はじめに
毎年11月6日になると、日本海側の港町は一気ににぎやかになります。ズワイガニ漁の解禁日だからです。ニュースでは「松葉ガニ」「越前ガニ」「加能ガニ」「間人ガニ」と、いろいろな名前のカニが紹介されますが、「結局どう違うの?」「いつまで食べられるの?」と疑問に思ったことはありませんか。
👇 本記事でわかる3つの重要ポイント 👇
- 【テーマ1】ズワイガニ漁解禁日の基本と、オス・メスで異なる漁期のしくみ
- 【テーマ2】松葉ガニ・越前ガニ・加能ガニ・間人ガニの違いと見分け方
- 【テーマ3】2026年漁期の資源の見通しと、カニをおいしく楽しむコツ
この記事では、府県の公式発表などをもとに、冬の味覚の主役であるズワイガニの「名前の秘密」と「旬の楽しみ方」を順番に解説します。読み終えるころには、お店でカニを選ぶ目が少し変わるはずです。
11月6日はズワイガニ漁の解禁日
富山県から西の日本海では、ズワイガニ漁が毎年11月6日の午前0時に解禁されます。この日から、冬のカニシーズンが本格的に始まります。2026年の解禁日は11月6日(金)です。
京都府の海洋センターの報告によると、解禁前の夜11時ごろには京都府・福井県・兵庫県の底びき網漁船(海の底に網を引いて魚をとる船)が漁場に集まり、午前0時になると一斉に漁を始めます。とれたカニはその日のうちに港へ運ばれ、各地の市場で「初競り」にかけられます。
初競りでは、各地のトップブランドのカニに驚くような値段が付くことがあります。鳥取県によると、2019年11月7日の初競りでは鳥取県産の最高級ブランド「五輝星(いつきぼし)」が1匹500万円で落札され、「競りで落札された最も高額なカニ」としてギネス世界記録に認定されました。
なお、漁期は国のルール(省令)で決められていますが、実際には漁業者が話し合って、さらに短い期間に自主的に制限しています。水産庁や鳥取県の資料をもとに整理すると、次のようになります。
| 区分 | 国のルール(省令) | 漁業者の自主規制(日本海西部) |
|---|---|---|
| オス(甲羅の硬いカニ) | 11月6日〜翌年3月20日 | 同じ(11月6日〜翌年3月20日) |
| メス | 11月6日〜翌年1月20日 | 11月6日〜12月31日(石川県などは12月29日まで) |
| 脱皮直後のオス(水ガニ・若松葉ガニ) | オスと同じ | 2月の一部の期間のみ、または京都府のように全面禁止 |
つまり、オスのカニは3月20日ごろまで楽しめますが、メスのカニはおおむね年内で終わってしまいます。この「メスの旬の短さ」が、カニ好きの間で11月から12月が特に注目される理由の一つです。
松葉ガニ・越前ガニ・加能ガニ・間人ガニの違い
結論から言うと、松葉ガニ・越前ガニ・加能ガニ・間人ガニは、生き物としてはすべて同じズワイガニのオスです。違いは、どの地域の港で水揚げされたかという点にあります。
それぞれの産地が、自分たちのカニの品質を守り、ほかの産地と区別するために名前を付けて「ブランド」として売り出しています。脚に付けられたタグ(標識票)が、そのブランドの証明書の役目を果たしています。主な違いを表にまとめました。
| ブランド名 | 主な産地 | メスの呼び名 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 松葉ガニ | 山陰地方(鳥取県・兵庫県など) | 親ガニ(鳥取県)など | 鳥取県のトップブランド「五輝星」が有名 |
| 越前ガニ | 福井県 | セイコガニ | 黄色いタグ。カニのタグ制度の発祥地 |
| 加能ガニ | 石川県 | 香箱ガニ | 加賀と能登から1文字ずつとった名前 |
| 間人ガニ | 京都府(間人漁港) | コッペガニ・セコガニ(京都府) | 緑色のタグ。「幻のカニ」と呼ばれる |
松葉ガニ(山陰地方)
松葉ガニは、鳥取県や兵庫県など山陰地方で水揚げされるオスのズワイガニの呼び名で、古くから使われてきた名前です。鳥取県では、2015年の漁期から最高級ブランド「特選とっとり松葉がに五輝星」を販売しています。
鳥取県の公式サイトによると、五輝星に選ばれるには「甲羅の幅13.5センチ以上」「重さ1.2キロ以上」「脚がすべてそろっている」「色合いが鮮やか」「身が詰まっている」という5つの基準をすべて満たす必要があります。選ばれるのは全体の0.1パーセントにも満たない、とても貴重なカニです。
越前ガニ(福井県)
越前ガニは、福井県の港で水揚げされるオスのズワイガニです。福井県の発表資料によると、ほかの県のカニと区別するために、1997年(平成9年)に全国で初めて黄色いタグを付けて販売しました。今では各地で当たり前になったカニのタグは、ここから始まったのです。
越前ガニは、皇室に献上されているズワイガニとしても知られています。福井県によると、明治42年から宮家への献上が始まり、現在は天皇家を含む5つの宮家に毎年1月に献上されています。三国港からの献上は1922年(大正11年)から続いているとされます。
加能ガニ(石川県)
