ5の差でも、上の方ほど到達するのが難しくなるのです。

偏差値80になると約741人に1人です。Weblio辞書の解説では、受験者が100万人の試験なら、偏差値80以上は約1,300人になると紹介されています。

偏差値を見るときの注意点

偏差値は便利な数字ですが、「誰と比べた数字か」と「分布が釣り鐘型か」という2つの前提を忘れると、読み違えてしまいます。主な注意点は次のとおりです。

受ける模試によって「母集団」が違う

偏差値は、そのテストを受けた人たち(母集団)の中での位置にすぎません。難関校を目指す人が多く受ける模試と、幅広い層が受ける模試では、同じ実力でも偏差値が変わります。成績上位の人ばかりが受ける模試での偏差値60は、幅広い層が受ける模試なら、もっと高い偏差値になる可能性があります。

河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」でも、ボーダー偏差値は模試の母集団によって意味が異なるので、必ず自分が受けた模試の偏差値と照らし合わせるよう注意を呼びかけています。違う会社の模試の偏差値を、そのまま比べるのは避けましょう。

点数の分布が釣り鐘型とは限らない

「偏差値70=上位約2.3%」という換算は、点数の分布が正規分布に近いときだけ成り立ちます。テストが簡単すぎて高得点の人が集中したり、受験者が少なかったりすると、分布の形がくずれ、換算どおりにならないことがあります。コトバンク掲載の辞典でも、学業成績が正規分布にならない場合は注意が必要だと指摘されています。

偏差値は100を超えることもある

偏差値には上限も下限もありません。Weblio辞書の解説によると、一般的なテストでは偏差値はおおむね25〜75程度に収まることが多いものの、極端な分布では100を超えたりマイナスになったりすることもあるとされています。たとえば、ほとんどの人が低い点数の中で、1人だけ満点をとったような場合です。

大学や高校の「偏差値」は合格ラインの目安

学校の偏差値として紹介される数字は、模試の成績から作られた「合格の目安」です。河合塾の場合、大学の偏差値(ボーダーライン)は、合格の可能性が50%に分かれるラインを意味すると説明されています。あくまで入試の難しさを表したもので、各大学の教育内容や社会的な位置づけを示すものではない、という但し書きも添えられています。

偏差値はいつ誰が考えたのか?誕生と広がりの歴史

日本の受験で使われる「学力偏差値」は、1957年に東京都港区の中学校の教員だった桑田昭三さんが考案したものとされています。もともとは、生徒の進路指導を先生の勘に頼らず、信頼できる指標で行うための工夫でした。

文春オンラインに掲載された大阪大学の村上靖彦教授の著書『客観性の落とし穴』の抜粋でも、偏差値は教員の勘に頼っていた進路指導に、信頼できる指標を導入する目的で考案されたと紹介されています。

ねとらぼの記事では、桑田さん自身の著書『よみがえれ、偏差値』(1995年、文藝春秋)をもとに、そのいきさつが紹介されています。当時、受験校は成績順の一覧表と先生たちの判断で決められており、桑田さんはその決め方に疑問を持ったのがきっかけだったそうです。

その後の流れは、次のとおりです。

  • 1963年(昭和38年):桑田さんが進学研究会に移り、偏差値を社内で広める。やがて偏差値が成績や進学情報を表す主な方法になる
  • 昭和40年代半ば以降:地方のテスト業者や学習塾を通じて、偏差値が全国に広まる
  • 1975年(昭和50年)12月:読売新聞の一面に偏差値を取り上げる記事が載り、各新聞社が「反偏差値」の論調を打ち出す
  • 1993年:中学校での業者テストの実施禁止などが示される(コトバンク掲載の辞典による)

なお、「平均50・標準偏差10」に変換するという考え方そのものは、日本の受験より前から、知能検査の結果を示す方法として使われていたと、コトバンク掲載の辞典は説明しています。英語では「Tスコア(T得点)」と呼ばれます。

偏差値は「学校の序列化を招いた」と批判されることもありますが、生まれた背景には、勘ではなく根拠のある数字で生徒の進路を考えたいという思いがありました。数字そのものに良し悪しがあるのではなく、どう使うかが問われているといえます。

よくある質問

偏差値50は「真ん中の順位」という意味ですか?

偏差値50は「平均点と同じ」という意味です。点数の分布が左右対称の正規分布に近ければ、平均点はほぼ真ん中の順位と重なります。ただし、分布がかたよっている場合は、平均点と真ん中の順位がずれることがあります。

偏差値70と偏差値60では、どのくらい差がありますか?

正規分布を前提にすると、偏差値60以上は上位約15.9%(約6人に1人)、偏差値70以上は上位約2.3%(約44人に1人)です。数字の差は10ですが、該当する人数はおよそ7分の1まで減ります。

別の会社の模試の偏差値を比べてもいいですか?

おすすめできません。偏差値は、そのテストを受けた人たちの中での位置を示す数字なので、受験者の顔ぶれが違えば同じ実力でも値が変わります。志望校の目安を見るときも、自分が受けた模試と同じ会社のデータで比べるのが基本です。

自分の偏差値は自分で計算できますか?

平均点と標準偏差がわかれば計算できます。「(自分の点数-平均点)÷標準偏差×10+50」に当てはめるだけです。たとえば平均点60点、標準偏差10点のテストで80点なら、偏差値は70になります。

まとめ

偏差値は、「平均点からの差」を「標準偏差(点数のばらつき)」で割り、平均50・1目盛り10に直した数字です。点数そのものではなく、集団の中での位置を表しているため、難しさの違うテスト同士でも比べることができます。

点数の分布が釣り鐘型の正規分布に近いとき、偏差値60以上は約6人に1人、偏差値70以上は約44人に1人、偏差値80以上は約741人に1人という珍しさになります。一方で、模試ごとに受験者の顔ぶれが違うことや、分布がいつも釣り鐘型とは限らないことには注意が必要です。

次に模試の結果表を手にしたら、偏差値だけでなく「平均点」と「標準偏差」の欄も確認してみてください。この記事の計算式に当てはめれば、偏差値の数字がどこから来たのかを、自分の手で確かめることができます。

参考リスト

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