加能ガニは、石川県沖で水揚げされるオスのズワイガニです。名前は、石川県の「加賀」と「能登」から1文字ずつとって付けられました。最高級のものには「輝(かがやき)」というトップブランドがあり、初競りで1匹500万円の値が付いたと報じられたこともあります。
メスは「香箱(こうばこ)ガニ」と呼ばれ、石川県では12月29日までが漁期です。香箱ガニにも「輝姫(かがやきひめ)」というトップブランドがあり、甲羅の幅9.5センチ以上などの基準を満たしたものだけが認定されます。
間人ガニ(京都府)
間人(たいざ)ガニは、京都府京丹後市の間人漁港で水揚げされるオスのズワイガニです。京都府で水揚げされたズワイガニのはさみには、緑色のタグが付けられています。
京都府の紹介ページによると、間人ガニの漁には、一般的なカニ漁の船(40トン以上)より小さな船(14〜19トン)を使います。そのため天候が悪いと漁に出られない日も多く、水揚げが少ないことから「幻のカニ」と呼ばれるようになりました。一方で、港から漁場までが近いため、とれたての鮮度を保ったまま水揚げできるのが強みです。
2024年4月には、ほかの県で取れたカニに間人ガニのタグを付ける産地偽装が発覚しました。これを受けて京都府では、2024年漁期からQRコードとシリアル番号入りの白いタグを追加し、「誰が・いつ・どこでとったか」を確認できるしくみを取り入れています。
オスとメスで漁期が違う理由と資源管理
メスの漁期がオスより短いのは、カニを将来にわたってとり続けられるよう、資源(海の中にいるカニの量)を守るためです。卵を抱えたメスをとりすぎると、次の世代のカニが減ってしまいます。
国の決まりでは、メスは「おなかに卵を持っていないもの」をとってはいけないとされています。さらに漁業者は自主的に、メスの漁期を12月末までに縮めたり、1回の漁でとれる数を制限したりしています。国も海域ごとに1年間にとってよい量の上限(漁獲可能量、TAC)を決めています。鳥取県によると、富山県から島根県までの「A海域」の上限は、2025年度で3,700トンでした。
守られているのはメスだけではありません。脱皮したばかりで甲羅がやわらかいオスは「水ガニ」と呼ばれ、身入りが少なく値段も安いカニです。水産研究・教育機構の研究では、水温の高い11月に網に入った水ガニを海へ戻しても、死んでしまう割合が高いことがわかっています。京都府では2008年の漁期から水ガニの漁を全面的にやめています。
さらに京都府によると、2026年の漁期からは、京都府沖で「モモガニ」(まだ大人になっていないオス)の漁獲を自主的に禁止します。これは全国で初めての取り組みで、将来の大人のオスを増やすことがねらいです。おいしいカニを毎年食べられるのは、こうした漁業者の地道な努力のおかげだと言えます。
2026年漁期のズワイガニ資源の見通し
2026年漁期の資源は、京都府の調査では「オスは平年並み、メスは平年より多い」という結果でした。メスのカニを楽しみにしている人には、うれしい知らせです。
京都府が2026年10月に発表した資料によると、8月下旬から10月初めにかけて府の沖合でかごを使った調査を行ったところ、オスは直近5年平均の96パーセント、メスは146パーセントでした。解禁日の初漁には、京都府漁協に所属する9隻の底びき網漁船が出漁する予定です。
参考までに、前の漁期(2025年漁期)の京都府での水揚げは、オスが43.0トン(1キロあたり平均9,788円)、メスが27.5トン(同3,093円)でした。オスとメスで1キロあたりの値段に3倍ほどの差があることがわかります。
なお、資源の状況は海域や府県によって異なります。ほかの府県の2026年漁期の見通しについては、各府県の水産部門の発表を確認してください(2026年11月時点)。
ズワイガニをおいしく楽しむコツ
ズワイガニをもっと楽しむには、「タグを確かめる」「食べる時期を選ぶ」「産地のイベントを活用する」の3つがポイントです。
- タグを確かめる:ブランドガニには産地ごとのタグが付いています。福井県の黄色いタグ、京都府の緑色のタグのように、色や刻まれた港の名前で産地がわかります。
- メスは年内に:セイコガニや香箱ガニなどのメスは、漁期がおおむね12月末までと短めです。甲羅の内側の「内子(うちこ、卵巣)」と、おなかの外の「外子(そとこ、卵)」を味わえるのはこの時期だけです。
- オスは寒い時期も狙い目:越前ガニを扱う福井県三国港の関係者の間では、寒さで身が締まる1月から2月こそおいしいという声があります。解禁直後だけでなく、年明け以降も楽しめます。
- 産地のイベントに出かける:福井県越前町の道の駅「越前」では、「越前かにまつり」が2026年11月14日・15日・21日・22日の4日間開かれる予定と紹介されています。お出かけ前には公式情報で最新の内容を確認してください。
京都府の紹介ページによると、京都府沖の漁場は砂地が多く、岩場の多い山陰の漁場とくらべて、京都のカニは脚がやや長めといわれています。同じズワイガニでも、産地ごとの食べくらべを楽しむのも一つの方法です。
よくある質問
松葉ガニと越前ガニは別の種類のカニですか?
いいえ、どちらも同じズワイガニのオスです。松葉ガニは山陰地方、越前ガニは福井県、加能ガニは石川県、間人ガニは京都府の間人漁港で水揚げされたものを指します。違いは主に水揚げされた港と、付けられたタグです。
ズワイガニの漁期はいつまでですか?
富山県より西の日本海では、オスは11月6日から翌年3月20日までです。メスは国の決まりでは翌年1月20日までですが、漁業者の自主規制により、多くの地域で12月31日まで(石川県などは12月29日まで)となっています。
なぜカニの脚にタグが付いているのですか?
産地や品質を証明し、ほかの地域のカニと区別するためです。1997年に福井県が全国で初めて黄色いタグを付けて販売し、その後各地に広がりました。京都府ではQRコード付きのタグで、漁獲の情報を確かめられるようにしています。
メスのカニがオスより安いのはなぜですか?
京都府の2025年漁期の実績では、1キロあたりの平均単価はオスが約9,800円、メスが約3,100円と大きな差がありました。メスはオスの半分ほどの大きさで、取引のされ方も異なります。ただし内子や外子の濃い味わいを好む人も多く、地元では人気の高い珍味です。
まとめ
11月6日はズワイガニ漁の解禁日で、日本海の冬の味覚のシーズンが始まる日です。松葉ガニ・越前ガニ・加能ガニ・間人ガニは、すべて同じズワイガニのオスで、水揚げされた港とタグによって名前が分かれています。
オスは3月20日まで楽しめますが、メスはおおむね年内で漁が終わります。漁期の短さやタグ、モモガニの漁獲禁止などのしくみは、カニを未来に残すための工夫でもあります。次にカニを買うときは、まず脚のタグを見て、どの港から来たカニなのかを確かめてみてください。
参考リスト
- 京都府「ズワイガニ資源 オスは平年並み、メスは多い~ズワイガニの漁期前資源調査の結果について~」
- 京都府海洋センター「ズワイガニ漁が解禁」(令和3年11月試験研究業務月報)
- 京都府「ズワイガニ漁 11月6日解禁!」(令和5年10月)
- 京都府「同じカニでも京都のカニはひと味違う」
- 京都府「京都の水産物(ズワイガニ)」
- デイリースポーツ「産地偽装発覚から7カ月…高級食材「間人ガニ」の再出発」
- 福井県「越前がに」漁の解禁
- マイナビ農業(PR TIMES)「献上品質 越前がに」に関するリリース
- ふくいろ「越前ガニとは?福井県が誇る味覚の旬やおすすめの食べ方」
- 2026年越前かにまつり(Have a good holiday)
- 鳥取県「特選とっとり松葉がに五輝星」
- マイナビ農業(PR TIMES)鳥取県 松葉がに「五輝星」に関するリリース
- 鳥取県「令和7年度の漁獲可能量(TAC)について」
- 水産庁「底びき網漁業におけるあかがれい・ずわいがにの資源管理」
- 水産研究・教育機構「ズワイガニの自主的管理効果の検証」
- 現代ビジネス(カニの高値と各地のブランドガニに関する記事)
- マイナビ農業(PR TIMES)石川県漁協 香箱ガニ「輝姫」に関するリリース
- macaroni「金沢名物グルメ・カニ。加能ガニと香箱ガニの違いは?」
- 星野リゾート「金沢のカニ」ガイド

